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【一種】デリバティブ取引①先物・スワップと理論価格・ヘッジ|外務員試験の要点

デリバティブ取引① 先物とスワップ

結論:先物は「将来の売買価格を今決める取引」です。試験では理論価格の式、ヘッジの向き、商品ごとの取引単位が繰り返し問われます。

  • 先物の理論価格は現物価格+金利−配当。市場価格が理論価格より高ければ「先物売り・現物買い」の裁定が働きます
  • 値下がりが心配なら売りヘッジ、将来買う予定の値上がりが心配なら買いヘッジ
  • 取引単位は日経225先物が指数×1,000円、mini が×100円、マイクロが×10円、TOPIX先物が×10,000円
  • 長期国債先物は標準物(6%・10年)、額面1億円単位、受渡しは最割安銘柄が選ばれやすい
  • 証拠金は2023年11月6日にSPAN方式からVaR方式へ移行済み

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種△ 基礎のみ外務員必携 第4巻

デリバティブ取引(第4巻)は一種だけの独立科目です。二種では、先物とは何か・ヘッジの考え方などの基礎が株式業務・債券業務などの中で出題されます(日本証券業協会)。二種の方は、印のない見出しと「二種は基礎のみ」の見出しで基礎を押さえてください。「一種のみ」の見出しと計算例題は一種の範囲です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。オプションはデリバティブ取引②オプション取引と計算問題で扱います。

デリバティブ取引の基礎

デリバティブ(金融派生商品)は、株式・債券・金利・通貨・商品などの原資産から価値が派生する取引の総称です。代表的なものは先物・先渡・オプション・スワップの4つです。

共通する特徴は2つあります。1つはレバレッジ。証拠金という少ない資金で、その何倍もの金額の取引ができます。もう1つは差金決済。多くの取引は、現物を受け渡さず売値と買値の差額だけをやり取りして終わります。

種類 中身 取引の場
先物 将来の一定日に、今決めた価格で売買する約束 取引所(定型化・清算機関あり)
先渡(フォワード) 先物と同じ約束を当事者同士で結ぶ 店頭(相対)
オプション 一定の価格で買う・売る「権利」の売買 取引所・店頭
スワップ 将来のキャッシュ・フローを交換する約束 主に店頭

デリバティブの3つの使い方

  • ヘッジ取引:保有している(または保有予定の)現物の価格変動リスクを、反対のポジションで打ち消す
  • 裁定取引(アービトラージ):先物と現物など、関係の決まった2つの価格のゆがみを利用して、ほぼリスクなしに利益を狙う
  • スペキュレーション取引:相場の方向を予想して、先物だけを売買して利益を狙う。市場に流動性を供給する役割がある

先物取引の仕組み

先物取引は、取引所で、限月(げんげつ=決済期限の月)・取引単位などが定型化された条件で行われます。取引の相手方は実質的に清算機関(日本では日本証券クリアリング機構)になるため、相手が破綻するリスクはほぼ切り離されます。

決済方法は2つです。最終取引日までに反対売買する転売・買戻しと、最終取引日を越えて持ち続けた場合の最終決済です。株価指数先物の最終決済は、特別清算指数(SQ)との差額による差金決済です。

値洗いと証拠金

先物の建玉(たてぎょく=未決済のポジション)は、毎日の清算価格で評価し直され、損益が日々受け払いされます。これを値洗いといいます。損失で証拠金が不足すると、追加の差し入れが必要です。

先物の理論価格一種のみ

先物を買う人は、今すぐ現物を買う人と比べて代金を払わずに済む分の金利を得し、配当を受け取れない分を損します。この差が先物価格に反映されます。

項目 式・ポイント
株価指数先物の理論価格 現物価格 ×{1+(短期金利 − 配当利回り)× 残存日数 ÷ 365}
言葉で覚える 現物価格 + 金利コスト − 配当
金利 > 配当利回り 理論価格は現物より高い(順ざや)
金利 < 配当利回り 理論価格は現物より低い(逆ざや)
満期(SQ)に近づくと 金利・配当の影響が小さくなり、先物価格は現物価格に収束する

ベーシス一種のみ

先物価格と現物価格の差をベーシスといいます(本記事では「先物価格 − 現物価格」で説明します)。理論上のベーシスは金利と配当で決まり、満期に向けてゼロに近づきます。ヘッジをしても、ベーシスが予想どおりに動かないと損益が完全には相殺されません。これをベーシス・リスクといいます。

