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証券税制②法人税・相続税・贈与税・住民税|外務員試験の要点

証券税制② 相続税と贈与税

結論:この章は「法人の二重課税調整」「相続税の基礎控除」「贈与税の2つの方式」「上場株式の評価」の4点が得点源です。

  • 法人の受取配当は益金不算入。持株割合で100%・100%・50%・20%の4区分
  • 相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数
  • 贈与税は暦年課税(基礎控除110万円)と相続時精算課税(特別控除2,500万円+2024年から年110万円の基礎控除、税率20%)
  • 暦年贈与の相続財産への加算期間は、2024年以後の贈与から段階的に7年へ延長
  • 上場株式の評価は、課税時期の終値と3か月分の月平均額のうち最も低い額

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第3巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。個人の利子・配当・譲渡益・NISAは証券税制①所得税(利子・配当・譲渡益・NISA)で扱います。

租税の種類と体系

税金は、誰が課すかで国税地方税に、税を負担する人と納める人が同じかどうかで直接税間接税に分かれます。証券税制で登場するのは、ほとんどが直接税です。

区分 直接税 間接税
国税 所得税、法人税、相続税、贈与税、復興特別所得税など 消費税、酒税、たばこ税、印紙税など
地方税(道府県税) 道府県民税(配当割・株式等譲渡所得割を含む)、事業税など 地方消費税、道府県たばこ税など
地方税(市町村税) 市町村民税、固定資産税など 市町村たばこ税など

もう1つの切り口が、所得にかかる所得課税(所得税・法人税・住民税)、財産にかかる資産課税(相続税・贈与税・固定資産税)、消費にかかる消費課税(消費税など)の3分類です。相続税と贈与税は資産課税で、贈与税は相続税の課税逃れを防ぐ「補完税」と位置付けられます。

法人税:受取配当等の益金不算入

法人が他の会社から受け取る配当は、支払った会社ですでに法人税が課された利益の分配です。受け取った法人でまた課税すると二重課税になるため、一定額を益金(税務上の収益)に算入しない仕組みがあります。これが受取配当等の益金不算入制度です。不算入になる割合は、保有している株式の割合で4つに分かれます。

株式等の区分 保有割合 益金不算入割合
完全子法人株式等 100%(配当の計算期間を通じて完全支配関係) 100%
関連法人株式等 3分の1超 100%(負債利子相当額を控除)
その他の株式等 5%超〜3分の1以下 50%
非支配目的株式等 5%以下 20%(保険会社は40%)

関連法人株式等については、その配当の額から負債利子相当額(原則として配当額の4%、一定の場合は支払利子の10%が上限)を差し引いた額が不算入になります。「関連法人株式等は保有割合25%以上」など、個人の大口株主の「3%」や古い基準と混ぜるひっかけに注意してください。

例題1(益金不算入額) A社は、B社株式を発行済株式の10%保有しており、B社から配当1,000万円を受け取った。益金不算入額はいくらか。

保有割合10%は「5%超〜3分の1以下」→ その他の株式等 → 益金不算入割合50%

1,000万円×50%

答え:500万円(残り500万円が益金に算入される)

法人の所得税額控除

法人が受け取る利子・配当などからも、所得税(と復興特別所得税)が源泉徴収されます。法人にとってこの源泉所得税は法人税の前払いのようなものなので、法人税額から控除できます。これが所得税額控除です。

項目 内容
対象 利子等・配当等などから源泉徴収された所得税および復興特別所得税
配当等の場合の制限 元本(株式など)の所有期間に対応する部分だけが控除対象(原則法と簡便法を選択)
控除しきれない場合 法人税額より多い部分は還付される
控除を受けた場合 その所得税額は損金に算入されない(控除を受けない場合は損金算入)
手続 確定申告書に明細書(別表6(1))を記載

相続税

相続税は、亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈で財産を取得した人にかかる国税です。遺産の総額が基礎控除額以下なら相続税はかかりません。

