Learning Module 4「Credit Analysis Models(信用分析モデル)」は、期待エクスポージャー・デフォルト時損失率・デフォルト確率と信用評価調整(CVA)、信用スコアと格付け、格付け推移と期待リターン、構造モデルと誘導モデル、信用スプレッドの計算と期間構造、証券化商品の信用分析を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM4のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM4には8つのLOSがあります。

  1. LOS 1:期待エクスポージャー、デフォルト時損失率、デフォルト確率、信用評価調整(CVA)を説明するexplain expected exposure, the loss given default, the probability of default, and the credit valuation adjustment
  2. LOS 2:信用スコアと信用格付けを説明するexplain credit scores and credit ratings
  3. LOS 3:信用格付けの推移を前提として債券の期待リターンを計算するcalculate the expected return on a bond given transition in its credit rating
  4. LOS 4:企業の信用リスクに関する構造モデルと誘導モデルを、その前提・長所・短所を含めて説明するexplain structural and reduced-form models of corporate credit risk, including assumptions, strengths, and weaknesses
  5. LOS 5:信用リスクのパラメータに関する前提が与えられたとき、債券の価値と信用スプレッドを計算するcalculate the value of a bond and its credit spread, given assumptions about the credit risk parameters
  6. LOS 6:信用スプレッドの変化を解釈するinterpret changes in a credit spread
  7. LOS 7:信用スプレッドの期間構造の決定要因を説明し、信用スプレッドの期間構造を解釈するexplain the determinants of the term structure of credit spreads and interpret a term structure of credit spreads
  8. LOS 8:証券化された債券に必要な信用分析を、社債の信用分析と比較するcompare the credit analysis required for securitized debt to the credit analysis of corporate debt

LM4のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 信用リスクは、期待エクスポージャー、回収率とデフォルト時損失率、デフォルト確率で表される
  • CVAは各期の期待損失の現在価値の合計で、リスクのない債券の価値からCVAを差し引くとリスクのある債券の価値になる
  • 信用スコアは主に個人や小規模事業者に、信用格付けは企業・政府・証券化商品に使われる
  • 格付けの推移は信用スプレッドの変化を通じて債券の期待リターンに影響する
  • 構造モデルは企業の資産価値と負債の構造からデフォルトを説明し、誘導モデルはデフォルトを外生的な事象としてモデル化する
  • 信用スプレッドは、デフォルト確率や回収率の前提、流動性などの変化で変動する
  • 信用スプレッドの期間構造は信用力、市場環境、需給、企業固有の要因で決まり、投資適格債は右上がり、低格付け債は平坦または右下がりになりやすい
  • 証券化商品の信用分析では、担保資産プールの特性、サービサーの能力、ストラクチャーの設計が重要

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:期待エクスポージャー・LGD・デフォルト確率・CVA

期待エクスポージャーはデフォルト時点で失われ得る金額、デフォルト時損失率(LGD)は回収後の損失、デフォルト確率(POD)はその期にデフォルトする確率です。CVAは各期の期待損失の現在価値の合計です。

  • LGD = 期待エクスポージャー ×(1 − 回収率)
  • 期待損失 = LGD × POD
  • POD:前期まで生存した条件でのハザード率から計算
  • 生存確率(POS)の累積
  • 債券の公正価値 = リスクフリー価値 − CVA
CVA = Σ(LGDₜ × PODₜ × 割引係数ₜ)

LOS 2:信用スコアと信用格付け

信用スコアは個人や小規模事業者の信用力を示す順位づけの指標で、信用格付けは企業・政府・証券化商品などの発行体・債券の信用力を示す序数的な評価です。

  • 信用スコア:個人・中小企業、順序づけ
  • 信用格付け:格付機関による評価、投資適格と投機的
  • ノッチング:債券の優先順位による格付けの差
  • 格付けの長所:簡便、安定的
  • 格付けの短所:変更が遅れる、デフォルト確率を直接示さない

LOS 3:格付け推移と期待リターン

格付けが変わると信用スプレッドが変化し、債券価格が変動します。格付け推移行列の各確率と、スプレッド変化による価格変化率から、期待リターンを計算します。

  • 格下げ:スプレッド拡大→価格下落
  • 格上げ:スプレッド縮小→価格上昇
  • 価格変化率≈−修正デュレーション×Δスプレッド
  • 推移確率で加重して期待価格変化を計算
  • 期待リターン≈利回り+期待価格変化率
%ΔP ≈ −ModDur × Δスプレッド + ½ × Convexity ×(Δスプレッド)²

LOS 4:構造モデルと誘導モデル

構造モデルは、株式を企業資産に対するコール・オプション、負債をリスクフリー債からプット・オプションを差し引いたものとみなし、資産価値が負債を下回るとデフォルトすると考えます。誘導モデルはデフォルトを外生的な事象としてハザード率でモデル化します。

  • 構造モデル:株主の有限責任をオプションとして表現
  • 構造モデルの短所:資産価値が観察できない、単純な負債構造の仮定
  • 誘導モデル:観察可能な市場データで推定
  • 誘導モデルの長所:景気循環を反映できる
  • 誘導モデルの短所:デフォルトの原因を説明しない
リスクのある負債 = リスクフリー負債 − 資産に対するプット・オプション

LOS 5:債券の価値と信用スプレッドの計算

デフォルト確率・回収率の前提から、各期の期待キャッシュフローを求めて現在価値を計算するか、リスクフリー価値からCVAを差し引いて債券価値を求めます。その価値に対応するYTMとベンチマーク利回りの差が信用スプレッドです。

  • 債券価値 = リスクフリー価値 − CVA
  • 信用スプレッド = リスクのある債券の利回り − ベンチマーク利回り
  • 信用スプレッド≈POD × LGD(単純化)
  • 二項金利ツリーでも同様に評価可能
信用スプレッド ≈ デフォルト確率 ×(1 − 回収率)

LOS 6:信用スプレッドの変化の解釈

信用スプレッドは、デフォルト確率の上昇や回収率の低下、流動性の悪化などで拡大します。スプレッドの変化から市場が織り込む信用リスクの変化を読み取ります。

  • デフォルト確率↑:スプレッド拡大
  • 回収率↓:スプレッド拡大
  • 流動性プレミアムの変化
  • 景気後退期にスプレッド拡大

LOS 7:信用スプレッドの期間構造

信用スプレッドの期間構造は、信用力、景気などの市場環境、需給、企業固有の要因で決まります。投資適格債では一般に右上がり、高利回り債では平坦または右下がりになりやすいです。

  • 投資適格債:右上がり(長期ほど不確実性大)
  • 高利回り債:平坦・逆イールド(短期のデフォルト懸念)
  • 景気循環・金融環境の影響
  • 市場の需給・流動性
  • ゼロクーポン・スプレッドで分析

LOS 8:証券化商品と社債の信用分析の比較

証券化商品は特定の資産プールのキャッシュフローで返済されるため、担保資産プールの特性サービサーの能力ストラクチャー(トランシェ、信用補完)の分析が中心です。社債では発行体の事業全体の返済能力を分析します。

  • 担保プールの構成・分散・パフォーマンス
  • サービサーの能力と信用力
  • トランシェ構造・信用補完(劣後、超過担保)
  • 償却型と回転型の資産プール
  • 継続企業としての分析は不要

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