【CFA®︎ L1 Corporate Finance LM6】Capital Structure を要点解説|WACC・MM理論・トレードオフ理論・ペッキング・オーダー

Learning Module 6「Capital Structure(資本構成)」は、加重平均資本コスト(WACC)の計算と解釈、資本構成とWACCに影響する要因、資本構成に関するモジリアーニ=ミラーの命題、最適資本構成と目標資本構成を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM6のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には4つのLOSがあります。
- LOS 1:企業の加重平均資本コストを計算・解釈するcalculate and interpret the weighted-average cost of capital for a company
- LOS 2:資本構成と加重平均資本コストに影響する要因を説明するexplain factors affecting capital structure and the weighted-average cost of capital
- LOS 3:資本構成に関するモジリアーニ=ミラーの命題を説明するexplain the Modigliani–Miller propositions regarding capital structure
- LOS 4:最適資本構成と目標資本構成を説明するdescribe optimal and target capital structures
LM6のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 資本コストは負債と株式のコストから成り、それぞれ負債・株式による資金提供に対して投資家が要求する収益率
- 資本コストは、負債と株式のコストを現在の時価または経営陣の目標ウエイトで加重平均して推定する
- 発行体は一般にWACCの最小化と、資産と資金調達のデュレーションの一致を目指す。目標資本構成は簿価や、負債(純負債)対EBITDA倍率の上限・最低格付などの財務レバレッジ指標で示されることが多い
- 必要な資金の量と種類やWACCのウエイトは、ビジネスモデル(資本集約型か資本軽量型か)やライフサイクルの段階に左右される
- 負債と株式のコストは、金融市場や業界の状況といったトップダウン要因と、売上の安定性や営業・財務レバレッジといった発行体固有の要因で決まる
- MMは税金がないなどの制約的な仮定のもとで資本構成は企業価値に無関係であることを示し、法人税・財務的困窮・倒産コストを考慮すると資本構成は企業価値に影響するが、将来キャッシュフローほどではないことを示した
- 静的トレードオフ理論では、負債の節税効果と財務的困窮コストが釣り合う点が最適資本構成
- ペッキング・オーダー理論では、企業は内部資金を優先し、外部資金が必要な場合はまず負債を選び、株式発行はできるだけ避ける
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:WACCの計算と解釈
WACCは、負債・優先株・普通株の各資本コストを資本構成のウエイトで加重平均したもので、負債コストには支払利息の節税効果を反映して税引後で用います。ウエイトには時価または目標資本構成を使います。
- 負債コスト:税引後 rd × (1 − t)
- ウエイト:現在の時価、または経営陣の目標ウエイト
- WACCは平均的なリスクのプロジェクトのハードル・レート
- 企業はWACCの最小化を目指す
- 資産と資金調達のデュレーションの一致も重視
LOS 2:資本構成とWACCに影響する要因
資本構成とWACCは、ビジネスモデルやライフサイクルの段階、売上の安定性、営業レバレッジ、資産の性質などの発行体固有の要因と、金融市場・業界の状況などのトップダウン要因で決まります。
- 創業期:キャッシュフローが不安定で負債の調達が難しく、主に株式で調達
- 成長期:キャッシュフローが改善し、ある程度の負債調達が可能
- 成熟期:安定したキャッシュフローで負債の利用が増える
- 売上・キャッシュフローが安定し営業レバレッジが低いほど負債余力が大きい
- 有形資産が多い(担保にできる)ほど負債で調達しやすい
- 資本集約型か資本軽量型かで必要資金の量・種類が異なる
LOS 3:モジリアーニ=ミラーの命題
MMは、税金・取引コスト・倒産コストがなく情報が対称的などの仮定のもとで、資本構成は企業価値に無関係(命題I)であり、負債が増えると株式コストは上昇する(命題II)ことを示しました。法人税を考慮すると、負債の節税効果の分だけ企業価値が高まります。
- 命題I(税なし):V_L = V_U、資本構成は企業価値に影響しない
- 命題II(税なし):負債比率とともに株式コストが上昇し、WACCは一定
- 命題I(税あり):V_L = V_U + tD、節税効果の分だけ企業価値が増加
- 命題II(税あり):株式コストの上昇は (1 − t) の分だけ緩やかで、負債増加でWACCが低下
- 財務的困窮コスト:直接コスト(法的費用など)と間接コスト(機会の喪失など)
- エージェンシー・コストや情報の非対称性も資本構成に影響
LOS 4:最適資本構成と目標資本構成
静的トレードオフ理論では、負債の節税効果の限界的な便益と財務的困窮コストが釣り合う点が最適資本構成で、そこでWACCが最小、企業価値が最大になります。実務では経営陣が目標資本構成を定め、その周辺で資本構成が変動します。
- 静的トレードオフ理論:V_L = V_U + tD − 財務的困窮コストの現在価値
- 最適資本構成:WACCが最小、企業価値が最大
- 目標資本構成:簿価ベースや負債対EBITDA倍率、目標格付で設定されることが多い
- 市場価値の変動や資金調達の機会により、実際の構成は目標から乖離
- ペッキング・オーダー理論:内部資金 → 負債 → 株式の順に選好(情報の非対称性が根拠)
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