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株式業務②信用取引(制度信用・一般信用)と外国株式|外務員試験の要点

株式業務② 信用取引と外国株式

結論:信用取引は二種でも基礎が出ます。「30%・30万円・20%・6か月」と、制度信用と一般信用の違いを表で覚えれば得点源になります。

  • 委託保証金は約定価額の30%以上(最低30万円)。保証金の約3.3倍まで取引できる
  • 受入保証金が約定価額の20%を下回ると追証
  • 制度信用は返済期限最長6か月で貸借取引が使える。一般信用は期限・品貸料を顧客と証券会社が決め、貸借取引は使えない
  • 外国株式の取引には外国証券取引口座の開設が必要。取引の形は外国取引・国内店頭取引・国内委託取引

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種△ 基礎のみ信用取引部分外務員必携 第2巻

信用取引は、二種では基礎的な知識に限って出題されます(日本証券業協会)。委託保証金30%・最低30万円・維持率20%・制度信用6か月などの基本は二種でも必須です。外国株式の取引(信用取引を除く)は一種・二種共通です。

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信用取引の仕組み

信用取引は、顧客が一定の保証金(委託保証金)を証券会社に預け、買付資金を借りて株を買う(信用買い)、または株を借りて売る(信用売り)取引です。手元の資金より大きな金額の取引ができる(レバレッジが効く)一方、損失も同じ倍率で大きくなりえます。値下がりを予想するときに「売りから入れる」のも、現物取引にはない特徴です。

取引 借りるもの 利益が出る場面 顧客が払う主なコスト
信用買い(買い建て) 買付代金 株価が上がったとき 金利
信用売り(売り建て) 株券 株価が下がったとき 貸株料、品貸料(逆日歩)

信用取引を始めるには、顧客は証券会社に信用取引口座設定約諾書を差し入れて信用取引口座を開きます。約諾書には、取引所の受託契約準則などに従うことが記載されています。取引所ルールとしての信用取引は取引所定款・諸規則②清算決済・受託契約準則・信用取引でも整理しています。

制度信用取引と一般信用取引

信用取引には2種類あります。試験では違いを入れ替えた選択肢がよく出ます。

項目 制度信用取引 一般信用取引
対象銘柄 取引所が選定した銘柄(制度信用銘柄)。信用売りは主に貸借銘柄 証券会社が決める(原則として上場銘柄)
返済期限 取引所の規則で最長6か月 顧客と証券会社の間で決める
品貸料(逆日歩) 取引所の規則で決まる 顧客と証券会社の間で決める
権利処理 取引所の規則で決まる(配当落調整額など) 顧客と証券会社の間で決める
貸借取引 利用できる 利用できない
委託保証金の率 30%以上(最低30万円) 30%以上(最低30万円)

委託保証金の率と最低額は、制度信用でも一般信用でも同じです。「一般信用は委託保証金が不要」は×です。

対象銘柄の区別も押さえておきましょう。制度信用銘柄は取引所が選定した、制度信用取引ができる銘柄です。そのうち、証券金融会社から株を借りて貸借取引ができる銘柄が貸借銘柄です。制度信用銘柄であっても貸借銘柄でなければ、証券会社は証券金融会社から株を調達できないため、実務上は信用売りが難しくなります。一般信用取引なら、証券会社が自社で株を用意できる範囲で、制度信用の対象外の銘柄でも取引できる場合があります。

貸借取引と証券金融会社

証券会社が顧客に貸すお金や株が足りないとき、証券金融会社から借りる仕組みが貸借取引です。貸借取引で株を借りられる銘柄を貸借銘柄といいます。株の貸出しが増えて株が足りなくなると、品貸料(逆日歩)が発生します。貸借取引は制度信用取引だけの仕組みです。

委託保証金・代用有価証券・追証

項目 ルール
委託保証金の率 約定価額の30%以上
最低額 30万円(30%の額が30万円未満なら30万円)
差入れ期限 売買成立日から起算して3日目の正午までの、証券会社が指定する日時
代用有価証券 現金の代わりに有価証券で差入れ可。前日時価×掛目(株券80%、国債95%、地方債・社債85%など)
維持率 約定価額の20%
追証の期限 損失が生じた日から起算して3日目の正午までの、証券会社が指定する日時
レバレッジ型・インバース型ETF等 委託保証金率は60%以上

受入保証金は、差し入れた現金と代用有価証券の評価額から、建玉の評価損や諸経費を差し引いて計算します。代用有価証券の値下がりも受入保証金を減らす点に注意してください。

例題1(最大建玉):委託保証金として現金90万円を差し入れた。新たに信用取引で建てられる約定価額の上限は?

