商品業務

【一種】デリバティブ取引②オプションの損益計算・グリークス・戦略|外務員試験の要点

デリバティブ取引② オプションと計算

結論:オプションは「決められた価格で買う・売る権利」の売買です。一種の試験では、損益計算と感応度(グリークス)が頻出です。

  • 買う権利がコール、売る権利がプット。買い手はプレミアムを払い、損失はプレミアムに限定
  • プレミアム = 本質的価値 + 時間価値。満期に近づくほど時間価値は減る
  • ボラティリティが上がると、コールもプットも両方プレミアムが上がる
  • 大きく動くと思えばストラドル・ストラングルの買い、動かないと思えば売り
  • 日経225オプションはオプション価格×1,000円ヨーロピアン・タイプ(SQ日にだけ権利行使)

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種△ 基礎のみ外務員必携 第4巻

デリバティブ取引(第4巻)は一種だけの独立科目です。二種では、コール・プットの意味や本質的価値・時間価値などの基礎が他の科目の中で出題されます(日本証券業協会)。二種の方は、印のない見出しと「二種は基礎のみ」の見出し、例題1で基礎を押さえてください。「一種のみ」の見出しと例題2以降は一種の範囲です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。先物・スワップの基礎はデリバティブ取引①先物・先渡・スワップと市場デリバティブで先に確認しておくと理解が早くなります。

オプション取引の基本

オプションとは、ある資産(原資産)を、将来の一定の日(または期間内)に、あらかじめ決めた価格(権利行使価格)で買う権利または売る権利のことです。この権利の値段をプレミアムといいます。

立場 コール(買う権利) プット(売る権利)
買い手 プレミアムを払って買う権利を得る。値上がりで利益 プレミアムを払って売る権利を得る。値下がりで利益
売り手 プレミアムを受け取り、行使されたら売る義務を負う プレミアムを受け取り、行使されたら買う義務を負う

買い手には権利があるだけで義務はありません。不利なら権利を放棄すればよいので、買い手の最大損失は支払ったプレミアムです。反対に売り手は義務を負うため、損失が大きくなる可能性があり、証拠金を差し入れる必要があります。

権利行使のタイプ

  • ヨーロピアン・タイプ:満期日(権利行使日)にだけ権利行使できる
  • アメリカン・タイプ:取引開始から満期日までいつでも権利行使できる

イン・ザ・マネー/アット・ザ・マネー/アウト・オブ・ザ・マネー

状態 コール プット
イン・ザ・マネー(ITM) 原資産価格 > 権利行使価格 原資産価格 < 権利行使価格
アット・ザ・マネー(ATM) 原資産価格 = 権利行使価格 原資産価格 = 権利行使価格
アウト・オブ・ザ・マネー(OTM) 原資産価格 < 権利行使価格 原資産価格 > 権利行使価格

4つの基本ポジションの損益

ポジション 最大利益 最大損失 損益分岐点
コールの買い 無限定 プレミアム 権利行使価格 + プレミアム
コールの売り プレミアム 無限定 権利行使価格 + プレミアム
プットの買い 権利行使価格 − プレミアム(原資産がゼロになったとき) プレミアム 権利行使価格 − プレミアム
プットの売り プレミアム 権利行使価格 − プレミアム 権利行使価格 − プレミアム

買いと売りの損益はちょうど裏返しです。買い手の利益は売り手の損失、というゼロサムの関係になっています。

プレミアムの構成:本質的価値と時間価値

要素 意味・計算
本質的価値 今すぐ権利行使したら得られる価値。コールは「原資産価格 − 権利行使価格」、プットは「権利行使価格 − 原資産価格」。マイナスならゼロ
時間価値 プレミアム − 本質的価値。満期までに有利に動くかもしれない期待の値段
時間価値の大きさ アット・ザ・マネーで最大。満期に近づくほど減り、満期時にはゼロ
OTMのオプション 本質的価値はゼロ。プレミアムはすべて時間価値

