【香港×CFA®︎】香港で金融の仕事をする日本人が受ける試験|SFCライセンスとHKSI LEの全体像

香港に赴任すると、まず「ライセンス」の話から始まる
香港で金融の仕事に就くと、業務の前に必ずライセンスの話が出てきます。駐在員でも現地採用でも同じで、顧客に証券を売る、投資のアドバイスをする、資産を運用する——このいずれかに関わるなら、SFC(Securities and Futures Commission/証券先物委員会)への登録が必要になります。
日本の証券外務員に相当する位置づけですが、建て付けがかなり違います。まずそこを押さえておくと、コンプライアンス部門から渡される書類の意味がわかるようになります。
二階建ての仕組み:会社のライセンスと、個人の登録
香港のライセンスは二階建てです。1階が会社で、規制業務を行う法人が認可法人(Licensed Corporation)としてライセンスを持ちます。2階が個人で、その会社に紐づいて登録されます。個人の側には2つの立場があります。
- Licensed Representative(代表者)……実際に業務を行う担当者。多くの駐在員・現地採用者はここに該当します。
- Responsible Officer(責任者・RO)……その規制業務を監督する立場。会社ごとに最低人数が定められており、より重い要件が課されます。
重要なのは、個人の登録が会社に紐づいているという点です。会社を移れば登録も移し替えが必要になり、香港を離れれば終了します。日本に持ち帰って使える資格ではありません。
自分がどのRegulated Activity(RA)に該当するか
SFCは規制業務をType 1からType 13までの類型に分けています。日本人が実務で関わることが多いのは次のあたりです。
| 類型 | 内容 | 関わる人の例 |
|---|---|---|
| Type 1 | 証券のディーリング | 証券会社のセールス・トレーダー、ブローカー |
| Type 2 | 先物契約のディーリング | 先物・デリバティブのセールス、トレーダー |
| Type 4 | 証券に関する助言 | リサーチアナリスト、アドバイザリー、PBのRM |
| Type 5 | 先物契約に関する助言 | デリバティブのストラテジスト |
| Type 6 | コーポレートファイナンスに関する助言 | IBD、ECM・DCM、アドバイザリー |
| Type 9 | 資産運用 | 運用会社のファンドマネージャー、アセマネの運用担当 |
自分がどれに該当するかは、所属する認可法人が保有しているライセンスと、実際に行う職務の組み合わせで決まります。自己判断ではなく、入社時・異動時にコンプライアンス部門が指定します。
受けることになるPaperの組み合わせ
SFCは競争力(コンピテンス)の要件を、①学歴または専門資格 ②実務経験 ③RIQ(Recognised Industry Qualification=業界知識の試験) ④LRP(Local Regulatory Framework Paper=香港の規制の枠組みを問う試験)の組み合わせで定めています。このうち③と④が、実際に受ける試験にあたります。
| 類型 | Licensed Representative | Responsible Officer |
|---|---|---|
| Type 1・4・8 | Paper 7・8(RIQ) + Paper 1(LRP) | Paper 7・8 + Paper 1・2 |
| Type 2・5 | Paper 7・9 + Paper 1 | Paper 7・9 + Paper 1・3 |
| Type 6 | Paper 7・11 + Paper 1 | Paper 7・11 + Paper 1・5 |
| Type 9 | Paper 7・12 + Paper 1 | Paper 7・12 + Paper 1・6 |
つまり代表者として登録されるだけなら3つのPaper、ROになるなら4つというのが基本形です。Paper 7は全類型に共通で出てくるので、最初に手を付けることになります。
Paper 1 は「香港の規制」を問う
Paper 1(Fundamentals of Securities and Futures Regulation)は、金融の知識を問う試験ではありません。香港の証券先物条例の枠組み、SFCの権限、ライセンス制度、market misconductの類型といった、条文と制度の理解が中心です。日本で市場業務の経験が長い方でも、ここは新しく覚えることになります。
Paper 7・8・12 は「市場と商品」を問う
