【IR転職】IR担当への転職にCFA®︎が効く理由|求められるスキル・経理/広報/経営企画/証券からのルート・未経験の入口

IR(Investor Relations/投資家向け広報)への転職では、CFA®︎(米国証券アナリスト)は「投資家と同じ言語で話せること」の証明として効きます。理由は3つ。①IRの相手である機関投資家・アナリストが企業を見るときの物差し(財務諸表分析・バリュエーション・資本コスト・ポートフォリオ理論)が、CFA®︎のカリキュラムそのものであること、②採用側が最も知りたい「この人は投資家の質問に自分の言葉で答えられるか」という不確実性を、面接の前に下げられること、③海外投資家対応で求められる英語力と、開示・倫理に関する基準を同時に証明できること、です。
そして評価は合格後ではなく学習中から始まります。この記事では、IRという仕事の実像、採用で求められるスキル、経理・広報・経営企画・証券会社・銀行からのルート、未経験からの入り方、そして実際にIRで働きながら合格された方々の声まで、実態に即して整理します。
結論:IR転職でCFA®︎は「投資家と同じ言語」の証明として効く
「IRに転職したいのですが、どんな資格を取るべきですか」というご相談は、FA-Academyの個別面談でも増えているテーマです。答えは明確で、IRへの転職においてCFA®︎は、投資家の側の思考をそのまま身につけられる、最も直接的に効く資格です。
転職エージェントのサイトを見ると、IR転職に役立つ資格として「IRプランナー(CIRP)」「TOEIC」「財務報告実務検定」「MBA」「公認会計士」などが並んでいます。どれも間違いではありません。ただ、そこには抜けている視点があります。IRの仕事とは、投資家に「この会社は投資に値する」と納得してもらう仕事であり、そのためには投資家がどのように企業を分析し、どのように株価を評価し、何を聞きたいのかを、投資家の側の論理で理解している必要がある、という点です。
CFA®︎の試験範囲は、財務諸表分析、株式のバリュエーション(DCF・マルチプル)、資本コスト、コーポレートファイナンス、ESGとコーポレートガバナンス、ポートフォリオ理論まで、機関投資家が企業を評価するプロセスをそのまま体系化したものです。しかも試験はすべて英語で行われます。つまり、CFA®︎を学ぶことは、IRの相手である投資家の「頭の中」を学ぶことと同じです。
しかも、この評価は合格を待たずに始まります。「CFA®︎ Level 1 学習中」と職務経歴書に書くだけで、面接では「なぜIRなのか」「投資家をどう理解しているか」という問いに、具体的な学習内容で答えられるようになります。IRへの転職を考えている方にとって、CFA®︎の学習開始は転職活動の準備そのものです。
CFA®︎の資格そのものについてはCFA®︎とは?資格の意味・価値とCFA®︎試験の受験資格・試験概要・費用・勉強法まで完全ガイドをご覧ください。転職全般でのCFA®︎の効き方はCFA®︎は転職に有利?求人の実態・年収・活かせる職種で解説しています。
IRとはどんな仕事か:投資家と経営の「通訳」
IRの実像を正確に押さえておくことが、転職活動でもCFA®︎の活かし方でも土台になります。
IRの主な業務
IR(Investor Relations)は、上場企業が株主・機関投資家・証券アナリストに対して、経営状況や戦略を伝え、適正な企業価値の評価を得るための活動です。具体的な業務は、決算短信や決算説明資料・統合報告書の作成、決算説明会の運営、機関投資家・アナリストとの個別面談(1on1)、海外投資家向けのロードショー、株主総会の準備、株主構成の分析、そして投資家から集めた声を経営陣にフィードバックすること、まで多岐にわたります。
大切なのは、IRが「会社の情報を発信する広報」に留まらない点です。投資家の質問に、財務と戦略の両面から自分の言葉で答え、投資家の見方を経営に持ち帰る。この双方向の通訳がIRの本質であり、ここに金融の専門知識が求められる理由があります。
IRの重要性が高まっている背景
