【CFA®︎ L3 Asset Allocation LM3】Overview of Asset Allocation を要点解説|投資ガバナンス・経済的バランスシート・アセット・オンリー/負債対比/ゴール・ベース・リバランス

Learning Module 3「Overview of Asset Allocation(アセット・アロケーションの概要)」は、投資ガバナンス、経済的バランスシート、アセット・オンリー・負債対比・ゴール・ベースの3つのアプローチの目的とリスク概念、資産クラスとリスク・ファクター、グローバル市場ポートフォリオ、パッシブ・アクティブの実行上の選択、リバランスの戦略的考慮事項を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM3のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には10個のLOSがあります。
- LOS 1:効果的な投資ガバナンスの要素と、アセット・アロケーションにおける投資ガバナンス上の考慮事項を説明するdescribe elements of effective investment governance and investment governance considerations in asset allocation
- LOS 2:顧客の経済的バランスシートを作成し、アセット・アロケーションへの含意を解釈するformulate an economic balance sheet for a client and interpret its implications for asset allocation
- LOS 3:アセット・オンリー、負債対比、ゴール・ベースのアセット・アロケーション・アプローチの投資目的を比較するcompare the investment objectives of asset-only, liability-relative, and goals-based asset allocation approaches
- LOS 4:アセット・オンリー、負債対比、ゴール・ベースのアセット・アロケーション・アプローチに関連するリスクの概念を対比するcontrast concepts of risk relevant to asset-only, liability-relative, and goals-based asset allocation approaches
- LOS 5:資産クラスがシステマティック・リスクへのエクスポージャーを表すためにどのように使われるかを説明し、資産クラスの定義の基準を論じるexplain how asset classes are used to represent exposures to systematic risk and discuss criteria for asset class specification
- LOS 6:アセット・アロケーションにおけるリスク・ファクターの利用と、伝統的な資産クラス・ベースのアプローチとの関係を説明するexplain the use of risk factors in asset allocation and their relation to traditional asset class–based approaches
- LOS 7:投資家の目的と制約に基づいてアセット・アロケーションを推奨・正当化するrecommend and justify an asset allocation based on an investor’s objectives and constraints
- LOS 8:アセット・アロケーションの基準ポートフォリオとしてのグローバル市場ポートフォリオの利用を説明するdescribe the use of the global market portfolio as a baseline portfolio in asset allocation
- LOS 9:パッシブ/アクティブの選択や、パッシブ・アクティブ運用を実行する手段など、アセット・アロケーションの戦略的な実行上の選択を論じるdiscuss strategic implementation choices in asset allocation, including passive/ active choices and vehicles for implementing passive and active mandates
- LOS 10:アセット・アロケーションのリバランスにおける戦略的考慮事項を論じるdiscuss strategic considerations in rebalancing asset allocations
LM3のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 効果的な投資ガバナンスは、必要な能力を持つ個人や組織が意思決定を行うことを確保し、目的の明確化、意思決定権限の配分、IPSと戦略的資産配分の策定・承認プロセス、報告体制、定期的なガバナンス監査を含む
- 経済的バランスシートは人的資本などの非金融資産や将来の負債を含み、最適な資産配分の判断に役立つ
- アセット・オンリーは資産側、負債対比は負債の積立、ゴール・ベースは目標の達成に焦点を当てる
- リスクの概念も、アセット・オンリーは資産のリスク、負債対比は負債の支払いに関するリスク、ゴール・ベースは目標を達成できない確率に焦点
- 資産クラスは同質で、相互に排他的で、分散効果があり、全体として世界の投資可能な富の大部分を占め、十分な容量を持つべき
- リスク・ファクターは分散できないシステマティック・リスクで期待リターン・プレミアムを伴い、資産クラスは複数のファクターを反映する
- グローバル市場ポートフォリオはアセット・オンリーの基準となる高度に分散した資産配分
- リバランスにはカレンダー・リバランスとレンジ(コリドー)・リバランスがあり、取引コスト、リスク回避度、相関、ボラティリティ、モメンタム、税、流動性が考慮事項
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:投資ガバナンスの要素
