【CFA®︎ L1 Equities LM7】Relative Value Equity Valuation Approaches を要点解説|株価倍率・EV倍率・ピア・グループ・正当化倍率

Learning Module 7「Relative Value Equity Valuation Approaches(相対価値による株式評価)」は、類似企業比較法と予想ファンダメンタルズ法による倍率評価のプロセス、株価倍率と企業価値(EV)倍率の計算と用途、業種分類や期待リターンのドライバーに基づくピア・グループの選定、そして過去・現在・将来の値に基づく倍率の使い方を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM7のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM7には4つのLOSがあります。
- LOS 1:類似企業比較法と予想ファンダメンタルズ法に基づき、倍率を用いて株式を評価するプロセスを説明するexplain the process for using multiples to value equity based on the method of comparables and the method of forecasted fundamentals
- LOS 2:株価倍率と企業価値倍率を計算・解釈し、その適切な用途を説明するcalculate and interpret price and enterprise value multiples, and describe their appropriate uses
- LOS 3:企業の業種分類または期待リターンの特定のドライバーに基づいて、倍率による株式評価のための潜在的なピア・グループを決定するdetermine a potential peer group for multiples-based equity valuation based on a company’s industry classification or specific drivers of expected return
- LOS 4:過去・現在・予想将来の値に基づく倍率を株式価値の推定に用いる方法を説明するdescribe the use of multiples based on past, current, and projected future values in estimating equity value
LM7のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 相対評価のプロセスは、適切な倍率の選択、代表的なピア・グループの設定、対象企業とピアの倍率の計算と解釈から成り、その結果を用いて本源的価値と市場価格を比べる
- 特性の似た企業間の倍率の違いは、収益性、成長性、利益の再投資など、価値のファンダメンタルなドライバーの違いを反映しているはず
- 倍率の分子は株式価値または企業価値で、分母には同じ資本提供者に帰属する損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローの指標を用いる
- 倍率はキャッシュフロー・リスク・成長の特徴によってピア企業間で大きく異なり得る
- 比較企業は、対象企業と同じ業種・国・地域市場に属し、事業内容や規模が似た企業から選ばれることが多い
- ピア・グループは、対象企業と株式市場全体の関係など、株式のリスクとリターンを説明する統計的特性やファクターで選ぶこともできる
- 過去の倍率は、企業のプラス・マイナスのトレンドや、業界・市場ベンチマークに対する倍率の推移を把握するのに使える
- ターミナル・バリューの推定値は、暗黙的または明示的に将来の期待倍率を反映しており、相対評価は現在価値モデルのターミナル・バリューの推定にも使える
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:類似企業比較法と予想ファンダメンタルズ法
類似企業比較法は、ピア・グループを設定し、適切な倍率を選び、対象企業と比較企業の倍率を計算・解釈して割安・割高を判断する方法です。予想ファンダメンタルズ法は、定率成長モデルなどから倍率をROE・成長率・株主資本コストなどのファンダメンタルズで表した正当化倍率を求め、実際の倍率と比べます。
- 類似企業比較法の考え方:似たキャッシュフローを生む似た企業は似た価格で取引されるべき
- 倍率の差は収益性・成長性・利益の再投資などファンダメンタルズの違いで説明されるべき
- 正当化P/B =(ROE − g)÷(r − g):ROEと株主資本コストの差が倍率を決める
- PEGレシオ=P/E ÷ 予想EPS成長率:成長率の違いを調整。高いほど割高の可能性
- 倍率をROE・成長率・株主資本コストに回帰して関係を推定する方法もある
LOS 2:株価倍率とEV倍率
倍率の分子には株式の市場価値(株価)か企業価値(EV)を使い、分母には同じ資本提供者に帰属する損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の指標を用います。株価倍率はP/E・P/B・P/S・配当利回りなど、EV倍率はEV/EBITDA・EV/売上高・EV/投下資本などです。
- 分子と分母の整合性:株主に帰属する指標(純利益・簿価)には株価、全資本提供者に帰属する指標(EBITDA・EBIT・売上高)にはEV
- P/E:実績(trailing)と予想(forward)。益利回り E/P と株主資本コストから成長機会の現在価値(PVGO)を推定
- 正当化実績P/E=配当性向 ×(1 + g)÷(r − g)、正当化P/Sはこれに純利益率を掛ける
- EV/EBITDA:資本構成や税・減価償却の違いの影響を抑えて比較でき、純損失の企業にも使える
- EV/投下資本:レバレッジの違いの影響を受けにくく、P/Bの代わりに使われる
- 配当利回りは配当性向と益利回りの積で表せ、予想配当利回りは r − g に等しい
LOS 3:ピア・グループの決定
ピア・グループは、同じ主要事業を営む企業(業種ベース)か、株式のリスク・リターンを説明する統計的特性やファクター(ファクター・ベース)で選びます。業種ベースは直感的ですが、比較可能な企業が少ない場合や複数業種にまたがる企業では工夫が必要です。
- 業種ベース:同じ業種・国・地域で、事業内容と規模が近い企業
- 業種ベースの課題:集中した業種や独自性の強い企業、ライフサイクル段階のばらつき、法域の違い(規制・税)、複数業種にまたがる企業
- 対応:現在価値モデルを重視、段階の異なる企業の除外、事業ごとの倍率を売上高・利益・資産の構成比で加重平均
- 外れ値は除外、中央値の利用、非経常項目の調整で対処
- ファクター・ベース:CAPMのベータなどが近い企業を比較。システマティック・リスクが似た企業群を基準にでき、業種ベースの制約を補う
- ファクター・ベースの欠点:モデルの誤設定、ファクターの長期的な不振や循環性
LOS 4:過去・現在・将来の値に基づく倍率
現在の倍率は直近の利益などを使うため、非経常項目や会計方針、景気循環の影響を受けやすくなります。過去の倍率は自社の推移や同業の過去平均との比較でトレンドを把握し、将来の予想値に基づく倍率は予想P/Eなどで比較するとともに、現在価値モデルのターミナル・バリューの推定にも使われます。
- ピア・グループ自体が適正に評価されているとは限らない(業界や市場全体が割高な可能性)
- 相対評価は現在価値モデルと組み合わせて使うのが望ましい
- 過去の倍率の2つの使い方:自社の過去との比較、同業他社の過去平均との比較
- 将来の倍率:予想利益を分母に使い、足元が赤字でも意味のある倍率が得られる場合がある
- ターミナル・バリュー=予想される将来の倍率 × 将来の指標
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