【CFA®︎ L2 Quants LM5】Time-Series Analysis を要点解説|トレンド・モデル・ARモデル・単位根・季節性・ARCH

Learning Module 5「Time-Series Analysis(時系列分析)」は、線形・対数線形トレンド・モデル、共分散定常性と自己回帰(AR)モデル、平均回帰と予測精度の比較、ランダム・ウォークと単位根、季節性、ARCH、そして複数の時系列を使う回帰での注意点を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM5のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM5には15個のLOSがあります。
- LOS 1:線形トレンドまたは対数線形トレンドとしてモデル化された時系列について、推定されたトレンド係数から予測トレンド値を計算・評価するcalculate and evaluate the predicted trend value for a time series, modeled as either a linear trend or a log-linear trend, given the estimated trend coefficients
- LOS 2:特定の時系列に線形トレンドと対数線形トレンドのどちらを使うべきかを決める要因を説明し、トレンド・モデルの限界を評価するdescribe factors that determine whether a linear or a log-linear trend should be used with a particular time series and evaluate limitations of trend models
- LOS 3:時系列が共分散定常であることの必要性を説明し、定常でない時系列の意味を説明するexplain the requirement for a time series to be covariance stationary and describe the significance of a series that is not stationary
- LOS 4:p 次の自己回帰(AR)モデルの構造を説明し、推定係数から1期先・2期先の予測値を計算するdescribe the structure of an autoregressive (AR) model of order p and calculate one- and two-period-ahead forecasts given the estimated coefficients
- LOS 5:残差の自己相関を使って自己回帰モデルが時系列に適合しているかを検定する方法を説明するexplain how autocorrelations of the residuals can be used to test whether the autoregressive model fits the time series
- LOS 6:平均回帰を説明し、平均回帰水準を計算するexplain mean reversion and calculate a mean-reverting level
- LOS 7:サンプル内予測とサンプル外予測を対比し、平均二乗誤差の平方根(RMSE)の基準に基づいて異なる時系列モデルの予測精度を比較するcontrast in-sample and out-of-sample forecasts and compare the forecasting accuracy of different time-series models based on the root mean squared error criterion
- LOS 8:時系列モデルの係数の不安定性を説明するexplain the instability of coefficients of time-series models
- LOS 9:ランダム・ウォーク過程の特徴を説明し、共分散定常過程と対比するdescribe characteristics of random walk processes and contrast them to covariance stationary processes
- LOS 10:単位根が時系列分析に与える影響を説明し、単位根が生じやすい場合とその検定方法を説明し、単位根をもつ時系列を AR モデルで分析できるよう変換する方法を示すdescribe implications of unit roots for time-series analysis, explain when unit roots are likely to occur and how to test for them, and demonstrate how a time series with a unit root can be transformed so it can be analyzed with an AR model
- LOS 11:非定常性に関する単位根検定の手順を説明し、その検定と自己回帰時系列モデルとの関係を説明するdescribe the steps of the unit root test for nonstationarity and explain the relation of the test to autoregressive time-series models