ヘッジ・裁定・スペキュレーション

売りヘッジと買いヘッジ

種類 どんな時に 先物の操作
売りヘッジ(ショート・ヘッジ) 現物を保有していて、値下がりが心配 先物を売る
買いヘッジ(ロング・ヘッジ) 将来現物を買う予定で、値上がりが心配(例:数か月後に資金が入る) 先物を買う

ヘッジは損失を防ぐ代わりに、現物が逆に有利に動いたときの利益も先物の損失で消えます。「ヘッジをすれば利益も損失も限定される」という理解で正解です。

裁定取引の向き一種のみ

市場の状況 取引 通称
先物が理論価格より割高 割高な先物を売り、割安な現物を買う 買い裁定(現物買い)
先物が理論価格より割安 割安な先物を買い、割高な現物を売る 売り裁定(現物売り)

「買い裁定」「売り裁定」は現物側の売買で呼ぶのが一般的です。先物側と逆になるので、問題文でどちらの売買を指しているかを必ず確認してください。裁定取引が行われるほど、先物価格は理論価格に引き寄せられます。

スペキュレーション

現物を持たずに先物だけで相場を張る取引です。少ない証拠金で大きな取引ができるため、予想が外れたときの損失も大きく、証拠金を超える損失が出ることもあります。投機家がいるからこそヘッジャーの反対売買の相手が見つかる、という点で市場には必要な存在です。

先渡取引

先渡(フォワード)取引は、先物と同じく「将来の売買価格を今決める」取引ですが、当事者同士の相対(あいたい)取引で行います。為替予約が代表例です。

比較項目 先物 先渡
取引の場 取引所 店頭(相対)
条件 定型化(限月・単位が決まっている) 当事者が自由に決める
決済 反対売買で途中解消しやすい。多くは差金決済 満期に現物受渡しが基本。途中解約はしにくい
信用リスク 清算機関が間に入り、ほぼ遮断 相手方の信用リスクが残る
値洗い 毎日行う 通常は行わない

スワップ取引

スワップは、将来発生するキャッシュ・フローを交換する取引です。試験では金利スワップと通貨スワップの違いが問われます。

種類 交換するもの 元本の交換
金利スワップ 同じ通貨で、固定金利と変動金利の利払いを交換する(例:固定払い・変動受け) 行わない(利息計算の基準になる想定元本のみ)
通貨スワップ 異なる通貨の元利金を交換する 原則として行う(取引開始時と満期時)

変動金利で借りている企業が「固定払い・変動受け」の金利スワップを組むと、変動の受取りと支払いが打ち消し合い、実質的に固定金利で借りたのと同じになります。金利上昇リスクのヘッジとして使われる典型例です。

デリバティブ取引のリスク

リスク 内容
市場リスク 原資産の価格・金利・為替などの変動で損失が出るリスク。レバレッジで損失が拡大する
信用リスク 取引相手が約束を履行しないリスク。店頭取引で特に問題になる
流動性リスク 取引量が少なく、思った価格で反対売買できないリスク
オペレーショナル・リスク 事務ミス・システム障害・不正などによる損失のリスク
法的リスク 契約が法的に無効とされるなど、法律上の問題で損失が出るリスク

市場デリバティブ:株価指数先物二種は基礎のみ

日本の株価指数先物・オプションは大阪取引所(日本取引所グループ)に上場しています。二種の方は、取引単位(×1,000円・×100円・×10円)とSQによる決済をまず押さえてください。数字は日本取引所グループの制度概要で確認したものです。

商品 取引単位 呼値の単位 限月
日経225先物 日経平均株価 × 1,000円 10円 6・12月限:直近16限月、3・9月限:直近3限月(最長8年)
日経225mini 日経平均株価 × 100円 5円 6・12月限:直近10限月、3・9月限:直近3限月(最長5年)、その他の月:直近3限月
日経225マイクロ先物 日経平均株価 × 10円 5円 四半期限月の直近2限月+その他の限月の直近2限月
TOPIX先物 TOPIX × 10,000円 0.5ポイント 6・12月限:直近10限月、3・9月限:直近3限月
ミニTOPIX先物 TOPIX × 1,000円 0.25ポイント 3・6・9・12月の直近3限月

最終取引日・SQ・取引時間

項目 内容
最終取引日 各限月の第2金曜日の前営業日に終了する取引日(第2金曜日が休業日なら繰り上げ)
SQ(特別清算指数) 最終取引日の翌営業日(通常は第2金曜日)の構成銘柄の始値などから算出。最終決済はこの値との差額で行う
取引時間 日中立会 8:45〜15:45、夜間立会 17:00〜翌6:00(それぞれ最後にクロージング・オークション)
決済方法 転売・買戻し、または最終清算数値(SQ)による差金決済
サーキット・ブレーカー 中心限月の価格が大幅に上昇・下落した場合に取引を一時中断し、制限値幅を拡大する

