Learning Module 2「The Arbitrage-Free Valuation Framework(無裁定評価の枠組み)」は、債券の無裁定評価の考え方、スポット・レートによる評価、二項金利ツリーの構築とキャリブレーション、後ろ向き帰納法とパスワイズ評価、モンテカルロ・シミュレーション、期間構造モデルを扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM2のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には9つのLOSがあります。

  1. LOS 1:債券の無裁定評価の意味を説明するexplain what is meant by arbitrage-free valuation of a fixed-income instrument
  2. LOS 2:オプションのない固定利付債の無裁定価値を計算するcalculate the arbitrage-free value of an option-free, fixed-rate coupon bond
  3. LOS 3:二項金利ツリーの枠組みを記述するdescribe a binomial interest rate tree framework
  4. LOS 4:二項金利ツリーを特定の期間構造に一致するようにキャリブレーションする過程を記述するdescribe the process of calibrating a binomial interest rate tree to match a specific term structure
  5. LOS 5:後ろ向き帰納法による評価手法を記述し、各ノードのキャッシュフローが与えられたときの債券の価値を計算するdescribe the backward induction valuation methodology and calculate the value of a fixed-income instrument given its cash flow at each node
  6. LOS 6:ゼロクーポン・イールドカーブによる価格付けと、無裁定二項ラティスによる価格付けを比較するcompare pricing using the zero-coupon yield curve with pricing using an arbitrage-free binomial lattice
  7. LOS 7:二項金利の枠組みにおけるパスワイズ評価を記述し、各パスに沿ったキャッシュフローが与えられたときの債券の価値を計算するdescribe pathwise valuation in a binomial interest rate framework and calculate the value of a fixed-income instrument given its cash flows along each path
  8. LOS 8:モンテカルロ・フォワード・レート・シミュレーションとその応用を記述するdescribe a Monte Carlo forward-rate simulation and its application
  9. LOS 9:期間構造モデルとその使われ方を記述するdescribe term structure models and how they are used

LM2のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 無裁定評価では、債券の価値はキャッシュフローを対応するスポット・レートで割り引いた現在価値の合計で、リスクなしに利益を得る機会が存在しない価格
  • 裁定機会は、価値の加法性や優越性の原理が満たされない場合に生じる
  • 二項金利ツリーは、1期先の金利が上昇または下落する2つの状態を想定し、ボラティリティの仮定に基づいて金利の分布を表す
  • ツリーは、オプションのない債券をツリーで評価した価値が市場価格に一致するようにキャリブレーションする
  • 後ろ向き帰納法では、満期から現在に向かって各ノードの価値を順に計算する
  • パスワイズ評価では金利のパスごとの現在価値を求めて平均をとり、ツリーと同じ価値が得られる
  • モンテカルロ法は住宅ローン担保証券のような経路依存のキャッシュフローを持つ証券の評価に使われる
  • 期間構造モデルには、均衡モデル(CIR、バシチェック)と無裁定モデル(ホー・リー、KWF)がある

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:無裁定評価の意味

無裁定評価とは、リスクなしに利益を得る取引機会が存在しないように証券の価値を決めることです。債券のキャッシュフローをそれぞれの時点のスポット・レートで割り引いて価値を求めます。

  • 一物一価の法則
  • 価値の加法性:部分の合計=全体
  • 優越性:リスクなしで高いキャッシュフローの資産は高価格
  • ストリッピングと再構成による裁定

LOS 2:オプションのない固定利付債の無裁定価値

オプションのない債券の無裁定価値は、各キャッシュフローを対応するスポット・レート(または割引係数)で割り引いた現在価値の合計です。

  • 各クーポンと元本を別々のゼロクーポン債とみなす
  • 割引係数 = 1 ÷(1 + Sₜ)ᵗ
  • 市場価格との乖離は裁定機会
  • スポット・レートはパー・カーブからブートストラップで導出
V = Σ CFₜ ÷(1 + Sₜ)ᵗ

