【CFA®︎ L2 Fixed Income LM3】Valuation and Analysis of Bonds with Embedded Options を要点解説|コーラブル債・プッタブル債・OAS・実効デュレーション・コンベクシティ・転換社債

Learning Module 3「Valuation and Analysis of Bonds with Embedded Options(オプション付き債券の評価と分析)」は、コーラブル債・プッタブル債の価値の構成と金利ツリーによる評価、金利ボラティリティとイールドカーブの影響、オプション調整後スプレッド、実効デュレーションと実効コンベクシティ、キャップ・フロア付き変動利付債、転換社債の評価とリスク・リターン特性を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM3のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には17個のLOSがあります。
- LOS 1:オプションが組み込まれた債券を記述するdescribe fixed-income securities with embedded options
- LOS 2:コーラブル債またはプッタブル債の価値、オプションのない(ストレート)債券の価値、組込オプションの価値の関係を説明するexplain the relationships between the values of a callable or putable bond, the underlying option-free (straight) bond, and the embedded option
- LOS 3:無裁定の枠組みをオプション付き債券の評価にどのように使えるかを記述するdescribe how the arbitrage-free framework can be used to value a bond with embedded options
- LOS 4:金利ボラティリティがコーラブル債またはプッタブル債の価値にどのように影響するかを説明するexplain how interest rate volatility affects the value of a callable or putable bond
- LOS 5:イールドカーブの水準と形状の変化がコーラブル債またはプッタブル債の価値にどのように影響するかを説明するexplain how changes in the level and shape of the yield curve affect the value of a callable or putable bond
- LOS 6:金利ツリーからコーラブル債またはプッタブル債の価値を計算するcalculate the value of a callable or putable bond from an interest rate tree
- LOS 7:オプション調整後スプレッド(OAS)の計算と利用を説明するexplain the calculation and use of option-adjusted spreads
- LOS 8:金利ボラティリティがOASにどのように影響するかを説明するexplain how interest rate volatility affects option-adjusted spreads
- LOS 9:コーラブル債またはプッタブル債の実効デュレーションを計算・解釈するcalculate and interpret effective duration of a callable or putable bond
- LOS 10:コーラブル債、プッタブル債、ストレート債の実効デュレーションを比較するcompare effective durations of callable, putable, and straight bonds
- LOS 11:オプション付き債券の金利感応度を評価するための片側デュレーションとキー・レート・デュレーションの利用を記述するdescribe the use of one-sided durations and key rate durations to evaluate the interest rate sensitivity of bonds with embedded options
- LOS 12:コーラブル債、プッタブル債、ストレート債の実効コンベクシティを比較するcompare effective convexities of callable, putable, and straight bonds
- LOS 13:キャップ付きまたはフロア付き変動利付債の価値を計算するcalculate the value of a capped or floored floating-rate bond
- LOS 14:転換社債の特徴を記述するdescribe defining features of a convertible bond
- LOS 15:転換社債の価値の構成要素を計算・解釈するcalculate and interpret the components of a convertible bond’s value
