【CFA®︎ L3 Asset Allocation LM1】Capital Market Expectations, Part 1: Framework and Macro Considerations を要点解説|資本市場期待の設定プロセス・予測の課題・景気循環・イールドカーブ

Learning Module 1「Capital Market Expectations, Part 1: Framework and Macro Considerations(資本市場期待:枠組みとマクロ要因)」は、資本市場期待の役割と設定の枠組み、予測上の課題、外生的ショックと経済成長トレンド、経済予測の主な手法、景気循環・インフレ・金融財政政策と資産クラスのリターンの関係、イールドカーブの経済予測力、経済間の連関を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM1のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM1には10個のLOSがあります。
- LOS 1:ポートフォリオ・マネジメント・プロセスにおける資本市場期待の役割と、その設定の枠組みを論じるdiscuss the role of, and a framework for, capital market expectations in the portfolio management process
- LOS 2:資本市場予測を作成する際の課題を論じるdiscuss challenges in developing capital market forecasts
- LOS 3:外生的ショックが経済成長トレンドにどのように影響しうるかを説明するexplain how exogenous shocks may affect economic growth trends
- LOS 4:資本市場期待の策定への経済成長トレンド分析の適用を論じるdiscuss the application of economic growth trend analysis to the formulation of capital market expectations
- LOS 5:経済予測の主要なアプローチを比較するcompare major approaches to economic forecasting
- LOS 6:景気循環が短期・長期の期待にどのように影響するかを論じるdiscuss how business cycles affect short- and long-term expectations
- LOS 7:インフレと景気循環の関係、およびインフレが現金・債券・株式・不動産のリターンに与える影響を説明するexplain the relationship of inflation to the business cycle and the implications of inflation for cash, bonds, equity, and real estate returns
- LOS 8:金融政策と財政政策が景気循環に与える影響を論じるdiscuss the effects of monetary and fiscal policy on business cycles
- LOS 9:経済の予測指標としてのイールドカーブの形状を解釈し、イールドカーブと財政・金融政策の関係を論じるinterpret the shape of the yield curve as an economic predictor and discuss the relationship between the yield curve and fiscal and monetary policy
- LOS 10:経済間のマクロ経済・金利・為替レートの連関を特定・解釈するidentify and interpret macroeconomic, interest rate, and exchange rate linkages between economies
LM1のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 資本市場期待は戦略的資産配分と戦術的資産配分の両方に不可欠な入力であり、最終目的は資産配分の意思決定に使える一連の予測
- 個々の資産クラスの予測精度よりも、資産クラス間の整合性(クロスセクションの整合性)と期間間の整合性(異時点間の整合性)が重要
- 設定プロセスは、必要な期待と期間の特定、過去の検証、手法・モデルの決定、情報源の決定、現状の解釈、期待の提示と文書化、結果のモニタリングとフィードバックの7段階
- 予測上の課題は、経済データの限界、測定誤差とバイアス、過去の推定値の限界、事後的リスクのバイアス、手法のバイアス、条件付け情報の無視、相関の誤解、心理的バイアス、モデルの不確実性
- 外生的ショック(政策変更、新技術、地政学、自然災害、天然資源、金融危機)による成長トレンドの変化は予測できず、定着するまで把握が難しい
- 経済のトレンド成長率は労働投入の伸びと労働生産性の伸びの和であり、長期の債券利回りと株式の値上がりのアンカーとなる
- 経済予測の手法は計量経済モデル、景気指標、チェックリストの3つで、それぞれ長所と短所がある
- 景気循環は将来の便益を期待して行われ、実行に時間と資源を要し、元に戻しにくい投資的な意思決定を反映する
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:資本市場期待の役割と枠組み
