Learning Module 7「Case Study in Portfolio Management: Institutional (SWF)(機関投資家(SWF)の運用)」は、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を題材に、長期の機関投資家のポートフォリオ戦略に伴う財務リスクと環境・社会リスク、リスク・エクスポージャーの分析、長期直接投資のリスク管理手法、全社的リスク管理(ERM)の評価と改善を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM7のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM7には5つのLOSがあります。

  1. LOS 1:機関投資家のポートフォリオ戦略に伴う財務リスクを論じるdiscuss financial risks associated with the portfolio strategy of an institutional investor
  2. LOS 2:機関投資家のポートフォリオ戦略に伴う環境リスクと社会リスクを論じるdiscuss environmental and social risks associated with the portfolio strategy of an institutional investor
  3. LOS 3:機関投資家のポートフォリオ戦略における財務・非財務のリスク・エクスポージャーを分析・評価するanalyze and evaluate the financial and non-financial risk exposures in the portfolio strategy of an institutional investor
  4. LOS 4:機関投資家の長期直接投資から生じるリスクを管理するさまざまな方法を論じるdiscuss various methods to manage the risks that arise on long-term direct investments of an institutional investor
  5. LOS 5:全社的リスク管理(ERM)体制の長所と短所を評価し、改善策を提言するevaluate strengths and weaknesses of an enterprise risk management system and recommend improvements

LM7のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 年金基金、SWF、大学基金、財団などの長期投資家は、銀行や保険会社と比べて投資期間が長く、流動性の低い資産クラスに投資できる
  • 非流動資産(プライベート・エクイティ、不動産、インフラなど)への投資は、流動性リスクやレバレッジ、評価の不確実性など、定量化しにくい財務リスクを伴う
  • キャピタル・コールや分配のタイミングの不確実性に備えた流動性管理が重要
  • 気候変動などの環境リスクや、労働・地域社会に関わる社会リスクは、長期投資の価値に影響し得る
  • 長期の直接投資では、デューデリジェンス、ガバナンス上の権利、共同投資、分散などによってリスクを管理する
  • ERMは組織全体のリスクを統合的に把握・管理する仕組みで、リスク選好の明確化、独立したリスク管理機能、取締役会による監督が要となる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:長期機関投資家の財務リスク

長期投資家は流動性の低い資産に投資できる反面、流動性リスクをはじめ、定量化しにくい財務リスクを抱えます。特に非流動資産から生じるリスクに注意が必要です。

  • 流動性リスク:キャピタル・コールへの対応、市場ストレス時の資金不足
  • 投資期間の長さを生かせるのは流動性を管理できる場合に限られる
  • レバレッジ:非流動資産に内在する借入れがリスクを増幅
  • 評価リスク:評価の平滑化により実際のボラティリティや相関が過小評価される
  • 集中リスク、為替リスク、運用会社(外部委託)リスク

LOS 2:環境リスクと社会リスク

長期投資家にとって、気候変動などの環境リスク社会リスクは、投資資産の長期的な価値を損なうおそれがあります。投資期間が長いほど、これらのリスクが顕在化する可能性は高まります。

  • 気候変動の物理的リスク:異常気象などによる資産の毀損
  • 移行リスク:規制・技術・需要の変化による座礁資産化
  • 社会リスク:労働慣行、地域社会との関係、人権
  • 評判リスク:国家や公的機関に関わる投資家では特に重要
  • ESGの統合、エンゲージメント、スクリーニングで対応

LOS 3:財務・非財務のリスク・エクスポージャーの分析と評価

ポートフォリオ戦略に含まれる財務リスクと非財務リスクを洗い出し、その大きさと相互の関係を評価します。個々のリスクだけでなく、ポートフォリオ全体での集中や相関を見ることが重要です。

  • 資産クラス、地域、セクター、通貨ごとのエクスポージャー
  • 流動性の低い資産の比率と流動性ニーズの整合性
  • 環境・社会リスクへのエクスポージャー
  • シナリオ分析・ストレス・テストで影響を評価
  • リスクとリスク選好(投資方針)との整合性

LOS 4:長期直接投資のリスク管理手法

インフラやプライベート・エクイティへの直接投資では、投資前のデューデリジェンスと投資後の関与によってリスクを管理します。

  • 事前の十分なデューデリジェンス(財務・ESGを含む)
  • ガバナンス上の権利:取締役の派遣、契約上の保護条項
  • 他の投資家との共同投資によるリスクの分担
  • 資産・地域・時期の分散
  • 保険やヘッジ(為替など)の活用、シナリオ分析

LOS 5:全社的リスク管理(ERM)の評価と改善

ERMは組織全体のリスクを統合的に特定・測定・管理する仕組みです。リスク選好の明確さ、リスク管理機能の独立性、報告と監督の体制などから長所と短所を評価し、改善策を提言します。

  • リスク選好・リスク許容度の明文化
  • リスク管理機能の独立性(3つの防衛線)
  • 取締役会・投資委員会による監督
  • 財務リスクと非財務リスク(環境・社会・業務)の統合的な把握
  • ストレス・テスト、報告体制、定期的な見直し

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