- LOS 16:無裁定の枠組みにおける転換社債の評価方法を記述するdescribe how a convertible bond is valued in an arbitrage-free framework
- LOS 17:転換社債のリスク・リターン特性を、ストレート債および原資産である普通株のリスク・リターン特性と比較するcompare the risk–return characteristics of a convertible bond with the risk– return characteristics of a straight bond and of the underlying common stock
LM3のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 組込オプションには発行体が持つコール・オプションと投資家が持つプット・オプションがあり、エクステンダブル債や転換社債などもある
- コーラブル債の価値はストレート債からコール・オプションの価値を差し引いたもの、プッタブル債の価値はストレート債にプット・オプションの価値を加えたもの
- オプション付き債券は、キャリブレーションした二項金利ツリーで各ノードの行使判断を反映させて評価する
- 金利ボラティリティが上昇すると、オプションの価値が上がり、コーラブル債の価値は下がり、プッタブル債の価値は上がる
- OASは、ツリーのすべての金利に一定のスプレッドを加えて評価額を市場価格に一致させるスプレッドで、オプションの影響を除いた信用・流動性リスクの対価を示す
- オプション付き債券の金利感応度は実効デュレーションと実効コンベクシティで測り、コーラブル債は低金利で負のコンベクシティを示す
- キャップ付き変動利付債は投資家がキャップを発行体に売った形、フロア付き変動利付債は投資家がフロアを持つ形
- 転換社債の価値はストレート債の価値と転換価値の大きい方を下限とし、株価水準によって債券的にも株式的にも振る舞う
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:オプション付き債券の種類
コーラブル債は発行体が満期前に償還できる債券、プッタブル債は投資家が満期前に売り戻せる債券です。ほかに満期延長できるエクステンダブル債や、株式に転換できる転換社債などがあります。
- コール:発行体の権利(アメリカン、ヨーロピアン、バミューダン)
- プット:投資家の権利
- エクステンダブル債:プッタブル債と同等の構造
- 転換社債:投資家が株式に転換可能
- シンキング・ファンド債などの複雑な構造
LOS 2:オプション付き債券とストレート債・組込オプションの関係
コーラブル債の投資家は発行体にコール・オプションを売っており、プッタブル債の投資家はプット・オプションを買っています。
- コーラブル債 = ストレート債 − コール・オプション
- プッタブル債 = ストレート債 + プット・オプション
- コール・オプションの価値 = ストレート債 − コーラブル債
- コーラブル債の利回りはストレート債より高い
LOS 3:無裁定の枠組みによるオプション付き債券の評価
キャリブレーションした二項金利ツリーを使い、後ろ向き帰納法で各ノードの価値を求めます。各ノードでオプションの行使判断を反映させることで、オプション付き債券の無裁定価値が得られます。
- オプションのない債券に合わせてキャリブレーション
- 各ノードで行使判断を反映
- ボラティリティの仮定が必要
- ストレート債の価値はスポット・レートでも求まる
LOS 4:金利ボラティリティとオプション付き債券の価値
金利ボラティリティが上昇すると、組込オプションの価値は上がります。そのためコーラブル債の価値は下落し、プッタブル債の価値は上昇します。
- ボラティリティ上昇:コール・プットの価値上昇
- コーラブル債:ボラティリティ上昇で価値下落
- プッタブル債:ボラティリティ上昇で価値上昇
- ストレート債の価値はボラティリティに依存しない
LOS 5:イールドカーブの水準・形状とオプション付き債券の価値
金利が低下するとコール・オプションの価値は上がり、金利が上昇するとプット・オプションの価値は上がります。形状については、右上がりのカーブがフラット化・逆イールド化するとコールの価値が上がり、プットの価値は右上がりのカーブで高くなります。
- 金利低下:コール価値上昇、コーラブル債の上昇余地は限定
- 金利上昇:プット価値上昇、プッタブル債の下落は限定
- フラット・逆イールド化:コールの価値上昇
- 右上がりのカーブ:プットの価値が高い
LOS 6:金利ツリーによるコーラブル債・プッタブル債の評価
後ろ向き帰納法で各ノードの価値を計算し、コーラブル債では計算値とコール価格の小さい方、プッタブル債では計算値とプット価格の大きい方をそのノードの価値とします。
- コーラブル:ノード価値 = min(計算値, コール価格)
- プッタブル:ノード価値 = max(計算値, プット価格)
- 行使可能な時点のみ判断を反映
- オプション価値 = ストレート債との差
LOS 7:オプション調整後スプレッド(OAS)
OASは、ツリーの全金利に一定のスプレッドを上乗せして評価額を市場価格に一致させるスプレッドです。オプションの影響を除いた信用・流動性リスクへの対価を表し、類似債券の相対評価に使います。
- Zスプレッド − OAS = オプション・コスト(コーラブル)
- コーラブル債:OAS<Zスプレッド
- プッタブル債:OAS>Zスプレッド
