商品業務

付随業務(届出業務・承認業務との違い)|外務員試験の要点

付随業務 届出・承認との違い

結論:証券会社が本業以外にできる業務は「付随業務」「届出業務」「承認業務」の3つに分かれ、根拠はすべて金融商品取引法第35条です。

  • 付随業務は届出も承認も不要。届出業務は始めたら遅滞なく届出、承認業務は内閣総理大臣の承認が必要
  • 第35条の対象は第一種金融商品取引業または投資運用業を行う業者。第二種・投資助言のみの業者は兼業の制限なし(第35条の2)
  • 付随業務の代表例:有価証券の貸借、信用取引に付随する金銭の貸付け、保護預り有価証券を担保とする貸付け(1顧客500万円まで)、累積投資契約、投資信託の収益金等の支払代理
  • 「有価証券に関連する情報の提供又は助言」は付随業務だが、投資助言業務に当たるものは除く

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第3巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

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金融商品取引業以外の業務:3つの区分

金融商品取引法は、証券会社(第一種金融商品取引業者)が本業以外の業務を無制限に行うことを認めていません。本業のリスクが他の業務で損なわれないよう、業務の性質に応じて手続を分けています。

区分 根拠 手続 業務の例
付随業務 第35条第1項 不要(当然にできる) 有価証券の貸借、信用取引の金銭貸付け、累積投資契約、M&Aの相談・仲介 など
届出業務 第35条第2項・第3項 行うこととなったとき遅滞なく内閣総理大臣に届出(事後) 商品先物取引、貸金業、宅地建物取引業・建物の賃貸、不動産特定共同事業 など
承認業務 第35条第4項 内閣総理大臣の承認を受けて行う(事前) 付随業務・届出業務のいずれにも当たらない業務

届出業務は「始めてから遅滞なく」届け出ればよく、事前の届出ではありません。また届出業務・承認業務を廃止したときも遅滞なく届出が必要です(第35条第6項)。

届出業務の一覧(第35条第2項)

業務
第1号 商品先物取引法に規定する商品市場における取引等に係る業務
第2号 商品の価格などの指標の変動や市場間の格差などを利用して行う取引(内閣府令で定めるもの)に係る業務
第3号 貸金業その他金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介に係る業務
第4号 宅地建物取引業、宅地・建物の賃貸に係る業務
第5号 不動産特定共同事業
第5号の2 商品投資などにより他人のため金銭その他の財産の運用を行う業務
第6号 有価証券・デリバティブ取引に係る権利以外の資産に対する投資として運用財産の運用を行う業務
第7号 その他内閣府令で定める業務

覚え方は「商品・お金を貸す・不動産・有価証券以外での運用」です。本業(有価証券)から少し離れるが、金融に近い業務が届出業務だとイメージしてください。

なぜ3つに分けているのか

第一種金融商品取引業者は、多数の顧客から金銭や有価証券を預かっています。本業と無関係なリスクの高い業務で損失を出すと、顧客資産や市場の信頼に影響します。そこで、本業と一体の業務(付随業務)は自由に、本業に近いが別の業法がある業務(届出業務)は届出で把握し、それ以外は当局が個別に確認する(承認業務)、という段階的な仕組みになっています。

承認しないことができる場合

承認の申請があった場合、内閣総理大臣は、その業務を行うことが公益に反すると認められるとき、または業務に係る損失の危険の管理が困難で投資者の保護に支障を生ずると認められるときに限り、承認しないことができます(第35条第5項)。「限り」とあるので、承認は原則として認められる仕組みです。

第35条の対象になる業者

業者 兼業のルール
第一種金融商品取引業者・投資運用業者 第35条の3区分に従う(付随・届出・承認)
第二種金融商品取引業・投資助言・代理業のみを行う者 他の業務を兼業できる(第35条の2)。ただしその業務の法律(業法)の適用は受ける

業者の種類そのものは金融商品取引法①業者規制と外務員制度で整理しています。

付随業務の内容

第35条第1項は「次に掲げる行為を業として行うことその他の金融商品取引業に付随する業務」と定め、代表的な行為を列挙しています。外務員試験で出るのは主に次の10項目です。

付随業務 内容
① 有価証券の貸借又はその媒介・代理 株券や債券の貸し借り。信用取引の貸株、債券の貸借取引など
② 信用取引に付随する金銭の貸付け 信用買いの顧客に買付代金を貸し付けること
③ 保護預り有価証券を担保とする金銭の貸付け 顧客から保護預りしている有価証券を担保にした貸付け(内閣府令で定めるものに限る)
④ 有価証券に関する顧客の代理 株主の権利行使の手続など、有価証券に関して顧客を代理すること
⑤ 投資信託の収益金・償還金・解約金の支払代理 投資信託委託会社に代わって、受益者に収益分配金などを支払う業務
⑥ 投資法人の金銭の分配等の支払代理 投資法人(REITなど)の分配金、払戻金、投資法人債の利息・償還金などの支払代理
⑦ 累積投資契約の締結 毎月一定額ずつ有価証券を買い付ける契約(内閣府令で定めるものに限る)
⑧ 有価証券に関連する情報の提供又は助言 市況情報やレポートの提供など。投資助言業務に当たるものは除く
⑨ 他の金融商品取引業者等の業務の代理 他の証券会社などの業務を代理すること(代理する側が行える業務の範囲に限る)
⑩ 登録投資法人の資産の保管 投資法人から委託を受けて資産を保管すること