- LOS 12:時系列モデルにおける季節性の検定と修正の方法を説明し、季節ラグを含む AR モデルによる予測値を計算・解釈するexplain how to test and correct for seasonality in a time-series model and calculate and interpret a forecasted value using an AR model with a seasonal lag
- LOS 13:自己回帰条件付き不均一分散(ARCH)を説明し、ARCH モデルを時系列の分散の予測に応用する方法を説明するexplain autoregressive conditional heteroskedasticity (ARCH) and describe how ARCH models can be applied to predict the variance of a time series
- LOS 14:線形回帰で使う前に、時系列変数の非定常性や共和分をどのように分析すべきかを説明するexplain how time-series variables should be analyzed for nonstationarity and/or cointegration before use in a linear regression
- LOS 15:与えられた投資上の問題を分析するのに適切な時系列モデルを判断し、その選択を正当化するdetermine an appropriate time-series model to analyze a given investment problem and justify that choice
LM5のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 線形トレンド・モデルの t 期の予測値は b̂0 + b̂1t、対数線形トレンド・モデルでは e^(b̂0 + b̂1t)
- 一定の額で増える系列には線形トレンド、一定の率で増える系列には対数線形トレンドが適する。トレンド・モデルの誤差に系列相関があれば別のモデルが必要
- 共分散定常の条件は、期待値・分散・一定ラグの自己共分散がすべての期間で一定かつ有限であること。定常でない系列に線形回帰で AR モデルを推定しても有効でない
- AR モデルが適合していれば、誤差項の自己相関はすべてのラグでゼロ。共分散定常な系列は平均回帰的で、長期平均より上なら下がり、下なら上がる
- 予測性能の評価ではサンプル外予測が重要で、RMSE が小さいほど予測精度が高い
- ランダム・ウォークは単位根をもち共分散定常ではない。1階の階差をとることで定常系列に変換できる場合がある
- 季節ラグで系列相関が有意なら季節性があり、季節ラグを加えてモデル化する。誤差の分散が過去の誤差の分散に依存する ARCH は、残差2乗をその1期前の値に回帰して検定する
- 2つの時系列の回帰では単位根の有無を確認し、両方に単位根がある場合は共和分しているときに限り回帰が有効
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:線形・対数線形トレンドの予測値
トレンド・モデルは時間 t だけを独立変数とする回帰です。線形トレンドは毎期一定額の増加、対数線形トレンドは毎期一定率の成長を表し、予測値は推定係数に t を代入して求めます。
- 線形:yt = b0 + b1t + εt
- 対数線形:ln yt = b0 + b1t + εt
- 対数線形の予測値は指数をとって元の水準に戻す
- t は期間番号(初期を1とするなど)
LOS 2:トレンド・モデルの選び方と限界
データのプロットが直線的なら線形、指数的に伸びる(成長率が一定)なら対数線形を選びます。ただしトレンド・モデルは誤差に系列相関が残りやすく、その場合は前提違反となるため別のモデル(AR モデルなど)が必要です。
- 一定額の増加 → 線形トレンド
- 一定率の成長 → 対数線形トレンド
- 系列相関の確認:ダービン・ワトソン(DW)統計量が2から大きく離れていないか
- 系列相関があれば標準誤差・検定が信頼できない
LOS 3:共分散定常性の必要性
AR モデルを線形回帰で推定するには、時系列が共分散定常(covariance stationary)である必要があります。定常でない系列にそのまま回帰を使うと推定結果が無意味になるおそれがあります。
- 条件1:期待値が一定かつ有限
- 条件2:分散が一定かつ有限
- 条件3:一定ラグの自己共分散が一定かつ有限
- 非定常の兆候:明確なトレンド(平均が変化)や分散の変化
LOS 4:AR(p) モデルの構造と多期先予測
p 次の自己回帰モデル AR(p) は、系列自身の過去 p 期の値で現在の値を説明します。2期先の予測は、1期先の予測値を再び式に代入する連鎖則(chain rule of forecasting)で求めます。
- AR(1):xt = b0 + b1xt−1 + εt
- 1期先:x̂t+1 = b̂0 + b̂1xt
- 2期先:x̂t+2 = b̂0 + b̂1x̂t+1
- 先の予測ほど不確実性が大きい
LOS 5:残差の自己相関によるモデル適合の検定
AR モデルが適切なら、残差の自己相関はすべてのラグでゼロになるはずです。各ラグの残差自己相関を t 検定し、有意なものがあればラグを追加するなどモデルを見直します。
- 手順:AR(1) を推定→残差の自己相関を計算→有意性を検定
- 自己相関の標準誤差は 1/√T(T は観測数)
- 有意な自己相関があればモデルは不適切
- AR モデルでは DW 統計量は使えない
LOS 6:平均回帰と平均回帰水準