効果的な投資ガバナンスとは、適切な能力を持つ者が意思決定を行う仕組みです。長期・短期の目的を明確にし、統治階層の各部門に意思決定の権限と責任を適切に配分します。
- 長期・短期の投資目的の明確化
- 意思決定権限の配分(知識・能力・時間・立場を考慮)
- IPS(投資方針書)の策定・承認プロセス
- 戦略的資産配分の策定・承認プロセス
- 進捗を監視する報告体制
- 定期的なガバナンス監査
LOS 2:経済的バランスシート
経済的バランスシートは、金融資産・負債に加え、人的資本や将来の消費・負債の現在価値など非金融の資産・負債を含めたバランスシートです。これを踏まえることで、金融ポートフォリオの最適な資産配分を判断できます。
- 個人:人的資本(将来の労働所得の現在価値)、年金の受給権、不動産など
- 個人の負債:住宅ローン、将来の生活費や教育費の現在価値
- 債券に近い人的資本を持つ投資家は株式の比率を高めやすい
- 勤務先の業績と連動する人的資本がある場合は同業種株式を避ける
- 機関投資家:将来の拠出や寄付、スポンサーの支援なども含む
LOS 3:3つのアプローチの投資目的
アセット・オンリーは資産のリスク・リターンの最適化、負債対比(LDI)は負債の積立、ゴール・ベースは個々の目標の達成を目的とします。
- アセット・オンリー:平均分散最適化で資産ポートフォリオの効率性を追求
- 負債対比:負債を賄う(サープラスの管理)。年金基金、保険会社、銀行など
- ゴール・ベース:目標ごとのサブ・ポートフォリオで目標を達成。主に個人
- どのアプローチでもリスクとリターンの考え方が異なる
LOS 4:3つのアプローチのリスク概念
リスクの捉え方も異なります。アセット・オンリーでは資産のボラティリティやベンチマーク対比のリスク、負債対比ではサープラスのボラティリティや積立不足のリスク、ゴール・ベースでは目標を達成できない確率が重視されます。
- アセット・オンリー:標準偏差、トラッキング・エラー、ダウンサイド・リスク
- 負債対比:サープラスのボラティリティ、積立比率の低下、負債の支払不能
- ゴール・ベース:各目標の未達確率(シャートフォール・リスク)
- ボラティリティより目的に即したリスク指標を用いる
LOS 5:資産クラスとその定義の基準
資産クラスはシステマティック・リスクへのエクスポージャーを表すための伝統的な分析単位です。有効な資産クラスには、いくつかの基準を満たすことが求められます。
- クラス内の資産は比較的同質であること
- 資産クラスは相互に排他的であること
- 資産クラスは分散効果をもたらすこと(相関が高すぎないこと)
- 全体として世界の投資可能な富の大部分をカバーすること
- 投資家のポートフォリオの相当部分を吸収できる容量があること
LOS 6:リスク・ファクターの利用
リスク・ファクターは分散できないシステマティック・リスクで、期待リターンのプレミアムを伴います。資産クラスは複数のファクターを反映するため、ファクター単位で配分することでリスクの重複を把握できます。
- 主なファクター:インフレ、実質金利、景気(成長)、ボラティリティ、流動性、クレジット、デュレーション(期間)
- 資産クラス間でファクターが重複していると見かけほど分散していない
- 特定のファクターを抽出するにはロング・ショートのスプレッド・ポジションが必要なことがある
- ファクター・ベースと資産クラス・ベースは同じポートフォリオの異なる見方
LOS 7:目的と制約に基づくアセット・アロケーション
投資家の目的(リターン、リスク許容度)と制約(流動性、期間、税、規制、固有の事情)を踏まえ、適切なアプローチと資産配分を選び、その理由を説明できることが求められます。
- 経済的バランスシートから人的資本や負債の性質を把握
- 負債がある投資家は負債対比、個人の複数目標はゴール・ベース
- リスク許容度(能力と意思)に応じて株式等のリスク資産比率を決定
- 流動性ニーズや投資期間から非流動資産の上限を判断
LOS 8:グローバル市場ポートフォリオ
グローバル市場ポートフォリオは、投資可能な全資産を時価総額で保有する高度に分散したポートフォリオで、アセット・オンリーのアプローチにおける基準(ベースライン)として使えます。
- 理論的には(CAPMの考え方で)最も分散されたリスク資産ポートフォリオ
- 非上場資産などの完全な把握は困難で、代理指標を用いる
- 出発点として使い、投資家の事情に応じて調整
- ホーム・バイアスからの乖離を評価する基準にもなる
LOS 9:パッシブ/アクティブの戦略的な実行上の選択
パッシブ/アクティブの選択には2つの次元があります。1つは戦略的資産配分そのものから乖離するか(戦術的・動的資産配分)、もう1つは各資産クラス内の運用をパッシブにするかアクティブにするかです。
- 戦術的資産配分(TAA):短期の見通しに基づき配分を一時的に変更
- 動的資産配分:市場環境や負債の変化に応じて配分を調整
- パッシブの手段:インデックス・ファンド、ETF、先物、スワップ
- アクティブの手段:ファクター・ティルト、アクティブ・マネージャーへの委託
- リスク・バジェット:どのリスクをどれだけ取るか、ベンチマーク対比のアクティブ・リスクをどれだけ許容するか
LOS 10:リバランスの戦略的考慮事項
リバランスはポートフォリオのウエイトを戦略的資産配分に近づける規律です。カレンダー・リバランスとレンジ(コリドー)・リバランスがあり、後者の方が資産構成を厳密に管理できます。
- カレンダー・リバランス:定期的に目標ウエイトへ戻す
- レンジ・リバランス:目標ウエイトの周りにしきい値を設け、超えたら調整(固定幅、比率ベース、ボラティリティ・ベース)
- 考慮事項:取引コスト、リスク回避度、資産クラス間の相関、ボラティリティ
- モメンタムに関する見方、税、流動性も考慮
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CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
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