① 必要な委託保証金=約定価額×30%

② 約定価額の上限=900,000円÷0.3=3,000,000円

答え:300万円(保証金の約3.3倍。保証金が30万円未満なら、そもそも信用取引は始められない)

例題2(代用有価証券を含む追証):現金10万円と上場株式(時価100万円)を委託保証金として差し入れ、株価1,000円の銘柄を3,000株信用買いした。その後、建玉の株価が850円に、代用株式の時価が90万円に下がった。追証はいくらか(諸経費は考えない)。

① 約定価額=1,000円×3,000株=3,000,000円 → 維持すべき額=3,000,000円×20%=600,000円

② 代用株式の評価額=900,000円×80%=720,000円

③ 建玉の評価損=(1,000円−850円)×3,000株=450,000円

④ 受入保証金=100,000円+720,000円−450,000円=370,000円

⑤ 追証=600,000円−370,000円=230,000円

答え:23万円(維持率は約定価額に対する20%。時価ではない)

委託保証金の計算練習は株式業務③証券投資計算(PER・PBR・ROE・受渡金額)にもあります。

信用取引の決済と権利の扱い

例題3(差金決済の損益):株価1,000円で1,000株を信用買いし、73日後に1,150円で転売した。買方金利は年2.5%(1年=365日で日割り)、委託手数料と消費税は考えない。損益はいくらか。

① 売買差益=(1,150円−1,000円)×1,000株=150,000円

② 金利=1,000,000円×2.5%×73日÷365日=5,000円

③ 損益=150,000円−5,000円=145,000円

答え:14万5,000円の利益(信用買いは値上がり益から金利を引く。信用売りなら貸株料・品貸料を引く)

決済の方法

方法 信用買いの場合 信用売りの場合
反対売買 転売して差金を受け払い 買戻しして差金を受け払い
現物での決済 現引き(品受け):代金を払って株を引き取る 現渡し(品渡し):手持ちの株を渡す

配当・株主の権利

信用買いの顧客は、決済(現引き)するまで株主ではありません。そのため議決権は行使できず、配当金も直接は受け取りません。制度信用取引では、配当金の代わりに配当落調整額を信用売りの顧客が支払い、信用買いの顧客が受け取ります。株式分割などの権利も、取引所の規則にもとづいて金銭などで調整されます。

コストの整理

コスト 負担する人 内容
金利(買方金利) 信用買いの顧客 買付代金の融資に対するコスト
貸株料(売方金利) 信用売りの顧客 借りた株に対するコスト
品貸料(逆日歩) 信用売りの顧客 株不足のときの追加コスト。制度信用では信用買いの顧客が受け取る
委託手数料 売り・買いの双方 新規建て・決済時に証券会社が定める手数料

信用取引の開始基準と説明

信用取引は元本を上回る損失が出るおそれがあるため、協会員(証券会社など)は、顧客の資産や投資経験などをもとに信用取引を始めてよい顧客の基準(開始基準)を定め、それに適合した顧客とだけ取引します。勧誘時には、次の点を顧客にしっかり説明します。

  • 委託保証金の約3.3倍まで取引でき、損失が差し入れた保証金を上回ることがある
  • 相場が不利に動くと追証が必要になり、差し入れなければ証券会社が建玉を処分できる
  • 金利・貸株料・品貸料などのコストが日々かかるため、長く持つほど負担が増える
  • 制度信用取引は6か月以内に決済しなければならない
  • 取引所の規制(増担保規制など)で、途中から保証金が増えたり新規建てが止まったりすることがある

信用取引の規制

空売り規制

信用売りは空売りに当たります。売り注文を出すときは空売りかどうかを明示し、証券会社はそれを確認しなければなりません。株価が基準値段から10%以上下落すると、翌日の立会終了まで価格規制が発動し、直近の公表価格以下での空売りが制限されます。個人等の信用売りで50売買単位以内の注文は価格規制の対象外です。また、発行済株式総数の0.2%以上の空売り残高を持つ場合は、取引所への報告が必要です。

日々公表銘柄と増担保規制二種は基礎のみ

信用取引の利用が過熱したときに取引所がとる措置です。二種の方は、まず「どんな措置があるか」と第一次措置の50%を押さえましょう。

措置 内容
日々公表銘柄 信用取引の利用が過度な銘柄の残高などを毎日公表し、注意を促す
増担保規制(第一次) 委託保証金率を50%以上(うち現金20%以上)に引上げ
第二次以降 さらに20%(うち現金20%)ずつ加算。100%を超える場合は新規建てを禁止

外国株式の取引

外国証券取引口座

顧客と外国証券の取引をするときは、証券会社は外国証券取引口座約款を顧客に交付し、顧客から約款にもとづく取引口座の設定の申込みを受けて口座を開きます(日本証券業協会「外国証券の取引に関する規則」)。約款には、売買注文の執行方法、受渡し、保管、権利の処理などが定められています。

外国株式の取引の形態

形態 内容 ポイント
外国取引 顧客の注文を、外国の金融商品市場への媒介・取次ぎ・代理の方法で執行する 海外の取引所で売買が成立する。現地の取引時間・売買単位に従う
国内店頭取引 証券会社が顧客の相手方となって、国内で相対で売買する 合理的な方法で算出した時価を基準とした適正な価格で行う
国内委託取引 国内の取引所に上場している外国株式を、取引所で売買する 国内株式と同じく取引所のルールで売買

