【CFA®︎ L2 Portfolio Construction LM5】Measuring and Managing Market Risk を要点解説|VaR・感応度指標・シナリオ分析・リスク・バジェッティング

Learning Module 5「Measuring and Managing Market Risk(市場リスクの測定と管理)」は、VaRの意味と3つの推定方法、長所・短所と拡張指標、感応度指標とシナリオ指標、株式・債券・オプションのエクスポージャー指標、リスク管理上の制約、資本配分への活用、銀行・運用会社・年金・保険会社で使われるリスク指標を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM5のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM5には12個のLOSがあります。
- LOS 1:ポートフォリオのリスク測定におけるバリュー・アット・リスク(VaR)の使い方を説明するexplain the use of value at risk (VaR) in measuring portfolio risk
- LOS 2:VaRを推定するパラメトリック法(分散共分散法)、ヒストリカル・シミュレーション法、モンテカルロ・シミュレーション法を比較するcompare the parametric (variance–covariance), historical simulation, and Monte Carlo simulation methods for estimating VaR
- LOS 3:パラメトリック法、ヒストリカル・シミュレーション法、モンテカルロ・シミュレーション法によってVaRを推定・解釈するestimate and interpret VaR under the parametric, historical simulation, and Monte Carlo simulation methods
- LOS 4:VaRの長所と限界を説明するdescribe advantages and limitations of VaR
- LOS 5:VaRの拡張指標を説明するdescribe extensions of VaR
- LOS 6:感応度リスク指標とシナリオ・リスク指標を説明し、これらをVaRと比較するdescribe sensitivity risk measures and scenario risk measures and compare these measures to VaR
- LOS 7:株式・債券・オプションのエクスポージャー指標を、市場リスクとボラティリティ・リスクの測定・管理にどのように使えるかを示すdemonstrate how equity, fixed-income, and options exposure measures may be used in measuring and managing market risk and volatility risk
- LOS 8:感応度リスク指標とシナリオ・リスク指標の使い方を説明するdescribe the use of sensitivity risk measures and scenario risk measures
- LOS 9:感応度リスク指標とシナリオ・リスク指標の長所と限界を説明するdescribe advantages and limitations of sensitivity risk measures and scenario risk measures
- LOS 10:リスク・バジェッティング、ポジション限度、シナリオ限度、ストップロス限度など、市場リスク管理に用いられる制約を説明するexplain constraints used in managing market risks, including risk budgeting, position limits, scenario limits, and stop-loss limits
- LOS 11:リスク指標を資本配分の意思決定にどのように使えるかを説明するexplain how risk measures may be used in capital allocation decisions
- LOS 12:銀行、資産運用会社、年金基金、保険会社が用いるリスク指標を説明するdescribe risk measures used by banks, asset managers, pension funds, and insurers