基礎控除と法定相続人の数

項目 内容
基礎控除額 3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続放棄した人 放棄がなかったものとして人数に含める
養子(実子がいる場合) 1人まで算入
養子(実子がいない場合) 2人まで算入
申告・納付期限 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内

例題2(基礎控除) 被相続人の相続人は配偶者と子2人。うち子1人が相続を放棄した。基礎控除額はいくらか。

法定相続人の数は放棄がなかったものとして数える → 配偶者1人+子2人=3人

3,000万円+600万円×3人=3,000万円+1,800万円

答え:4,800万円

相続税の計算の流れと税率

相続税は、(1)各人の課税価格を合計し、(2)基礎控除を引いた課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定して税率を当て、(3)その合計(相続税の総額)を実際の取得割合で按分する、という3段階で計算します。税率は10%〜55%の8段階です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

生前贈与加算(暦年課税分)は7年へ

相続などで財産を取得した人が、被相続人から生前に暦年課税で贈与を受けていた場合、一定期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算されます(払った贈与税は相続税から控除)。2023年度改正で、2024年1月1日以後の贈与から加算期間が「相続開始前3年以内」から「7年以内」に延長されました。いきなり7年にはならず、相続開始日に応じて段階的に延びます。

相続開始日 加算対象期間
2026年12月31日まで 相続開始前3年以内
2027年1月1日〜2030年12月31日 2024年1月1日から死亡の日まで
2031年1月1日以後 相続開始前7年以内

延長された部分(相続開始前3年より前の贈与)については、贈与時の価額の合計から総額100万円までは加算しません。

贈与税:暦年課税と相続時精算課税

贈与税は、個人から財産をもらった個人にかかる国税です。受贈者は、贈与者ごとに暦年課税相続時精算課税のどちらかで計算します。申告・納付は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。

項目 暦年課税 相続時精算課税
贈与者 制限なし 贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母など
受贈者 制限なし 贈与の年の1月1日に18歳以上の子・孫(推定相続人である子や孫)
控除 基礎控除 年110万円 基礎控除 年110万円(2024年から)+特別控除 累計2,500万円
税率 10%〜55%の累進(一般税率・特例税率) 一律20%
相続時の扱い 加算対象期間(最長7年)内の贈与のみ加算 贈与時の価額から基礎控除110万円を引いた残額を、期間に関係なく加算
手続 基礎控除以下なら申告不要 最初の贈与の翌年2月1日〜3月15日に選択届出書を提出
変更 一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない

2024年改正のポイントは、相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができたことです。この110万円以下の部分は贈与税がかからず、相続税の計算でも加算されません。基礎控除以下の贈与だけなら贈与税の申告も不要です。暦年課税の110万円とは別枠です。

暦年課税の税率(一般税率と特例税率)

直系尊属(父母・祖父母など)から、贈与の年の1月1日に18歳以上の人が受けた贈与は特例税率、それ以外(夫婦間、兄弟間、18歳未満の子への贈与など)は一般税率です。

基礎控除後の課税価格 一般税率(税率/控除額) 特例税率(税率/控除額)
200万円以下 10%/− 10%/−
300万円以下 15%/10万円 15%/10万円
400万円以下 20%/25万円 15%/10万円
600万円以下 30%/65万円 20%/30万円
1,000万円以下 40%/125万円 30%/90万円
1,500万円以下 45%/175万円 40%/190万円
3,000万円以下 50%/250万円 45%/265万円
4,500万円以下 55%/400万円 50%/415万円
4,500万円超 55%/400万円 55%/640万円

例題3(暦年課税) 30歳の子が父から現金500万円の贈与を受けた(その年の贈与はこれだけ)。贈与税はいくらか。

基礎控除後:500万円−110万円=390万円

父(直系尊属)から18歳以上の子への贈与 → 特例税率。390万円は「400万円以下」の段 → 15%、控除額10万円

390万円×15%−10万円=58.5万円−10万円

答え:48万5,000円(同じ500万円でも一般税率なら390万円×20%−25万円=53万円)

