【CFA®︎ L2 Equities LM6】Private Company Valuation を要点解説|正規化利益・ビルドアップ法・支配権・市場性ディスカウント・インカム・マーケット・アセット・アプローチ

Learning Module 6「Private Company Valuation(非上場企業の評価)」は、上場企業と非上場企業の違い、非上場企業評価の用途、キャッシュフローの正規化、割引率の調整と要求収益率の推定モデル、支配権と市場性に関するディスカウント・プレミアム、インカム・マーケット・アセットの各アプローチを扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM6のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には9つのLOSがあります。
- LOS 1:評価の観点から上場企業と非上場企業の重要な特徴を対比するcontrast important public and private company features for valuation purposes
- LOS 2:非上場企業の評価の用途を記述し、財務アナリストが重点を置くべき主要な分野を説明するdescribe uses of private business valuation and explain key areas of focus for financial analysts
- LOS 3:非上場企業に関するキャッシュフロー推定上の論点と、正規化利益の推定に必要な調整を説明するexplain cash flow estimation issues related to private companies and adjustments required to estimate normalized earnings
- LOS 4:非上場企業の割引率を推定する際に調整を要する要因を説明するexplain factors that require adjustment when estimating the discount rate for private companies
- LOS 5:非上場企業の株主資本の要求収益率を推定するモデル(CAPM、拡張CAPM、ビルドアップ法など)を比較するcompare models used to estimate the required rate of return to private company equity (for example, the CAPM, the expanded CAPM, and the build-up approach)
- LOS 6:支配権と市場性に基づくディスカウントとプレミアムが非上場企業の評価に与える影響を説明・評価するexplain and evaluate the effects on private company valuations of discounts and premiums based on control and marketability
- LOS 7:非上場企業評価のインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、アセット・アプローチと、各アプローチの選択に関連する要因を説明するexplain the income, market, and asset-based approaches to private company valuation and factors relevant to the selection of each approach
- LOS 8:インカム・ベースの方法を用いて非上場企業の価値を計算するcalculate the value of a private company using income-based methods
- LOS 9:マーケット・ベースの方法を用いて非上場企業の価値を計算し、各方法の長所と短所を記述するcalculate the value of a private company using market-based methods and describe the advantages and disadvantages of each method
LM6のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 非上場企業は、成長段階、規模、所有と経営の重なり、経営陣の質、財務情報の質、税の考慮などの企業固有要因で上場企業と異なる
- 株式固有の要因として、流動性の低さ、市場性の制限、支配権の集中がある
- 非上場企業の評価は、取引目的、法令・税務などのコンプライアンス目的、訴訟目的に用いられ、目的に応じた価値の定義を用いる
- 正規化利益の推定では、非経常項目、オーナーの報酬、関連当事者取引などを調整し、戦略的買い手か財務的買い手かも考慮する
- 割引率の推定では、規模プレミアム、負債調達の可否、予測の不確実性、企業の成長段階などを考慮する
- 要求収益率の推定には、CAPM、規模や企業固有リスクを加えた拡張CAPM、ビルドアップ法などを用いる
