Learning Module 2「Active Equity Investing: Strategies(アクティブ株式投資:戦略)」は、ファンダメンタル運用とクオンツ運用の比較、ボトムアップ・トップダウン・ファクター・アクティビストの各戦略、統計的裁定やマーケット・マイクロストラクチャーにもとづく戦略、ファンダメンタル戦略とクオンツ戦略の構築プロセス、株式投資スタイルの分類を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM2のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には9つのLOSがあります。

  1. LOS 1:アクティブ運用におけるファンダメンタル・アプローチとクオンツ・アプローチを比較するcompare fundamental and quantitative approaches to active management
  2. LOS 2:ボトムアップのアクティブ戦略を、その根拠と関連するプロセスを含めて分析するanalyze bottom-up active strategies, including their rationale and associated processes
  3. LOS 3:トップダウンのアクティブ戦略を、その根拠と関連するプロセスを含めて分析するanalyze top-down active strategies, including their rationale and associated processes
  4. LOS 4:ファクター・ベースのアクティブ戦略を、その根拠と関連するプロセスを含めて分析するanalyze factor-based active strategies, including their rationale and associated processes
  5. LOS 5:アクティビスト戦略を、その根拠と関連するプロセスを含めて分析するanalyze activist strategies, including their rationale and associated processes
  6. LOS 6:統計的裁定とマーケット・マイクロストラクチャーにもとづくアクティブ戦略を説明するdescribe active strategies based on statistical arbitrage and market microstructure
  7. LOS 7:ファンダメンタルなアクティブ投資戦略がどのように構築されるかを説明するdescribe how fundamental active investment strategies are created
  8. LOS 8:クオンツのアクティブ投資戦略がどのように構築されるかを説明するdescribe how quantitative active investment strategies are created
  9. LOS 9:株式投資スタイルの分類を論じるdiscuss equity investment style classifications

LM2のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • アクティブ株式運用は、人の判断を重視するファンダメンタル(裁量型)と、ルールにもとづくモデルを重視するクオンツ(システマティック型)に大別される
  • 両者の違いは、意思決定(主観か客観か)、予測の対象(個別銘柄のリターンかファクターのリターンか)、情報(リサーチかデータか)、分析の焦点(深さか広さか)、データへの向き合い方(将来志向か過去志向か)、リスクへのアプローチ(判断か最適化か)
  • 主なアクティブ戦略は、ボトムアップ、トップダウン、ファクター・ベース、アクティビスト
  • ボトムアップは企業・業界分析から本源的価値を評価し、バリュー型とグロース型に分かれる。トップダウンはマクロ環境・人口動態・政策から判断し、国・セクター・スタイルの配分やテーマ投資に用いる
  • アクティビストは上場企業の相当数の株式を取得し、経営・戦略・資本構成の変更を働きかけて株価の上昇を狙う
  • 統計的裁定はペア・トレードなど統計・テクニカル分析で価格の歪みを狙い、イベント・ドリブン戦略はM&A・決算・破産・自社株買い・スピンオフなどの企業イベントを狙う
  • ファンダメンタル運用の落とし穴は行動バイアス、バリュー・トラップ、グロース・トラップ。クオンツ運用の落とし穴は先読みバイアス、生存者バイアス、過剰適合、データ・マイニング、非現実的な回転率・取引コストの想定、空売りの制約
  • スタイル分析には、保有銘柄のスタイル・スコアを集計する保有銘柄ベースと、スタイル指数とのリターン比較によるリターン・ベースの2つがある

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:ファンダメンタル運用とクオンツ運用の比較

ファンダメンタル運用は企業を深く調べて人の判断で銘柄を選び、クオンツ運用は多数の銘柄にルールとモデルを適用して判断します。前者は深さと将来志向、後者は広さと過去データにもとづく検証が特徴です。

  • 意思決定:主観的(ファンダメンタル)か客観的(クオンツ)か
  • 予測対象:個別銘柄のリターンか、ファクターのリターンか
  • 情報:企業リサーチか、データか
  • 分析の焦点:少数銘柄の深さか、多数銘柄の広さか
  • データへの姿勢:将来志向か、過去データ志向か
  • リスク管理:運用者の判断か、最適化手法か

LOS 2:ボトムアップ戦略

ボトムアップ戦略は企業・業界の分析から出発し、本源的価値と市場価格を比べて割安・割高を判断します。ビジネスモデルやブランド、競争優位、経営陣とガバナンスに注目し、バリュー型グロース型に分かれます。

  • 注目点:ビジネスモデル・ブランド、競争優位、経営陣・コーポレート・ガバナンス
  • バリュー型:割安銘柄(相対バリュー、逆張り、高クオリティ・バリュー、インカム重視、ディープ・バリュー、リストラクチャリング・ディストレスト、特殊状況など)
  • グロース型:市場平均を上回る利益成長を、妥当な価格で買う(GARPなど)
  • 価値評価:DCF、配当割引、倍率などを用いる
  • バリュー・トラップ:割安に見えても価値が改善しない

LOS 3:トップダウン戦略

トップダウン戦略はマクロ経済環境、人口動態、政府の政策などから出発し、その影響を受ける国・セクター・スタイルへの配分を決めます。実行には、個別株のほか、ETFや先物などを使ったオーバーレイも活用されます。