Paper 7(Financial Markets)は市場全体の基礎、Paper 8(Securities)は株式・債券などの商品、Paper 12(Asset Management)は運用業務の実務にあたります。日本で実務を積んできた方にとっては既知の内容が多く、用語の英語を押さえる作業が主になります。CFA®︎の学習経験がある方なら、ここは相当に楽に感じるはずです。
| Paper | 問題数/時間 | 受験料(香港会場) | 受験料(海外会場) | 実施 |
|---|---|---|---|---|
| Paper 1 | 60問/90分 | HK$1,800 | HK$2,250 | 毎月 |
| Paper 7 | 60問/90分 | HK$1,620 | HK$2,070 | 毎月 |
| Paper 8 | 40問/60分 | HK$1,620 | HK$2,070 | 毎月 |
| Paper 12 | 40問/60分 | HK$1,620 | HK$2,070 | 毎月 |
※2026年9月時点。いずれも多肢選択式・コンピュータ試験で、合格点は各Paper 70%。出題言語は英語と繁体字中国語です。
受験の実務で押さえておくこと
Paperは1科目ずつ独立して合否が決まり、受け直しの回数に上限はありません。毎月実施されているので、業務の繁忙期を避けて組み立てられます。注意したいのは有効期限の考え方で、LRP(香港の規制を問うPaper)はライセンス申請前3年以内に取得していることが求められます。それより古い場合も、直近の実務経験や在任状況によってSFCが認めることがあるとされています。
そもそもCFA®︎とはどんな資格か
ここまで香港のライセンスの話をしてきましたが、CFA®︎という資格自体をご存じない方もいらっしゃると思いますので、先に簡単に紹介させてください。
CFA®︎(Chartered Financial Analyst)は、米国に本部を置くCFA協会(CFA Institute)が認定する投資分野の国際資格です。日本語では「米国証券アナリスト」と呼ばれることもあります。運用会社のファンドマネージャー、リサーチアナリスト、プライベートバンクのアドバイザーなど、投資に関わる職務で世界共通の物差しとして使われており、世界160を超える市場に約20万人の資格保有者がいます。
何を問う試験なのか
試験はLevel 1・2・3の3段階で、すべて英語で実施されます。Level 1は選択式、Level 2はひとつのケース(ヴィネット)を読んで複数の設問に答える形式、Level 3は記述を含む形式です。出題範囲は職業倫理、財務諸表分析、コーポレートファイナンス、株式、債券、デリバティブ、オルタナティブ投資、ポートフォリオマネジメントと、投資の実務に必要な領域を横断します。
香港のライセンス試験が「香港で業務を行うための条件」を問うのに対して、CFA®︎は「投資をどう考えるか」を問う試験です。資格そのものの評価や位置づけについてはCFA®︎とは何か・その価値、試験制度の全体像はCFA®︎試験の全体像の記事で詳しく扱っています。
どのくらいの時間と費用がかかるのか
合格率は各レベルとも40〜50%前後で推移しており、学習時間は1レベルあたり300〜400時間前後が目安です(300時間は最低限と考えてください)。3レベルすべてに合格したうえで、所定の実務経験とCFA協会への入会を経て、はじめてCFA®︎の称号(charter)を名乗れます。数年かけて進めるものなので、働きながら取り組んでいる方がほとんどです。
費用は、独学中心であれば合格までおよそ60万〜70万円、サポート教材をフル活用する場合はおよそ110万〜130万円が目安になります(合格までにかかる総額)。受験資格や試験回数など細かい疑問はよくある質問にまとめてあります。
香港でCFA®︎が効くのは、周囲の見方が違うから
香港で働いていると、CFA®︎資格の価値がよくわかると思います。
数字で見る、香港と日本の差
CFA Society Hong Kong の会員は5,718名で、世界140以上ある支部の中で最大規模です(2026年6月末時点)。対して日本の会員は約2,000名。香港という一都市で、日本全体の2倍以上ということになります。
この差は、日常の風景として現れます。求人票に「CFA charterholder preferred」と書かれている。名刺や署名に「, CFA」が並んでいる。会議で「CFAを持っています」と言ったときに、それが何なのかを説明する必要がない。CFA®︎は意味がないのではないかという問いは言語道断です。
香港に駐在しながらLevel 1に合格した方の話