IR担当への需要はここ数年で明確に高まっています。背景のひとつは、2023年3月に東京証券取引所が上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現」を要請したことです。PBR(株価純資産倍率)や資本コスト、株主還元についての説明責任が経営課題になり、それを投資家に語れる人材が必要になりました。
もうひとつは、海外投資家の存在感です。日本株の売買の大きな部分を海外投資家が占め、多くの上場企業で株主構成の上位に海外の機関投資家が並びます。英語での決算説明・1on1・エンゲージメント対応ができるIR担当は、企業規模を問わず求められています。加えて、ESG開示やコーポレートガバナンス・コードへの対応、アクティビスト(物言う株主)への対応も、IRの守備範囲を広げています。
こうした変化の結果、IRは「経理や広報の兼務」から「専門職」へと位置づけが変わりつつあり、専任のIR担当者やIR責任者を外部から採用する上場企業が増えています。これがIR転職市場が活況である理由です。
IR担当が働く場所
IRのキャリアは上場企業の社内IRだけではありません。上場企業のIR部門(経営企画・財務・広報の中に置かれることも多い)、IPOを目指すスタートアップのIR/ファイナンス担当、IRコンサルティング会社や証券会社・信託銀行のIR支援部門、戦略コンサルティングファームのIR関連プロジェクト、そして機関投資家の側から企業と対話するスチュワードシップ担当まで、投資家と企業の間に立つ仕事は幅広くあります。どの立場でも共通して求められるのが、投資家の論理を理解していることです。
IR転職で求められるスキルと、CFA®︎がカバーする範囲
IR転職の求人を読み解くと、求められるスキルは大きく5つに整理できます。それぞれについて、CFA®︎がどこをカバーするかを見ていきます。
①財務・会計の知識
決算数値を読み、業績の変動要因を説明し、投資家からの「この費用の増加は一過性か」「この事業のマージンはなぜ改善したのか」という質問に答える力です。CFA®︎ Level 1・Level 2の財務諸表分析(FSA)は、IFRSと米国会計基準の両方を扱い、収益認識・リース・年金・企業結合・外貨換算といった論点を「投資家がどう読み解くか」の視点で学びます。作成する側(経理)ではなく、読む側(投資家)の会計を学べる点が、IRにとって本質的です。
②バリュエーションと資本コストの理解
「御社の株価はなぜこの水準なのか」「資本コストをどう認識しているか」「PBR1倍割れをどう改善するのか」といった質問は、今のIR面談では日常的です。CFA®︎では、DCF法・配当割引モデル・マルチプル法によるバリュエーション、WACC(加重平均資本コスト)の算定、EVA・残余利益といった価値創造の考え方を体系的に学びます。東証の要請以降、この領域を投資家と同じ精度で語れるIR担当は、企業側で明確に不足しています。
③投資家の思考プロセスの理解
機関投資家がどのように銘柄を選び、ポートフォリオを組み、リスクを管理しているかを理解していると、「この投資家は何を聞きたいのか」「どの情報を出せば評価につながるのか」が読めるようになります。CFA®︎のポートフォリオ・マネジメント、株式投資、オルタナティブ投資の科目は、まさに投資家側の意思決定を学ぶ内容です。これは、IRプランナーや会計系資格では得にくい、CFA®︎固有の強みです。
④英語でのコミュニケーション
海外投資家との1on1、英文の決算資料・統合報告書、海外ロードショーでは英語が必要です。求人ではTOEICのスコアが目安として書かれることも多いですが、実務で求められるのは「金融の内容を英語で理解し、説明できること」です。CFA®︎はすべて英語で出題されるため、合格していれば「金融の専門内容を英語で処理できる」ことの証明になります。英語力の目安と学習法はCFA®︎に必要な英語力・TOEICの目安で詳しく解説しています。
⑤開示と倫理の基準