平均回帰(mean reversion)とは、長期平均より高ければ下がり、低ければ上がる性質です。AR(1) では |b1| < 1 のとき有限の平均回帰水準をもち、現在値がその水準にあれば次期の予測値も同じになります。
- 共分散定常な系列は平均回帰的
- |b1| < 1 が条件(b1 = 1 は単位根)
- 現在値が平均回帰水準より上なら予測値は下がる
LOS 7:サンプル内・サンプル外予測と RMSE
サンプル内予測は推定に使った期間の当てはまり、サンプル外予測は推定期間外での予測で、実務上はサンプル外の精度がより重要です。モデル間の比較にはRMSE(平均二乗誤差の平方根)を使い、小さいほど精度が高いと判断します。
- サンプル外予測は将来データへの汎化力を示す
- RMSE:予測誤差の2乗の平均の平方根
- RMSE が最小のモデルを選ぶ
- サンプル内で優れていてもサンプル外で劣ることがある
LOS 8:時系列モデルの係数の不安定性
時系列モデルの係数は、推定期間によって大きく変わることがあります。経済環境や規制の変化で系列の性質が変わるためで、推定期間中に系列が定常であったことを確認して期間を選ぶ必要があります。
- 期間の長さのトレードオフ:長いほど統計的信頼性↑、構造変化の混入リスク↑
- 構造変化の前後は分けて推定を検討
- 定常性の確認が期間選択の前提
- 係数の安定性はモデルの信頼性を左右
LOS 9:ランダム・ウォークと共分散定常過程
ランダム・ウォークは、今期の値が前期の値に予測不能な誤差を加えたものになる系列で、AR(1) で b0 = 0、b1 = 1 の場合にあたります。平均回帰水準が定義できず分散も時間とともに増大するため、共分散定常ではありません。
- ランダム・ウォーク:xt = xt−1 + εt
- ドリフト付き:xt = b0 + xt−1 + εt(b0 ≠ 0)
- すべてのランダム・ウォークは単位根をもつ
- 平均回帰水準 b0/(1−b1) は分母ゼロで定義できない
- 誤差の分散が時間とともに拡大
LOS 10:単位根の影響と階差変換
系列が単位根(b1 = 1)をもつと共分散定常でなくなり、通常の回帰による推定や t 検定が信頼できません。単位根は資産価格や為替レートなどで生じやすく、1階の階差(yt = xt − xt−1)をとれば定常になり AR モデルで分析できる場合があります。
- 単位根があると AR 係数の t 検定は無効
- 単位根は自己相関の検定ではなく Dickey–Fuller 検定で調べる
- 階差をとったランダム・ウォークは平均ゼロ・分散一定の定常系列
- 階差系列 yt に AR モデルを当てはめる
LOS 11:単位根検定(Dickey–Fuller)の手順
Dickey–Fuller 検定は、AR(1) の両辺から xt−1 を引いた式で g1 = b1 − 1 がゼロかを検定します。帰無仮説は「単位根あり(g1 = 0)」で、通常の t 分布ではなく専用の修正臨界値を使います。
- 変形式:xt − xt−1 = b0 + g1xt−1 + εt
- H0:g1 = 0(単位根あり・非定常)
- H1:g1 < 0(定常)
- 修正された臨界値(通常より絶対値が大きい)を使用
- 棄却できなければ階差をとって分析
LOS 12:季節性の検定・修正と季節ラグ付き予測
残差の自己相関が季節ラグ(四半期データなら4期、月次なら12期)で有意なら季節性があります。季節ラグの項をモデルに加えて修正し、その式に直近値と1年前の値を代入して予測します。
- 検出:季節ラグでの残差自己相関の t 検定
- 修正:季節ラグ項を AR モデルに追加
- 追加後に季節ラグの自己相関が有意でなくなれば修正成功
- 四半期データの AR(1) +季節ラグ:xt = b0 + b1xt−1 + b2xt−4 + εt
LOS 13:ARCH と分散の予測
ARCH(自己回帰条件付き不均一分散)は、誤差の分散が過去の誤差の大きさに依存する状態です。ARCH があると係数の標準誤差が誤るため修正が必要で、一方でモデルを使って翌期の誤差分散を予測できます。
- 検定:残差2乗をその1期前の残差2乗に回帰
- a1 が有意なら ARCH(1) 誤差あり
- ARCH があれば一般化最小二乗法などで修正
- ボラティリティ予測に応用
LOS 14:複数の時系列を使う回帰:非定常性と共和分
2つの時系列で回帰する前に、それぞれの単位根の有無を確認します。両方に単位根がある場合は、長期的に安定した関係である共和分(cointegration)があるときだけ回帰が有効です。
- どちらも単位根なし → 回帰してよい
- 一方だけ単位根あり → 回帰は無効
- 両方単位根あり・共和分なし → 回帰は無効(見せかけの回帰)
- 両方単位根あり・共和分あり → 回帰は有効
- 共和分の検定:Engle–Granger の Dickey–Fuller 検定
LOS 15:投資上の問題に適した時系列モデルの選択
モデル選択は、データのプロットからトレンドや季節性を把握し、定常性を確認しながら段階的に進めます。系列相関・単位根・季節性・ARCHの確認を順に行い、問題があれば修正することが求められます。
- 目的(予測・関係の説明)を明確化
- プロットでトレンドの有無と形(線形・指数)を確認
- トレンド・モデルの残差に系列相関があれば AR モデルへ
- 単位根があれば階差をとる、季節性があれば季節ラグを追加
- ARCH を検定し、必要なら修正
- 複数系列なら単位根と共和分を確認
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