Learning Module 4「Principles of Asset Allocation(アセット・アロケーションの原則)」は、平均分散最適化とその改善策、経済的バランスシートやグローバル市場ポートフォリオに基づく配分、モンテカルロとシナリオ分析、流動性とリスク・バジェット、ファクターの利用、負債対比とゴール・ベースの配分、ヒューリスティックな手法、リバランス方針を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM4のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM4には15個のLOSがあります。

  1. LOS 1:アセット・アロケーションにおける平均分散最適化の利用を説明・評価するdescribe and evaluate the use of mean–variance optimization in asset allocation
  2. LOS 2:平均分散最適化を用いてアセット・アロケーションを推奨・正当化するrecommend and justify an asset allocation using mean–variance optimization
  3. LOS 3:投資家の経済的バランスシートとの関係でアセット・アロケーションを解釈・評価するinterpret and evaluate an asset allocation in relation to an investor’s economic balance sheet
  4. LOS 4:グローバル市場ポートフォリオに基づいてアセット・アロケーションを推奨・正当化するrecommend and justify an asset allocation based on the global market portfolio
  5. LOS 5:アセット・アロケーションの頑健性を評価するためのモンテカルロ・シミュレーションとシナリオ分析の利用を論じるdiscuss the use of Monte Carlo simulation and scenario analysis to evaluate the robustness of an asset allocation
  6. LOS 6:アセット・アロケーションにおける資産クラスの流動性に関する考慮事項を論じるdiscuss asset class liquidity considerations in asset allocation
  7. LOS 7:絶対的および相対的なリスク・バジェットと、アセット・アロケーションの決定・実行におけるその利用を説明するexplain absolute and relative risk budgets and their use in determining and implementing an asset allocation
  8. LOS 8:投資リスクに関する顧客のニーズや選好をアセット・アロケーションにどのように組み込めるかを説明するdescribe how client needs and preferences regarding investment risks can be incorporated into asset allocation
  9. LOS 9:アセット・アロケーションの構築と分析における投資ファクターの利用を説明するdescribe the use of investment factors in constructing and analyzing an asset allocation
  10. LOS 10:アセット・アロケーションに関連する負債の特性を説明・評価するdescribe and evaluate characteristics of liabilities that are relevant to asset allocation
  11. LOS 11:負債対比アセット・アロケーションのアプローチを論じるdiscuss approaches to liability-relative asset allocation
  12. LOS 12:負債対比アセット・アロケーションを推奨・正当化するrecommend and justify a liability-relative asset allocation
  13. LOS 13:ゴール・ベース・アプローチを用いてアセット・アロケーションを推奨・正当化するrecommend and justify an asset allocation using a goals-based approach
  14. LOS 14:ヒューリスティックなアプローチやその他のアセット・アロケーション手法を説明・評価するdescribe and evaluate heuristic and other approaches to asset allocation
  15. LOS 15:リバランス方針に影響する要因を論じるdiscuss factors affecting rebalancing policy

LM4のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • アセット・オンリーの平均分散最適化(MVO)の目的関数は、資産配分の期待リターンから、リスク回避度と分散に応じたペナルティを差し引いた値の最大化
  • MVOの批判:入力のわずかな変化に結果が敏感、一部の資産クラスへの集中、歪度・尖度を考慮しない、リスク源泉が分散されない、負債や消費との関係がない、単一期間で取引コストや税を無視
  • 逆最適化や投資家の見通しを反映したブラック・リターマン・モデル、ウエイト制約、リサンプリングがMVOの集中の問題への対処法
  • リスク・バジェットは、超過リターンと総リスクへの限界寄与の比がすべての資産で等しいときに最適
  • 負債対比の配分では、固定か条件付きか、法的負債か準負債か、デュレーションとコンベクシティ、スポンサー規模との比較、キャッシュフローの決定要因、長寿リスク、規制などの負債特性が重要
  • 負債対比のアプローチはサープラス最適化、ヘッジ/リターン追求ポートフォリオ・アプローチ、統合的資産負債アプローチ
  • ゴール・ベースの配分は、それぞれの期間と必要な達成確率を持つ目標ごとのサブ・ポートフォリオを組み合わせる
  • 規律あるリバランスはリスクを下げつつリターンをわずかに高める傾向があり、最適なコリドー幅は取引コスト、リスク許容度、他の資産との相関と正の関係、ポートフォリオの残りの部分のボラティリティと負の関係

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:平均分散最適化の利用と評価

平均分散最適化(MVO)は、期待リターンからリスク回避度に応じたペナルティを差し引いた効用を最大化する資産配分を求めます。一方で、入力への敏感さや集中などの問題があり、その対処法も理解する必要があります。

