【R33】機関投資家のポートフォリオ管理(Managing Institutional Investor Portfolios)
Contents
機関投資家のInvestment Purpose Statement(IPS)
- Private Wealth Managementと同様、IPSはとても重要ですので必ず抑えるようにして下さい。
- IPSは投資家とアセットマネジャー間のコミュニケーションツールで、「リスク許容度(Risk)」と「必要リターン(Return)」そして、それらを判断する上で基となる、「税務面(Tax)」「投資期間(Time Horizon)」「法務面(Legal)」「流動性(Liquidity)」「その他特殊事情(Unique)」を整理します。
- 与えられた問題文からこれらの項目を読み解き、リスク許容度や必要リターン、その他各項目について記述や計算で答える問題が問われます。Private Wealth Management同様、IPSはとても重要です!
- 特に、確定給付年金(DB Plans) と Foundation、Endowmentsについてはきっちり抑えておきましょう。保険会社(損害保険、生命保険)や銀行も機関投資家として問われますが、圧倒的に前者の3つに焦点が当てられます。
確定給付年金 (DB Plans)
- 確定給付年金の資産運用は、Asset and Liability Management (ALM)に依るアプローチが良いとされています。具体的には、運用サイドのPlan Assetの現在価値と負債サイドのPlan liabilitiesの現在価値の差額 (Surplus)を管理する方法です。
- Asset Onlyの運用方法との違い等についても聞かれることがありますが、この点はAsset Allocationの項目でも取り上げますのでそちらで学びましょう。
- 確定給付年金では、以下内容は必ず押さえておきましょう。必須です。
Return Objective
- Plan Assetの運用で最低限必要なリターンは、Liabilitiesの現在価値を計算する際の割引率です。上記Surplusをプラスに保っておくことが非常に重要で、少なくとも負債の割引率よりはリターンを確保する必要があるということですね!
Risk Objective
- Risk tolerance(リスク許容度)を下げる要因については必ず理解しておく必要があります。問題文から以下要素を探し出して説明するという問題は非常によく出ます。
- Surplusがマイナスの場合
- スポンサーの財務能力が低い場合
- 年金資産の運用収益とスポンサーの財務能力に高い相関がある場合
- 手許流動性の必要性が高まる場合、運用期間が短くなる場合(負債のDurationが小さくなる場合)(例:年金参加者の平均年齢が高まる場合、年金支給年齢を早める場合等)
FoundationとEndowments
- FoundationとEndowmentsは確定給付年金とは異なり、通常契約上で定められた負債(所謂、Defined Liabilities)が無いのでAsset-Onlyのアプローチを採用するケースが一般的です。
- ALMとAsset Onlyの比較問題(どういう時はALMでどういう時にAsset Onlyを適用するか)は確定給付年金と比較しつつ様々な形で問われることが多いので両方確りと押さえておきましょう。
Return Objective
- インフレ調整後の資産価値と資金の配分金額(Real value of assets and distributions)を維持することが目的となります。
- もしこれらが維持出来なければ目的に利用する金額が目減りすることになりますのでそれは防がなねばなりません。
- 必要なリターン(Required return)を計算する際にはGeometric return calculation(幾何計算)が好まれる傾向があり、必要経費支払額を計算することで確認します。
- 例えば、5%の資金分配、3%のインフレ率、0.5%の経費率の場合、(1.05)×(1.03)×(1.005) – 1 となります。
- 税金面で優遇を受けるため、FoundationとEndowmentsには、所定のDistribution額を拠出する必要があります。
- 例えば、簡単な例で言うとDistribution額を期初の資産時価にX%を掛けた金額と決めることがありますが、これだと時価変動の影響を受けるためボラティリティが高くなります。
- 安定させるため、2つのSmoothing rulesを適用することがあります。それが以下です。
Rolling average rule
期初の資産時価では無く、過去Y年の平均期初資産時価を用いて計算する方法。資産価値が上昇局面の場合はSmoothing Ruleを適用した方が分配額が小さくなり、資産価値が下降局面の場合は分配額が大きくなります。
Geometric smoothing rule
Rolling average ruleの計算方法で算出した金額の50%と、前回配分額をインフレ率だけ増加させた金額の50%の合計値です。
Risk Objective
- 通常、FoundationとEndowmentsの満期はPerpetual(永久)なのでTime Horizonは長くなります。そのため、運用収益がネガティブな場合でも改善するだけの時間が確保できることからRisk Teleranceは高くなります。契約で定められた負債金額が無い点もRisk Teleranceを高くする要因です。