会計士(CPA)という資格は、日本において非常に高い専門性と信頼性を誇り、数多くの人が憧れる職業です。
しかし、その一方で、「会計士の待遇は悪い」という声も耳にします。特に、監査法人で働く会計士の中には、長時間労働や昇進の競争が厳しいと感じる人も少なくありません。
本記事では、会計士の待遇が悪いと言われる背景や具体的な理由を掘り下げるとともに、次のキャリアを考える際の選択肢について解説します。
待遇への不満を解消し、充実したキャリアを築くためのヒントを提供致します。
会計士の待遇は悪い?
「会計士は待遇が悪い」と言われる理由には、給与の伸び悩み、長時間労働、監査法人内ではキャリアの選択肢が狭いといった点が挙げられます。初任給や転職市場での人気は高いものの、同一組織にいる場合、中長期的にはその待遇が期待を下回ることも。特に、大手監査法人で働く場合、若手時代は待遇の良さを実感する人がいる一方で、中堅になるにつれて業務量や労働環境に不満を抱えるケースも目立ちます。では、具体的にどのような点で待遇が悪いと言われているのでしょうか?
会計士の待遇が悪いと言われている理由
給与水準の限界
会計士は専門職として高い給与が期待されるものの、その伸びは必ずしも一貫して高いわけではありません。特に以下の点が指摘されています。
初任給の高さとその後の停滞
初任給が高いことは会計士の魅力ですが、パートナーなど出世をしない限り、年収がその後大きく上昇するわけではありません。一定の経験を積んだ後は、昇給が限定的であることが多いです。
長時間労働と業務負担
監査法人や会計事務所では、特に繁忙期における長時間労働が問題視されています。
繁忙期の過酷さ
四半期決算や年度末の監査業務では、夜遅くまでの残業や休日出勤が当たり前になることがあると言われています。年間を通じて繁忙期が多いと言われています。
ワークライフバランスの欠如
激務である為、プライベートの時間を確保できないことが、モチベーションの低下につながるケースもあると言われています。それが給料で賄われていれば少しは納得感もあると思いますが、外資金融機関やPEファンド, ヘッジファンドなど同じ業務量でも給料に差があると不満を持つこともあるとか。
キャリアの狭さ
監査法人で働く会計士のその領域内でのキャリアパスは限定的であり、次のステップへの道筋が明確でないことが多いです。特にパートナーになれるのは一部でありそれまでにかかる時間も相当な期間が必要です。
専門性の狭さ
特定の分野での専門知識は深まりますが、監査法人内では活きてくる内容だったとしても、他分野への転職やキャリアチェンジの機会を失ってしまう場合があります。
昇進競争
昇進ポストが限られているため、競争が激しくなる傾向があります。特に年齢を重ねていくとそれは顕著で気付いた時には、辞めようにもやめられない・身動きが取れない状態になってしまうことも考えられます。
監査法人の会計士でも待遇は悪い?
監査法人、特にBIG4と呼ばれるところが会計士の主要な就職先ですが、その待遇には一長一短があります。
メリット:
安定した収入
大手監査法人では、給与水準が比較的高く、ボーナスや福利厚生も充実しています。20代前半で働くことができたら勝ち組と言えるでしょう。
国際的な経験
海外のクライアントを担当することで、国際的な視野を広げるチャンスがあります。特にBIG4の場合、国際的なネットワークが充実しているためグローバルに活躍する可能性があります。
ネットワークの構築
優秀な同僚やクライアントとの交流を通じて、人脈を広げることができます。監査法人だけでなく同じグループのコンサルタントや税理士など、グローバルなネットワークを活用可能です。
デメリット
長時間労働・見合わない報酬
特に繁忙期には、ワークライフバランスが崩れることが多く、長時間労働が多いと言われています。若い時にビジネス力をつけるためにたくさん働いて経験を積みたい方には良い場所とは言え、それを5年〜程度続けていると働いている内容対比見合わない報酬に不満を持つようになります。今これを読んでいるあなたもそうかも知れません。
昇進の壁
マネージャーやパートナーといった上位職への昇進には時間がかかり、競争が激しいです。限られた人数しかそのポジションにつけませんので、昇進の道を目指すのか違うキャリアで更にパフォーマンスを上げて高い報酬を目指すのかをどこかで判断が必要かも知れません。
業務のルーチン化
四半期毎に同じ業務を繰り返すことが多く、新しい挑戦がしにくい環境に不満を持つ人もいます。数年間やっていると同じような内容が多くなってきて成長が感じられなくなる方も多いです。そのような場合は自身の市場価値にも影響してくるかも知れません。
