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企業分析の計算式(ROE・流動比率・損益分岐点)|外務員試験の要点

企業分析 ROE・損益分岐点

結論:企業分析は「式を正しく覚えて、分子と分母を取り違えない」ことがすべてです。五肢選択の計算問題で点を稼げる数少ない分野です。

  • 収益性:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本。ROA = 利益 ÷ 総資本で、分子の利益は当期純利益・経常利益・事業利益など定義が複数あるため問題文の指定に従う。ROE = 売上高純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ
  • 安全性:流動比率・当座比率は高いほど安全固定比率・固定長期適合率・負債比率は低いほど安全
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
  • 配当性向 = 配当金 ÷ 当期純利益、配当率 = 配当金 ÷ 資本金

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第3巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。計算の前提になるB/S・P/Lの構造は財務諸表の仕組みと読み方、PER・PBRなど株価を使う指標は株式業務③証券投資計算で扱っています。

企業分析の目的

企業分析(財務分析)は、財務諸表の数字を比率にして、会社の稼ぐ力(収益性)つぶれにくさ(安全性)伸びる力(成長性)などを評価するものです。比率にすることで、規模の違う会社どうしや、同じ会社の過去との比較ができるようになります。

投資家にとっては株価の割安・割高を考える材料、債権者にとっては貸したお金が返ってくるかを判断する材料になります。

この記事で使うサンプル企業

以下の計算例題はすべてこの数字を使います(単位:百万円、B/Sは期末の数字で簡便に計算)。

損益計算書 金額
売上高 10,000
売上総利益 4,000
営業利益 1,000
受取利息・配当金(営業外収益) 50
支払利息(営業外費用) 150
経常利益 900
当期純利益 500
貸借対照表 金額
流動資産 4,000(うち当座資産2,500、棚卸資産1,200)
固定資産 6,000
総資産(総資本) 10,000
流動負債 2,500
固定負債 2,500
自己資本 5,000

当座資産は、現金預金・売上債権・有価証券などすぐにお金に換えられる資産です。棚卸資産は売れるまで現金にならないので含めません。自己資本は、純資産から新株予約権と非支配株主持分を除いたものです。

収益性分析

資本利益率(ROE・ROA)

指標 ポイント
ROE(自己資本利益率) 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 株主のお金でどれだけ稼いだか。連結では親会社株主に帰属する当期純利益を使う
ROA(総資本利益率) 利益 ÷ 総資本(総資産)× 100 会社全体の資産でどれだけ稼いだか。分子の「利益」に何を使うかで定義が複数ある(下表)
ROAの分子 使われる場面
当期純利益 当期純利益 ÷ 総資本 × 100 ROE = ROA × 財務レバレッジの関係を使うとき。株式業務③証券投資計算のROAはこの定義
経常利益 経常利益 ÷ 総資本 × 100(総資本経常利益率) 財務活動を含めた経常的な収益力をみるとき
事業利益 (営業利益 + 受取利息・配当金)÷ 総資本 × 100 資金の出し手(株主・債権者)全体に対する収益力をみるとき

試験では「ROA(経常利益ベース)」のように分子が指定されるか、選択肢から判断できる形で出ます。指定がないときは、問題文で与えられた利益の種類を確認してから計算してください。

分母の資本は、本来は期首と期末の平均を使います。試験では問題文の指示に従い、期末の数字だけが与えられていればそれで計算します。

売上高利益率

指標 サンプル企業
売上高総利益率 売上総利益 ÷ 売上高 × 100 4,000 ÷ 10,000 = 40%
売上高営業利益率 営業利益 ÷ 売上高 × 100 1,000 ÷ 10,000 = 10%
売上高経常利益率 経常利益 ÷ 売上高 × 100 900 ÷ 10,000 = 9%
売上高当期純利益率 当期純利益 ÷ 売上高 × 100 500 ÷ 10,000 = 5%

回転率(効率性)

指標 意味
総資本回転率 売上高 ÷ 総資本(回) 資本が1年で何回売上に変わったか。高いほど効率的
固定資産回転率 売上高 ÷ 固定資産(回) 設備の使い方の効率
棚卸資産回転率 売上高 ÷ 棚卸資産(回) 在庫が売れる速さ。低下は在庫の積み上がりのサイン
売上債権回転率 売上高 ÷ 売上債権(回) 代金回収の速さ