FA-Academyの受講生にも、香港に駐在しながらCFA®︎に挑戦した方がいます。30代前半、日系銀行の市場部門で、資金繰りや金利リスクヘッジ、バランスシートのコントロールを担当されている方です。受験を決めた理由を、こう話してくれました。
日本にいた時は市場部門ですら、あまりCFAホルダーは見かけなかったが、海外当地だと若いスタッフでも自然にCFAにチャレンジしていたり、自分の市場価値を自分で高めようという動きが強い。国際的な金融都市だとこれが普通なのかもとも思う。そういった現地のスタッフの動きが刺激になった。
もうひとつ挙げられていたのが、英語とのつきあい方です。欧米での勤務も視野に入れたとき、業務知識があっても英語が理由で軽く扱われる場面があるのではないか——そう考えたときに、知名度の高い資格が「この人はベースの知識がある」と伝えてくれる、という見立てでした。
学習面で苦労されたのは時間の確保です。お子さんが小さく、駐在中は家族との時間を削りたくない。土日はほとんど勉強せず、平日と休日の早朝・夜、通勤中の隙間時間を積み上げる形で進めたそうです。日本語要点集に調べたことをすべて書き込んで一元化し、それだけを持ち歩いたという方法が効いたと話しています。詳しくはこちらの合格体験談をご覧ください。
SFCライセンスの次はCFA®︎
| SFCライセンス(HKSI LE) | CFA®︎ | |
|---|---|---|
| 目的 | 香港で規制業務を行うための前提条件 | 投資の専門性を示す国際資格 |
| 有効な範囲 | 香港のみ | 世界160市場 |
| 在籍との関係 | 所属する認可法人に紐づく。離職・帰任で終了 | 勤務先・国に紐づかない。手元に残る |
| 問われる内容 | 香港の法令・規制、市場と商品の基礎 | 財務分析、株式・債券、ポートフォリオ、倫理など |
| 必要な時間 | Paperごとに数週間〜 | 各レベル300〜400時間前後 |
| 取り組む時期 | 赴任直後(業務の前提なので最優先) | 業務が落ち着いてから |
在籍している間だけの登録と、どこでも残る専門性
ライセンスは業務の入場券で、取らない選択肢がない。CFA®︎はキャリアの資産で、取る・取らないを自分で決められます。
駐在中にCFA®︎に取り組むのにこれ以上の条件はなかなかないとも言えます。英語の資料が当たり前に回ってくる環境で、周囲に保有者がいて、資格の意味を説明する必要がない。この3つが揃っている期間は、キャリアの中でそう長くありません。
駐在期間のどこでCFA®︎に着手するか
最初の数ヶ月はライセンスに集中する
赴任直後はライセンスが業務の前提になるので、そこに集中してください。Paperは毎月実施されているので、着任後の数ヶ月で片付けるのが一般的な流れです。
Level 1は300〜400時間前後。始める時期の決め方
CFA®︎のLevel 1は、300〜400時間前後が学習時間の目安です(300時間は最低限と考えてください)。CFA®︎の学習には最低6ヶ月を見るべきなので、受験する試験回は「今から6ヶ月以上先」で選ぶことになります。いつの試験を狙うかはCFA®︎はいつから勉強を始めるべきか、試験制度の全体像はCFA®︎試験の全体像、費用は合格までの総額の記事で確認できます。
家族の時間を削らずに積む
駐在中は家族との時間が生活の軸になります。先に紹介した受講生のように、土日を勉強に充てない前提で組み立てている方は少なくありません。早朝・通勤・子どもが寝たあとの時間を積み上げ、情報を1冊に一元化して持ち歩く。この形が、駐在中のもっとも現実的なやり方だと考えています。具体的な学習設計はLevel 1の全体像と独学で合格できるのかの記事が参考になります。
英語環境にいるのに、日本語で学ぶ意味
香港で働いている方に「日本語で学ぶ」と言うと、意外に思われることがあります。英語で仕事をしているのだから、英語の教材でいいのではないか、と。
しかし実務で使う英語と、CFA®︎のカリキュラムを英語で初見から理解する作業は別物です。限られた時間で範囲を一周するとき、概念の理解を日本語で先に済ませ、英語は用語と問題文に集中する——この分担のほうが速い。
実際に、英語が得意ではないところからLevel 1・Level 2に合格された方が何人もいます。英語力の話はCFA®︎に必要な英語力で詳しく書きました。
FA-Academyの受講生に海外在住の方が多く、学習はすべて電子ベースで完結します。日本語要点集、動画、Discordでの質問対応。時差のある場所でも、香港のように日本と1時間しか違わない場所でも、同じ環境で進められます。どんな方が受講しているかは受講生の属性の記事に書いています。
SFCライセンスについてのよくある質問
どのPaperを受けるかは、自分で選ぶのですか?
