【CFA®︎ L2 Derivatives LM2】Valuation of Contingent Claims を要点解説|二項モデル・ブラック・ショールズ・マートン・オプションのグリークス・インプライド・ボラティリティ

Learning Module 2「Valuation of Contingent Claims(条件付請求権の評価)」は、二項オプション評価モデル、期待ペイオフの現在価値としてのオプション価値、オプションの裁定、2期間二項モデルによるヨーロピアン・アメリカン・金利オプションの評価、BSMモデルとブラック・モデル、グリークス、デルタ・ヘッジとガンマ・リスク、インプライド・ボラティリティを扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM2のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には14個のLOSがあります。
- LOS 1:二項オプション評価モデルとその構成要素を記述・解釈するdescribe and interpret the binomial option valuation model and its component terms
- LOS 2:ヨーロピアン・オプションの価値を、満期時の期待ペイオフの現在価値として分析する方法を記述するdescribe how the value of a European option can be analyzed as the present value of the option’s expected payoff at expiration
- LOS 3:オプションに関わる裁定機会を識別し、関連する裁定取引を記述するidentify an arbitrage opportunity involving options and describe the related arbitrage
- LOS 4:2期間二項モデルを用いてヨーロピアン・オプションとアメリカン・オプションの無裁定価値を計算するcalculate the no-arbitrage values of European and American options using a two-period binomial model
- LOS 5:2期間二項モデルを用いて金利オプションの価値を計算・解釈するcalculate and interpret the value of an interest rate option using a two-period binomial model
- LOS 6:ブラック・ショールズ・マートン(BSM)オプション評価モデルの前提を識別するidentify assumptions of the Black–Scholes–Merton option valuation model
- LOS 7:コール・オプションに適用したBSMモデルの構成要素を、原資産のレバレッジ・ポジションとして解釈するinterpret the components of the Black–Scholes–Merton model as applied to call options in terms of a leveraged position in the underlying
- LOS 8:BSMモデルを株式と通貨のヨーロピアン・オプションの評価にどのように使うかを記述するdescribe how the Black–Scholes–Merton model is used to value European options on equities and currencies
- LOS 9:ブラック・モデルを先物のヨーロピアン・オプションの評価にどのように使うかを記述するdescribe how the Black model is used to value European options on futures
- LOS 10:ブラック・モデルをヨーロピアン金利オプションとヨーロピアン・スワップションの評価にどのように使うかを記述するdescribe how the Black model is used to value European interest rate options and European swaptions
- LOS 11:各オプション・グリークスを解釈するinterpret each of the option Greeks
- LOS 12:デルタ・ヘッジの実行方法を記述するdescribe how a delta hedge is executed
- LOS 13:オプション取引におけるガンマ・リスクの役割を記述するdescribe the role of gamma risk in options trading
- LOS 14:インプライド・ボラティリティを定義し、それがオプション取引でどのように使われるかを説明するdefine implied volatility and explain how it is used in options trading
LM2のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 二項モデルでは、原資産とオプションで無リスクのヘッジ・ポートフォリオを作り、無裁定の条件からオプション価値を求める
- オプション価値は、リスク中立確率で評価した満期時の期待ペイオフをリスクフリー・レートで割り引いた現在価値
- アメリカン・オプションは各ノードで早期行使の価値と比較して評価する
- BSMモデルは原資産価格が幾何ブラウン運動に従い、金利とボラティリティが一定などの前提に立つ
- BSMのコールは原資産のロングと借入の組み合わせとして解釈できる
- ブラック・モデルは先物オプション、金利オプション(キャップ・フロア)、スワップションの評価に用いられる
- グリークスはオプション価値の各要因に対する感応度で、デルタ・ヘッジはデルタを中立にし、ガンマは原資産の大きな変動に対するヘッジ誤差の源泉となる
- インプライド・ボラティリティは市場価格から逆算したボラティリティで、オプションの相対的な割高・割安の判断やボラティリティ取引に使われる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:二項オプション評価モデル
二項モデルでは、原資産価格が1期間に上昇(u倍)または下落(d倍)すると仮定します。原資産とヘッジ比率分のオプションで無リスク・ポートフォリオを作ると、オプションの価値は無裁定で決まります。
- ヘッジ比率 h =(c⁺ − c⁻)÷(S⁺ − S⁻)
- リスク中立確率 π =(1 + r − d)÷(u − d)
- オプション価値は実際の確率に依存しない
- 無リスク・ポートフォリオはリスクフリー・レートで成長