デュポン分解(ROEの3分解)

ROEは3つの比率の掛け算に分解できます。どこでROEを稼いでいるかが分かるので、試験でも実務でもよく使われます。

要素 何を表すか
売上高当期純利益率 当期純利益 ÷ 売上高 もうけの厚さ(収益性)
総資本回転率 売上高 ÷ 総資本 資産の使い方(効率性)
財務レバレッジ 総資本 ÷ 自己資本 借入れの活用度(自己資本比率の逆数)

財務レバレッジを上げればROEは上がりますが、それは借入れを増やして安全性を下げることでもあります。ROEが高いだけで良い会社とは言えない、というのが試験でも問われる考え方です。

安全性分析

指標 望ましい方向
流動比率 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 高いほど短期の支払能力が高い(200%以上が理想とされる)
当座比率 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 高いほど安全(100%以上が目安とされる)。在庫を除くので流動比率より厳しい
固定比率 固定資産 ÷ 自己資本 × 100 低いほど安全(100%以下が理想)
固定長期適合率 固定資産 ÷(自己資本 + 固定負債)× 100 低いほど安全。100%を超えると設備を短期資金でまかなっている
負債比率 負債 ÷ 自己資本 × 100 低いほど安全
自己資本比率 自己資本 ÷ 総資本 × 100 高いほど安全
インタレスト・カバレッジ・レシオ (営業利益 + 受取利息・配当金)÷ 支払利息・割引料(倍) 高いほど利払いに余裕がある

覚え方は「固定資産を分子に置く比率(固定比率・固定長期適合率)と負債比率は低いほうが良い、それ以外は高いほうが良い」です。固定資産は長く寝かせる資産なので、返済不要の自己資本や、返済期限の長い固定負債でまかなうべき、という考え方です。

損益分岐点分析

費用を、売上高に比例して増える変動費(材料費・外注費など)と、売上高に関係なく発生する固定費(人件費・減価償却費・家賃など)に分けて、利益がちょうどゼロになる売上高を求めます。

項目
変動費率 変動費 ÷ 売上高
限界利益率 1 − 変動費率(売上高1円あたりの固定費回収力)
損益分岐点売上高 固定費 ÷(1 − 変動費率)
損益分岐点比率 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100(低いほど良い)
安全余裕率 (実際の売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高 × 100(高いほど良い)
目標利益を達成する売上高 (固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)

損益分岐点比率 + 安全余裕率 = 100%です。安全余裕率は「売上があと何%減っても赤字にならないか」を表します。固定費の比率が高い会社は、損益分岐点を超えると利益が急に増え、下回ると急に減ります。

キャッシュ・フロー分析

利益は会計上の考え方で調整されるため、実際の資金の動きと一致しません。キャッシュ・フロー計算書を使うと、利益の「質」を確かめられます。

見るポイント 内容
営業C/Fと当期純利益 利益が出ているのに営業C/Fがマイナスなら、売掛金や在庫の積み上がりを疑う
フリー・キャッシュ・フロー 営業C/F + 投資C/F。借入返済・配当・自社株買いに回せる資金の目安
営業C/Fと設備投資 設備投資を営業C/Fの範囲内でまかなえているか

成長性分析

指標
増収率(売上高成長率) (当期売上高 − 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100
経常増益率 (当期経常利益 − 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100
総資本増加率 (当期末総資本 − 前期末総資本)÷ 前期末総資本 × 100

分母は前期の数字です。当期の数字で割る選択肢はひっかけです。売上の伸び以上に利益が伸びていれば、収益性も改善していると読めます。

配当性向と配当率

指標 意味
配当性向 年間配当金総額 ÷ 当期純利益 × 100(1株あたりなら1株当たり配当金 ÷ EPS) 利益のうち何%を配当に回したか
配当率 年間配当金総額 ÷ 資本金 × 100 資本金に対する配当の割合
株主資本配当率(DOE) 年間配当金総額 ÷ 自己資本 × 100(= 配当性向 × ROE。分母に株主資本を使う定義もある) 自己資本に対する配当の割合
内部留保率 100% − 配当性向 利益のうち社内に残した割合