  • 批判:入力(特に期待リターン)のわずかな変化に結果が敏感
  • 批判:一部の資産クラスに集中しやすい、歪度・尖度を無視
  • 批判:リスク源泉が分散されない、負債・消費との関係がない、単一期間
  • 対処:逆最適化、ブラック・リターマン・モデル、ウエイト制約、リサンプリング
  • 逆最適化:市場の時価総額ウエイトから逆算した期待リターンを用いる
Uₘ = E(Rₘ) − 0.005 × λ × σₘ²

LOS 2:MVOによる配分の推奨

MVOで得られる効率的フロンティア上のポートフォリオから、投資家のリスク回避度目的・制約に合うものを選び、その理由を説明します。

  • リスク回避度 λ が大きいほど低リスクのポートフォリオが選ばれる
  • リターン目標やリスクの上限、流動性などの制約を満たすものを選ぶ
  • 隣接するコーナー・ポートフォリオ間の線形結合でフロンティア上のウエイトを求められる
  • 実務では制約付き最適化が一般的

LOS 3:経済的バランスシートを踏まえた配分

人的資本や不動産などの非金融資産、将来の負債も含めた経済的バランスシート全体で資産配分を考えます。金融ポートフォリオは、それ以外の資産・負債のリスクを補完するように配分されます。

  • 人的資本が債券的(安定収入)なら金融資産の株式比率を高められる
  • 人的資本が株式的(業績連動)なら金融資産の株式比率を下げる
  • 年齢とともに人的資本が減り、金融資産の比率が高まる
  • 非金融資産を含めたリスク・エクスポージャーで評価

LOS 4:グローバル市場ポートフォリオに基づく配分

グローバル市場ポートフォリオの時価総額ウエイトは、MVOが極端な結果になりやすいことへの対策として、また見通しが特にない場合の出発点として有用です。

  • 理論的に最も分散された配分
  • 逆最適化で市場に整合的な期待リターンを求める基礎
  • ホーム・バイアスとの比較
  • 非上場資産の組入れには代理指標や手段の制約がある

LOS 5:モンテカルロとシナリオ分析による頑健性の評価

モンテカルロ・シミュレーションは多期間にわたるリターンの経路を多数生成し、取引コスト・税・キャッシュフローを反映した結果の分布を示します。シナリオ分析は特定の状況下での資産配分の成果を確かめます。

  • MVOは単一期間だが、モンテカルロは多期間の経路依存性を扱える
  • 目標の達成確率や資産の枯渇確率などを評価
  • 拠出・引き出し、リバランス、税を組み込める
  • ストレス・シナリオで配分の弱点を確認

LOS 6:資産クラスの流動性に関する考慮事項

非上場株式や不動産、インフラなどの流動性の低い資産クラスは、MVOに組み込むのが難しくなります。適切な代理指標がなく、データが平滑化されていることが多いためです。

  • 平滑化されたリターンはリスクと相関を過小評価
  • 投資可能なインデックスがなく、実際に得られるリターンと指数が乖離
  • 対処:流動性の高い代理資産でMVOを行う、非流動資産のデータを調整する、固定ウエイトとして扱う
  • 投資家の流動性ニーズと資金の拘束期間を考慮

LOS 7:絶対的・相対的リスク・バジェット

リスク・バジェッティングはどのリスクをどれだけ取るかを決めることです。絶対的リスク・バジェットは総リスク、相対的リスク・バジェットはベンチマーク対比のアクティブ・リスクを対象とします。

  • MCTR(総リスクへの限界寄与):資産のウエイトをわずかに増やしたときのポートフォリオ・リスクの増加分
  • ACTR(総リスクへの絶対寄与)= ウエイト × MCTR
  • ACTRの合計が総リスク
  • 最適条件:超過リターン ÷ MCTR がすべての資産で等しい
  • 相対的リスク・バジェット:戦略的資産配分や各資産クラスのベンチマークに対するアクティブ・リスク
MCTRᵢ = βᵢ × σₚ、ACTRᵢ = wᵢ × MCTRᵢ

LOS 8:顧客のニーズと選好の組込み

顧客のリスクに関するニーズや選好(特定の資産の除外、ESGなど)を資産配分に組み込みます。制約として扱うか、目的関数に反映します。

  • 特定の業種・企業の除外(ESG、宗教上の理由など)
  • リスクの嫌い方:損失回避、ドローダウンへの懸念
  • インパクト投資やテーマ投資の希望
  • 制約が多いほど最適な配分から離れるコストが生じる