LOS 3:二項金利ツリーの枠組み

二項金利ツリーは、各期の1期間フォワード・レートが上昇または下落する2つの可能性を、それぞれ確率0.5で表す格子です。対数正規分布を仮定すると、隣接するノードの金利はボラティリティで決まる比率になります。

  • 各ノードは1期間フォワード・レート
  • 上昇・下落の確率は各0.5
  • 隣接ノードの比率 = e^(2σ√t)
  • 金利はマイナスにならない(対数正規モデル)
  • ボラティリティが大きいほどノード間の幅が拡大
i_H = i_L × e^(2σ√t)

LOS 4:二項金利ツリーのキャリブレーション

ツリーは、オプションのない債券(パー債など)をツリーで評価した価値が市場価格(またはスポット・レートによる価値)に一致するよう、各期の金利水準を試行錯誤で決めます。

  • 短い年限から順に調整
  • 所与のボラティリティの仮定を利用
  • 各期の最も低い金利を決め、他のノードは比率で決定
  • キャリブレーション後はオプションのない債券を無裁定で評価

LOS 5:後ろ向き帰納法による評価

後ろ向き帰納法では、満期時点のキャッシュフローから始めて、各ノードで1期先の2つのノードの価値(とクーポン)の平均を、そのノードの金利で割り引きます。これを現在まで繰り返します。

  • 満期の価値=元本+最終クーポン
  • 各ノードの価値=次期2ノードの期待値の現在価値
  • 確率は上下とも0.5
  • オプション付き債券の評価に応用
V = 0.5 ×[(V_H + C)+(V_L + C)]÷(1 + i)

LOS 6:ゼロクーポン・カーブと二項ラティスによる評価の比較

オプションのない債券では、キャリブレーション済みの二項ラティスで評価してもスポット・レートで評価しても同じ価値になります。ラティスの利点は、金利に依存するキャッシュフロー(オプション)を扱える点です。

  • オプションのない債券:両者は同じ価値
  • ラティス:金利パスに依存するキャッシュフローを評価可能
  • ボラティリティの仮定がオプション付き債券の価値に影響

LOS 7:パスワイズ評価

パスワイズ評価では、ツリー上のすべての金利パスについてキャッシュフローの現在価値を計算し、その平均を債券の価値とします。後ろ向き帰納法と同じ価値が得られます。

  • 各パスの金利で各期のキャッシュフローを割引
  • すべてのパスは等確率
  • パスの価値の平均=債券の価値
  • パスの数は期間とともに急増
V =(1/N)× Σ(各パスの現在価値)

LOS 8:モンテカルロ・フォワード・レート・シミュレーション

モンテカルロ法では、ボラティリティの仮定に基づいて多数の金利パスをランダムに生成し、各パスのキャッシュフローの現在価値を平均します。期限前償還のある住宅ローン担保証券など経路依存の証券の評価に使われます。

  • 多数の金利パスをランダムに生成
  • パスごとの現在価値を平均
  • 経路依存のキャッシュフローを評価できる
  • ドリフト調整で市場価格に一致させる
  • 平均回帰などの制約を加えることがある

LOS 9:期間構造モデル

期間構造モデルは金利の動きを数式で表します。均衡モデル(CIR、バシチェック)は経済の均衡から金利の動きを導き、無裁定モデル(ホー・リー、KWF)は現在の市場価格に一致するよう構築されます。

  • CIR:dr = k(θ − r)dt + σ√r dz、金利は負にならない
  • バシチェック:dr = k(θ − r)dt + σ dz、負の金利もあり得る
  • ホー・リー:dr = θₜ dt + σ dz、時間依存のドリフト
  • KWF:対数金利をモデル化
  • 均衡モデルは平均回帰を含み、無裁定モデルは市場価格を所与とする
CIR:dr = k(θ − r)dt + σ√r dz

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