Learning Module 4「Corporate Restructuring(企業再編)」は、企業再編の種類と動機、再編の初期評価、再編に関わる企業の評価手法、再編がEPS・レバレッジ・WACCに与える影響、投資・売却・コスト削減とバランスシート再編の評価を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM4のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM4には7つのLOSがあります。

  1. LOS 1:企業再編の種類と、発行体が再編を行う動機を説明するexplain types of corporate restructurings and issuers’ motivations for pursuing them
  2. LOS 2:企業再編の初期評価を説明するexplain the initial evaluation of a corporate restructuring
  3. LOS 3:企業再編に関わる企業の評価手法を示し、その評価結果を解釈するdemonstrate valuation methods for, and interpret valuations of, companies involved in corporate restructurings
  4. LOS 4:企業再編が発行体のEPS、純有利子負債対EBITDA倍率、加重平均資本コスト(WACC)に与える影響を示すdemonstrate how corporate restructurings affect an issuer’s EPS, net debt to EBITDA ratio, and weighted average cost of capital
  5. LOS 5:株式投資、ジョイント・ベンチャー、買収を含む企業の投資行動を評価するevaluate corporate investment actions, including equity investments, joint ventures, and acquisitions
  6. LOS 6:売却やスピンオフを含む企業の事業縮小(ダイベストメント)行動を評価するevaluate corporate divestment actions, including sales and spin offs
  7. LOS 7:コストのリストラクチャリングとバランスシートのリストラクチャリングを評価するevaluate cost and balance sheet restructurings

LM4のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 企業は、ライフサイクル上の自社の行く末を変えるために、再編(リストラクチャリング)と呼ばれる行動をとる
  • 再編には、事業の規模・範囲を拡大する投資行動、縮小する事業売却行動、範囲を変えずに業績を改善する再編行動がある
  • 投資行動(株式投資、JV、買収)は成長、シナジー、割安な対象の取得を目的とすることが多い
  • 事業売却行動(売却、スピンオフ)は成長性・収益性の向上やリスク低減を目的とする
  • 再編の評価は、初期評価、予備的評価、モデル化、投資仮説の更新の4段階で行い、全段階を行うのは重要な再編に限られる
  • 重要性は規模と適合性で判断し、規模の目安は発行体の企業価値の10%超
  • 予備的評価では比較会社分析、比較取引分析、プレミアム分析の3つの手法が一般的
  • 再編の影響はプロフォーマ財務諸表でモデル化し、WACCへの影響はボトムアップ要因の変化を通じて生じる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:企業再編の種類と動機

企業再編は投資行動(株式投資・JV・買収)、事業売却行動(売却・スピンオフ)、再編行動(コスト削減・バランスシート再編・組織再編)に分類されます。動機には成長、シナジー、割安資産の取得、事業の集中、リスク低減などがあります。

  • 投資行動:規模・範囲の拡大
  • 事業売却行動:規模・範囲の縮小
  • 再編行動:範囲を変えず資本収益率を改善
  • 動機:成長、シナジー(売上・コスト)、割安な対象、集中
  • ライフサイクルの段階と再編の関係

LOS 2:企業再編の初期評価

初期評価では「何が起きているか」「いつ起きるか」「重要か」「なぜ起きるか」を確認します。重要性は規模と適合性で判断し、規模の目安は発行体の企業価値の10%超です。

  • 4つの問い:What・When・Material・Why
  • 規模:企業価値の10%超が大規模の目安
  • 適合性:アナリストの想定との整合
  • 重要な再編のみ詳細評価へ進む
  • 評価の4段階:初期評価→予備的評価→モデル化→投資仮説の更新

LOS 3:再編に関わる企業の評価手法

予備的評価では、類似上場企業の倍率を使う比較会社分析、過去の類似取引の倍率を使う比較取引分析、過去の買収で支払われたプレミアムを使うプレミアム分析を用います。

  • 比較会社分析:同業上場企業のEV/EBITDA、P/Eなど
  • 比較取引分析:類似M&Aの取引倍率(支配権プレミアムを含む)
  • プレミアム分析:買収前の株価に対するプレミアム
  • 各手法の長所と短所(比較対象の選定、市場環境の違い)
  • 評価レンジから公正価値を推定
支払プレミアム =(1株当たり買収価格 − 買収公表前の株価)÷ 買収公表前の株価

LOS 4:再編がEPS・レバレッジ・WACCに与える影響

再編の影響はプロフォーマ財務諸表で推定します。買収の資金調達手段(現金・借入・株式)によってEPS、純有利子負債/EBITDA、WACCへの影響が異なります。

  • EPSの増加(アクリーティブ)と減少(ダイリューティブ)
  • 借入による買収:レバレッジ上昇
  • 株式による買収:株式数の増加
  • WACCはボトムアップ要因(安定性・収益性・レバレッジ・資産の特殊性)の変化で変動
  • 資本構成の重みの変化
純有利子負債/EBITDA =(有利子負債 − 現金)÷ EBITDA

LOS 5:投資行動(株式投資・JV・買収)の評価

投資行動は、支払う対価に見合う価値(シナジーを含む)を生むかで評価します。株式投資JVは小さなコミットメントで選択肢を得られ、買収は支配権を得る一方でプレミアムと統合リスクを伴います。

  • 株式投資:少数持分、将来の買収オプション
  • JV:共同支配、リスク・費用の分担
  • 買収:支配権の取得、プレミアムの支払い
  • シナジー(売上・コスト)の実現可能性
  • 買収価格と価値の比較、統合リスク

LOS 6:事業売却行動(売却・スピンオフ)の評価

売却は現金を得て事業を手放し、スピンオフは子会社株式を既存株主に分配して独立させます。コングロマリット・ディスカウントの解消、経営資源の集中、リスク低減などが目的です。

  • 売却:対価を受け取り、税負担が生じ得る
  • スピンオフ:株主に株式を分配、現金は生じない
  • 部分の合計(SOTP)で価値を比較
  • ディス・シナジーや独立コストの考慮
  • 売却代金の使途(負債返済・株主還元など)

LOS 7:コストとバランスシートのリストラクチャリングの評価

コスト・リストラクチャリングは同業他社並みの利益率への回復を目指し、バランスシート・リストラクチャリングは資本構成や資産保有の見直し(セール・アンド・リースバック、配当・自社株買い、レバレッジ変更)を行います。

  • コスト削減:人員削減、拠点統合、外部委託
  • リストラクチャリング費用と将来の節約額の比較
  • セール・アンド・リースバック
  • 資本構成の変更によるWACC・株主還元への影響
  • 組織再編・倒産手続による再建

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。