先物の損益は「(売値 − 買値)× 取引単位の乗数 × 枚数」で計算します。日経225先物なら1円動くと1枚あたり1,000円、mini は100円、マイクロは10円の損益です。

市場デリバティブ:国債先物二種は基礎のみ

長期国債先物は、実在しない架空の国債(標準物)を取引対象にしている点が最大の特徴です。現物の受渡しで決済する場合は、条件を満たす実在の国債(受渡適格銘柄)を引き渡します。

項目 長期国債先物
取引対象 長期国債標準物(利率6%、残存10年)
受渡適格銘柄 残存7年以上11年未満の10年利付国債
取引単位 額面1億円
呼値の単位 額面100円につき1銭
限月 3・6・9・12月の3限月
受渡決済期日 各限月の20日(休業日なら繰り下げ)
取引最終日 受渡決済期日の5営業日前
決済方法 転売・買戻し、または受渡決済(現物の国債の受渡し)

コンバージョン・ファクターと最割安銘柄一種のみ

受渡適格銘柄は利率も残存期間もばらばらです。そこで、各銘柄を標準物(6%)と比べてどれくらいの価値かに換算する係数がコンバージョン・ファクター(交換比率)です。売り方が受け取る代金は、おおむね「先物価格 × コンバージョン・ファクター」(+経過利子)になります。利率が6%より低い銘柄のファクターは1より小さくなります。

どの銘柄を渡すかは売り方が選べます。売り方は、市場で買って渡すのに最もコストが安く済む銘柄を選ぶので、その銘柄を最割安銘柄(チーペスト)と呼びます。先物価格は最割安銘柄の価格に連動しやすくなります。

証拠金制度一種のみ

先物・オプションの取引には証拠金が必要です。清算機関の日本証券クリアリング機構(JSCC)は、2023年11月6日に証拠金の計算方法をSPAN方式からVaR方式に変更しました。

項目 内容
移行日 2023年11月6日(SPAN方式 → VaR方式)
主な計算方法 HS-VaR方式:過去の市場データからシナリオを作り、ポートフォリオ全体の損益を計算して99%をカバーする金額を求める
SPANとの違い 過去の値動きをもとにするため、同じ銘柄でも買建てと売建てで証拠金額が異なることがある

古い問題集には「SPAN証拠金」と書かれているものがあります。2026年の試験対策では、VaR方式が現行制度だと覚えてください。受託の手続き(証拠金の差入れ・受渡し)は取引所定款・諸規則②受託契約準則の記事で扱っています。

店頭デリバティブと協会規則一種のみ

店頭デリバティブは取引所を通さず、証券会社などと顧客の相対で行う取引です。株価指数や個別株を対象にした店頭オプションやCFD(差金決済取引)、スワップなどが該当し、そのうち有価証券や株価指数などを対象とするものが有価証券関連店頭デリバティブです。金利スワップなど一定の店頭デリバティブは、清算機関での清算などの規制の対象になっています。

個人向けのCFDについては、日本証券業協会がCFD取引に関する規則を定めています。

規則の項目 内容
勧誘の禁止行為 勧誘に先立って、顧客に勧誘を受ける意思があるかを確認しない行為、断った顧客に勧誘を続ける行為を禁止(特定投資家は除く)
ロスカット管理 顧客の損失が証拠金などを上回らないようロスカット水準を設け、管理態勢を整備する
ロスカット判定の間隔 10分以内ごと
ロスカット水準の最低基準 株価指数関連なら取引額の1%(判定間隔1分以内)または2%(1分超)など、対象ごとに設定

計算例題

計算例題は一種の範囲です。例題2は、二種の方にとっても売りヘッジの考え方の確認になります。

例題1(理論価格)

日経平均株価40,000円、短期金利年1%、配当利回り年2%、残存日数90日のとき、日経225先物の理論価格は?

式:理論価格 = 40,000 ×{1+(0.01 − 0.02)× 90 ÷ 365}

途中:(−0.01)× 90 ÷ 365 = −0.0024657… → 40,000 × 0.9975342… = 39,901.37…

答え:約39,901円(配当利回りが金利より高いので、現物より安くなる)

例題2(売りヘッジ)

日経平均と同じ値動きをする株式2億円を保有。値下がりに備え、40,000円の日経225先物でヘッジしたい。何枚売ればよいか。その後、日経平均と先物がともに36,000円に下がったときの損益は?