LOS 9:投資ファクターの利用

資産クラスではなくファクター(市場、規模、バリュー、モメンタム、デュレーション、クレジットなど)を単位にして配分を構築・分析します。ファクター・ベースの配分はリスクの重複を明らかにしますが、実行にはロング・ショート・ポジションが必要なこともあります。

  • ファクター・ポートフォリオは相関が低くなりやすい
  • 資産クラスのリスクをファクターに分解して分散の度合いを評価
  • ロング・ショートによる実行はレバレッジや空売りのコストを伴う
  • ファクターと資産クラスの両面から分析

LOS 10:負債の特性

負債対比の資産配分では、負債の性質が資産配分を大きく左右します。キャッシュフローが確定か条件付きか、金利感応度、インフレ連動の有無などを評価します。

  • 固定的なキャッシュフローか条件付きのキャッシュフローか
  • 法的負債か準負債(例:財団の支出目標)か
  • 負債のデュレーションとコンベクシティ
  • スポンサー組織の規模に対する負債の大きさ
  • キャッシュフローの決定要因(インフレ、経済状況、金利、リスク・プレミアム)
  • 長寿リスクなどの時期の要因、規制の影響

LOS 11:負債対比アセット・アロケーションのアプローチ

負債対比のアプローチには、サープラス最適化ヘッジ/リターン追求ポートフォリオ・アプローチ統合的資産負債アプローチがあります。

  • サープラス最適化:サープラス・リターンに平均分散最適化を適用
  • ヘッジ/リターン追求:負債をヘッジするポートフォリオと残りを運用するポートフォリオに分ける(基本型と部分ヘッジ型)
  • 統合的資産負債アプローチ:資産と負債の意思決定を同時に最適化(銀行・保険など)
  • サープラスがない場合、基本型のヘッジ/リターン追求アプローチは使えない
Uₘ^LR = E(Rₛ,ₘ) − 0.005 × λ × σ²(Rₛ,ₘ)

LOS 12:負債対比アセット・アロケーションの推奨

負債の特性、積立状況、スポンサーのリスク許容度を踏まえて、ヘッジの比率やリターン追求資産の比率を決め、その理由を説明します。

  • 積立比率が高い(サープラスが大きい)ほどリスク資産を持つ余地がある
  • 負債と同じ金利感応度の資産でデュレーションをマッチング
  • 積立不足ならヘッジ比率とリスクのバランスが課題
  • スポンサーの財務力や負債の成熟度も考慮
  • シナリオ分析やモンテカルロで積立状況の変化を評価

LOS 13:ゴール・ベースによる配分

ゴール・ベースの配分では、各目標に期間と必要な達成確率を設定し、目標ごとに最適なサブ・ポートフォリオ(モジュール)を割り当てます。全体の配分はサブ・ポートフォリオの合計です。

  • プロセス1:ポートフォリオ・モジュールの作成(リスク・リターン特性の異なる複数のモジュール)
  • プロセス2:顧客の目標を把握し、適切なモジュールと必要資金を割り当てる
  • 重要度の高い目標ほど高い達成確率と低リスクのモジュール
  • 必要資金 = 目標額を、期間と達成確率に対応した割引率で割り引いた額
  • 定期的なモニタリングと見直し

LOS 14:ヒューリスティックなアプローチ

簡便な経験則による配分として、「120 − 年齢」60/40(株式/債券)エンダウメント・モデルリスク・パリティ1/N(均等配分)などがあります。

  • 120 − 年齢:株式比率を年齢に応じて決める
  • 60/40:株式60%・債券40%の伝統的配分
  • エンダウメント・モデル:非伝統的資産とアクティブ運用を重視(長期・流動性ニーズが低い投資家向き)
  • リスク・パリティ:各資産クラスのリスク寄与を等しくする。期待リターンを考慮しない点が批判される
  • 1/N:均等配分。期待リターン等の推定が不要で推定誤差の影響を受けない

LOS 15:リバランス方針に影響する要因

規律あるリバランスはリスクを抑えリターンをわずかに高める傾向があります。最適なコリドー(許容幅)の広さは、取引コスト、リスク許容度、相関、ボラティリティなどで決まります。

  • 取引コストが高いほどコリドーは広く
  • リスク許容度が高いほどコリドーは広く
  • ポートフォリオの他の部分との相関が高いほどコリドーは広く
  • ポートフォリオの他の部分のボラティリティが高いほどコリドーは狭く
  • 資産クラス自体のボラティリティは取引コストとリスク管理のトレードオフ
  • リバランスの収益源の解釈:分散リターン、ボラティリティのショート、流動性の供給

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

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