プレミアムの変動要因

要因(ほかの条件は一定) コール プット
原資産価格が上昇 上昇 下落
権利行使価格が高い 低い 高い
残存期間が長い 高い 高い
ボラティリティが上昇 上昇 上昇
短期金利が上昇 上昇 下落
配当が増える 下落 上昇

覚え方のコツは「コールとプットで向きが逆になるもの」と「両方同じ向きになるもの」に分けることです。残存期間とボラティリティだけは、コールもプットも同じ向き(長い・大きいほど高い)です。金利が上がるとコールが上がるのは、先物と同じく「代金の支払いを先送りできる価値」が増えるためです。

オプションの感応度(グリークス)一種のみ

プレミアムが各要因にどれだけ反応するかを表す指標です。ギリシャ文字の名前が付いているのでグリークスと呼ばれます。

指標 何に対する感応度か ポイント
デルタ 原資産価格の変化に対するプレミアムの変化 コールは0〜+1、プットは−1〜0。ATMでおよそ±0.5。ディープITMほど絶対値が1に近い
ガンマ 原資産価格の変化に対するデルタの変化 ATMで最大。満期が近いATMほど大きい。オプションの買いはプラス
セータ 時間の経過に対するプレミアムの変化 時間がたつと時間価値が減るので、買いのセータは通常マイナス(売り手には有利)
ベガ ボラティリティの変化に対するプレミアムの変化 コール・プットとも買いはプラス。ATMで大きい
ロー 金利の変化に対するプレミアムの変化 コールはプラス、プットはマイナス

ひっかけで多いのは「ガンマは原資産価格に対するプレミアムの変化」という入れ替えです。プレミアムの変化がデルタ、デルタの変化がガンマと区別してください。

オプションの利用方法(投資戦略)一種のみ

現物と組み合わせる戦略

戦略 組み合わせ 狙い
プロテクティブ・プット 現物の買い + プットの買い 値下がり時の損失に下限を付ける(保険)。値上がり益は残る
カバード・コール 現物の買い + コールの売り プレミアム収入で利回りを上乗せ。値上がり益は権利行使価格までに限定

ボラティリティに賭ける戦略

戦略 組み合わせ 相場観
ストラドルの買い 同じ権利行使価格・同じ限月のコールとプットを両方買う 上下どちらかに大きく動く。損失は支払プレミアム合計に限定
ストラドルの売り 同じ権利行使価格のコールとプットを両方売る ほとんど動かない。利益はプレミアム合計に限定、損失は無限定
ストラングルの買い 高い行使価格のコールと低い行使価格のプットを買う(通常どちらもOTM) 大きく動く。ストラドルより安いが、利益が出るまでの値幅が大きい
ストラングルの売り 上記を両方売る 一定の範囲で動かない

方向に賭けて損益を限定する戦略(スプレッド)

戦略 組み合わせ(同じ限月) 相場観
強気(ブル)スプレッド 低い行使価格のコールを買い、高い行使価格のコールを売る(プットで組むこともできる) やや上がる。利益・損失とも限定
弱気(ベア)スプレッド 高い行使価格のプットを買い、低い行使価格のプットを売る(コールで組むこともできる) やや下がる。利益・損失とも限定

合成ポジション

つくりたいポジション 組み合わせ
合成先物の買い(合成ロング) コールの買い + プットの売り(同じ権利行使価格・限月)
合成先物の売り(合成ショート) コールの売り + プットの買い(同じ権利行使価格・限月)
合成コールの買い 原資産の買い + プットの買い
合成プットの買い 原資産の売り + コールの買い

オプションの価格理論とプット・コール・パリティ一種のみ

オプションの理論価格は、二項モデルブラック・ショールズ・モデルで計算します。ブラック・ショールズ・モデルに入れる主な変数は、原資産価格・権利行使価格・残存期間・ボラティリティ・金利(と配当)です。このうち市場で直接観察できないのはボラティリティだけです。

  • ヒストリカル・ボラティリティ:過去の価格データから計算した変動率
  • インプライド・ボラティリティ:市場のプレミアムから逆算した、市場が予想している変動率