IRには、インサイダー情報の管理、フェア・ディスクロージャー・ルール(公平開示)、選択的開示の回避といった規律が求められます。CFA®︎の倫理・職業行為基準は全レベルで最重要科目であり、重要情報の取り扱いや市場の公正性に関する考え方を、投資家側の視点から徹底的に学びます。「投資家は何を受け取ってはいけないのか」を知っていることは、IR担当としての信頼に直結します。
このように、IR転職で求められる5つのスキルのうち、①〜③と⑤の4つはCFA®︎のカリキュラムが直接カバーし、④は試験そのものが証明になります。複数の資格や経験でバラバラに示すしかなかったものを、1つの資格でまとめて証明できる。これがIR転職でCFA®︎が効く構造です。
IR転職でCFA®︎が効く3つの理由
理由1:投資家と同じ「物差し」を持っていることが伝わる
IR担当は、投資家から見れば「企業側の窓口」です。窓口の担当者が投資家の物差し(資本コスト・キャッシュフロー・リスク調整後リターン)で会社を語れるかどうかで、面談の質は大きく変わります。CFA®︎の学習内容は、この物差しそのものです。「CFA®︎を勉強しています」と伝えるだけで、投資家側もアナリストも「話が通じる相手だ」と受け止めます。IRの採用担当者(多くは経営企画・財務の責任者)も、同じ理由でCFA®︎を評価します。
理由2:採用側の「不確実性」を面接の前に下げられる
IR転職では、経理・広報・営業など隣接領域からの応募が多く、採用側は「本当に投資家対応ができるのか」を見極めきれないことが多いです。職務経歴書に「CFA®︎ Level 1 合格」「Level 2 学習中」と書いてあれば、財務諸表分析・バリュエーション・倫理の基礎があることが面接前に伝わり、書類選考の通過率と面接の入りが変わります。IR未経験の方にとっては、この「不確実性を下げる材料」の価値が特に大きくなります。
理由3:グローバルに通用する資格である
CFA®︎は世界160以上の市場に約20万人の資格保有者がいる国際資格で、海外の機関投資家やアナリストの多くがCFA®︎ホルダーです。海外投資家との面談で「私もCFA®︎候補生です」と伝えられることは、関係構築の入口として想像以上に効きます。外資系企業の日本法人や、海外株主比率の高い企業のIRでは、この点が直接的な評価につながります。海外の資格者数や認知度については海外駐在中のCFA®︎受験と学習法でも整理しています。
IRの求人票でCFA®︎はどう扱われているか
実際のIR求人でCFA®︎がどう書かれているかを整理しておきます。パターンは大きく3つです。
1つ目は歓迎要件として書かれるケースで、IR求人で最も多い形です。「証券アナリスト(CMA)、CFA®︎、公認会計士、MBAのいずれかをお持ちの方歓迎」といった書き方で、必須ではないものの、書類選考の通過率と面接での評価に確実に影響します。大手上場企業や外資系企業の日本法人のIR担当で見られる書き方です。
2つ目は必須要件に準ずるケースで、IR責任者(IRヘッド)や、海外投資家対応を主務とするポジション、機関投資家側のスチュワードシップ担当などに見られます。「証券アナリストまたはCFA®︎の資格、もしくは同等の投資分析の知識」という書き方が多く、Level 2以上の合格者や学習中の方も対象になることがあります。
3つ目は要件に書かれていないが、面接で効くケースです。中堅・中小の上場企業やIPO準備企業のIR求人には資格要件が書かれていないことも多いのですが、面接では必ず「投資家の質問にどう答えるか」「当社の株価をどう見るか」が問われます。ここでCFA®︎の学習内容が、そのまま答えの土台になります。
いずれのパターンでも共通しているのは、合格していなくても「学習中」であることを伝える価値があるという点です。IRは専門職として確立しつつある領域で、学習中であること自体が、この仕事への本気度を示すシグナルになります。転職情報の集め方はCFA受験者・CFAホルダー向けの求人情報・転職情報フォロー方法にまとめています。
出身職種別:IRへの転職ルートとCFA®︎の使い方