会計士のメリット・デメリット
メリット
高い専門性と信頼性を持つ資格
会計士は、財務・会計に関する高度な専門知識と実務能力を認定される国家資格です。この資格を取得することで、監査や税務、財務アドバイザリーといった専門的な分野で信頼を築くことができます。また、クライアントや企業の経営陣から信頼されるポジションを獲得しやすく、意思決定のプロセスに積極的に関与できる点も魅力です。
転職市場での優位性
会計士資格は、国内外を問わず高い需要があり、転職市場での競争力は高いです。特に、大手監査法人、企業の経理部門、財務コンサルティングファームなど、多様なキャリアオプションが用意されています。さらに、資格の国際性もあり、グローバル市場での就職や転職を目指す場合にも有利に働きます。特に、M&Aや内部統制の知識を持つ会計士は、金融業界や経営コンサルティング業界でも需要が高まっています。
経済的な安定
会計士は、高い初任給と安定した収入を得られる職業として知られています。特に監査法人に勤務する場合、ボーナスや福利厚生が充実しており、若いうちは経済的な安定が期待できます。
デメリット
繁忙期の負担
会計士の仕事は、四半期決算や年度末監査の際に非常に忙しくなります。特に監査法人では、残業や休日出勤が常態化する場合があり、プライベートの時間が削られることが少なくありません。このような繁忙期の負担が、心身の健康に悪影響を及ぼすリスクも指摘されています。また、タイトな納期やプレッシャーがかかる環境で働くことがストレスの原因になることもあります。
キャリアの選択肢が限定される
会計士のキャリアは、特定の分野に特化しやすい一方で、それが「選択肢の狭さ」に感じられることもあります。例えば、監査法人でのキャリアが長くなると、他分野への転職が難しくなる場合があります。また、企業の経理部門や財務担当に転職した場合も、実務経験がよりものをいう世界であり、年長者にとっては新しいチャレンジがしにくい環境でもあります。さらに、監査法人内の昇進の競争は激しい業界であるため、キャリアパスが限定的に感じる人も多いです。
資格を活かしきれない場合のストレス
資格を取得したものの、そのスキルを十分に活用できない状況に陥ると、不満やストレスがたまることがあります。たとえば、特定の業務に長期間携わることで、スキルの幅が狭まり、自分の成長が停滞していると感じるケースです。特に、転職市場でのスキルアップが求められる状況では、市場価値が低下するリスクも考えられます。
会計士の待遇が悪いと感じたときに取るべき行動
会計士のまま待遇の良い会社に転職するためのスキルを身につける
スキルアップを目指す
会計士としてのキャリアを活かしつつ、より待遇の良い会社に転職するには、現状のスキルセットを深めるだけでなく、新たなスキルを習得することが鍵となります。企業が求めるニーズを的確に把握し、それに応じた能力を磨くことで、転職市場での競争力を高めることができます。会計士としての経験を土台に、新たな分野での挑戦を視野に入れることで、より広いキャリアパスを描くことができます。
CFAの資格を習得してキャリアチェンジを目指す
CFA(Chartered Financial Analyst)資格は、金融業界でのキャリアチェンジを目指す会計士にとって非常に有効な選択肢です。この資格は、金融や投資に関する深い知識を証明し、グローバルな市場での信頼性を確立するものです。特に、CFA資格を取得することで、会計士としての経験を基盤にさらに専門性を高め、キャリアの選択肢を広げることが可能です。以下に、CFA資格の魅力とキャリアチェンジの可能性を具体的に解説します。
グローバルな資格
CFAは、世界中で認められている金融資格であり、約160カ国で高い評価を受けています。この資格を持つことで、国内外の金融機関や企業での転職活動が有利になります。特に、以下の点が魅力です。
外資系企業への転職
外資系投資銀行や資産運用会社では、CFA資格が高く評価されます。英語での試験や国際的なカリキュラムに基づく内容が、グローバルビジネスでの即戦力を証明します。
海外でのキャリア形成
海外での勤務を目指す場合、CFA資格を持っていることで現地での雇用機会が広がります。特に、海外金融機関ではCFA資格保有者が高い需要を誇ります。
投資・資産運用分野への道
CFA資格は、投資や資産運用に特化した知識とスキルを提供します。会計士としての経験と組み合わせることで、以下の分野でのキャリアを追求できます。