プット・コール・パリティ

同じ原資産・権利行使価格・限月のヨーロピアン・オプションでは、コールとプットの価格に次の関係が成り立ちます。これが崩れると裁定取引で利益が得られるため、市場では関係が保たれます。

項目 内容
基本式 コール価格 + 権利行使価格の現在価値 = プット価格 + 原資産価格
金利を無視した簡便式 コール − プット = 原資産価格 − 権利行使価格
意味 「コール買い + 安全資産」と「プット買い + 原資産」は満期の損益が同じ

市場で取引されるオプション二種は基礎のみ

大阪取引所には、日経225オプション、TOPIXオプション、個別株を対象にした有価証券オプション、長期国債先物オプションなどが上場しています。代表的な日経225オプションの主な仕様は次のとおりです。二種の方は、取引単位(×1,000円)とヨーロピアン・タイプであることを押さえてください。

項目 日経225オプション
取引単位 オプション価格 × 1,000円
呼値の単位 300円以下は1円、300円超は5円
権利行使 ヨーロピアン・タイプ(SQ日にだけ行使できる)
権利行使価格の間隔 250円刻み(直近3限月は一定時期から125円刻みも設定)
限月 四半期限月(6・12月限は直近16限月、3・9月限は直近3限月)とその他の限月(直近8限月)
最終取引日 各月の第2金曜日の前営業日に終了する取引日
決済方法 転売・買戻し、または権利行使・割当て(SQ値との差額で差金決済)

証拠金は、先物と同じく日本証券クリアリング機構のVaR方式で計算されます。オプションの売り方は損失が大きくなりうるため、証拠金の差入れが必要です。受託に関するルールは取引所定款・諸規則②受託契約準則の記事で扱っています。

計算例題

ここでは日経225オプション(取引単位 × 1,000円)を例に、手数料や税金を考えずに計算します。例題1は二種でも役立つ基礎、例題2〜5は一種の範囲の計算です。

例題1(本質的価値と時間価値)

日経平均株価40,500円のとき、権利行使価格40,000円のコールのプレミアムが800円、同じ権利行使価格のプットのプレミアムが250円だった。それぞれの本質的価値と時間価値は?

コール:本質的価値 = 40,500 − 40,000 = 500円 → 時間価値 = 800 − 500 = 300円

プット:本質的価値 = 40,000 − 40,500 < 0 → 0円 → 時間価値 = 250 − 0 = 250円

答え:コールは本質的価値500円・時間価値300円、プットは本質的価値0円・時間価値250円

例題2(コールとプットの買いの損益)

(1)権利行使価格40,000円のコールを300円で1枚買い、SQ値が41,000円になった。(2)権利行使価格39,000円のプットを200円で1枚買い、SQ値が38,000円になった。損益と損益分岐点は?

(1)(41,000 − 40,000 − 300)× 1,000円 = 700,000円の利益。損益分岐点 = 40,000 + 300 = 40,300円

(2)(39,000 − 38,000 − 200)× 1,000円 = 800,000円の利益。損益分岐点 = 39,000 − 200 = 38,800円

答え:(1)70万円の利益(分岐点40,300円)(2)80万円の利益(分岐点38,800円)

例題3(ストラドルの買い)

権利行使価格40,000円のコールを400円、プットを350円でそれぞれ1枚買った。損益分岐点と、SQ値が41,500円のときと40,000円のときの損益は?

支払プレミアム合計 = 400 + 350 = 750円 → 損益分岐点 = 40,000 ± 750 = 39,250円と40,750円

SQ値41,500円:コールの価値1,500円、プットは放棄 →(1,500 − 750)× 1,000円 = 750,000円の利益

SQ値40,000円:どちらも価値ゼロ → −750 × 1,000円 = 750,000円の損失(最大損失)

答え:分岐点は39,250円と40,750円。41,500円なら75万円の利益、40,000円なら75万円の損失

例題4(プット・コール・パリティ)

原資産価格40,100円、権利行使価格40,000円のコールが500円のとき、同じ条件のプットの理論価格は?(金利は考えない)