IRへの転職を考える方は、出身がさまざまです。それぞれに現実的な入口があり、CFA®︎の使い方も少しずつ違います。共通しているのは、どの職種から来ても「投資家側の視点」だけは後から補う必要があり、そこをCFA®︎が埋める、という構造です。
経理・財務から
IR転職で最も多いルートです。決算数値を作る側にいた経験は、数値の背景を説明する場面で大きな強みになります。一方で、投資家は「数値がどう作られたか」ではなく「数値が今後どうなるか、それは株価にどう織り込まれているか」を聞いてきます。CFA®︎のバリュエーションとポートフォリオ理論を学ぶことで、経理の知識が「投資家の質問に答えられる知識」に変わります。経理出身のIR担当者がCFA®︎を取ると、IR責任者、そしてCFOへの道が現実的になります。
広報から
社外への発信、メディア対応、資料作成の経験はIRでそのまま活きます。広報からIRへ移るときに問われるのは、財務と資本市場の知識です。CFA®︎ Level 1の財務諸表分析・株式・企業財務の学習は、広報担当者が「決算を語れる」ようになるための最短ルートであり、学習中であること自体が、広報からIRへの異動・転職の説得材料になります。
経営企画から
中期経営計画の策定、事業ポートフォリオの検討、M&Aの経験は、IRで投資家に戦略を語るときの核になります。経営企画出身者にとってCFA®︎は、自社の戦略を「投資家がどう評価するか」という外部の物差しで捉え直す道具です。資本コストを意識した経営が求められる今、経営企画とIRを行き来できる人材は、企業側で最も求められている層のひとつです。
証券会社・運用会社(セルサイド/バイサイド)から
証券アナリスト、機関投資家営業、運用会社のアナリストやファンドマネージャーからIRへ転じるルートは、「投資家側の視点」を最初から持っている点で、IR転職において最も評価されやすい経歴です。ここでのCFA®︎は「投資家側での専門性」を客観的に示す証明であり、企業側に移ったあとも投資家コミュニティとの接点を維持する共通言語になります。運用会社側のキャリアについてはアセマネ転職にCFA®︎が効く理由で詳しく解説しています。
銀行・保険・信託から
法人営業で企業の財務を見てきた経験、信託銀行の証券代行部門で株主総会や株主構成の実務に触れた経験、保険会社の資産運用部門での経験は、いずれもIRの実務に接続します。銀行・保険・信託からIRへ移る際に足りないと見なされやすいのが、株式市場と投資家の論理です。CFA®︎はこれを体系的に補い、「金融機関出身で投資家の論理も分かる」というポジションを作ります。
技術職・営業職・事業部門から
自社の事業や技術を深く理解している方が社内異動でIRを担うケースは、メーカーを中心に少なくありません。事業の中身を投資家に説明できることは大きな強みであり、そこに財務と資本市場の知識が加わると、投資家から最も信頼されるIR担当になります。この記事の後半でご紹介する合格者の方も、技術職からIRへ異動し、CMAとCFA®︎で知識を補われた例です。
未経験からIRに転職するには
IR未経験からの転職は、転職エージェントのサイトでは「厳しい」と書かれることが多いですが、入口は確かに存在します。ポイントは、いきなり「IR専任」を狙うのではなく、IRに接続する経験と知識を先に積むことです。
20代:ポテンシャル採用と社内異動
20代であれば、経理・財務・広報・経営企画のいずれかで実務経験を積みつつ、IRを兼務する部署や、IR部門のアシスタントポジションから入るルートが現実的です。この段階でCFA®︎ Level 1に合格していると、「資本市場の基礎を自分で学んだ人」として、社内異動でも転職でも頭ひとつ抜けます。
30代以降:隣接職種の経験を軸に
30代以降は、これまでの経理・広報・経営企画・営業・金融機関での経験を軸に、「その経験を投資家にどう伝えるか」という切り口でIRに近づくのが現実的です。IPO準備企業では、IRと財務・経営企画を兼ねるポジションが多く、事業会社経験と資本市場の知識の両方を持つ人材が求められています。ここでCFA®︎は、「事業を知っていて、かつ投資家の論理も分かる」ことの証明になります。年齢が上がるほど、実務経験とCFA®︎の掛け算は大きくなります。始めるのが遅いということはありません。
