Learning Module 3「Currency Management: An Introduction(通貨マネジメント入門)」は、為替変動がポートフォリオのリスクとリターンに与える影響、通貨マネジメントの戦略的選択と運用プログラムの策定、ファンダメンタルズ・テクニカル・キャリー・ボラティリティに基づくアクティブ戦略、フォワードとFXスワップによるヘッジ比率の調整、ヘッジコストの削減策、複数通貨のヘッジ、新興国通貨の管理を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM3のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には9つのLOSがあります。

  1. LOS 1:通貨の変動がポートフォリオのリスクとリターンに与える影響を分析するanalyze the effects of currency movements on portfolio risk and return
  2. LOS 2:通貨マネジメントにおける戦略的選択を論じるdiscuss strategic choices in currency management
  3. LOS 3:金融市場の状況とポートフォリオの目的・制約に基づき、適切な通貨マネジメント・プログラムを策定するformulate an appropriate currency management program given financial market conditions and portfolio objectives and constraints
  4. LOS 4:経済ファンダメンタルズ、テクニカル分析、キャリー・トレード、ボラティリティ取引に基づくアクティブな通貨取引戦略を比較するcompare active currency trading strategies based on economic fundamentals, technical analysis, carry-trade, and volatility trading
  5. LOS 5:アクティブ取引戦略の基礎となる要因の変化が、戦術的な取引判断にどう影響するかを説明するdescribe how changes in factors underlying active trading strategies affect tactical trading decisions
  6. LOS 6:フォワード契約とFXスワップを使ってヘッジ比率を調整する方法を説明するdescribe how forward contracts and FX (foreign exchange) swaps are used to adjust hedge ratios
  7. LOS 7:ヘッジコストを削減し、外貨建てポートフォリオのリスク・リターン特性を変えるために使われる取引戦略を説明するdescribe trading strategies used to reduce hedging costs and modify the risk– return characteristics of a foreign-currency portfolio
  8. LOS 8:複数の外貨にさらされたポートフォリオにおける、クロス・ヘッジ、マクロ・ヘッジ、最小分散ヘッジ比率の利用を説明するdescribe the use of cross-hedges, macro-hedges, and minimum-variance-hedge ratios in portfolios exposed to multiple foreign currencies
  9. LOS 9:新興国通貨のエクスポージャー管理における課題を論じるdiscuss challenges for managing emerging market currency exposures

LM3のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 外貨建て資産の国内通貨建てリターンは、外貨建ての資産リターンと外貨の変化率の2つが掛け算で組み合わさって決まる
  • 国内通貨建てリターンのリスクは、資産リターンと為替変動それぞれの分散と相関を考慮した分散の式で近似できる
  • 通貨リスクをどこまでとるかはIPSで定める戦略的判断。分散効果とヘッジのコストを考慮して決める
  • 通貨マネジメントは、完全ヘッジのパッシブ運用から、裁量的ヘッジ、アクティブ運用、通貨オーバーレイまでのスペクトラムに位置づけられる
  • 相場観の形成には、ファンダメンタルズ(適正価値)、テクニカル指標、キャリー・トレード(カバーなし金利平価の不成立)、ボラティリティ取引がある
  • パッシブ・ヘッジには柔軟なフォワードが一般に使われ、ロール・イールドがヘッジに有利にも不利にも働く
  • オプションを使えば有利な為替変動の可能性を残せるが、プレミアムがかかる。コスト削減策は、下落防御か上昇余地のいずれかを犠牲にする
  • クロス・ヘッジはベーシス・リスクを生む。新興国通貨は取引コストが高く、テール・リスクが大きく、ヘッジ手段も限られる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:通貨変動がリスクとリターンに与える影響

外貨建て資産の国内通貨建てリターンは、外貨建てリターンと外貨の変化率を掛け合わせて求めます。リスクは両者の分散と相関で決まり、相関によっては通貨が分散効果をもたらします。

  • 国内通貨建てリターン:(1 + R_FC)(1 + R_FX) − 1
  • 複数資産:各資産の国内通貨建てリターンの加重平均
  • リスクは資産リターンと為替の分散・共分散で近似
  • 資産リターンと為替の相関が負ならリスクが低下し得る
σ²(R_DC) ≈ σ²(R_FC)(1 + R_FX)² + σ²(R_FX)(1 + R_FC)² + 2(1 + R_FC)(1 + R_FX)σ(R_FC)σ(R_FX)ρ

LOS 2:通貨マネジメントの戦略的選択

通貨リスクをどの程度とるかはIPSで決める戦略的判断です。完全ヘッジから通貨オーバーレイまでのスペクトラムのどこに位置するかを選びます。

  • パッシブ・ヘッジ:ルールに基づき通貨エクスポージャーを完全にヘッジ
  • 裁量的ヘッジ:ヘッジ比率に一定の裁量の幅を認める
  • アクティブ通貨運用:収益機会を求めて通貨リスクをとる
  • 通貨オーバーレイ:通貨のアルファを積極的に追求
  • 判断要素:分散効果(投資期間、資産の種類、市場環境)とコスト(取引コスト・機会費用)