LM5のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- VaRは、一定の期間に、一定の確率で発生すると予想される最小の損失額(または損失率)
- VaRの算出にはポートフォリオのパフォーマンスをリスク・ファクターに分解する必要がある
- 推定方法はパラメトリック法、ヒストリカル・シミュレーション法、モンテカルロ・シミュレーション法の3つで、唯一の正しい方法はない
- パラメトリック法は正規分布を前提とした簡便な方法だが、オプションを含むなどリターンが正規分布でない場合に推定が不正確になる
- ヒストリカル法は実際に起きた事象を反映し分布の仮定が不要だが、将来が過去に似ている場合にしか役立たない。モンテカルロ法は柔軟だが複雑で時間がかかる
- VaRは単純でわかりやすく比較や資本配分、バックテストに使え規制当局にも受け入れられている一方、主観的で計算上の選択に敏感、テール・リスクを過小評価しやすい
- 感応度指標(ベータ、デュレーション、グリークス)やシナリオ分析(ヒストリカル・シナリオ、仮想シナリオ、ストレス・テスト)がVaRを補完する
- リスク・バジェット、ポジション限度、シナリオ限度、ストップロス限度などの制約でリスクを管理し、組織の種類によって重視するリスク指標が異なる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:VaRの意味と使い方
VaR(バリュー・アット・リスク)は、一定の保有期間に、一定の確率で発生すると予想される最小の損失です。例えば「1日5%のVaRが100万円」は、5%の確率で1日に少なくとも100万円の損失が生じることを意味します。
- 3つの要素:損失額、確率(信頼水準)、期間
- 5%のVaR = 95%の信頼水準で最大と考えられる損失
- VaRの算出にはリスク・ファクターへの分解が必要
- ポートフォリオ全体のリスクを1つの数値で表す
LOS 2:VaRの3つの推定方法の比較
パラメトリック法は期待リターン・分散・共分散と正規分布を用いる方法、ヒストリカル・シミュレーション法は現在の保有を過去のリターンに当てはめる方法、モンテカルロ法は仮定した分布から多数のシナリオを生成する方法です。
- パラメトリック:簡単だが正規分布の仮定に依存し、オプションのような非線形商品に不向き
- ヒストリカル:分布の仮定が不要で実際の事象を反映するが、過去が将来を代表する必要がある
- モンテカルロ:非線形商品や任意の分布に対応でき柔軟だが、複雑で計算負荷が大きい
- どの方法も入力データや仮定によって結果が大きく変わる
LOS 3:VaRの推定と解釈
パラメトリック法では、ポートフォリオの期待リターンから信頼水準に応じた標準偏差の倍数を差し引いてVaRを求めます。ヒストリカル法とモンテカルロ法では、リターンを並べた分布の下位の指定パーセンタイル値を読み取ります。
- 5%VaR:z = 1.65、1%VaR:z = 2.33
- 期間の調整:年次データを日次にするには平均を日数で、標準偏差を日数の平方根で割る
- ヒストリカル:例えば500個のリターンで5%VaRなら下から25番目付近の値
- 結果はポートフォリオ価値を掛けて金額に換算
LOS 4:VaRの長所と限界
VaRは単純でわかりやすく、資産クラスや部門間のリスク比較、資本配分、業績評価に使え、バックテストで検証でき、規制当局にも広く受け入れられています。一方で、主観的な選択に敏感で、テール・リスクを過小評価しやすいなどの限界があります。
- 長所:概念が簡単で伝えやすい、リスクを1つの数値に集約
- 長所:比較・資本配分・業績評価、バックテストによる検証、規制上の受容
- 限界:期間・信頼水準・手法・データの選択に結果が左右される
- 限界:テール(VaRを超える損失の大きさ)を示さない、流動性リスクを見落としやすい
- 限界:ストレス時に相関が上昇する効果を過小評価しやすい、上方の機会を無視
LOS 5:VaRの拡張
VaRの弱点を補うために、条件付きVaR(CVaR、期待ショートフォール)、増分VaR、限界VaRなどの拡張指標が使われます。
- CVaR:VaRを超える損失が生じた場合の平均損失(テールの大きさ)
- 増分VaR(IVaR):ポジションの追加・変更によるVaRの変化
- 限界VaR(MVaR):ポジションをわずかに変えたときのVaRの変化率。リスク寄与度の把握に使う
- 相対VaR(アクティブVaR):ベンチマーク対比の損失の程度
LOS 6:感応度指標・シナリオ指標とVaRの比較