IR支援会社・証券会社のIR部門という入口
IRコンサルティング会社、証券会社や信託銀行のIR支援部門は、複数の上場企業のIRを支援する立場で、未経験者が体系的にIR実務を学べる入口のひとつです。ここで経験を積んでから事業会社のIRに移るルートも一般的です。支援する側では、企業に対して「投資家はこう見ている」を説明する必要があり、CFA®︎の学習内容が説得力の源泉になります。
IRで働きながらCFA®︎に合格された方々の声
FA-Academyの受講生には、IRで働きながらCFA®︎に合格された方が多くいらっしゃいます。実際の対談から、IR担当の方がCFA®︎をどう捉えているかを3つご紹介します。
「投資家と同じ目線で話せているだろうか、と考えるようになった」(メーカーIR担当・技術職からの異動)
メーカーの技術職からIR部門へ異動し、金融・財務・会計の知識をゼロから学び始めたKotaroさんは、まず証券アナリスト(CMA)を取得し、その後CFA®︎に挑戦されました。きっかけは、投資家との面談を重ねる中で「相手が本当に知りたいことを理解し、同じ目線で適切にコミュニケーションができているだろうか」と考えるようになったこと。一度はLevel 1で不合格を経験しながらも、子育てと仕事を両立して合格されています。
Kotaroさんの合格者対談(メーカーIR担当/技術職から異動/CMA保有)
「IR担当者としてのスキルアップと差別化、そして海外投資家と接するために」(メーカーIR・証券アナリスト保有)
複数の会社でIR業務に従事されてきたYYさんは、CFA®︎を目指した理由を「IR担当者としてのスキルアップ、あるいは差別化」と「特に海外の投資家と接していきたい」という2点で語られています。日本の証券アナリストを取得済みの方が、さらに理解を深めるためにCFA®︎を選ばれた例です。インプット2ヶ月・アウトプット3ヶ月の計5ヶ月で、通勤時間や昼休みを活用してLevel 1に合格されました。
YYさんの合格者対談(メーカーIR/証券アナリスト保有/生成AI活用)
「日本の証券アナリストでもよかったが、より箔が付くCFA®︎を選んだ」(事業会社IR・広報/社会人5年目)
事業会社で広報IR関連の業務をされているMidoriさんは、上司の勧めでUS-CPAを学習したあと、「英語で勉強できる関連資格」を探す中でCFA®︎に出会いました。「日本の証券アナリストでもよかったが、より箔が付くという意味でCFA®︎の方が魅力的に感じた」という理由で受験を決め、Level 2は一度の不合格を経て、日本語教材でのインプットに切り替えて合格されています。
Midoriさんの合格者対談(事業会社IR・広報/US-CPA・証券アナリスト保有)
このほか、戦略コンサルティングファームでIRを担当されているEikoさんの対談もあります。合格者の皆さんに共通するのは、「投資家と対等に話すために、投資家の側の知識体系を学びたい」という動機です。対談動画はYouTube(@cfa_tips)でもご覧いただけます。
IR転職と年収の考え方
IR職の年収は、企業規模・上場市場・海外投資家比率・ポジション(担当者かIR責任者か)によって幅があります。一般的な傾向として、IRは経理や広報の一般職よりも高い水準で設定されることが多く、IR責任者クラスは管理職水準、上場企業のCFO候補として処遇されることもあります。外資系企業の日本法人や、海外株主比率の高い企業では、英語での投資家対応ができることが年収に直接反映されます。
CFA®︎の保有が年収を自動的に引き上げるわけではありませんが、「IR責任者」「海外投資家対応」「CFO候補」といった高い処遇のポジションに応募できる条件を満たしやすくなる、という形で効きます。年収の考え方の詳細はCFA®︎と年収の関係で解説しています。
証券アナリスト(CMA)・IRプランナーとCFA®︎の違い