資産運用(アセットマネジメント)
ポートフォリオの設計やリスク管理、顧客資産の運用を行う業務で、外資金融機関ではCFA資格は強く推奨されることが多いです。会計士の分析力を活かしながら、投資戦略の立案や実行に関わることが可能です。
投資銀行業務
企業のM&Aや資金調達をサポートする投資銀行業務では、CFA資格が専門性を補強します。特に財務分析や企業価値評価において、会計士のバックグラウンドが強みとなります。
リサーチアナリスト
株式や債券市場を分析し、投資判断を行うリサーチ業務でも、CFA資格は高く評価されます。会計士としての財務知識を活かし、企業の業績予測や市場トレンド分析を行うことができます。
将来の選択肢を広げる
CFA資格は、取得過程で多岐にわたる知識を習得できるため、キャリアの選択肢を大きく広げる可能性があります。具体的には以下のスキルを習得できます。
財務分析
財務諸表の詳細な分析を通じて、企業の業績やリスクを評価するスキルを磨けます。このスキルは、財務コンサルタントやリスクマネジメントの分野でも役立ちます。
リスク管理
投資ポートフォリオや企業の財務リスクを効果的に管理する方法を学べます。これにより、リスクアナリストやトレジャリーマネジャーとしてのキャリアが開けます。
ポートフォリオ運用
資産の分散投資や運用パフォーマンスの最適化について学び、ファンドマネージャーとしてのキャリアを目指せます。
会計士を続けたほうが良いか迷った場合の判断基準
辞めないほうが良い場合
自分の専門分野に情熱を持っている場合
会計士としての業務に対して強い情熱や興味を持っている場合は、キャリアを続ける選択肢が有力です。特に以下のような要素が当てはまる場合は、現在の職場や職種でさらにスキルを深めることを検討しましょう。
自分の業務が楽しいと感じられる
監査業務にやりがいを感じている場合、その情熱は今後のキャリア形成にとって大きな力となります。続けましょう。
目標を達成したい意欲がある
例えば、監査法人でのパートナー昇進や特定のクライアントに貢献したいといった明確な目標がある場合です。その場合も続けましょう。
現在の職場に成長の余地がある場合
現職の環境でさらなる成長や昇進の機会が見込める場合は、会計士としてのキャリアを続ける価値があります。
教育やトレーニングの機会がある
監査法人や企業が提供する研修や資格支援を活用することで、スキルアップが可能です。その機会をうまく活かしてスキルアップしていきましょう!
キャリアパスが明確である
例えば、現職でマネージャーやパートナーといったポジションを目指せる場合、目標を達成するまで継続する選択肢があります。続けましょう!
人間関係や職場環境が良好
働きやすい職場環境やサポート体制が整っている場合、無理に転職を考える必要はありません。続けましょう!
キャリアチェンジをしたほうが良い場合
長時間労働や給与に不満がある場合
以下の点が不満の原因となっている場合は、現状を見直すサインです。
給与や待遇が期待以下
スキルや経験に見合った報酬を得られていない場合、新しい職場を探すことで待遇の改善が見込めます。特に20代後半から30代前半に感じる方が多いです。
新しい分野での挑戦に魅力を感じている場合
会計士としてのキャリアに満足できず、新しい分野での挑戦に意欲を感じている場合、キャリアチェンジを真剣に検討する価値があります。先に進みましょう。
興味のある分野が明確にある
例えば、投資銀行、ファンド、資産運用、といった新しい道への関心が高い場合です。先に進みましょう。
新たなスキルを学びたい意欲がある
例えば、CFA資格を取得して金融業界や投資業界に進むするなど、次のキャリアのために具体的な学習計画を立てられる場合です。先に進みましょう。
現職での成長が限界を迎えている
現在の業務が単調に感じられたり、スキルの幅を広げられない場合、新しい分野でのキャリアを開拓するチャンスと捉えることができます。先に進みましょう。
まとめ
会計士として働く中で、「待遇が悪い」と感じる瞬間は少なくありません。しかし、それをきっかけにキャリアを見直し、自分にとって最適な選択をすることが重要です。
自身のスキルアップ、さらにはキャリアチェンジを通じて、より良い未来を手に入れることができます。
CFA資格の取得など、会計士のスキルを生かしつつ新しい道を切り開く方法も多岐にわたります。まずは自分自身の目標や優先順位を明確にし、アクションを起こしてみましょう!
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