Learning Module 1「Introduction to Commodities and Commodity Derivatives(コモディティとデリバティブ入門)」は、コモディティの各セクターの特徴とライフサイクル、株式・債券とのバリュエーションの違い、先物市場の参加者、コンタンゴとバックワーデーション、先物リターンの理論とトータル・リターンの構成要素、コモディティ・スワップと指数の構築を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM1のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM1には10個のLOSがあります。

  1. LOS 1:コモディティの各セクターの特徴を比較するcompare characteristics of commodity sectors
  2. LOS 2:生産から取引・消費に至るまでのコモディティ・セクターのライフサイクルを比較するcompare the life cycle of commodity sectors from production through trading or consumption
  3. LOS 3:コモディティのバリュエーションと株式・債券のバリュエーションを対比するcontrast the valuation of commodities with the valuation of equities and bonds
  4. LOS 4:コモディティ先物市場の参加者の種類を説明するdescribe types of participants in commodity futures markets
  5. LOS 5:コンタンゴおよびバックワーデーションの市場における現物価格と先物価格の関係を分析するanalyze the relationship between spot prices and futures prices in markets in contango and markets in backwardation
  6. LOS 6:コモディティ先物リターンに関する諸理論を比較するcompare theories of commodity futures returns
  7. LOS 7:完全担保付きコモディティ先物のトータル・リターンの構成要素を説明・計算・解釈するdescribe, calculate, and interpret the components of total return for a fully collateralized commodity futures contract
  8. LOS 8:コンタンゴとバックワーデーションの市場におけるロール・リターンを対比するcontrast roll return in markets in contango and markets in backwardation
  9. LOS 9:コモディティ・スワップを用いてコモディティへのエクスポージャーを得る・調整する方法を説明するdescribe how commodity swaps are used to obtain or modify exposure to commodities
  10. LOS 10:コモディティ指数の構築方法が指数リターンに与える影響を説明するdescribe how the construction of commodity indexes affects index returns

LM1のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • コモディティはエネルギー、穀物、産業用(ベース)メタル、畜産、貴金属、ソフト(嗜好作物)などのセクターから成り、保管のしやすさ、地政学、天候などが需給を左右する
  • ファンダメンタル分析の中心は各商品の需給分析と、需給均衡へのショックに対する反応の予測
  • ライフサイクルは商品ごとに大きく異なり、短いほど外部環境の変化にすばやく調整でき、長いほど市場の反応が制約される
  • 株式・債券は将来キャッシュフローに基づく金融資産、コモディティは実物資産であり、需給などに基づく将来価格の予想から評価される
  • 先物市場の参加者は、情報に基づく投資家・ヘッジャー、スペキュレーター、アービトラージャーに大別される
  • 現物価格が先物価格を上回る状態がバックワーデーション、下回る状態がコンタンゴ
  • 先物リターンの理論には保険理論、ヘッジング・プレッシャー仮説、保管理論がある
  • 先物のトータル・リターンは価格リターン、ロール・リターン、担保リターンで構成され、指数では構成銘柄の選び方やウエイト付け、ロール方法、リバランスがリターンを左右する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:コモディティ・セクターの特徴

コモディティはエネルギー、穀物、ベースメタル、畜産、貴金属、ソフトなどのセクターに分かれ、需給を決める要因がセクターごとに異なります。保管のしやすさ、天候、地政学などがどの程度影響するかを比較できることが求められます。

  • エネルギー:原油・天然ガス・精製品。地政学や景気、輸送・保管インフラの影響が大きい
  • 穀物・ソフト:天候や病害の影響を強く受け、収穫期による季節性がある
  • ベースメタル:景気(特に工業生産・建設)に連動しやすい
  • 貴金属:金は価値保存・通貨的な需要、プラチナなどは工業用途もある
  • 畜産:飼料(穀物)価格や疾病の影響を受ける
  • 保管のしやすさ(保管コストや劣化)が先物カーブの形状に影響

LOS 2:コモディティのライフサイクル

生産から加工・流通・消費までのライフサイクルは商品ごとに大きく異なります。サイクルが短い商品は外部ショックに素早く供給調整でき、長い商品は調整に時間がかかり価格が大きく動きやすくなります。

  • 穀物:作付けから収穫まで年単位の季節サイクル
  • 畜産:飼育期間が長く供給の調整に時間がかかる
  • エネルギー・メタル:探鉱・開発に長期間を要し、供給の弾力性が低い
  • サイクルの長短と保管の可否が価格変動や先物カーブに影響

LOS 3:コモディティと株式・債券の評価の違い

株式や債券は将来の利益やキャッシュフローを割り引いて評価する金融資産です。一方コモディティは実物資産で、キャッシュフローを生まないため、需給などに基づく将来価格の予想を割り引く形で評価されます。

  • コモディティはインカム(配当・利息)を生まない
  • 保管コストや輸送コストなど実物特有の要素がある
  • 評価の基礎は需給分析と将来価格の予想
  • 株式・債券のようなDCFによる本源的価値の算出は困難