IR転職を考える方がよく比較するのが、日本の証券アナリスト(CMA)、IRプランナー(CIRP)、そしてCFA®︎です。それぞれ効き方が違います。
| 資格 | 強み | IR転職での効き方 |
|---|---|---|
| IRプランナー(CIRP) | IRの制度・実務(開示・株主総会・IR活動の設計)を日本語で体系的に学べる | IR実務の基礎知識の証明。投資家側の分析力の証明にはならない |
| 証券アナリスト(CMA) | 日本語で受験でき、財務分析・証券分析の基礎を学べる。日系企業での認知度が高い | 日系上場企業のIR求人で歓迎要件として広く挙げられる。海外投資家対応の証明としては弱い |
| CFA®︎ | 投資家側の分析・バリュエーション・倫理を英語で学ぶ国際資格。海外投資家との共通言語 | 財務分析・投資家の思考・英語・倫理をまとめて証明。海外投資家対応・IR責任者・外資系で最も効く |
実際には、CMAを取得したあとにCFA®︎に進む方(先ほどご紹介したKotaroさん・YYさんもこのルートです)や、CFA®︎ Level 1と並行してIRプランナーで実務知識を補う方もいます。どれか1つに絞る必要はありませんが、「投資家と同じ目線で話す」という力を最も直接的に証明できるのはCFA®︎です。CMAとCFA®︎の詳しい比較は証券アナリスト(CMA)とCFA®︎はどちらを取るべきか、US-CPAとの比較はUS-CPAとCFA®︎の違いをご覧ください。
IR転職に向けたCFA®︎学習の始め方
IR転職を見据えてCFA®︎を始める場合、現実的な進め方は次の通りです。
まずLevel 1の合格を目標にします。Level 1は財務諸表分析・株式・債券・企業財務・倫理・ポートフォリオ理論の基礎を網羅しており、IRで求められる知識の骨格はここで身につきます。学習時間の目安は300〜400時間前後、合格率は40〜50%前後です。働きながらであれば、6ヶ月以上の学習期間を確保するのが現実的です。
次に、職務経歴書と面接での伝え方を準備します。「CFA®︎ Level 1 学習中(2027年5月受験予定)」と記載し、面接では「投資家がどのように企業を評価するかを体系的に学んでいる」「バリュエーションと資本コストの考え方を自分の言葉で説明できる」といった具体的な内容に落とし込みます。学習中であること自体が、IRへの本気度の証明になります。
Level 2以降は、IRに転職したあと、または内定後に進めるのが一般的です。Level 2の財務諸表分析と株式バリュエーションは、IRの実務で投資家の質問に答える力を直接的に高めます。試験制度と日程はCFA®︎試験はいつ・年何回・申込はいつまで、費用はCFA®︎合格までにかかる費用、独学の進め方はCFA®︎は独学で合格できるかにまとめています。
なお、IRの実務は決算期に業務が集中するため、学習計画は決算のピーク(四半期ごと、特に本決算の4〜5月)を避けて配分する必要があります。この点は、働きながら合格された受講生の学習計画が参考になります。
よくある質問
Q1. IR転職にCFA®︎は必須ですか?
必須ではありません。IRの求人の多くはCFA®︎や証券アナリスト(CMA)を歓迎要件として挙げており、必須に近い扱いになるのはIR責任者や海外投資家対応を主務とするポジションなど一部です。ただし、IR未経験の方や隣接職種からの転職では、CFA®︎は「投資家側の知識体系を持っている」ことを示す最も分かりやすい材料であり、書類選考と面接の両方で有利に働きます。
Q2. CFA®︎ Level 1に合格しただけでもIR転職に効きますか?
効きます。Level 1の合格は、財務諸表分析・株式のバリュエーション・企業財務・倫理といった、投資家と対話するための基礎があることの証明になります。特に経理・広報・経営企画からIRへ移る場合や、20代のポテンシャル採用では、Level 1合格や学習中であること自体が本気度のシグナルとして評価されます。
Q3. IR未経験でも転職できますか?
