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株式会社法①設立・株式・株主の権利|外務員試験の要点

株式会社法① 設立・株式・株主

結論:会社法①は「数字と要件の暗記」です。少数株主権の持株要件と6か月の保有期間、設立の2つの方法の違い、株式分割と併合の決議機関で、確実に点を取りましょう。

  • 設立は発起設立(発起人が全株を引受け)と募集設立(発起人以外からも募集。創立総会払込金保管証明が必要)
  • 株式分割は取締役会決議(取締役会設置会社)、株式併合は株主総会の特別決議
  • 単元株式数の上限は1,000株かつ発行済株式総数の200分の1
  • 公開会社の少数株主権・代表訴訟などには原則6か月の保有期間。ただし帳簿閲覧(3%)と解散の訴え(10%)には保有期間の要件がない
  • 株主平等の原則、株主の権利行使に関する利益供与の禁止、自己株式には議決権も配当もないこと

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第3巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

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動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。株主総会・取締役など機関の話は株式会社法概論②機関・計算・組織再編で扱います。

序説:会社の種類

会社法上の会社は、株式会社持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の4種類です。持分会社は出資者(社員)がそのまま経営にあたるのが原則で、株式会社は出資者(株主)と経営者(取締役)が分かれています。

会社の種類 出資者の責任
株式会社 株主は全員有限責任(引き受けた株式の出資額が限度)
合名会社 社員全員が無限責任
合資会社 無限責任社員と有限責任社員が各1人以上
合同会社 社員全員が有限責任

2006年施行の会社法で有限会社は新たに設立できなくなり(既存の会社は特例有限会社として存続)、最低資本金制度も廃止されました。資本金1円でも株式会社を設立できます。なお、会社法については2026年3月に法制審議会の部会で「株式・株主総会等関係の見直しに関する中間試案」が取りまとめられ、審議が続いています。この記事は2026年9月時点で施行されている条文に基づきます。

株式会社の特色

  • 株式:会社の社員(株主)としての地位を、均等な割合に細分化したもの。多くの人から少しずつ出資を集められる
  • 株主の有限責任:株主は引き受けた株式の引受価額を限度とする責任しか負わない(会社法第104条)。会社の債権者に直接責任を負わない
  • 資本金:株主が有限責任である代わりに、会社財産を確保する目安となる金額
  • 所有と経営の分離:出資者(株主)が経営者(取締役)を選び、経営を任せる
  • 株式譲渡自由の原則:株主は原則として株式を自由に譲渡して投下資本を回収できる
用語 定義
公開会社 発行する株式の全部または一部について、譲渡制限の定めがない会社。上場しているかどうかとは関係ない
公開会社でない会社(非公開会社) すべての株式に譲渡制限がある会社
大会社 最終事業年度の貸借対照表で、資本金5億円以上または負債の合計額200億円以上の会社

「一部の株式だけに譲渡制限がない会社も公開会社」「上場会社でなくても公開会社になりうる」という2点がひっかけになります。

株式会社の設立

株式会社の設立は、発起人(設立の企画者)が定款を作成し、公証人の認証を受けることから始まります。発起人は1人でもよく、法人でもなれます。各発起人は株式を1株以上引き受けなければなりません。会社は本店所在地で設立の登記をすることによって成立します。

定款の記載事項

区分 内容
絶対的記載事項 目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名(名称)・住所。発行可能株式総数も成立までに定める必要がある。欠けると定款が無効
相対的記載事項 定款に書かないと効力が生じない事項。代表例が変態設立事項(現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用)
任意的記載事項 定款に書かなくても効力に影響しないが、明確にするために書く事項(事業年度、定時株主総会の時期など)

変態設立事項は会社の財産を不当に減らすおそれがあるため、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受けます。

発起設立と募集設立

項目 発起設立 募集設立
株式の引受け 設立時に発行する株式の全部を発起人が引き受ける 発起人が一部を引き受け、残りは発起人以外から募集する
設立時役員の選任 発起人が選任 創立総会で選任
払込みの証明 払込取扱機関の払込金保管証明は不要(預金口座の残高証明などで足りる) 払込取扱機関の払込金保管証明書が必要
手続の重さ 簡単。実務の大半はこちら 創立総会の招集など手続が重い

創立総会の決議は、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上にあたる多数で行います(会社法第73条)。株主総会の特別決議とは要件が違うので注意しましょう。

株式:分割・併合・無償割当て・単元株

株式の分割と併合

項目 株式の分割 株式の併合
内容 1株を複数の株に分ける(例:1株→2株) 複数の株を1株にまとめる(例:10株→1株)
決議機関 株主総会の普通決議(取締役会設置会社は取締役会決議) 株主総会の特別決議。取締役は併合を必要とする理由を説明する
株主への影響 持株比率は変わらない。1株あたりの価格は下がり、投資しやすくなる 1株に満たない端数が生じ、株主の地位を失う人が出るおそれがある
株主の保護 とくになし 端数が生じる場合、反対株主の株式買取請求、差止請求などの保護がある