- 同程度の信用力でOASが大きい債券は割安
LOS 8:金利ボラティリティとOAS
評価で仮定するボラティリティを高くすると、コーラブル債のモデル価値が下がるため、市場価格に一致させるためのOASは小さくなります。プッタブル債では逆にOASが大きくなります。
- コーラブル債:仮定ボラティリティ↑→OAS↓
- プッタブル債:仮定ボラティリティ↑→OAS↑
- ボラティリティの仮定の違いで割安判断が変わり得る
LOS 9:実効デュレーションの計算
実効デュレーションは、ベンチマーク・カーブを上下に同じ幅だけシフトさせたときの価格変化から求める、キャッシュフローが金利に依存する債券の金利感応度です。OASは一定として再評価します。
- ベンチマーク・カーブを上下にシフト
- OASを一定に保ってツリーで再評価
- キャッシュフローの変化を反映
- 修正デュレーションはオプション付き債券には不適
LOS 10:コーラブル債・プッタブル債・ストレート債の実効デュレーション
コーラブル債とプッタブル債の実効デュレーションは、いずれもストレート債以下です。金利低下時はコーラブル債のデュレーションが短くなり、金利上昇時はプッタブル債のデュレーションが短くなります。
- コーラブル債 ≤ ストレート債
- プッタブル債 ≤ ストレート債
- 低金利:コーラブル債はコール価格付近で頭打ち
- 高金利:プッタブル債はプット価格付近で下げ止まり
- ゼロクーポン債は満期にほぼ等しい、変動利付債は小さい
LOS 11:片側デュレーションとキー・レート・デュレーション
片側デュレーションは金利上昇時と低下時の感応度を別々に測るもので、コーラブル債は金利上昇に、プッタブル債は金利低下に対して感応度が大きくなります。キー・レート・デュレーションは特定年限の金利変化への感応度で、カーブの形状変化のリスクを測ります。
- コーラブル債:上昇デュレーション>下落デュレーション
- プッタブル債:下落デュレーション>上昇デュレーション
- キー・レート・デュレーションの合計≈実効デュレーション
- オプション付き債券では満期以外の年限にも感応
LOS 12:実効コンベクシティの比較
ストレート債は正のコンベクシティを持ちます。コーラブル債は金利が低くコールが行使されやすい領域で負のコンベクシティを示し、プッタブル債は金利が高い領域でストレート債より大きな正のコンベクシティを持ちます。
- ストレート債:正のコンベクシティ
- コーラブル債:低金利で負のコンベクシティ
- プッタブル債:高金利で大きな正のコンベクシティ
- 投資家がオプションを持つと正、売ると負
LOS 13:キャップ付き・フロア付き変動利付債の評価
キャップ付き変動利付債ではクーポンに上限があり、投資家は発行体にキャップを売っています。フロア付き変動利付債ではクーポンに下限があり、投資家がフロアを持っています。
- キャップ付き = ストレート変動利付債 − キャップ
- フロア付き = ストレート変動利付債 + フロア
- ツリーの各ノードでクーポンに上限・下限を適用
- クーポンは期初の金利で決まり期末に支払(後払い)
LOS 14:転換社債の特徴
転換社債は、投資家が所定の転換比率で発行体の普通株に転換できる債券です。転換価格、転換期間、発行体のコール条項、投資家のプット条項などが条件として定められます。
- 転換比率:債券1単位で受け取る株式数
- 転換価格 = 額面 ÷ 転換比率
- 発行体のコール条項による強制転換
- 投資家のプット条項
- ワラント債との違い(ワラントは分離して取引可能)
LOS 15:転換社債の価値の構成要素
転換価値は株価×転換比率、転換社債の最低価値はストレート債の価値と転換価値の大きい方です。市場転換価格や市場転換プレミアムで割高度を測ります。
- 転換価値 = 株価 × 転換比率
- 最低価値 = max(ストレート価値, 転換価値)
- 市場転換価格 = 転換社債価格 ÷ 転換比率
- 市場転換プレミアム(1株当たり)= 市場転換価格 − 株価
- ストレート価値に対するプレミアム = 転換社債価格 ÷ ストレート価値 − 1
LOS 16:無裁定の枠組みによる転換社債の評価
転換社債は、ストレート債に株式へのコール・オプションを加え、発行体のコールを差し引き、投資家のプットを加えたものとして評価できます。
- 転換社債 = ストレート債 + 株式コール・オプション
- コーラブル転換社債:− 発行体のコール
- プッタブル転換社債:+ 投資家のプット
- 株価ボラティリティ↑で転換社債の価値↑
- 金利ツリーと株価ツリーの両方が関係
LOS 17:転換社債のリスク・リターン特性
株価が低い場合、転換社債は債券的(バステッド・コンバーティブル)に振る舞い、株価が高い場合は株式的に振る舞います。その中間ではハイブリッドの性質を持ちます。
- 株価低迷:ストレート債に近い値動き、信用リスクが重要
- 株価上昇:株価に連動、下値はストレート価値で限定
- 中間:債券と株式の両方の影響
- 株式より下方リスクが小さく、ストレート債より上方余地が大きい
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CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
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