資本市場期待(CME)は資産クラスのリスクとリターンの予測で、戦略的・戦術的資産配分の入力になります。個々の予測の正確さより、資産クラス間と期間間の整合性が重視されます。
- 手順1:必要な期待と期間を特定
- 手順2:過去の実績を調べる
- 手順3:手法・モデルとその情報要件を決める
- 手順4:最適な情報源を決める
- 手順5:経験と判断により現在の投資環境を解釈
- 手順6:期待を提示し結論を文書化、手順7:結果を監視し予測と比較してフィードバック
LOS 2:資本市場予測の課題
資本市場の予測には、データの限界、過去の推定値の限界、手法のバイアス、心理的バイアスなどさまざまな落とし穴があります。
- 経済データ:公表の遅れ、定義や算出方法の変更、改定
- 測定誤差とバイアス:転記ミス、生存者バイアス、鑑定評価による平滑化
- 過去の推定値:精度の不足、非定常性、非同期の観測、ファット・テールや歪度
- 事後的リスクのバイアス(起きなかった/たまたま起きた低確率の事象)
- データ・マイニングや期間選択のバイアス、条件付け情報の無視、相関の誤解
- 心理的バイアス(アンカリング、現状維持、確証、自信過剰、慎重、利用可能性)とモデルの不確実性
LOS 3:外生的ショックと成長トレンド
成長トレンドの変化には、ゆっくり進み観測しやすい要因によるものと、外生的ショックによるものがあります。後者は予測できず、変化が定着するまで特定・評価が困難です。
- 政策の変更
- 新しい製品・技術
- 地政学
- 自然災害
- 天然資源・重要な投入物(例:原油価格ショック)
- 金融危機(経済の構造変化や成長の低下を招きうる)
LOS 4:成長トレンド分析の資本市場期待への応用
経済のトレンド成長率は労働投入の伸びと労働生産性の伸びの和で、過去のトレンドを延長したうえで観測可能な情報で調整して推定します。トレンド成長率は長期の債券利回りと株式の値上がりのアンカーになります。
- 実質(名目)デフォルト・フリー債券利回りの平均水準は実質(名目)トレンド成長率と連動
- 超長期では株式の総価値はGDP成長率に近いペースで成長
- 新興国は構造変化が速く、より大きな調整が必要
- 株式の値上がりの長期的な目安として使う
LOS 5:経済予測の3つの手法
経済予測の主な手法は、計量経済モデル、景気指標、チェックリストの3つです。精緻さ、簡便さ、柔軟さの点でそれぞれ一長一短があります。
- 計量経済モデル:定量的で規律ある予測、ショックの影響を分析可能。一方で複雑、誤特定のリスク、転換点の予測が苦手
- 景気指標(先行・一致・遅行):最も簡単。ただし誤ったシグナルや過去データへの過剰適合の問題
- チェックリスト:分析者が関連情報を主観的に統合。最も柔軟だが最も主観的で時間がかかる
- 複数の手法を組み合わせて使うことが多い
LOS 6:景気循環と短期・長期の期待
景気循環は多数の循環が重なった結果で、期間や強さが毎回異なり、転換点の予測は困難です。景気の局面は短期の資産リターンの期待に大きく影響しますが、長期の期待には影響が小さくなります。
- 典型的な局面:初期回復、拡大初期、拡大後期、減速、景気後退
- 在庫循環と設備投資循環
- 局面ごとに金利、企業収益、株価、クレジット・スプレッドの動きが異なる
- 短期の期待は局面の判断に、長期の期待はトレンドに基づく
LOS 7:インフレと景気循環・資産リターン
インフレは景気循環に遅れて動く傾向があり、景気拡大後期に上昇、景気後退後に低下しやすくなります。インフレの動向は現金・債券・株式・不動産のリターンに異なる影響を与えます。
- 現金:短期金利がインフレに追随するため、インフレ上昇時も比較的有利
- 債券:予想外のインフレ上昇は金利上昇を通じて不利
- 株式:予想の範囲内のインフレではプラス、予想を上回るインフレやデフレはマイナス
- 不動産:予想を上回るインフレでは賃料・物件価値の上昇でプラスになりやすく、デフレはマイナス
- デフレはレバレッジの実質負担を増やす
LOS 8:金融政策・財政政策と景気循環
中央銀行は政策金利を調整して景気循環を平準化します。財政政策は政府支出や税を通じて需要に影響し、変化の方向が重要です。
- テイラー・ルールで政策金利の目安を把握
- ゼロ金利・マイナス金利下では量的緩和などの非伝統的手段
- 財政政策は景気循環調整後の財政収支の変化で評価
- 金融政策と財政政策の組合せがイールドカーブの形状に影響
LOS 9:イールドカーブの形状と政策
イールドカーブの傾きは景気の先行指標として有用で、逆イールドは景気後退に先行する傾向があります。カーブの形状は金融政策と財政政策の組合せを反映します。
- 金融緩和 + 財政拡張:カーブが非常に急(スティープ)
- 金融引き締め + 財政緊縮:カーブが逆転(インバート)
- 金融引き締め + 財政拡張:カーブは平坦
- 金融緩和 + 財政緊縮:カーブは中程度に右上がり
- 逆イールドは景気後退の予兆とされる
LOS 10:経済間の連関
各国の経済は貿易と資本移動を通じて結びついており、金利や為替レートにも連関が生じます。小国・開放経済ほど他国の影響を受けやすくなります。
- マクロ経済の連関:貿易と資本移動、経常収支と資本収支
- 為替レートの連関:固定相場やペッグでは金利が連動し、為替リスク・プレミアムが生じる
- 金利の連関:資本移動が自由な経済間では債券利回りが連動しやすい
- 実質金利差や成長率の差が資本移動と為替を動かす
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CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
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