Learning Module 2「Capital Market Expectations, Part 2: Forecasting Asset Class Returns(資本市場期待:資産クラス別予測)」は、債券・株式・不動産の期待リターンの設定方法、新興国の債券・株式のリスクとカントリー・リスク分析、為替レートの主な予測アプローチ、ボラティリティの予測方法、マクロ要因に基づくグローバル・ポートフォリオのウエイト調整を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM2のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には8つのLOSがあります。

  1. LOS 1:債券リターンの期待を設定するアプローチを論じるdiscuss approaches to setting expectations for fixed-income returns
  2. LOS 2:新興国債券への投資家が直面するリスクと、新興国経済を評価するためのカントリー・リスク分析の手法を論じるdiscuss risks faced by investors in emerging market fixed-income securities and the country risk analysis techniques used to evaluate emerging market economies
  3. LOS 3:株式市場リターンの期待を設定するアプローチを論じるdiscuss approaches to setting expectations for equity investment market returns
  4. LOS 4:新興国株式への投資家が直面するリスクを論じるdiscuss risks faced by investors in emerging market equity securities
  5. LOS 5:経済要因と競争要因が不動産投資市場とセクターのリターンの期待にどのように影響しうるかを説明するexplain how economic and competitive factors can affect expectations for real estate investment markets and sector returns
  6. LOS 6:為替レート予測の主要なアプローチを論じるdiscuss major approaches to forecasting exchange rates
  7. LOS 7:ボラティリティの予測手法を論じるdiscuss methods of forecasting volatility
  8. LOS 8:マクロ経済要因のトレンドと予想される変化に基づき、グローバル投資ポートフォリオの構成ウエイトの変更を推奨・正当化するrecommend and justify changes in the component weights of a global investment portfolio based on trends and expected changes in macroeconomic factors

LM2のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 予測手法の選択は、どの情報に基づいて予測し、その情報をどう組み込むかの選択
  • 資本市場リターンの予測手法は、統計的手法、DCFモデル、リスク・プレミアム・モデルの3つに大別され、標本平均は大きな推定誤差を含むため縮小推定などで精度を高める
  • 債券の期待リターンはDCF、ビルディング・ブロック、均衡モデルで推定し、ビルディング・ブロックは短期デフォルト・フリー金利、期間プレミアム、信用プレミアム、流動性プレミアム
  • 新興国債券は支払能力と支払意思の両面でリスクが高く、経済の脆弱性と政治・法制度の弱さにそれぞれ起因する
  • グリノルド・クローナー・モデルは株式の期待リターンを現金配当利回り(自社株買いを調整)、名目利益成長、PERの変化による再評価に分解する
  • シンガー・テルハール・モデルは完全統合のグローバルCAPMと完全分断を前提とした期待リターンを組み合わせる
  • 不動産の過去リターンは平滑化によりボラティリティが過小に表れ、期待リターンはキャップレート + NOI成長率 − キャップレートの変化率で推定できる
  • 為替レートは予測が特に難しく、貿易、資本移動、購買力平価、金利平価などの観点から影響の大きい要因を見極める必要がある

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:債券の期待リターンの設定

債券の期待リターンはDCF法ビルディング・ブロック法均衡モデルで推定します。ビルディング・ブロックでは、短期デフォルト・フリー金利に期間・信用・流動性のプレミアムを積み上げます。

  • DCF:最終利回り(YTM)が出発点。期間中の利回り変化による再投資と期末評価への影響を反映して改善
  • 投資期間がマッコーレー・デュレーションに近いと利回り変化の影響が相殺されやすい
  • 期間プレミアムはデュレーションにほぼ比例し、イールドカーブの傾きと正の関係
  • 信用プレミアムはカーブの短期側で大きい傾向、スプレッドには期待損失も含まれる
  • 流動性プレミアムは国債と政府機関債の利回り差が目安
期待リターン = 短期デフォルト・フリー金利 + 期間プレミアム + 信用プレミアム + 流動性プレミアム

LOS 2:新興国債券のリスクとカントリー・リスク分析

新興国債券には支払能力(経済の脆弱性)と支払意思(政治・法制度の弱さ)の両面のリスクがあります。カントリー・リスク分析では財政、対外債務、成長、外貨準備などの指標を確認します。

  • 経済面:財政赤字、政府債務、経常収支、外貨準備、対外債務、成長率
  • 政治・法制度面:財産権や契約の保護、政治の安定性
  • コモディティ輸出への依存など経済の集中度
  • 外貨建て債務の比率や通貨ミスマッチ
  • 支払意思の問題は経済が健全でも生じうる