LOS 2:期待ペイオフの現在価値としてのヨーロピアン・オプション
ヨーロピアン・オプションの価値は、リスク中立確率で計算した満期時の期待ペイオフを、リスクフリー・レートで割り引いた現在価値です。
- リスク中立評価
- 期待ペイオフ=各ノードのペイオフ×リスク中立確率の和
- リスクフリー・レートで割引
- 多期間でも同様(二項分布の確率)
LOS 3:オプションに関わる裁定
オプションの市場価格が二項モデルの無裁定価値と異なる場合、割高なものを売り、割安なもので複製ポートフォリオを作ることで無リスクの利益を得られます。
- 市場価格>モデル価値:オプション売り+h単位の原資産買い(借入で調達)
- 市場価格<モデル価値:オプション買い+原資産の空売り
- プット・コール・パリティの違反も裁定機会
- 裁定取引で価格は無裁定価値へ収束
LOS 4:2期間二項モデルによるヨーロピアン・アメリカン・オプションの評価
2期間モデルでは、満期のペイオフから後ろ向きに各ノードの価値を求めます。アメリカン・オプションでは、各ノードで早期行使の価値と継続した場合の価値を比べて大きい方を採用します。
- 満期のペイオフ:max(0, S − X)など
- 後ろ向きに期待値を割引
- アメリカン・プット:早期行使が有利な場合がある
- 配当のない株式のアメリカン・コールは早期行使しない
- 各ノードでヘッジ比率が変化(動的ヘッジ)
LOS 5:2期間二項モデルによる金利オプションの評価
金利オプションは、二項金利ツリーの各ノードの金利に基づいてペイオフを計算し、後ろ向きに各ノードの金利で割り引いて評価します。ペイオフは通常、期末に後払いされます。
- コール(キャップレット):max(0, 金利 − 行使金利)× 想定元本 × 期間
- プット(フロアレット):max(0, 行使金利 − 金利)× 想定元本 × 期間
- 各ノードで異なる金利で割引
- リスク中立確率は各0.5
LOS 6:BSMモデルの前提
BSMモデルは、原資産価格が幾何ブラウン運動(連続複利リターンが正規分布、価格は対数正規分布)に従い、リスクフリー・レートとボラティリティが一定で、取引が連続的で摩擦がなく、裁定機会がないことを前提とします。
- 原資産価格は対数正規分布
- リスクフリー・レートは一定・既知
- ボラティリティは一定・既知
- 税・取引コストなし、空売り可能
- 連続的な取引が可能
- ヨーロピアン・オプション
LOS 7:BSMのコールと原資産のレバレッジ・ポジション
BSMのコールの価値は、N(d₁)単位の原資産のロングと、X × e^(−rT) × N(d₂) の借入の組み合わせと解釈できます。プットは原資産のショートと貸付の組み合わせです。
- N(d₁):コールのデルタ、ヘッジ比率
- N(d₂):満期にイン・ザ・マネーとなるリスク中立確率
- コール=原資産の買い+借入(レバレッジ)
- プット=原資産の空売り+貸付
LOS 8:株式と通貨のヨーロピアン・オプションへのBSMの適用
配当のある株式では、連続配当利回りδで株価を割り引いてBSMを適用します。通貨オプションでは、δの代わりに外国通貨のリスクフリー・レートを使います。
- 連続配当利回り:S₀ × e^(−δT) に置き換え
- 通貨オプション:δ = 外国金利 r_f
- d₁の式も r − δ に変更
- プット・コール・パリティとの整合
LOS 9:ブラック・モデルによる先物オプションの評価
ブラック・モデルは、先物のヨーロピアン・オプションを評価するためにBSMを修正したもので、原資産価格の代わりに先物価格を使い、先物価格と行使価格の両方を割り引きます。
- S₀の代わりに F₀ × e^(−rT)
- d₁ =[ln(F₀/X) +(σ²/2)T]÷(σ√T)
- 先物は取得コストがゼロ
- プット:p = e^(−rT)[X × N(−d₂) − F₀ × N(−d₁)]
LOS 10:ブラック・モデルによる金利オプション・スワップションの評価
金利オプション(キャップレット・フロアレット)は、FRAレートを原資産としてブラック・モデルで評価し、支払が後払いであることを割引に反映します。スワップションは先渡スワップ・レートを原資産とし、スワップの支払回数に対応する年金現在価値を掛けて評価します。
- 金利コール(キャップレット):金利上昇で利益
- キャップ=キャップレットの集合、フロア=フロアレットの集合
- ペイヤー・スワップション:固定金利を支払う権利(コール型)
- レシーバー・スワップション:固定金利を受け取る権利(プット型)
- ペイヤー − レシーバー = 先渡しの固定払いスワップ
LOS 11:オプション・グリークスの解釈
デルタは原資産価格、ガンマはデルタの変化、ベガはボラティリティ、ローは金利、セータは時間の経過に対するオプション価値の感応度です。
- デルタ:コールは0〜1、プットは−1〜0
- ガンマ:ATMで最大、コールもプットも正
- ベガ:コールもプットも正、ATMで大きい
- ロー:コールは正、プットは負
- セータ:通常は負(時間価値の減少)
LOS 12:デルタ・ヘッジの実行
デルタ・ヘッジは、ポートフォリオのデルタがゼロになるよう原資産またはオプションの数量を調整することです。デルタは原資産価格や時間とともに変わるため、定期的なリバランスが必要です。
- 必要なオプション数 = −ポートフォリオのデルタ ÷ オプションのデルタ
- 売ったコールのヘッジ:デルタ×枚数の原資産を買う
- デルタ中立=小さな価格変化に対して価値が不変
- リバランスで取引コストが発生
LOS 13:ガンマ・リスクの役割
デルタ・ヘッジは小さな価格変化にしか有効ではなく、原資産価格が大きく動いたりジャンプしたりするとデルタが変わり、ヘッジ誤差が生じます。このガンマ・リスクは原資産ではヘッジできず、ガンマを持つオプションで中立化します。
- ガンマが大きいほどデルタが急変
- 原資産のガンマはゼロ
- ガンマ中立にはオプションを使用
- オプションの売り手はショート・ガンマ
- 株価のジャンプでヘッジが崩れる
LOS 14:インプライド・ボラティリティ
インプライド・ボラティリティは、オプションの市場価格とモデル価格を一致させるボラティリティです。オプションの相対的な割高・割安の比較、市場の不安の尺度、ボラティリティ取引に使われます。
- モデルに市場価格を入れて逆算
- 行使価格・満期ごとに異なる(スマイル、スキュー、サーフェス)
- オプション価格の代わりにボラティリティで気配を提示
- ボラティリティ取引:ベガのポジションをとる
- VIXなどのボラティリティ指数
効率よく学ぶには FA-Academy
CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
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