結論:この章は「CBのパリティと乖離率」と「債券の利回り4種類+割引債+経過利子」の計算で点を取る章です。
- パリティ=株価÷転換価額×100。乖離率=(CB価格−パリティ)÷パリティ×100
- 利付債の利回りはすべて「(1年分の利子+1年あたりの差損益)÷買った価格」の形。分母は購入価格(応募者利回りは発行価格)
- 直接利回りは差損益を無視して「利率÷購入価格」だけ
- 割引債は残存1年以内なら単利、1年超なら複利で計算するのが基本
- 経過利子は前回利払日の翌日から受渡日まで(片端入れ)、1年=365日で日割り。円未満は切捨て
一種・二種の出題範囲
一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第2巻
この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。利回り計算は二種でも五肢選択の計算問題の定番です。
▶ この章の解説動画
動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。
外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。債券の種類や市場の仕組みは前編の債券業務①債券の基礎と市場で先に確認しておくと、計算の意味がつかみやすくなります。
転換社債型新株予約権付社債(CB)の商品性
転換社債型新株予約権付社債(以下CB)は、社債に「発行会社の株式を決められた価格で取得できる権利(新株予約権)」が付いた債券です。権利を使うと社債は消滅し、その社債の額面を払込みに充てる形で株式を受け取ります。社債部分と新株予約権部分は切り離して売ることはできません。
| 用語 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| 転換価額 | 株式1株を取得するのに必要な社債の額面金額 | 転換価額1万円のCB額面100万円なら100株に転換できる |
| 転換で得られる株数 | 額面金額÷転換価額 | 転換価額が下がると得られる株数が増える |
| 転換価額の修正条項 | 発行後の一定時期に、定めた方法で転換価額を引き下げ(引き上げ)る条項 | 付いている銘柄とない銘柄がある |
| 利率 | 普通社債より低い。ゼロクーポン(利息なし)の銘柄も多い | 株式に転換できる権利の分、利率が抑えられている |
| 償還 | 転換しないで持ち続ければ、償還日に額面で償還される | 発行会社が破綻すれば元本が返らないリスクがある |
CBの価格が動く理由
- 株価:株価が上がるとCB価格も上がる。株価が転換価額を大きく上回ると、CBはほぼ株価と連動する
- 下値抵抗力:株価が大きく下がっても、債券としての価値(償還される額面と利子)が下支えになるため、CBの値下がりは株式より相対的に小さい
- 金利:債券なので、金利上昇は価格の下落要因
- 発行会社の信用力:信用力が下がれば債券部分の価値が下がる
「株価が上がれば値上がり益を狙え、下がっても下値が限られる」という株式と債券の中間的な性格が、CBの一番の特徴です。
CBの価値を分けて考える
CBの価格は、次の2つの価値のうち高いほうを下限の目安として動くと考えると整理しやすくなります。
| 価値 | 中身 | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 転換価値(パリティ) | 今すぐ株式に転換したときの価値 | 株価が転換価額を大きく上回るとき |
| 債券としての価値 | 額面で償還されることと利子から計算した価値 | 株価が大きく下がったとき(下値の支え) |
実際のCB価格には、将来株価が上がる可能性の価値も上乗せされるため、通常はパリティより高い価格(乖離率がプラス)で取引されます。
CBの上場と取引所での取引ルール
CBは東京証券取引所に上場され、株式と同じように個別競争売買で取引されます。店頭でも売買できます。東証の売買制度は次のとおりです(日本取引所グループ)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引時間 | 9:00〜11:30、12:30〜15:30 |
| 売買単位 | 額面10万円・50万円・100万円・200万円・300万円・400万円・500万円(銘柄による) |
| 呼値の単位 | 額面100円につき5銭 |
| 制限値幅 | 転換対象株式の制限値幅×転換比率(最低5円) |
| 売買の方法 | 個別競争売買(株式と同様) |
| 決済 | 証券保管振替機構の口座振替 |
CBの価格は株式と違い「額面100円あたりの円」で表示します。たとえば「CB価格130円」は、額面100万円分なら130万円という意味です。
パリティと乖離率
パリティは、CBを今すぐ株式に転換したときの価値を、額面100円あたりで表したものです。乖離率は、実際のCB価格がパリティからどれだけ離れているかを示します。
| 指標 | 計算式 | 読み方 |
|---|---|---|
| パリティ | 株価÷転換価額×100 | 株価が転換価額と同じならパリティは100 |
| 乖離率 | (CB価格−パリティ)÷パリティ×100(%) | プラス:転換するより市場でCBを売るほうが有利。マイナス:CBを買って転換し、株を売ると利益が出る状態 |
乖離率の分母はパリティで、CB価格ではありません。分母を取り違える選択肢は必ず出ます。