- 支配権の欠如と市場性の欠如に対するディスカウントは、評価の基礎となる価値の性質に応じて適用する
- 評価はインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、アセット・アプローチの3つに大別される
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:上場企業と非上場企業の違い
非上場企業は、企業固有の要因(成長段階、規模、所有と経営の重なり、経営陣の質、財務情報の質、短期志向の圧力の少なさ、税の考慮)と、株式固有の要因(流動性、市場性の制限、支配権の集中)で上場企業と異なります。
- 成長段階が早い・規模が小さい企業が多い
- 所有者と経営者が重なりエージェンシー問題が小さい
- 財務情報の質・量が限られる
- 株式の流動性・市場性が低い
- 支配権が集中している
LOS 2:非上場企業評価の用途と重点分野
非上場企業の評価は、取引目的(資金調達、M&A)、コンプライアンス目的(財務報告、税務)、訴訟目的に用いられます。目的に応じて価値の定義を明確にすることが重要です。
- 価値の定義:公正市場価値、市場価値、公正価値(財務報告・訴訟)、投資価値、本源的価値
- 評価目的の確認
- 評価基準日の確認
- 支配持分か少数持分かの確認
LOS 3:キャッシュフローの推定と正規化利益
非上場企業では、非経常項目、オーナー経営者の報酬の過大・過少、関連当事者との取引(賃料など)、個人的な費用などを調整して正規化利益を求めます。買い手が戦略的か財務的かでも利益の見積りが異なります。
- 非経常・異常項目の除外
- オーナーの報酬を市場水準に調整
- 関連当事者取引(不動産賃料など)の調整
- 戦略的買い手:シナジーを反映
- 財務的買い手:単独ベースの利益
- 複数シナリオでのCF予測
LOS 4:割引率推定上の調整要因
非上場企業の割引率では、規模プレミアム、負債調達の困難さによる資本コストの上昇、経営者予測の信頼性、企業の成長段階などを考慮します。買収では買い手ではなく対象企業のリスクを反映した割引率を使います。
- 規模プレミアム(小規模企業のリスク)
- 負債調達の制約によるWACC上昇
- 買収対象の資本構成・リスクを使用
- 予測(プロジェクション)リスク
- 成長段階(初期段階は高い割引率)
LOS 5:要求収益率の推定モデル
CAPMは比較企業のベータを使います。拡張CAPMは規模プレミアムと企業固有リスク・プレミアムを加え、ビルドアップ法はベータを使わず(1と仮定)、リスクフリー・レートにERP・規模・業種・企業固有のプレミアムを積み上げます。
- CAPM:r = r_f + β × ERP
- 拡張CAPM:+ 規模プレミアム + 企業固有リスク・プレミアム
- ビルドアップ法:r_f + ERP + 規模プレミアム +(業種)+ 企業固有プレミアム
- 比較企業の選定が難しい場合はビルドアップ法
LOS 6:支配権・市場性のディスカウントとプレミアム
少数持分には支配権の欠如によるディスカウント(DLOC)、非上場株式には市場性の欠如によるディスカウント(DLOM)が適用されます。両者は乗法的に合成します。
- DLOC = 1 − 1 ÷(1 + 支配権プレミアム)
- DLOM:売却制限・流動性の欠如を反映
- 合計ディスカウント = 1 −(1 − DLOC)×(1 − DLOM)
- 評価の基礎(支配持分・上場ベース)に応じて適用
- DLOMはプット・オプションの価格などでも推定
LOS 7:インカム・マーケット・アセットの各アプローチ
インカム・アプローチは将来の経済的便益の現在価値、マーケット・アプローチは類似企業や類似取引の倍率、アセット・アプローチは資産から負債を差し引いた価値で評価します。企業の成長段階や情報の入手可能性で使い分けます。
- インカム:成長企業、継続企業に適する
- マーケット:比較対象が豊富な場合に適する
- アセット:資産保有会社、清算価値、初期段階の企業
- アセット・アプローチは継続企業の評価には通常用いられない
LOS 8:インカム・ベースの評価方法
インカム・アプローチには、フリー・キャッシュフロー法、一定成長を仮定する資本化キャッシュフロー法、有形資産の要求収益を超える利益から無形資産を評価する超過利益法があります。
- FCF法:多段階でFCFを予測して割引
- 資本化CF法:V = FCF₁ ÷(r − g)
- 資本化率 = r − g
- 超過利益法:正規化利益 − 運転資本・固定資産の要求収益 = 超過利益
- 超過利益を資本化して無形資産の価値を推定
LOS 9:マーケット・ベースの評価方法
マーケット・アプローチには、類似上場企業の倍率を使うガイドライン上場企業法、類似企業の買収取引の倍率を使うガイドライン取引法、対象企業の過去の株式取引を使う先行取引法があります。
- ガイドライン上場企業法:少数持分ベース、支配権プレミアムの調整が必要
- ガイドライン取引法:支配権ベース、シナジーを含み得る、取引データが限られる
- 先行取引法:対象自身の取引、時期・条件の違いに注意
- 倍率:P/E、EV/EBITDAなど
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