外国株式の注意点

  • 為替変動リスク:株価が変わらなくても、円高になれば円での評価額は下がる
  • 情報の開示:日本の開示制度の対象でない銘柄は、情報が限られる場合がある。協会員は発行者から受け取った通知書や資料を保管し、顧客の閲覧に供する
  • カントリーリスク:発行国の政治・経済情勢、取引規制、税制の変化などの影響を受ける

外国株式の取引で顧客に確認・説明すること

項目 ポイント
通貨と為替 外貨で決済するか円で決済するか。円で決済する場合は証券会社が定める為替レートで換算する
手数料 外国取引では、国内の証券会社の手数料に加えて現地の手数料・税などがかかることがある
取引時間と売買単位 外国取引は現地市場の取引時間・売買単位・休業日に従う
保管 外国株式は通常、現地の保管機関で保管され、顧客は約款にもとづいて権利を持つ
配当・税金 配当は現地で源泉徴収されたうえで、国内でも課税されることがある
株主の権利 議決権の行使や株式分割などの権利の処理は、約款の定めに従う

「外国株式は国内株式と同じく、すべて東証の立会時間に売買される」といった選択肢は×です。外国取引は現地市場のルール、国内委託取引は国内取引所のルール、国内店頭取引は証券会社との相対取引と、形態ごとに売買の場とルールが異なります。

外国株式信用取引二種は基礎のみ

日本証券業協会の2021年9月の規則改正により、2022年7月1日から外国株式の信用取引ができるようになりました。取引所の制度信用取引ではなく、協会の規則にもとづく制度です。数字が国内株式と異なるので、分けて覚えます。

項目 外国株式信用取引 (参考)国内株式の信用取引
対象 米国の適格外国金融商品市場に上場する外国株式 国内の上場株式
委託保証金率 約定価額の50%以上 約定価額の30%以上
最低額 30万円相当額以上の米ドル 30万円
維持率 約定価額の30% 約定価額の20%

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 一般信用取引の返済期限は、取引所の規則により最長6か月と定められている。

答え:× 最長6か月は制度信用取引です。一般信用取引の期限は顧客と証券会社が決めます。

問2. 一般信用取引でも、証券会社は証券金融会社との貸借取引を利用できる。

答え:× 貸借取引を利用できるのは制度信用取引だけです。

問3. 委託保証金として現金50万円を差し入れた顧客は、約定価額200万円の信用買いができる。

答え:× 200万円×30%=60万円が必要です。建てられる上限は50万円÷0.3=約166万円です。

問4. 信用買いの顧客は、決済前でも株主として議決権を行使できる。

答え:× 決済(現引き)するまで株主ではありません。

問5. 品貸料(逆日歩)は信用売りの顧客が支払う。

答え:○ 制度信用取引では、信用買いの顧客がこれを受け取ります。

問6. 信用買いした株式を、代金を支払って引き取る決済方法を現渡しという。

答え:× 現引き(品受け)です。現渡しは信用売りを手持ちの株で決済する方法です。

問7. 外国株式の国内店頭取引は、証券会社が自由に決めた価格で行ってよい。

答え:× 合理的な方法で算出した時価を基準とする適正な価格で行わなければなりません。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

信用取引のレバレッジや外国株式の為替リスクを説明できるようになると、次は「ポートフォリオ全体でリスクをどう管理するか」が課題になります。この領域を体系的に学べるのが、証券アナリスト(CMA)CFA®です。

金融機関で働く人がCFA®試験に挑む理由は、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 信用取引は二種外務員の試験にも出ますか?

A. 出ます。日本証券業協会は、信用取引の基礎的知識を株式業務などに含めて二種でも出題するとしています。委託保証金30%・最低30万円、維持率20%、制度信用の返済期限6か月などの基礎は二種でも必須です。

Q. 制度信用取引と一般信用取引の違いは何ですか?

A. 制度信用取引は、対象銘柄・返済期限(最長6か月)・品貸料などを取引所の規則で決め、貸借取引を利用できます。一般信用取引は、返済期限や品貸料などを顧客と証券会社の間で決め、貸借取引は利用できません。

Q. 信用取引で追証が発生するのはどんなときですか?

A. 建玉の評価損や代用有価証券の値下がりなどで、受入保証金が約定価額の20%を下回ったときです。損失が生じた日から起算して3日目の正午までの、証券会社が指定する日時までに不足分を差し入れます。

Q. 外国株式を取引するのに特別な口座は必要ですか?

A. 必要です。証券会社は外国証券取引口座約款を顧客に交付し、顧客から口座設定の申込みを受けて外国証券取引口座を開きます。

参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「信用取引の概要」「信用取引制度の概要」(東京証券取引所、2023年4月)「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」「空売り規制」、用語集「委託保証金」「委託保証金維持率」「代用有価証券」「追証」、名古屋証券取引所「受託契約準則」、日本証券業協会「外国証券の取引に関する規則」「外国株式信用取引制度の創設に伴う『外国証券の取引に関する規則』等の一部改正について」(2021年9月14日、2022年7月1日施行)。証券会社は規則より厳しい条件を定めることがあり、制度も改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。