例題4(相続時精算課税) 相続時精算課税を選択した子が、父から2025年に1,500万円、2026年に1,500万円の贈与を受けた(他に贈与なし)。各年の贈与税はいくらか。

2025年:1,500万円−基礎控除110万円=1,390万円 → 特別控除1,390万円を使い税額0円(特別控除の残り2,500万円−1,390万円=1,110万円)

2026年:1,500万円−110万円=1,390万円 → 特別控除の残り1,110万円を引くと280万円 → 280万円×20%=56万円

答え:2025年は0円、2026年は56万円(相続時には(1,500万円−110万円)×2年=2,780万円が相続財産に加算され、納めた56万円は相続税から控除される)

納税猶予制度

相続税・贈与税には、一定の要件を満たすと納税を猶予し、要件を満たし続ければ最終的に免除する納税猶予の特例があります。代表例は、中小企業の後継者が非上場株式等を相続・贈与で取得した場合の納税猶予(事業承継税制)と、農地等の納税猶予です。対象は非上場株式であり、上場株式は対象外という点を押さえておけば十分です。

相続財産としての上場株式の評価

相続税・贈与税では、財産を「課税時期(相続なら死亡の日、贈与なら取得した日)」の時価で評価します。上場株式は値動きが大きいので、納税者に有利になるよう4つの価額のうち最も低い価額で評価できます。

比べる価額 内容
(1)課税時期の最終価格 上場している金融商品取引所の、課税時期の終値
(2)課税時期の属する月の月平均額 その月の毎日の終値の平均
(3)前月の月平均額 前月の毎日の終値の平均
(4)前々月の月平均額 前々月の毎日の終値の平均
  • 原則は(1)。ただし(1)が(2)〜(4)の最も低い価額を超えるときは、その最も低い価額で評価する
  • 負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した上場株式は、(1)の課税時期の終値だけで評価する(月平均は使えない)
  • 課税時期に終値がない場合や権利落ちがある場合は一定の修正をする
  • 「前々月」までで、「3か月前の月」や「前年同月」は使わない

例題5(上場株式の評価) 被相続人が9月15日に死亡。保有するC社株式の9月15日の終値は1,500円、月平均額は9月1,450円、8月1,420円、7月1,480円、6月1,380円だった。1株当たりの評価額はいくらか。

比べるのは 9/15の終値1,500円、9月1,450円、8月1,420円、7月1,480円の4つ(6月は前々月より前なので使わない)

最も低いのは8月の1,420円

答え:1,420円

このほか、証券投資信託の受益証券は、原則として課税時期の1口当たりの基準価額に口数を掛け、解約した場合に源泉徴収される税額相当額や信託財産留保額・解約手数料を差し引いて評価します。上場されているETFやREITは上場株式と同じ方法で評価します。

地方税:個人住民税と法人住民税

個人住民税

個人住民税は、都道府県民税と市町村民税の総称です。前年の所得に対して課される所得割(総合課税分は原則10%)と、定額の均等割からなります。証券税制で問われるのは、上場株式等の配当・譲渡益にかかる5%です。

項目 内容
配当割 上場株式等の配当等・特定公社債等の利子等の支払時に5%を特別徴収(道府県民税)
株式等譲渡所得割 源泉徴収を選択した特定口座の譲渡益から5%を特別徴収(道府県民税)
大口株主等の配当 配当割の対象外(所得税等20.42%のみ源泉徴収され、住民税は総合課税)
課税方式の選択 2024年度(令和6年度)分から、上場株式等の配当等の課税方式を所得税と一致させる

以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」のように、所得税と住民税で別々の方式を選ぶことができました。この使い分けは2024年度分からできなくなっています。