第35条第1項に掲げられているその他の付随業務

第35条第1項には、上の10項目のほかにも次のような行為が掲げられています。外務員試験では上の10項目が中心ですが、「M&Aの仲介は付随業務か」といった形で問われることがあります。

付随業務 イメージ
事業の譲渡・合併・会社分割・株式交換などに関する相談・仲介 いわゆるM&Aアドバイザリー
他の事業者の経営に関する相談 資本政策や事業承継の相談など
通貨その他デリバティブ取引に関連する資産の売買・媒介・取次ぎ・代理 外貨の売買など
譲渡性預金その他金銭債権の売買・媒介・取次ぎ・代理 CD(譲渡性預金)の売買など
特定資産に対する投資としての運用財産の運用 投資運用業者が一定の資産で運用すること
顧客から取得した情報を同意を得て第三者に提供すること等 顧客の同意に基づくデータの提供など
経営資源を活用した地域の活性化等に資する業務 内閣府令で定めるもの

条文が「次に掲げる行為を業として行うことその他の金融商品取引業に付随する業務」と書いているとおり、列挙された行為は例示です。列挙にない業務でも、本業に付随するものであれば付随業務になり得ます。

① 有価証券の貸借

証券会社は、顧客から株券などを借りたり、顧客に貸したりできます。信用取引で顧客が売り建てるときに証券会社が株券を貸すのが典型です。信用取引そのものの仕組みは株式業務②信用取引・外国株式の取引で扱います。

② 信用取引に付随する金銭の貸付け

信用取引の買い方に買付代金を貸すことです。信用取引の貸付けは付随業務なので、証券会社が貸金業の登録なしに行えます。これに対し、信用取引と関係のない一般の貸金業は届出業務です。この区別はひっかけの定番です。

③ 保護預り有価証券を担保とする金銭の貸付け

内閣府令(金融商品取引業等に関する内閣府令第65条)で、付随業務として認められる範囲が限定されています。

要件 内容
担保になる有価証券 その顧客から保護預りしている、その顧客が所有する有価証券(国債・地方債・社債・株券・投資信託受益証券・投資証券など)
貸付けの上限 既存の貸付けと合計して1顧客500万円まで。かつ貸付け時の担保有価証券の時価の範囲内
公社債投資信託の解約代金 一定の公社債投資信託の解約請求に際して解約代金の支払日までつなぐ貸付けも、同じく500万円が上限

例題. 顧客Aは保護預りの株券(時価800万円)を担保に、すでに300万円の貸付けを受けている。付随業務として追加で貸し付けられる上限はいくらか。

式:追加上限 = 500万円 − 既存の貸付け(ただし担保の時価の範囲内)

途中計算:500万円 − 300万円 = 200万円。合計500万円は時価800万円の範囲内

答え:200万円

例題2. 顧客Bは保護預りの投資信託(時価300万円)を担保に、初めて貸付けを申し込んだ。付随業務として貸し付けられる上限はいくらか。

式:上限 = 500万円と担保の時価のうち、小さいほう − 既存の貸付け

途中計算:500万円 > 時価300万円 なので、時価300万円が上限になる。既存の貸付けは0円

答え:300万円(500万円の枠があっても、担保の時価を超えては貸せない)

④ 有価証券に関する顧客の代理

顧客の代理人として、有価証券に関する手続を行うことです。株主総会の議決権行使の代理などが挙げられます。

⑤⑥ 投資信託・投資法人の支払代理

投資信託の収益分配金・償還金・一部解約金の支払いは、投資信託委託会社の業務です。販売会社である証券会社は、これを代理して受益者に支払います。投資法人の分配金なども同様です。どちらも「委託会社・投資法人の業務の代理」であり、証券会社自身が支払義務を負うわけではありません。支払いの流れは投資信託②販売・基準価額・分配・投資法人もあわせて確認してください。

⑦ 累積投資契約

顧客から一定の期間、継続的に金銭を受け入れ、あらかじめ定めた方法で有価証券を買い付ける契約です。株式累積投資(るいとう)や投資信託の積立がこれに当たります。内閣府令第66条で、次のような内容を契約に定めることが求められています。

  • 買い付ける有価証券の種類と、預り金の充当方法
  • 払込金や果実・償還金の受入れで生じた預り金を累積投資預り金として他の預り金と区分して経理すること
  • 共同で買い付けた有価証券は、他の有価証券と分別して管理すること
  • 顧客から申出があったときは解約すること