できます。いきなりIR専任を狙うのではなく、経理・財務・広報・経営企画などIRに接続する経験を積みながら、IR兼務の部署やIR支援会社・証券会社のIR部門から入るルートが現実的です。その過程でCFA®︎を学習していれば、「投資家の論理を自分で学んだ人」として社内異動でも転職でも評価されます。
Q4. IR転職には証券アナリスト(CMA)・IRプランナー・CFA®︎のどれを取るべきですか?
効き方が違います。IRプランナーはIRの制度・実務の基礎知識、CMAは日本語で学べる財務分析・証券分析の基礎、CFA®︎は投資家側の分析・バリュエーション・倫理を英語で学ぶ国際資格です。「投資家と同じ目線で話せること」を最も直接的に証明でき、海外投資家対応やIR責任者、外資系で最も効くのはCFA®︎です。CMA取得後にCFA®︎へ進む方も多くいます。
Q5. IR担当に英語力はどの程度必要ですか?
海外投資家との面談や英文開示資料の作成があるため、金融の内容を英語で理解し、説明できる力が求められます。求人ではTOEICのスコアが目安として書かれることもありますが、実務で問われるのは「金融の専門内容を英語で処理できること」です。CFA®︎はすべて英語で出題されるため、合格していればその証明になります。英語が得意でなくても、日本語の教材で内容を理解してから英語に慣れる方法で合格されている方が多くいます。
Q6. IRの仕事にCFA®︎の学習内容はどう活きますか?
財務諸表分析は決算数値の背景説明に、バリュエーションと資本コストは「株価をどう見るか」「PBRをどう改善するか」という投資家の質問への回答に、ポートフォリオ理論は「この投資家は何を聞きたいのか」の理解に、倫理・職業行為基準は公平開示やインサイダー情報の管理に、それぞれ直接活きます。IRの相手である投資家が学んでいる知識体系そのものだからです。
Q7. 経理・広報・経営企画からIRに移るとき、CFA®︎はどう役立ちますか?
経理出身の方は「数値を作る側」から「数値が株価にどう織り込まれるかを語る側」へ、広報出身の方は「発信」に「財務と資本市場の知識」を加える形で、経営企画出身の方は自社の戦略を「投資家がどう評価するか」という外部の物差しで捉え直す形で、それぞれCFA®︎が足りない部分を埋めます。どの職種から来ても後から補う必要があるのが「投資家側の視点」であり、そこをCFA®︎が担います。
Q8. IRの決算期と両立しながらCFA®︎の学習はできますか?
できます。IRは四半期ごと、特に本決算の4〜5月に業務が集中するため、学習計画はそのピークを避けて配分するのが現実的です。実際に、メーカーや事業会社のIRで働きながら、通勤時間や昼休みを活用して5〜6ヶ月でLevel 1に合格された方や、子育てと両立して合格された方がいます。学習時間の目安は300〜400時間前後で、6ヶ月以上の期間を確保することをおすすめします。
まとめ
IR(投資家向け広報)への転職において、CFA®︎は「投資家と同じ言語で話せること」の証明として効きます。IRの相手である機関投資家・アナリストが企業を見る物差し(財務諸表分析・バリュエーション・資本コスト・ポートフォリオ理論・倫理)は、CFA®︎のカリキュラムそのものだからです。採用側が最も知りたい「投資家の質問に自分の言葉で答えられるか」という不確実性を面接の前に下げ、海外投資家対応に必要な英語力も同時に証明できます。
IRには経理・広報・経営企画・証券会社・銀行・保険・技術職と、どこからでも現実的な入口があり、足りない「投資家側の視点」をCFA®︎が埋めます。そして評価は合格後ではなく学習中から始まります。IRへの転職を考えているなら、CFA®︎ Level 1の学習開始が、そのまま転職活動の第一歩になります。
CFA®︎についてのその他の疑問はCFAよくある質問100選にまとめています。
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