【CFA®︎ L1 FSA LM6】Analysis of Inventories を要点解説|低価法・評価減・インフレとデフレの影響・棚卸資産の開示

Learning Module 6「Analysis of Inventories(棚卸資産の分析)」は、原価と正味実現可能価額のいずれか低い額による棚卸資産の測定とその影響、インフレ・デフレ下で棚卸資産の評価方法の違いが財務諸表と比率に与える影響、棚卸資産の表示・開示と分析上の留意点を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM6のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には3つのLOSがあります。
- LOS 1:原価と正味実現可能価額のいずれか低い額による棚卸資産の測定と、それが財務諸表および財務比率に与える影響を説明するdescribe the measurement of inventory at the lower of cost and net realisable value and its implications for financial statements and ratios
- LOS 2:棚卸資産の原価のインフレおよびデフレが、異なる棚卸資産評価方法を用いる企業の財務諸表と財務比率に与える影響を計算・説明するcalculate and explain how inflation and deflation of inventory costs affect the financial statements and ratios of companies that use different inventory valuation methods
- LOS 3:棚卸資産に関する表示と開示を説明し、企業の棚卸資産の開示やその他の情報源を検討する際にアナリストが考慮すべき論点を説明するdescribe the presentation and disclosures relating to inventories and explain issues that analysts should consider when examining a company’s inventory disclosures and other sources of information
LM6のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 棚卸資産は、商品販売や製造を行う企業の分析で大きな要素であり、販売時の売上原価の測定が利益の算定で重要になる
- 棚卸資産の評価方法の選択は財務諸表と比率に影響するため、期間比較や同業他社との比較では方法の違いを慎重に考慮する必要がある
- IFRSでは棚卸資産を原価と正味実現可能価額(NRV)のいずれか低い額で測定する。NRVは通常の事業過程における見積売価から販売に必要な見積費用を差し引いたもの
- US GAAPでは、評価方法に応じて原価と市場価格のいずれか低い額、または原価とNRVのいずれか低い額で測定する。市場価格は再調達原価で、NRVが上限、NRVから通常の利益を差し引いた額が下限
- 過去の評価減の戻入れはIFRSでは認められるが、US GAAPでは認められない
- 原材料・仕掛品・製品といった区分ごとの帳簿価額の変化は、将来の売上や利益のシグナルとなり得る。経営者による説明、業界ニュース、業界の経済データも参考になる
- 棚卸資産回転率、棚卸資産回転日数、売上総利益率は、棚卸資産管理の評価に役立つ
- 注記では、測定に用いた会計方針、見積りに関する主な不確実性、棚卸資産の帳簿価額と原価の内訳が開示される
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:原価とNRVの低い方による測定と評価減
IFRSでは棚卸資産を原価と正味実現可能価額(NRV)のいずれか低い額で測定し、NRVが原価を下回れば評価減を行います。US GAAPも原則は同じですが、LIFOと売価還元法では原価と市場価格の低い方を用い、評価減の戻入れは認められません。
- NRV = 見積売価 − 完成・販売に必要な見積費用
- IFRS:評価減の戻入れ可(当初の評価減の額が上限)、戻入れは売上原価の減少として認識
- US GAAP:戻入れ不可
- US GAAP(LIFO・売価還元法):市場価格=再調達原価、上限NRV、下限NRV−通常の利益
- 評価減の影響:棚卸資産↓、売上原価↑、利益・利益率↓、自己資本↓
- 比率への影響:棚卸資産回転率↑、流動比率↓、負債資本比率↑
LOS 2:インフレ・デフレと評価方法の違い
物価が上昇(インフレ)している局面では、LIFOは直近の高い原価を売上原価に、FIFOは古い安い原価を売上原価に計上します。このため方法によって利益・棚卸資産・税額・比率が異なり、LIFO準備金を使ってFIFOベースに調整すると比較可能になります。
- インフレ時のLIFO:売上原価↑、売上総利益↓、期末棚卸資産↓、税額↓(税務でもLIFOを使う場合)、営業CF↑
- インフレ時のFIFO:売上原価↓、利益↑、期末棚卸資産は時価に近い
- 加重平均法は両者の中間
- デフレ時は影響が逆転
- LIFO準備金 = FIFO棚卸資産 − LIFO棚卸資産
- LIFO清算(在庫の取り崩し):古い安い原価が売上原価に入り、一時的に利益が膨らむ
LOS 3:棚卸資産の表示・開示と分析上の論点
注記では、会計方針(原価の算定方法)、区分別の帳簿価額、評価減と戻入れの額、費用として認識した額などが開示されます。原材料・仕掛品・製品の構成の変化や比率の動きから、需要の変化や在庫管理の良し悪しを読み取ります。
- 開示:原価算定方式、区分別帳簿価額、評価減・戻入れの額と理由、担保に供した額
- 製品在庫が増え原材料が減る:需要の減速のシグナルの可能性
- 原材料・仕掛品の増加:将来の需要増への備えの可能性
- 棚卸資産回転率 = 売上原価 ÷ 平均棚卸資産、回転日数 = 365 ÷ 回転率
- 回転率が高すぎると品切れ、低すぎると陳腐化・過剰在庫の懸念
- 他の情報源:経営者による説明、業界ニュース、業界の経済データ
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