例題1(CB) 転換価額800円のCBがあります。株価が1,000円、CBの市場価格が130円のとき、パリティと乖離率を求めなさい。また、額面100万円を転換すると何株になりますか。
パリティ=1,000÷800×100=125.00
乖離率=(130−125)÷125×100=4.00%(プラスなので、転換するより市場でCBを売るほうが有利)
転換で得られる株数=1,000,000÷800=1,250株
債券の利回り計算の基本
外務員試験で使う利回りは、特に断りがなければ単利・年利回りです。1年間に得られる利子と、1年あたりに割り振った差損益(償還差益や売却益)を足し、投資した金額(購入価格)で割ります。答えは問題文の指示(例:小数点以下第4位を切り捨て)に従って端数を処理します。
| 利回り | 場面 | 計算式(%) |
|---|---|---|
| 応募者利回り | 新発債を発行価格で買い、償還まで持つ | {利率+(100−発行価格)÷償還期限(年)}÷発行価格×100 |
| 最終利回り | 既発債を時価で買い、償還まで持つ | {利率+(100−購入価格)÷残存期間(年)}÷購入価格×100 |
| 所有期間利回り | 買った債券を償還前に売る | {利率+(売却価格−購入価格)÷所有期間(年)}÷購入価格×100 |
| 直接利回り | 投資額に対する毎年の利子の割合 | 利率÷購入価格×100 |
4つの式の骨格は同じで、違うのは「どの価格で買い、どの価格で手放すか」だけです。分母は常に買ったときの価格です。売却価格や額面を分母にした選択肢は誤りです。
例題2(利付債の利回り)
(1)利率1.2%、残存期間5年の債券を98.50円で買い、償還まで保有した場合の最終利回りと直接利回り
最終利回り={1.2+(100−98.50)÷5}÷98.50×100=(1.2+0.3)÷98.50×100=1.52284…→1.522%
直接利回り=1.2÷98.50×100=1.21827…→1.218%
(2)利率0.8%、償還期限10年、発行価格99.60円の新発債の応募者利回り
{0.8+(100−99.60)÷10}÷99.60×100=0.84÷99.60×100=0.84337…→0.843%
(3)利率1.0%の債券を101.20円で買い、3年後に102.00円で売却した場合の所有期間利回り
{1.0+(102.00−101.20)÷3}÷101.20×100=1.26666…÷101.20×100=1.25164…→1.251%
(いずれも小数点以下第4位を切り捨て)
価格・利率・利回りの大小関係
計算しなくても解ける問題があります。購入価格が額面(100円)より低いか高いかで、利率・直接利回り・最終利回りの大小が決まります。
| 購入価格 | 大小関係 | 理由 |
|---|---|---|
| アンダーパー(100円未満) | 最終利回り>直接利回り>利率 | 安く買った分、直接利回りは利率より高い。さらに償還差益が上乗せされる |
| パー(100円) | 最終利回り=直接利回り=利率 | 差損益がなく、投資額も額面と同じ |
| オーバーパー(100円超) | 最終利回り<直接利回り<利率 | 高く買った分、直接利回りは利率より低い。さらに償還差損が差し引かれる |
また、同じ債券なら価格が上がるほど利回りは下がり、価格が下がるほど利回りは上がります。「利回りが上昇した=債券価格が下落した」と読み替えられるようにしておきましょう。
計算ミスを防ぐ手順
- 問題文から「利率」「買った価格」「手放す価格(償還なら100円)」「期間(年)」を書き出す
- 差損益(手放す価格−買った価格)を期間で割り、1年あたりにする。差損ならマイナス
- 利率と足して、買った価格で割り、100を掛ける
- 端数は最後に1回だけ、問題文の指示どおりに処理する(途中で丸めない)
期間が「2年6か月」なら2.5年、「180日」を年に直すなら180÷365のように、年単位にそろえてから計算します。
割引債の利回り
割引債は利子がないので、収益は「額面100円−購入価格」だけです。残存期間が1年以内なら単利、1年を超える場合は複利で計算するのが基本です。
| 残存期間 | 計算式 |
|---|---|
| 1年以内(単利) | (100−購入価格)÷購入価格×365÷残存日数×100(%) |
| 1年超(複利) | {(100÷購入価格)の(1÷残存年数)乗−1}×100(%) |
例題3(割引債)
(1)残存180日の割引債を99.75円で買った場合の利回り(単利)
(100−99.75)÷99.75×365÷180×100=0.25÷99.75×365÷180×100=0.50821…→0.508%
(2)残存3年の割引債を97.00円で買った場合の利回り(年複利)
100÷97.00=1.030927…、その3乗根=1.010204…、1.010204−1=0.010204…→1.020%
経過利子と受渡代金
利付債を利払日の途中で売買すると、次の利払日には買い手が半年分の利子を丸ごと受け取ります。そこで買い手は、前回の利払日から受渡日までの利子相当額(経過利子)を売り手に支払います。
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 経過日数 | 前回利払日の翌日から受渡日まで(片端入れ) |
| 1年の日数 | 365日(うるう年でも365日で計算) |
| 計算式 | 額面金額×年利率×経過日数÷365 |