式:先物1枚の金額 = 40,000 × 1,000円 = 4,000万円 → 2億円 ÷ 4,000万円 = 5枚

途中:先物の利益 =(40,000 − 36,000)× 1,000円 × 5枚 = 2,000万円/現物の損失 = 2億円 × 10% = 2,000万円

答え:5枚売り。現物の損失2,000万円を先物の利益2,000万円で相殺

例題3(裁定取引)

例題1の条件で、日経225先物の市場価格が40,200円だった。どんな裁定取引ができるか。

式:市場価格 40,200円 > 理論価格 約39,901円 → 先物が約299円割高

答え:先物を売り、現物(日経平均構成銘柄のバスケット)を買う「買い裁定」

例題4(先物の損益)

(1)日経225miniを40,000円で10枚買い、40,500円で転売した。(2)長期国債先物を145.00円で1枚買い、145.50円で転売した。それぞれの損益は?(手数料等は考えない)

(1)(40,500 − 40,000)× 100円 × 10枚 = 500,000円

(2)(145.50 − 145.00)÷ 100 × 額面1億円 = 500,000円

答え:(1)(2)とも50万円の利益

先物取引の利益は、税金面では「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になります。詳しくは証券税制①所得税の記事を参照してください。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 保有している株式の値下がりに備えて株価指数先物を買う取引を、買いヘッジという。

答え:× 保有株の値下がりに備えるのは先物を売る売りヘッジです。買いヘッジは将来買う予定の現物の値上がりに備える取引です。

問2. 短期金利が配当利回りを上回っている場合、株価指数先物の理論価格は現物価格より高くなる。

答え:○ 理論価格は「現物+金利−配当」なので、金利が配当より大きければ現物より高くなります。

問3. 先物価格が理論価格より割高なとき、先物を買い、現物を売る裁定取引を行う。

答え:× 割高な先物を売り、割安な現物を買います。

問4. 日経225先物の取引単位は、日経平均株価に100円を乗じた金額である。

答え:× 日経225先物は×1,000円です。×100円は日経225mini、×10円は日経225マイクロ先物です。

問5. 長期国債先物の取引対象は、利率6%、償還期限10年の標準物である。

答え:○ 実在しない標準物が対象です。受渡しには残存7年以上11年未満の10年利付国債を使います。

問6. 金利スワップでは、取引開始時と満期時に元本を交換する。

答え:× 金利スワップは想定元本をもとに利息だけを交換します。元本を交換するのは通貨スワップです。

問7. 先渡取引は取引所で定型化された条件で行われ、清算機関が介在するため信用リスクがほとんどない。

答え:× これは先物の説明です。先渡は相対取引で、相手方の信用リスクが残ります。

この章の論点は外務員一種の模擬試験(全3回・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

先物の理論価格や裁定取引は、外務員試験では式を覚えれば解けますが、実務では金利・配当・ボラティリティがどう価格に効くかを自分で説明できることが求められます。デリバティブの価格理論やリスク管理を体系的に学ぶ資格として、証券アナリスト(CMA)やCFA®があります。

銀行・証券・保険・アセマネで働く人が、外務員の次にどんな資格を取っているかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. デリバティブ取引は二種外務員の試験にも出ますか?

A. 独立した科目としては一種のみですが、日本証券業協会は信用取引・デリバティブの基礎的な知識を株式業務・債券業務などに含めて二種でも出題するとしています。先物の定義やヘッジの考え方などの基礎は二種の方も押さえておきましょう。

Q. 先物の理論価格はどう覚えればよいですか?

A. 「現物価格+金利−配当」と覚えます。式にすると、現物価格×{1+(短期金利−配当利回り)×残存日数÷365}です。金利が配当利回りより高ければ先物は現物より高く、低ければ安くなります。

Q. 日経225先物・mini・マイクロの違いは何ですか?

A. 取引単位が違います。日経225先物は日経平均株価×1,000円、日経225miniは×100円、日経225マイクロ先物は×10円です。呼値の単位は日経225先物が10円、miniとマイクロが5円です。

Q. 先物の証拠金はまだSPAN方式ですか?

A. いいえ。日本証券クリアリング機構は2023年11月6日に、先物・オプションの証拠金計算をSPAN方式からVaR方式に移行しました。

参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「日経225先物」「日経225mini」「日経225マイクロ先物」「TOPIX先物」「ミニTOPIX先物」「長期国債先物」制度概要、日本証券クリアリング機構「新証拠金計算方式(VaR方式)とは」、日本証券業協会「CFD取引に関する規則」「外務員資格試験」。取引制度は変更されることがあるため、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。