法人住民税

法人住民税は、法人税額を課税標準とする法人税割と、資本金等の額や従業者数に応じた均等割からなります。法人に対しては、利子・配当の支払時に住民税(配当割)は特別徴収されません。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 相続税の基礎控除額の計算上、相続を放棄した人は法定相続人の数に含めない。

答え:× 放棄がなかったものとして人数に含めます。

問2. 被相続人に実子がいる場合、法定相続人の数に含める養子は2人までである。

答え:× 実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までです。

問3. 相続時精算課税の贈与税率は、特別控除額を超えた部分について一律20%である。

答え:○ 2024年以後は、年110万円の基礎控除を差し引いてから特別控除2,500万円を適用します。

問4. 相続時精算課税を選択した後でも、翌年から同じ贈与者の贈与について暦年課税に戻すことができる。

答え:× 一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に変更できません。

問5. 相続により取得した上場株式は、課税時期の終値と、課税時期の属する月以前3か月間の各月の毎日の終値の月平均額のうち、最も低い価額で評価できる。

答え:○ 当月・前月・前々月の月平均額と課税時期の終値の4つを比べます。

問6. 負担付贈与で取得した上場株式も、月平均額のうち最も低い価額で評価できる。

答え:× 負担付贈与や個人間の対価を伴う取引では、課税時期の終値で評価します。

問7. 法人が発行済株式の5%以下を保有する会社から受ける配当(非支配目的株式等)は、その50%が益金不算入となる。

答え:× 非支配目的株式等は20%です。50%は5%超〜3分の1以下の「その他の株式等」です。

問8. 上場株式等の配当について、所得税では総合課税、個人住民税では申告不要を選ぶことができる。

答え:× 2024年度分から、所得税と住民税の課税方式は一致させる必要があります。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

相続・贈与の知識は、富裕層やシニアのお客さまを担当するようになると日常的に求められます。資産を「どう残すか」に加えて「どう運用するか」まで一貫して提案できるように、運用理論や企業分析を学ぶ証券アナリスト(CMA)やCFA®を次の目標にする人もいます。

金融機関で働く人が外務員の次にCFA®試験を選ぶ理由は、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 相続税の基礎控除額はいくらですか?

A. 3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続を放棄した人も人数に含め、養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで数えます。

Q. 相続時精算課税の110万円の基礎控除はいつから使えますか?

A. 2024年1月1日以後の贈与から使えます。暦年課税の基礎控除110万円とは別枠で、この部分は贈与税がかからず、相続税の計算でも加算されません。特別控除2,500万円はこの基礎控除を差し引いた後に適用します。

Q. 生前贈与の加算期間が7年になるのはいつからですか?

A. 2024年1月1日以後の暦年課税の贈与が対象で、相続開始日に応じて段階的に延びます。2026年末までの相続は3年以内、2027年から2030年の相続は2024年1月1日以後の贈与、2031年以後の相続で7年以内になります。延長部分は総額100万円まで加算されません。

Q. 上場株式を相続したときの評価額はどう決まりますか?

A. 課税時期(死亡の日)の終値と、その月・前月・前々月の毎日の終値の月平均額の4つを比べ、最も低い価額で評価します。ただし負担付贈与などで取得した場合は課税時期の終値で評価します。

Q. 法人が受け取る配当はすべて非課税ですか?

A. いいえ。受取配当等の益金不算入の割合は保有割合で決まり、完全子法人株式等と関連法人株式等(3分の1超)は100%、その他の株式等(5%超〜3分の1以下)は50%、非支配目的株式等(5%以下)は20%です。

参考(2026年9月確認):国税庁タックスアンサーNo.4152「相続税の計算」、No.4155「相続税の税率」、No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」、No.4103「相続時精算課税の選択」、No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、No.4409「贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」、No.4632「上場株式の評価」、No.5760「所得税額控除」、No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」、国税庁「受取配当等の益金不算入」(申告書記載要領)・「別表八(一)受取配当等の益金不算入に関する明細書」記載要領、総務省「個人住民税における金融所得課税について」。税制は毎年改正されるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。