式:コール − プット = 原資産価格 − 権利行使価格 → プット = コール − 原資産価格 + 権利行使価格

途中:500 − 40,100 + 40,000 = 400

答え:400円

例題5(デルタ)

デルタ0.4のコールを10枚買っている。日経平均株価が200円上昇したとき、プレミアムと評価損益はおよそどれだけ変わるか。

プレミアムの変化 = 0.4 × 200円 = 80円 → 評価損益 = 80円 × 1,000円 × 10枚 = 800,000円

答え:プレミアムは約80円上昇、評価益は約80万円

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. コールの売り手の最大損失は、受け取ったプレミアムに限定される。

答え:× プレミアムに限定されるのは売り手の最大利益です。コールの売り手の損失は無限定です。

問2. ボラティリティが上昇すると、コールのプレミアムは上昇し、プットのプレミアムは下落する。

答え:× ボラティリティの上昇は、コール・プットとも両方のプレミアムを上げます。

問3. アウト・オブ・ザ・マネーのオプションのプレミアムは、すべて時間価値である。

答え:○ OTMの本質的価値はゼロなので、プレミアムはすべて時間価値です。

問4. ガンマとは、原資産価格の変化に対するオプション・プレミアムの変化の割合である。

答え:× それはデルタです。ガンマは原資産価格の変化に対するデルタの変化の割合です。

問5. 相場が大きく変動すると予想する場合は、ストラドルの売りが有効である。

答え:× 大きく動くと予想するならストラドルの買いです。売りは、あまり動かないと予想するときの戦略です。

問6. 現物株を保有したままプットを買う戦略をプロテクティブ・プットといい、値下がり時の損失を限定できる。

答え:○ 保険のように下値を限定しつつ、値上がり益は残せる戦略です。

問7. 日経225オプションは、取引期間中いつでも権利行使できるアメリカン・タイプである。

答え:× 日経225オプションはSQ日にだけ権利行使できるヨーロピアン・タイプです。

問8. 同じ権利行使価格・限月のコールの買いとプットの売りを組み合わせると、先物の買いと同じ損益になる。

答え:○ これが合成先物の買い(合成ロング)です。

この章の論点は外務員一種の模擬試験(全3回・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

外務員試験のオプションは「向き」と「損益の形」を覚えれば得点できます。一方で、なぜボラティリティや金利がプレミアムをそう動かすのかを式から理解したい人には、ブラック・ショールズ・モデルや二項モデルを本格的に学ぶ証券アナリスト(CMA)やCFA®の学習がつながっています。

銀行・証券・保険・アセマネで働く人が、外務員の次にどんな資格を取っているかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. オプションの買い手と売り手では、どちらのリスクが大きいですか?

A. 売り手です。買い手の最大損失は支払ったプレミアムに限られますが、売り手は権利行使に応じる義務を負うため、損失が大きくなる可能性があります。そのため売り手は証拠金を差し入れます。

Q. プレミアムの変動要因で、コールとプットが同じ向きに動くのはどれですか?

A. 残存期間とボラティリティです。残存期間が長いほど、またボラティリティが高いほど、コールもプットもプレミアムは高くなります。原資産価格・権利行使価格・金利・配当は、コールとプットで逆向きに効きます。

Q. ストラドルとストラングルの違いは何ですか?

A. ストラドルは同じ権利行使価格のコールとプットを組み合わせ、ストラングルは異なる権利行使価格(通常はどちらもアウト・オブ・ザ・マネー)のコールとプットを組み合わせます。ストラングルのほうがプレミアムは安い代わりに、利益が出るまでに必要な値動きが大きくなります。

Q. 日経225オプションの損益はどう計算しますか?

A. 取引単位がオプション価格×1,000円なので、プレミアムの差額(または権利行使で得た差額からプレミアムを引いた額)に1,000円と枚数を掛けます。例えば300円で買ったコールの価値が1,000円になれば、1枚あたり70万円の利益です。

参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「日経225オプション」制度概要、日本証券クリアリング機構「新証拠金計算方式(VaR方式)とは」、日本証券業協会「外務員資格試験」。取引制度は変更されることがあるため、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。