株式分割によって発行済株式総数が増えても、発行可能株式総数を超える場合には、一定の範囲内で株主総会の決議なしに定款を変更して発行可能株式総数を増やすことができます。株式無償割当て(株主に新たな払込みなしで株式を割り当てる)は分割と似ていますが、自己株式を交付できる点や、異なる種類の株式を割り当てられる点が異なります。

単元株制度

単元株制度は、一定数の株式を「1単元」とし、1単元につき1個の議決権を認める制度です。定款で定めます。上場会社の売買単位は現在すべて100株に統一されています。

項目 内容
上限 1,000株および発行済株式総数の200分の1を超えることはできない(会社法第188条第2項、会社法施行規則第34条)
導入・増加 原則として定款変更(株主総会の特別決議)。株式分割と同時に行い、各株主の議決権が減らない場合は株主総会の決議は不要
減少・廃止 取締役会設置会社は取締役会の決議で定款変更できる(株主に不利益がないため)
単元未満株主の権利 議決権はない。ただし単元未満株式の買取請求権は定款でも奪えない。剰余金の配当を受ける権利なども一定の範囲で認められる

例題1(単元株式数の上限)発行済株式総数が10万株の会社が定めることのできる単元株式数の上限は何株か。

式:上限=「1,000株」と「発行済株式総数×1/200」のいずれも超えない数

計算:100,000×1/200=500株。1,000株と500株の両方を超えてはならない

答え:500株

例題2(株式分割と議決権)単元株式数100株の会社で300株を持つ株主がいる。1株を2株に分割し、同時に単元株式数を200株に変更した。この株主の議決権の数はどうなるか。

計算:分割前 300÷100=3個。分割後の株式数 300×2=600株、600÷200=3個

答え:3個のまま(議決権が減らないので、株主総会の決議なしで単元株式数を増やせる典型例)

種類株式

会社は、権利の内容が異なる複数の種類の株式を発行できます(会社法第108条)。剰余金の配当、残余財産の分配、議決権制限、譲渡制限、取得請求権付、取得条項付、全部取得条項付、拒否権付(いわゆる黄金株)、取締役・監査役の選任権付(非公開会社のみ)の9種類です。公開会社では、議決権制限株式が発行済株式総数の2分の1を超えたときは、直ちに2分の1以下にするための措置をとらなければなりません(会社法第115条)。

株主の権利

自益権と共益権

区分 意味
自益権 株主が会社から経済的な利益を受ける権利 剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株式買取請求権
共益権 会社の経営に参加・監督する権利 議決権、株主提案権、代表訴訟提起権、帳簿閲覧請求権、各種の訴え

剰余金配当請求権と残余財産分配請求権の両方を全部与えない定款の定めは無効です。

単独株主権と少数株主権

1株(単元株制度があれば1単元)でも行使できる権利を単独株主権、総株主の議決権や発行済株式の一定割合以上を持つ株主だけが行使できる権利を少数株主権といいます。権利の濫用を防ぐため、公開会社では多くの権利に6か月前から引き続き保有という要件があります(定款で引下げ・短縮可。非公開会社では保有期間の要件はありません)。

権利 持株要件 保有期間(公開会社)
議決権・剰余金配当請求権など 1株(1単元)から=単独株主権 不要
株主代表訴訟の提起 単独株主権 6か月
取締役の違法行為差止請求 単独株主権 6か月
株主総会決議取消しの訴え 単独株主権(決議の日から3か月以内に提訴) 不要
株主提案権(議題提案権) 取締役会設置会社では総株主の議決権の1%以上または300個以上(総会の8週間前までに請求) 6か月
総会検査役の選任請求 総株主の議決権の1%以上 6か月
株主総会の招集請求 総株主の議決権の3%以上 6か月
役員の解任の訴え 総株主の議決権または発行済株式の3%以上 6か月
会計帳簿の閲覧請求 総株主の議決権または発行済株式の3%以上 不要
業務執行に関する検査役の選任請求 総株主の議決権または発行済株式の3%以上 不要
解散の訴え 総株主の議決権または発行済株式の10%以上 不要

覚え方は「1%は提案、3%は招集・解任・帳簿、10%は解散」。そのうえで「帳簿閲覧と解散の訴えには6か月要件がない」をセットにしておくと、保有期間のひっかけに強くなります。取締役会設置会社では、株主が招集通知に議案の要領を記載するよう請求できる議案の数は10までに制限されています。

株主平等の原則と利益供与の禁止

会社は、株主をその有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければなりません(株主平等の原則、会社法第109条)。持株数に比例した扱い(1株1議決権、持株数に応じた配当)は平等原則に反しません。

また会社は、誰に対しても株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与してはなりません(会社法第120条)。いわゆる総会屋対策の規定で、違反して利益を受けた者は会社に返還しなければならず、関与した取締役は供与額に相当する額の支払義務を負い、刑事罰の対象にもなります。

株式の譲渡と自己株式

株式の譲渡

株式は原則として自由に譲渡できます(会社法第127条)。例外として、定款で譲渡による取得に会社の承認を要する旨を定めること(譲渡制限株式)ができます。承認機関は、取締役会設置会社では原則として取締役会、それ以外は株主総会です。