配当性向(利益が分母)と配当率(資本金が分母)、配当利回り(株価が分母)は名前が似ているので、分母で区別してください。

総合評価の考え方

1つの指標だけで会社の良し悪しは決められません。同じ会社の過去からの推移(時系列比較)と、同業他社との比較を組み合わせて判断します。業種によって標準的な水準は大きく違います。例えば設備の重い業種は固定比率が高く総資本回転率が低くなりやすく、小売業は利益率が低い代わりに回転率が高くなりやすい、といった特徴があります。

比率どうしの関係を押さえる

計算問題では、与えられていない数字を別の比率から逆算させることがあります。次の関係を覚えておくと、途中の計算を1〜2段省けます。

関係 例(自己資本比率50%の場合)
財務レバレッジ 1 ÷ 自己資本比率 1 ÷ 0.5 = 2.0倍
負債比率 (1 − 自己資本比率)÷ 自己資本比率 0.5 ÷ 0.5 = 100%
ROEとROA ROE = ROA(当期純利益ベース)× 財務レバレッジ ROA5%なら ROE10%
ROAの分解 ROA = 売上高利益率 × 総資本回転率 5% × 1.0回 = 5%
DOE 配当性向 × ROE 30% × 10% = 3%

同じROE10%でも、「利益率が高い会社」と「借入れで財務レバレッジを高めている会社」では中身がまったく違います。自己資本比率が低いほど財務レバレッジは大きくなり、ROEはROAより大きく振れやすくなります。景気が悪化して利益が減ると、ROEの落ち込みも大きくなる点に注意してください。

指標を読むときの注意点

  • 自己資本が非常に小さい(債務超過に近い)会社は、ROEが見かけ上とても高くなることがある
  • 特別利益で当期純利益が一時的に膨らむと、ROEや配当性向がゆがむ。本業の力は営業利益・経常利益ベースの比率でも確認する
  • 自社株買いで自己資本が減るとROEは上がるが、会社の稼ぐ力が上がったわけではない
  • 流動比率が高くても、中身が売れ残りの在庫ばかりなら支払能力は高くない。当座比率とあわせて見る

計算例題

例題1(ROE・ROAとデュポン分解)

サンプル企業のROE、ROA(経常利益ベース)を求め、ROEを3分解せよ。

ROE = 500 ÷ 5,000 × 100 = 10%

ROA = 900 ÷ 10,000 × 100 = 9%

3分解:売上高純利益率 500 ÷ 10,000 = 5% × 総資本回転率 10,000 ÷ 10,000 = 1.0回 × 財務レバレッジ 10,000 ÷ 5,000 = 2.0倍

答え:ROE10%(= 5% × 1.0 × 2.0)、ROA9%

例題2(安全性の比率)

サンプル企業の流動比率・当座比率・固定比率・固定長期適合率・負債比率・自己資本比率は?

流動比率 = 4,000 ÷ 2,500 × 100 = 160%

当座比率 = 2,500 ÷ 2,500 × 100 = 100%

固定比率 = 6,000 ÷ 5,000 × 100 = 120%

固定長期適合率 = 6,000 ÷(5,000 + 2,500)× 100 = 80%

負債比率 =(2,500 + 2,500)÷ 5,000 × 100 = 100%

答え:自己資本比率 = 5,000 ÷ 10,000 × 100 = 50%(ほかは上記のとおり)

例題3(インタレスト・カバレッジ・レシオと回転率)

サンプル企業のインタレスト・カバレッジ・レシオと棚卸資産回転率は?

インタレスト・カバレッジ・レシオ =(1,000 + 50)÷ 150 = 7.0

棚卸資産回転率 = 10,000 ÷ 1,200 = 8.33…回

答え:7.0倍、約8.3回

例題4(損益分岐点)

売上高10,000、変動費6,000、固定費3,000の会社。損益分岐点売上高、安全余裕率、営業利益を1,400にするための売上高は?