| 端数 | 円未満切捨て |
| 買い手の受渡代金(店頭取引) | 約定代金(額面×単価÷100)+経過利子 |
| 売り手の受取代金(店頭取引) | 約定代金+経過利子 |
店頭取引では価格にコストが含まれているため、別途の手数料は加えません。取引所取引では手数料(と消費税)が加わります。
例題4(経過利子と受渡代金) 利率年1.5%(利払日3月20日・9月20日)の利付債を、額面500万円、単価101.00円で店頭で買い付けました。受渡日は11月5日です。経過利子と受渡代金を求めなさい。
経過日数:9月21日〜9月30日=10日、10月=31日、11月1日〜5日=5日 → 合計46日
経過利子=5,000,000×0.015×46÷365=9,452.05…→9,452円(円未満切捨て)
約定代金=5,000,000×101.00÷100=5,050,000円
受渡代金=5,050,000+9,452=5,059,452円
現先取引の利回り
現先は、スタート(最初の売買)とエンド(買戻し・売戻し)の2つの取引をセットにした債券の条件付売買です。実質は短期の資金貸借なので、利回りは次の形で考えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現先の利回り(年率) | (エンドの受渡金額−スタートの受渡金額)÷スタートの受渡金額×365÷期間の日数×100(%) |
| 売買の単価 | 協会規則に基づき、店頭売買の価格ルールに沿って決める |
| 相手方 | 上場会社又はこれに準ずる法人で、経済的・社会的に信用のあるもの(個人は不可) |
受渡金額には経過利子を含めて考えます。取引の仕組みそのものは債券業務①を参照してください。株式の受渡金額や投資指標の計算は株式業務③証券投資計算にまとめています。
試験に出るひっかけ(○×問題)
問1. CBの乖離率は、(CB価格−パリティ)÷CB価格×100で求める。
答え:× 分母はパリティです。
問2. 株価が転換価額を上回っているとき、パリティは100を上回る。
答え:○ パリティ=株価÷転換価額×100なので、100を超えます。
問3. CBの社債部分と新株予約権部分は、分離してそれぞれ売却できる。
答え:× 転換社債型新株予約権付社債は、社債と新株予約権を切り離して譲渡できません。
問4. 直接利回りは、年間の利子と償還差損益の合計を購入価格で割って求める。
答え:× 直接利回りは償還差損益を含めず、利率÷購入価格×100です。
問5. 所有期間利回りの計算では、分母に売却価格を用いる。
答え:× 分母は購入価格です。
問6. 経過利子の経過日数は、前回利払日の翌日から受渡日までの日数で計算する。
答え:○ 片端入れで、1年を365日として日割りします。
問7. 利付債の店頭取引では、経過利子は売り手が買い手に支払う。
答え:× 買い手が売り手に支払います。
問8. 額面より低い価格(アンダーパー)で買った利付債では、最終利回りは直接利回りより低くなる。
答え:× アンダーパーでは償還差益が加わるため、最終利回り>直接利回り>利率の順になります。
この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。
外務員の次に取る資格
利回りやパリティの計算は、慣れれば機械的に解けます。一方で、実務では「どの債券がなぜ割安か」を説明する力が求められます。デュレーションや信用スプレッドまで体系的に学びたい人には、証券アナリスト(CMA)やCFA®の債券分野が役立ちます。
銀行・証券・保険・アセマネで働く人が外務員の次に何を学んでいるかは、こちらで紹介しています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由
よくある質問
Q. パリティと乖離率の計算式を教えてください。
A. パリティは株価÷転換価額×100、乖離率は(CB価格−パリティ)÷パリティ×100です。乖離率の分母はパリティであることに注意してください。
Q. 最終利回りと所有期間利回りの違いは何ですか?
A. 最終利回りは既発債を買って償還まで持つ場合の利回りで、差損益は額面100円と購入価格の差です。所有期間利回りは償還前に売却する場合で、差損益は売却価格と購入価格の差です。どちらも分母は購入価格です。
Q. 割引債の利回りは単利と複利のどちらで計算しますか?
A. 残存期間が1年以内の割引債は単利、1年を超える割引債は複利で計算するのが基本です。
Q. 経過利子は何日分をどう計算しますか?
A. 前回利払日の翌日から受渡日までの日数を数え、額面金額×年利率×経過日数÷365で計算します。うるう年でも365日で割り、円未満は切り捨てます。
Q. 利回り計算の答えはどこで端数処理すればよいですか?
A. 途中では丸めずに計算し、最後に1回だけ問題文の指示(たとえば小数点以下第4位を切り捨て)どおりに処理します。途中で丸めると選択肢と合わなくなることがあります。
参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「転換社債型新株予約権付社債 概要」「売買制度(CB)」、日本証券業協会「(債券の)経過利子」「公社債の店頭売買の参考値等の発表及び売買値段に関する規則」「債券等の条件付売買取引の取扱いに関する規則」「公社債の売買取引について」、日本銀行「振替国債に関する利子・経過利子の計算式」。例題の数値は学習用に作成したものです。
