Learning Module 3「Cost of Capital: Advanced Topics(資本コスト:発展的トピック)」は、資本コストに影響するトップダウン・ボトムアップの要因、負債コストの推定方法、株式リスク・プレミアムの推定、株主資本の要求収益率の推定方法と上場・非上場企業への適用を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM3のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には6つのLOSがあります。

  1. LOS 1:資本コストに影響を与えるトップダウンとボトムアップの要因を説明するexplain top-down and bottom-up factors that impact the cost of capital
  2. LOS 2:負債コストの推定に用いる方法を比較するcompare methods used to estimate the cost of debt
  3. LOS 3:株式リスク・プレミアムを推定するヒストリカル・アプローチとフォワード・ルッキング・アプローチを説明するexplain historical and forward-looking approaches to estimating an equity risk premium
  4. LOS 4:株主資本の要求収益率の推定に用いる方法を比較するcompare methods used to estimate the required return on equity
  5. LOS 5:上場企業と非上場企業について、負債コストまたは株主資本の要求収益率を推定するestimate the cost of debt or required return on equity for a public company and a private company
  6. LOS 6:企業の資本構成と資本コストを同業他社と比較して評価するevaluate a company’s capital structure and cost of capital relative to peers

LM3のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • WACCは負債・優先株・普通株の構成比率と各資本コストから決まり、企業の投資判断と企業評価の重要な入力となる
  • 資本コストの推定には唯一の正しい方法はなく、目標資本構成や限界税率など多くの仮定が必要
  • 負債は株式よりリスクが低いため資本コストも低く、負債コストはベンチマークのリスクフリー・レートと信用スプレッドの和で表される
  • 資本コストは、金利水準や税制などのトップダウン要因と、収益の安定性・レバレッジ・資産の性質などのボトムアップ要因の影響を受ける
  • 株式リスク・プレミアムは過去データに基づく方法と、配当割引モデルやマクロ経済モデル、サーベイなどの将来予想に基づく方法で推定する
  • 株主資本コストの推定には、CAPM、マルチファクター・モデル、ビルドアップ法、債券利回り+リスク・プレミアム法などがある
  • 非上場企業では比較可能な上場企業のベータの調整や、規模・企業固有のリスク・プレミアムの加算が必要になる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:資本コストのトップダウン・ボトムアップ要因

トップダウン要因は金利・インフレ、景気、税制、規制、資本市場の流動性など企業外部の要因です。ボトムアップ要因は売上・利益の安定性、収益性、レバレッジ、資産の性質(汎用性・担保価値)など企業固有の要因です。

  • トップダウン:資本の利用可能性、市場環境、法制度・税制、国のリスク
  • ボトムアップ:規模・多角化、収益の変動性、財務レバレッジ、資産の特殊性
  • 証券の特性:優先順位、担保、コベナンツ
  • 負債コスト=リスクフリー・レート+信用スプレッド

LOS 2:負債コストの推定方法

上場債がある場合は最終利回り(YTM)を使い、流動性が乏しい場合は同格付けの債券利回りを使う格付けアプローチを用います。格付けがない場合は財務比率から推定する合成格付けを用います。

  • YTMアプローチ:流通市場の債券利回り
  • 格付けアプローチ:同格付け・同年限の利回り
  • 合成格付け:財務比率から格付けを推定
  • 銀行借入・リースなど非上場負債の考慮
  • 税引後負債コスト=r_d ×(1 − 限界税率)

LOS 3:株式リスク・プレミアムの推定

ヒストリカル・アプローチは過去の株式リターンとリスクフリー・レートの差の平均を使い、算術平均か幾何平均か、期間やリスクフリー資産の選択、生存者バイアスが論点です。フォワード・ルッキング・アプローチにはゴードン成長モデル、マクロ経済(サプライサイド)モデル、サーベイがあります。

  • ヒストリカル:平均の種類、期間、短期債か長期債か
  • 生存者バイアスによる過大推定の可能性
  • ゴードン成長モデル:配当利回り+成長率−リスクフリー・レート
  • マクロ経済モデル:インフレ、実質EPS成長、P/Eの変化、インカムから推定
  • サーベイ:専門家・投資家へのアンケート
ERP(ゴードン成長モデル)= D₁ ÷ P₀ + g − r_f

LOS 4:株主資本の要求収益率の推定方法

代表的な方法はCAPM、ファクターを追加するマルチファクター・モデル、リスク・プレミアムを積み上げるビルドアップ法、自社債利回りにプレミアムを上乗せする債券利回り+リスク・プレミアム法です。

  • CAPM:r_e = r_f + β × ERP
  • マルチファクター:ファーマ・フレンチ・モデルなど
  • ビルドアップ法:r_f+ERP+規模プレミアム+固有リスク・プレミアム
  • 債券利回り+リスク・プレミアム法
  • 新興国ではカントリー・リスク・プレミアムを加算
r_e = r_f + β ×(E(R_m) − r_f)

LOS 5:上場企業と非上場企業の資本コストの推定

上場企業は市場データから直接推定できますが、非上場企業では比較可能な上場企業のベータをアンレバー・リレバーして用います。さらに規模プレミアムや企業固有のリスク・プレミアムを加算することが多いです。

  • 比較企業のベータを資本構成の違いで調整
  • アンレバード・ベータ=β_e ÷[1 +(1 − t)× D/E]
  • リレバー時は対象企業の目標D/Eを使用
  • 規模プレミアム・企業固有リスク・プレミアムの加算
  • 非上場企業の負債コストは合成格付けなどで推定
β_e = β_u ×[1 +(1 − t)× D/E]

LOS 6:同業他社との比較による資本構成と資本コストの評価

企業の資本構成や資本コストを同業他社と比べ、事業リスクや財務リスクの違いが妥当に反映されているかを評価します。レバレッジが高すぎれば財務困難コストが増え、低すぎれば負債の節税効果を活かせていない可能性があります。

  • 同業他社の資本構成・格付け・ベータとの比較
  • 事業リスクの違いの反映
  • 最適資本構成:WACCが最小となる構成
  • 財務困難コストと節税効果のトレードオフ
  • 目標資本構成を用いたWACCの算定

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