自己株式

会社が保有する自社の株式を自己株式(金庫株)といいます。株主との合意による取得には、原則として株主総会の普通決議で、取得する株式の数、対価の総額、1年以内の取得期間を定めます。

項目 ルール
市場取引・公開買付けによる取得 定款で定めれば取締役会の決議で取得できる(取締役会設置会社)
特定の株主からの取得 株主総会の特別決議。他の株主は自分を売主に加えるよう請求できる(売主追加請求権)
財源規制 取得の対価の総額は、原則として分配可能額を超えられない
保有期間・数量 制限なし(期間の定めなく保有できる)
議決権・配当 自己株式には議決権がなく、剰余金の配当も受けられない
消却 取締役会設置会社は取締役会の決議で消却できる
処分 募集株式の発行と同じ手続による

株券と株主名簿・株券電子化

会社法では、株券を発行しないのが原則です。株券を発行するには定款で定める必要があります(株券発行会社)。上場会社の株式は、2009年1月5日の株券電子化により、株券が無効となり、証券保管振替機構と証券会社などの口座で管理される振替制度に移行しました。

項目 内容
株主名簿 株主の氏名・住所、保有株式数などを記載。会社は株主名簿管理人(信託銀行など)に事務を委託できる
名義書換の効果 株式の譲受人は、株主名簿の名義書換をしなければ会社その他の第三者に対抗できない(株券発行会社では会社に対抗できない)
基準日 一定の日の株主名簿上の株主を権利者と定める制度。権利を行使できるのは基準日から3か月以内のものに限られる
振替株式の場合 振替機関からの総株主通知によって株主名簿が書き換えられる。少数株主権などを行使するには、振替機関を通じた個別株主通知が必要

上場株式の売買と受渡しの流れは株式業務①売買の形態・注文の受託で確認してください。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 公開会社とは、金融商品取引所に株式を上場している会社をいう。

答え:× 公開会社は、発行する株式の全部または一部に譲渡制限がない会社のことで、上場の有無とは関係ありません。

問2. 発起設立の場合、払込取扱機関による払込金保管証明書が必要である。

答え:× 払込金保管証明が必要なのは募集設立です。発起設立では残高証明などで足ります。

問3. 取締役会設置会社が株式の併合を行うには、取締役会の決議で足りる。

答え:× 株式の併合は株主総会の特別決議が必要です。取締役会決議でできるのは株式の分割です。

問4. 単元株式数は、1,000株および発行済株式総数の100分の1を超えることはできない。

答え:× 100分の1ではなく200分の1です。

問5. 公開会社において、会計帳簿の閲覧請求権を行使するには、総株主の議決権の3%以上を6か月前から引き続き保有していなければならない。

答え:× 帳簿閲覧請求権には保有期間の要件はありません。

問6. 公開会社の株主が株主総会の招集を請求するには、総株主の議決権の3%以上を6か月前から引き続き保有している必要がある。

答え:○ 会社法第297条のとおりです(定款で引下げ・短縮可)。

問7. 会社は、自己株式について剰余金の配当を受けることができる。

答え:× 自己株式には剰余金の配当も議決権もありません。

問8. 株主代表訴訟は少数株主権であり、総株主の議決権の1%以上を有する株主でなければ提起できない。

答え:× 株主代表訴訟は単独株主権です(公開会社では6か月の保有期間が必要)。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

株主の権利や自己株式の仕組みは、配当政策や自社株買いを分析するときの前提知識です。企業価値と株主還元をどう評価するかは、証券アナリスト(CMA)やCFA®の中心テーマのひとつで、会社法で学んだ制度がそのまま土台になります。

金融機関で働く人が、外務員の次にどんな資格を目指しているかはこちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 発起設立と募集設立の違いは何ですか?

A. 発起設立は設立時の株式の全部を発起人が引き受ける方法、募集設立は発起人以外からも株式の引受人を募集する方法です。募集設立では創立総会の開催と、払込取扱機関の払込金保管証明が必要になります。

Q. 少数株主権の保有期間6か月は、どの権利に必要ですか?

A. 公開会社では、株主提案権(1%以上または300個以上)、株主総会の招集請求(3%以上)、役員の解任の訴え(3%以上)などに6か月の保有期間が必要です。会計帳簿の閲覧請求(3%以上)と解散の訴え(10%以上)には保有期間の要件がありません。

Q. 単元株式数の上限はいくつですか?

A. 1,000株と発行済株式総数の200分の1のいずれも超えることはできません(会社法第188条第2項、会社法施行規則第34条)。

Q. 自己株式に議決権や配当はありますか?

A. ありません。会社が保有する自己株式には議決権がなく、剰余金の配当も受けられません。保有期間や保有数量の制限はありません。

参考(2026年9月確認):e-Gov法令検索「会社法」(第2条、第25条〜第103条、第104条〜第235条、第297条、第303条、第306条、第358条、第433条、第833条、第847条、第854条ほか)、「会社法施行規則」第34条、法務省「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」(2026年3月)。法令は改正されることがあるため、最新の条文はe-Gov法令検索でご確認ください。