  • 国・地域の配分
  • セクター・業種のローテーション
  • 株式スタイルのローテーション(バリューとグロース、大型と小型など)
  • ボラティリティにもとづく戦略
  • テーマ投資(技術革新、人口動態の変化など)

LOS 4:ファクター・ベースのアクティブ戦略

ファクター・ベース戦略は、株価を動かす有意なファクターを特定し、そのファクターに正の偏りを持つポートフォリオを作る戦略です。ファクターはバリュー、成長、モメンタムなどのファンダメンタルな特性のほか、非伝統的なデータからも作られます。

  • ヘッジ・ポートフォリオ法:ファクター上位をロング、下位をショートしてファクターのリターンを計測
  • ファクターの例:バリュー、規模、モメンタム、クオリティ、低ボラティリティ
  • 非伝統的データ:テキスト、衛星画像、ウェブ・データなど
  • ファクター・タイミング:局面に応じてファクターの比重を変える
  • ファクターの混雑(クラウディング)によるリターン低下と急落のリスク

LOS 5:アクティビスト戦略

アクティビスト投資家は上場企業の相当数の株式を取得し、経営・戦略・資本構成の変更を働きかけることで株価を高め、利益を得ようとします。働きかけの手段は、経営陣との対話から公開書簡、委任状争奪戦、取締役の選任提案まで幅広くあります。

  • 狙いやすい企業:割安、低成長、ガバナンスの弱さ、余剰資金
  • 要求の例:株主還元の拡大、事業売却・スピンオフ、経営陣・取締役の交代、M&Aへの反対
  • 手段:非公開の対話、公開書簡、株主提案、委任状争奪戦、メディア・キャンペーン
  • 投資期間は比較的長く、ポートフォリオは集中しやすい
  • 他の株主のただ乗りが生じる一方、企業価値向上の効果は議論が分かれる

LOS 6:統計的裁定とマーケット・マイクロストラクチャーにもとづく戦略

統計的裁定は、統計・テクニカル分析で価格の一時的な歪みを見つけ、平均回帰を狙う戦略で、ペア・トレードが代表例です。マーケット・マイクロストラクチャーにもとづく戦略は、注文の流れや需給の短期的な不均衡から生じる歪みを、高頻度の取引で捉えます。

  • ペア・トレード:過去に連動してきた2銘柄の価格差が広がったら、割安側を買い割高側を売る
  • リスク:価格関係の構造変化、平均回帰しない
  • マイクロストラクチャー:短期的な流動性の不均衡を利用、非常に短い保有期間
  • 高速な執行と低い取引コストが前提
  • イベント・ドリブン:M&A、決算、破産、自社株買い、特別配当、スピンオフなどのイベントを狙う

LOS 7:ファンダメンタル戦略の構築プロセス

ファンダメンタル運用は、投資ユニバースの定義 → 事前スクリーニング → 業界と事業の理解 → 業績予想 → 目標株価への変換 → ポートフォリオ構築 → 売買規律にもとづくリバランスという流れで行われます。落とし穴は行動バイアス、バリュー・トラップ、グロース・トラップです。

  • ユニバースは運用の目的・ベンチマーク・運用者の専門性に合わせる
  • 業績予想を目標株価に変換し、期待リターンを比較
  • 売買規律:目標株価到達、投資根拠の崩れ、より良い機会などで売却
  • 行動バイアス:確証バイアス、コントロールの錯覚、利用可能性バイアス、損失回避、過信、後悔回避
  • グロース・トラップ:高い成長期待が実現せず株価が下落

LOS 8:クオンツ戦略の構築プロセス

クオンツ運用は、投資仮説の定義 → データの取得・クリーニング・加工 → バックテスト → 戦略の評価 → リスク・モデルと取引コスト・モデルを使った効率的なポートフォリオ構築という流れで行われます。データや検証の設計を誤ると、実際には再現できない成績を見込んでしまいます。

  • バックテスト:過去データで戦略の有効性を検証(情報係数などで評価)
  • 先読みバイアス:その時点で入手できなかった情報を使う
  • 生存者バイアス:上場廃止などで消えた銘柄を除外してしまう
  • 過剰適合(オーバーフィッティング)とデータ・マイニング
  • 非現実的な回転率・取引コストの想定、空売りの制約
  • クオンツ運用の混雑(クラウディング)

LOS 9:株式投資スタイルの分類

投資スタイルは、銘柄ユニバースを似た特性を持つ2〜3のグループに分けて分類します。代表的な特性はバリュー、規模、モメンタム、ボラティリティ、高配当、利益の質などで、業種・国も使われます。スタイル分析には保有銘柄ベースリターン・ベースの2つがあります。

  • 保有銘柄ベース:各保有銘柄のスタイル・スコアを集計(例:スタイル・ボックス)、正確だがデータ負担が大きい
  • リターン・ベース:ファンドのリターンを複数のスタイル指数に回帰して推定、少ないデータで可能だが過去平均の姿
  • スタイルの分類はデータ・手法の提供者によって異なる
  • 同じスタイル区分の中でも、ファンドの特性にはばらつきがある
  • スタイル・ドリフト(スタイルの変化)の確認に用いる

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