変動費率 = 6,000 ÷ 10,000 = 0.6

損益分岐点売上高 = 3,000 ÷(1 − 0.6)= 7,500

安全余裕率 =(10,000 − 7,500)÷ 10,000 × 100 = 25%(損益分岐点比率は75%)

目標売上高 =(3,000 + 1,400)÷ 0.4 = 11,000

答え:損益分岐点売上高7,500、安全余裕率25%、必要売上高11,000

例題5(成長率と配当)

サンプル企業の前期売上高が8,000、当期の年間配当金総額が150、資本金が1,000のとき、増収率・配当性向・配当率・DOEは?

増収率 =(10,000 − 8,000)÷ 8,000 × 100 = 25%

配当性向 = 150 ÷ 500 × 100 = 30%

配当率 = 150 ÷ 1,000 × 100 = 15%

DOE = 150 ÷ 5,000 × 100 = 3%(= 配当性向30% × ROE10%)

答え:増収率25%、配当性向30%、配当率15%、DOE3%

例題6(逆算)

ROAが4%(当期純利益ベース)、自己資本比率が40%の会社のROEと負債比率は?

財務レバレッジ = 1 ÷ 0.4 = 2.5倍 → ROE = 4% × 2.5 = 10%

負債比率 =(1 − 0.4)÷ 0.4 × 100 = 150%

答え:ROE10%、負債比率150%

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 固定比率は、数値が高いほど財務の安全性が高いとされる。

答え:× 固定比率(固定資産 ÷ 自己資本)は低いほど安全です。

問2. 当座比率は、流動資産を流動負債で割って求める。

答え:× それは流動比率です。当座比率は棚卸資産などを除いた当座資産を流動負債で割ります。

問3. ROEは、売上高当期純利益率、総資本回転率、財務レバレッジの積で表すことができる。

答え:○ デュポン分解です。財務レバレッジは総資本 ÷ 自己資本です。

問4. 固定費2,000、変動費率60%の会社の損益分岐点売上高は3,333である。

答え:× 2,000 ÷(1 − 0.6)= 5,000です。変動費率そのもので割る(2,000 ÷ 0.6)と誤答になります。

問5. 安全余裕率が高いほど、売上高の減少に対する抵抗力が強い。

答え:○ 安全余裕率は、売上があと何%減っても赤字にならないかを示します。

問6. 固定長期適合率は、固定資産を自己資本と流動負債の合計で割って求める。

答え:× 分母は自己資本と固定負債の合計です。

問7. 配当性向は、年間配当金を資本金で割って求める。

答え:× それは配当率です。配当性向は年間配当金を当期純利益で割ります。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

ここで覚えた比率は、証券アナリストが企業を評価するときの入口そのものです。数字の計算から一歩進んで「この会社のROEは持続するのか」を考えたくなったら、財務分析と企業価値評価を本格的に学ぶ証券アナリスト(CMA)やCFA®が次の選択肢になります。

銀行・証券・保険・アセマネで働く人が、外務員の次にどんな資格を取っているかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 安全性の比率で「低いほど良い」のはどれですか?

A. 固定比率、固定長期適合率、負債比率です。流動比率、当座比率、自己資本比率、インタレスト・カバレッジ・レシオは高いほど安全と判断します。

Q. 損益分岐点売上高の式を教えてください。

A. 固定費 ÷(1 − 変動費率)です。変動費率は変動費 ÷ 売上高で求めます。例えば固定費3,000、変動費率60%なら、3,000 ÷ 0.4 = 7,500が損益分岐点売上高です。

Q. ROEとROAの違いは何ですか?

A. ROEは当期純利益を自己資本で割り、株主のお金でどれだけ稼いだかを見ます。ROAは利益を総資本で割り、会社全体の資産でどれだけ稼いだかを見ます。ROAの分子には当期純利益・経常利益・事業利益など複数の定義があるので、問題文の指定に従います。借入れを増やすとROEは上がりやすくなりますが、ROAは変わりにくい点が違いです。

Q. 配当性向と配当率はどう違いますか?

A. 分母が違います。配当性向は年間配当金を当期純利益で割り、利益のうち何%を配当したかを表します。配当率は年間配当金を資本金で割ったものです。

参考(2026年9月確認):企業会計基準委員会「企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準」、金融庁(企業会計審議会)「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」、日本証券業協会「外務員資格試験」。比率の定義は教材や実務で細部が異なることがあるため、試験では問題文の指示に従って計算してください。