LOS 3:通貨マネジメント・プログラムの策定

ヘッジ比率は、ポートフォリオの目的と制約、市場環境に応じて決めます。一般に、投資期間が短い、リスク回避度が高い、債券中心、ヘッジコストが低いほど、ヘッジを多めにする方向になります。

  • 投資期間:長期では通貨の影響が平均化するとの見方
  • 資産の種類:債券は為替の影響が相対的に大きく、ヘッジが一般的
  • ヘッジのコスト:ロール・イールドや取引コスト
  • 顧客の知識、リスク回避度、流動性ニーズ
  • 市場環境:為替の変動性、金利差、相場観

LOS 4:アクティブな通貨取引戦略の比較

相場観の形成方法には、経済ファンダメンタルズ、テクニカル分析、キャリー・トレード、ボラティリティ取引があります。それぞれ依拠する前提が異なります。

  • ファンダメンタルズ:通貨の適正価値を推定し、為替がそこに収束すると見込む
  • テクニカル:過去の価格パターンが市場心理により繰り返すと考え、支持線・抵抗線やトレンドを判断
  • キャリー・トレード:低金利通貨を売り高金利通貨を買う(カバーなし金利平価の不成立を利用)
  • キャリーはフォワード・レート・バイアスの利用と同じ:フォワード・プレミアムの通貨を売り、ディスカウントの通貨を買う
  • ボラティリティ取引:オプションで為替水準ではなく分布(変動の大きさ)への見通しを表現

LOS 5:要因の変化と戦術的判断

アクティブ戦略の前提となる要因が変われば、ポジションも見直す必要があります。特に市場のボラティリティや危機時の資金移動は、キャリー・トレードなどに大きな影響を与えます。

  • リスク回避の高まり:キャリー・トレードの急激な巻き戻しによる損失
  • 金利差の変化:キャリーの魅力の変化
  • 経済指標や政策の変化:ファンダメンタルズ上の適正価値の変化
  • ボラティリティの変化:オプションの価格とボラティリティ取引の損益に影響

LOS 6:フォワードとFXスワップによるヘッジ比率の調整

パッシブ・ヘッジでは、柔軟性の高いフォワードが一般的に使われます。満期を迎えたフォワードはFXスワップで乗り換え(ロール)、その際にヘッジ比率を調整します。

  • FXスワップ:スポット取引とフォワード取引の同時実行
  • 満期時のフォワードの乗り換えで、元の予約の損益が現金で決済される
  • 資産価値の変化に合わせてヘッジ額を調整(動的ヘッジ)
  • ロール・イールド:フォワード・ポイントがヘッジに有利にも不利にも働く
  • 小口では通貨先物も使われ、個人資産運用でよく利用される

LOS 7:ヘッジコストの削減とリスク・リターン特性の変更

オプションを使えば有利な為替変動の可能性を残せますが、プレミアムがかかります。コスト削減策は、いずれも下落防御の縮小か上昇余地の縮小との引き換えになります。

  • オーバーヘッジ・アンダーヘッジ(ヘッジ比率の調整)
  • OTMオプションの利用でプレミアムを下げる
  • リスク・リバーサル(カラー):プット買い+コール売りでコストを相殺
  • プット・スプレッド、シーガル(プット・スプレッド+コール売り)
  • エキゾチック・オプション(ノックイン・ノックアウト、デジタルなど)

LOS 8:複数通貨のヘッジ:クロス・ヘッジ、マクロ・ヘッジ、最小分散ヘッジ比率

複数の通貨にさらされる場合も基本的な手段は同じですが、残った通貨エクスポージャー間の相関を考慮します。代替手段によるヘッジはベーシス・リスクを生みます。

  • クロス・ヘッジ(プロキシ・ヘッジ):相関の高い別の通貨でヘッジ
  • マクロ・ヘッジ:個々の通貨ではなくポートフォリオ全体のリスク要因をヘッジ
  • 最小分散ヘッジ比率:国内通貨建てリターンを為替変化率に回帰した傾き
  • ベーシス・リスク:ヘッジ手段とヘッジ対象の値動きのずれ
最小分散ヘッジ比率 h = ρ × σ(R_DC) / σ(R_FX)

LOS 9:新興国通貨エクスポージャーの管理の課題

新興国通貨は、取引コストが高く、流動性が低く、急激な変動(テール・リスク)が起こりやすい点が課題です。資本規制などによりヘッジ手段も限られます。

  • ビッド・オファーの広さなど取引コストが高い
  • リターン分布が非正規で、テール・イベントが起きやすい
  • 危機時には相関が高まり、分散効果が失われやすい
  • 資本規制により、ノン・デリバラブル・フォワード(NDF)を使うことが多い
  • 政府の介入や固定相場制の崩壊のリスク

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。