感応度指標はリスク・ファクターの小さな変化に対する価値の変化を、シナリオ指標は特定のシナリオでの損益を示します。VaRが確率を伴う損失の大きさを示すのに対し、これらは確率を示さない代わりにリスクの中身を具体的に示します。
- 感応度指標:ベータ、デュレーション・コンベクシティ、デルタ・ガンマ・ベガ
- シナリオ指標:ヒストリカル・シナリオ、仮想シナリオ、ストレス・テスト
- VaRは確率と損失額、感応度・シナリオは「何が起きたら何が起きるか」
- 併用によりリスクを多面的に把握
LOS 7:株式・債券・オプションのエクスポージャー指標
株式はベータ、債券はデュレーションとコンベクシティ、オプションはデルタ・ガンマ・ベガで、市場リスクやボラティリティ・リスクへのエクスポージャーを測り管理します。
- ベータ:市場リターンに対する株式の感応度
- デュレーション・コンベクシティ:金利変化に対する債券価格の変化
- デルタ:原資産価格の変化に対するオプション価値の変化、ガンマ:デルタの変化
- ベガ:ボラティリティの変化に対するオプション価値の変化
- デリバティブでエクスポージャーを目標水準に調整
LOS 8:感応度指標・シナリオ指標の使い方
感応度指標は、ポジションごとのリスクを把握し、ヘッジ比率やエクスポージャーの限度を設定するのに使います。シナリオ分析は、ヒストリカル・シナリオや仮想シナリオ、ストレス・テストによって極端な状況での損失を評価します。
- ヒストリカル・シナリオ:過去の危機時の市場変動を現在のポートフォリオに当てはめる
- 仮想シナリオ:起こり得るが過去にない事象を想定
- リバース・ストレス・テスト:耐えられない損失を生む条件から逆算
- ストレス・テスト:極端だが起こりうる状況での損失を評価
- 感応度とシナリオを組み合わせて損益を推定
LOS 9:感応度指標・シナリオ指標の長所と限界
感応度指標はわかりやすくヘッジに直結しますが、大きな変化では近似が不正確になり、異なる資産間で比較しにくいという限界があります。シナリオ指標はテール・リスクを具体的に示せますが、シナリオの選択が主観的で確率が示されません。
- 感応度:小さな変化に対する近似で、大きな変化では不正確
- 感応度:資産の種類ごとに指標が異なり集計しにくい
- ヒストリカル・シナリオ:過去の再現にとどまり、将来の新たな事象を捉えられない
- 仮想シナリオ:作成が難しく、相関やファクターの連動を適切に設定する必要
- シナリオ:発生確率がわからない
LOS 10:市場リスク管理の制約
市場リスクはリスク・バジェッティング、ポジション限度、シナリオ限度、ストップロス限度などの制約によって管理します。どの制約も単独では不十分で、組み合わせて使います。
- リスク・バジェッティング:全体の許容リスクを部門や運用者に配分
- ポジション限度:特定のポジションの大きさを制限(集中を防ぐ)
- シナリオ限度:特定のシナリオで許容される損失の上限
- ストップロス限度:損失が一定水準に達したらポジションを縮小・解消
- 限度が厳しすぎると機会を逃し、緩すぎると過大なリスクを許す
LOS 11:リスク指標と資本配分
リスク指標は、どの事業や運用者に資本(リスク資本)を配分するかの判断に使われます。リスクに対するリターンが高い活動に多くの資本を配分し、全体の効率を高めることが目的です。
- リスク調整後のリターン(リスク資本当たりのリターン)で活動を比較
- 名目上の資本ではなく、VaRなどで測ったリスク資本を配分
- 限界VaRや増分VaRで新規ポジションの影響を評価
- 最低限の目標リターンを上回る活動に資本を配分
LOS 12:組織の種類ごとのリスク指標
銀行、資産運用会社、年金基金、保険会社は、負債の性質や規制が異なるため、重視するリスク指標が異なります。
- 銀行:資産と負債の両面、流動性、レバレッジ、VaR・ストレス・テスト、経済資本
- 資産運用会社:ベンチマーク対比のリスク(トラッキング・エラー、アクティブ・シェア)、流動性、ドローダウン
- 年金基金:積立水準(サープラス)のリスク、負債とのデュレーション・ギャップ、サープラス・アット・リスク
- 損害保険:保険引受リスクとのバランスを踏まえた資産側の市場リスク管理
- 生命保険:資産と負債の金利感応度のマッチング、ストレス・テスト
効率よく学ぶには FA-Academy
CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
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