自分の職務がどのRegulated Activity(RA)に該当するかで決まります。RAは、所属する認可法人が保有するライセンスと、皆さんが実際に行う業務の組み合わせで決まるため、入社時や異動時にコンプライアンス部門から指定されるのが一般的です。証券のディーリングやアドバイス(Type 1・4)ならPaper 1・7・8、資産運用(Type 9)ならPaper 1・7・12が、代表者(Licensed Representative)の組み合わせになります。
合格したPaperに有効期限はありますか?
ライセンス申請との関係で、期限の考え方があります。Guidelines on Competence では、LRP(香港の規制の枠組みを問うPaper)は申請前3年以内に取得していることが求められ、それより古い場合でも、直近の実務経験や在任状況によってSFCが認めることがあるとされています。詳細は申請時点の原文でご確認ください。
CFA®︎についてのよくある質問
SFCライセンスとCFA®︎は、どちらを先に取るべきですか?
順番は明確です。ライセンスは業務を始めるための前提条件なので、赴任後はまずそちらに集中してください。CFA®︎はキャリアのための投資なので、業務と生活が落ち着いてから着手するのが現実的です。Level 1の学習時間は300〜400時間前後が目安で、赴任から数ヶ月後に始めても駐在期間のうちに十分間に合います。
香港で働きながら、CFA®︎の学習時間は確保できますか?
確保できます。香港に駐在しながらLevel 1に合格した受講生は、小さなお子さんがいて土日はほとんど勉強できない状況の中、平日と休日の早朝・夜、通勤中の隙間時間を積み上げて合格されました。日本語要点集に情報を一元化して持ち歩く方法が効いたと話しています(合格体験談)。
香港では、CFA®︎はどのくらい知られていますか?
CFA Society Hong Kong の会員は5,718名で、世界140以上ある支部の中で最大規模です(2026年6月末時点)。日本の会員数は約2,000名ですから、香港という一都市で日本全体の2倍以上ということになります。求人票に「CFA charterholder preferred」と書かれ、署名に「, CFA」が並ぶ環境では、資格の意味を説明する必要がありません。
まとめ
香港で金融の規制業務に携わるなら、HKSI LEのPaperは避けて通れません。そしてCFA®︎は、香港で働く期間そのものを味方につけられる資格です。周囲に保有者がいて、英語の資料が当たり前に回ってきて、資格の意味を説明しなくていい。この環境は、日本に帰ってからは手に入りません。
まずライセンス、落ち着いたらCFA®︎ Level 1。この順番で考えてみてください。
香港から学ぶ方へ
FA-Academyは日本語でCFA®︎を学べるオンラインの講座です。学習はすべて電子ベースで完結するので、香港はもちろん、どの国からでも同じ環境で進められます。まずは無料のメール講座で、合格までのロードマップを確認してください。
Level 2はこちら、Level 3はこちら。学習プランを直接相談したい方は無料の個別面談をご利用ください。受講料と申込方法は受講案内にまとめています。
出典(いずれも2026年9月時点で確認):SFC「Guidelines on Competence」(2022年1月)、SFC「Guidelines on Continuous Professional Training」(2022年1月)、HKSI Institute「Licensing Examination for Securities and Futures Intermediaries」、CFA Society Hong Kong、CFA Institute。制度・受験料は改定されることがあるため、受験・申請の際は必ず最新の原文をご確認ください。