LOS 3:株式の期待リターンの設定

株式の期待リターンはヒストリカルな統計、DCF(グリノルド・クローナー・モデル)、リスク・プレミアム(ビルディング・ブロック)、シンガー・テルハール・モデルなどの均衡アプローチで推定します。

  • グリノルド・クローナー:期待キャッシュフロー・リターン(配当利回り − 株数の変化率)+ 名目利益成長 + 再評価リターン(PERの変化率)
  • 長期では名目利益成長率は名目GDP成長率に近い
  • 株式リスク・プレミアムを直接予測するのは株式リターン自体を予測するのと同程度に難しい
  • シンガー・テルハール:完全統合と完全分断のリスク・プレミアムの加重平均
  • 完全統合では相関 × 資産のボラティリティ × 市場のシャープ・レシオ、完全分断では相関を1とする
E(Rₑ) ≈ D/P − %ΔS + i + g + %ΔP/E(i:インフレ率、g:実質利益成長率)

LOS 4:新興国株式のリスク

新興国株式は新興国債券と同じ根本的なリスク、すなわち脆弱な経済不安定な政治・政策弱い法的保護にさらされます。所有権の価値が収奪されるリスクに特に注意が必要です。

  • コーポレート・ガバナンスの水準
  • 会計・開示の基準
  • 財産権に関する法制度
  • 政府の行動に対するチェック・アンド・バランス
  • 少数株主の保護

LOS 5:不動産の期待リターン

不動産の標準的な評価指標はキャップレート(当期NOI ÷ 物件価値)です。期待リターンはグリノルド・クローナーに似たモデルで推定でき、ビルディング・ブロックのすべてのプレミアムを含みます。

  • リスクの高い物件タイプ、低品質の物件、魅力の低い立地ほどキャップレートが高い
  • 不動産は景気循環を増幅し、景気循環に左右されるブーム・バスト・サイクルを持つ
  • 期間プレミアム(長寿命で安定したキャッシュフロー)、信用プレミアム(固定期間リースはテナントの社債に類似)
  • 株式プレミアム(物件価値・賃料・空室のリスク)、流動性プレミアム(取引が少なくコストが高い)
  • 平滑化されたデータはボラティリティを過小評価し、相関をゆがめるため調整が必要
E(R_re) = キャップレート + NOI成長率 − キャップレートの変化率

LOS 6:為替レートの予測

為替レートは政府、金融システム、法制度、地理などに結びついているため予測が特に難しく、最も影響の大きい要因を見極める必要があります。主な視点は財・サービスの貿易資本移動購買力平価金利平価などです。

  • 資金調達が可能であれば、貿易フローは為替に大きな影響を与えないことが多い
  • 国際的な資本移動は貿易金融のフローより大きく変動も大きい
  • 購買力平価(PPP)は短中期の予測力は低いが、長期の目安になる
  • 経常収支の持続性、ポートフォリオ・バランス(投資家の保有意欲)、資本移動の急な反転(サドン・ストップ)
  • 金利差と通貨のキャリー、中央銀行の介入

LOS 7:ボラティリティの予測

ボラティリティや共分散行列の予測には、標本統計量ファクター・モデル縮小推定ARCH/GARCHモデル平滑化データの修正などの手法があります。

  • 標本共分散行列:資産数が多いと推定誤差が大きい
  • ファクター・モデル:構造を課して推定誤差を減らすが、偏りが生じうる
  • 縮小推定:標本推定値と目標値の加重平均で精度を高める
  • ARCH(GARCH):ボラティリティの時間変動とクラスタリングを捉える
  • 平滑化されたリターン(鑑定評価など)は真のボラティリティを過小評価するため修正
σₜ² = γ + α σₜ₋₁² + β ηₜ²(ARCH型のボラティリティ予測)

LOS 8:マクロ要因に基づくグローバル・ポートフォリオの調整

景気循環の局面、金融・財政政策、成長率やインフレの見通しなどのマクロ要因の変化に基づいて、国・資産クラスのウエイトを変更する判断を行います。変更は経済分析と資本市場期待との整合性に基づいて正当化します。

  • 景気拡大が見込まれる国:株式・クレジットの比率を高める
  • 景気減速・金融緩和が見込まれる国:長期国債の比率を高める
  • イールドカーブの形状や政策の組合せから債券の配分を判断
  • 為替の見通しも国別配分に反映
  • 判断はクロスセクションと異時点間の整合性を保つ

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。