⑧ 情報の提供又は助言

有価証券に関連する情報の提供・助言は付随業務です。ただし、投資顧問契約を結んで報酬を得て助言する投資助言業務(第2条第8項第11号)に当たるものは除かれます。投資助言業務を行うには、金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録が必要です。

⑨⑩ 他業者の業務の代理・資産の保管

他の金融商品取引業者等の業務の代理は、代理される業者が行える業務の範囲に限られます。登録投資法人の資産の保管は、投資法人から委託を受けて資産を保管する業務です。

本業と付随業務の境目

保護預り(有価証券等管理業務)は、顧客から有価証券や金銭の預託を受ける業務として、金融商品取引業(第一種金融商品取引業)そのものに含まれます。付随業務ではない点に注意してください。

業務 区分
有価証券の売買・取次ぎ・引受け・募集の取扱い 金融商品取引業(本業)
有価証券の保護預り(有価証券等管理業務) 金融商品取引業(本業)
信用取引に付随する金銭の貸付け 付随業務
信用取引と関係のない金銭の貸付け(貸金業) 届出業務
投資顧問契約に基づく投資助言 金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録が必要
宅地建物取引業・建物の賃貸 届出業務

数字と手続の総まとめ

最後に、この章で問われる数字と手続を1枚にまとめます。付随業務の章は数字が少ないぶん、「届出か承認か不要か」「事前か事後か」の言葉の入れ替えで点を落とす人が多い分野です。

論点 正しい内容 よくある誤り
付随業務の手続 不要 「届出が必要」「承認が必要」
届出業務の届出時期 行うこととなったとき遅滞なく(事後) 「あらかじめ」「事前に」
承認業務の承認者 内閣総理大臣(権限は金融庁長官等に委任) 「日本証券業協会」「金融商品取引所」
業務の廃止 届出業務・承認業務を廃止したら遅滞なく届出 「廃止は届出不要」
保護預り担保貸付け 1顧客500万円まで、担保の時価の範囲内 「1,000万円」「時価を超えてもよい」
第35条の対象 第一種金融商品取引業・投資運用業を行う者 「すべての金融商品取引業者」

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 第一種金融商品取引業者が付随業務を行う場合は、あらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならない。

答え:× 付随業務は届出も承認も不要です。

問2. 第一種金融商品取引業者が貸金業を行うこととなったときは、遅滞なく内閣総理大臣に届け出なければならない。

答え:○ 貸金業は届出業務です。事前ではなく「遅滞なく」の事後届出です。

問3. 信用取引に付随する金銭の貸付けは、届出業務である。

答え:× 付随業務です。一般の貸金業と区別してください。

問4. 顧客から保護預りしている有価証券を担保とする金銭の貸付けは、1顧客当たり1,000万円まで付随業務として行える。

答え:× 上限は500万円(担保の時価の範囲内)です。

問5. 投資信託の収益分配金の支払いを証券会社が代理して行うことは、付随業務である。

答え:○ 投資信託委託会社の収益金・償還金・解約金の支払いの代理は付随業務です。

問6. 内閣総理大臣は、承認業務の申請について、公益に反すると認められる場合などに限り承認しないことができる。

答え:○ 公益に反する場合、損失の危険の管理が困難で投資者保護に支障が生ずる場合に限られます。

問7. 投資顧問契約に基づき報酬を得て投資判断の助言を行う業務は、付随業務として登録なしに行える。

答え:× 投資助言業務は付随業務から除かれ、投資助言・代理業の登録が必要です。

問8. 第二種金融商品取引業のみを行う金融商品取引業者は、他の業務を兼業する場合、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。

答え:× 第二種金融商品取引業・投資助言・代理業のみを行う者は、他の業務を兼業できます(第35条の2)。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

付随業務のうち「情報の提供又は助言」やM&Aの相談は、企業や市場を分析する力が問われる業務です。リサーチや法人営業に関心があるなら、証券アナリスト(CMA)やCFA®で分析の基礎を固めるのが近道です。

銀行・証券・保険・アセマネで働く人が外務員の次に何を学んでいるかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 付随業務・届出業務・承認業務の違いは何ですか?

A. 付随業務は手続なしで行える業務、届出業務は行うこととなったとき遅滞なく内閣総理大臣に届け出る業務、承認業務は内閣総理大臣の承認を受けて行う業務です。いずれも金融商品取引法第35条に定められています。

Q. 保護預り有価証券を担保にした貸付けはいくらまでできますか?

A. 付随業務として行えるのは、既存の貸付けと合計して1顧客500万円まで、かつ担保有価証券の時価の範囲内です。

Q. 有価証券の保護預りは付随業務ですか?

A. いいえ。顧客から有価証券や金銭の預託を受ける業務は有価証券等管理業務として、金融商品取引業(第一種金融商品取引業)そのものに含まれます。

参考(2026年9月確認):e-Gov法令検索「金融商品取引法」第35条・第35条の2、「金融商品取引業等に関する内閣府令」第65条・第66条。制度は改正されることがあるため、最新の条文をご確認ください。