LOS 4:先物市場の参加者

コモディティ先物市場にはヘッジャースペキュレーターアービトラージャーの3種類の参加者がいます。そのほか取引所や規制当局、分析者なども市場を支える役割を担います。

  • ヘッジャー:生産者や消費者など、現物の価格リスクを移転したい参加者
  • スペキュレーター:リスクを引き受けて利益を狙う。流動性の供給にも寄与
  • アービトラージャー:現物と先物、限月間などの価格差を利用し、価格の整合性を保つ
  • 現物を保管・輸送できる業者は裁定取引を行いやすい

LOS 5:コンタンゴとバックワーデーション

現物価格と先物価格の差をベーシスと呼びます。現物価格が先物価格より高い状態がバックワーデーション、低い状態がコンタンゴで、同一商品の異なる限月間の関係にも使われます。

  • バックワーデーション:現物価格 > 先物価格(右下がりの先物カーブ)
  • コンタンゴ:現物価格 < 先物価格(右上がりの先物カーブ)
  • 保管コストが大きく在庫が潤沢だとコンタンゴになりやすい
  • 在庫が逼迫しコンビニエンス・イールドが高いとバックワーデーションになりやすい
  • 決済方法は現金決済と現物受渡しがある
先物価格 ≈ 現物価格 ×(1 + r)+ 保管コスト − コンビニエンス・イールド

LOS 6:コモディティ先物リターンの理論

先物リターンを説明する主な理論には保険理論ヘッジング・プレッシャー仮説保管理論の3つがあります。それぞれ、先物カーブがコンタンゴ・バックワーデーションのどちらになりやすいかの説明が異なります。

  • 保険理論(ケインズ):生産者が売りヘッジのために先物を割安に売り、買い手がリスク・プレミアムを得る(ノーマル・バックワーデーション)
  • ヘッジング・プレッシャー仮説:生産者の売りヘッジが多ければバックワーデーション、消費者の買いヘッジが多ければコンタンゴ
  • 保管理論:在庫水準と保管コスト、コンビニエンス・イールドの関係から先物カーブの形を説明
  • 在庫が少ないほどコンビニエンス・イールドが高まり、バックワーデーションになりやすい

LOS 7:先物のトータル・リターンの構成要素

完全担保付き(証拠金ではなく想定元本全額を担保として保有)の先物ポジションのトータル・リターンは、価格リターンロール・リターン担保リターンに分解できます。指数ではリバランス・リターンが加わります。

  • 価格リターン:先物価格そのものの変化
  • ロール・リターン:満期が近い限月から次の限月に乗り換える際に生じる損益
  • 担保リターン:担保として保有する短期国債などの利回り
  • リバランス・リターン:指数の構成ウエイトを戻す取引から生じる
トータル・リターン = 価格リターン + ロール・リターン + 担保リターン(+ リバランス・リターン)

LOS 8:コンタンゴとバックワーデーションのロール・リターン

ロール・リターンは先物カーブの形状で符号が決まります。バックワーデーションではプラスコンタンゴではマイナスになるのが基本です。

  • バックワーデーション:安い期先を買い、高い期近を売るためロール・リターンはプラス
  • コンタンゴ:高い期先を買い、安い期近を売るためロール・リターンはマイナス
  • ロール・リターンは先物カーブの傾きと満期までの時間の経過で生じる
  • 長期投資ではロール・リターンがトータル・リターンに大きく影響する
ロール・リターン ≒(期近の先物価格 − 期先の先物価格)÷ 期近の先物価格

LOS 9:コモディティ・スワップの活用

コモディティ・スワップは、コモディティのリターンや価格と、固定額や金利などを交換する契約です。先物を自ら管理せずにエクスポージャーを得たり、既存のエクスポージャーを調整したりできます。

  • トータル・リターン・スワップ:コモディティ指数のリターンと短期金利+スプレッドを交換
  • 超過リターン・スワップ:指数の超過リターンを受け取り、固定の手数料を支払う
  • ボラティリティ・スワップ/バリアンス・スワップ:実現ボラティリティ(分散)と固定値を交換
  • ベーシス・スワップ:2つの関連する価格指標の差に対するエクスポージャー
  • カウンターパーティ・リスクが伴う

LOS 10:コモディティ指数の構築とリターン

コモディティ指数は構成銘柄の選定ウエイト付けの方法ロールの方法リバランスの頻度が指数ごとに異なり、これらがリターンに大きく影響します。

  • ウエイト付け:生産量ベース、流動性ベース、均等ウエイトなど
  • エネルギーの比率が高い指数はエネルギー価格の影響を強く受ける
  • ロール方法:期近を機械的にロールするか、カーブの形に応じて限月を選ぶか
  • リバランスの頻度はリターンと取引コストに影響する
  • 同じ「コモディティ指数」でも中身の違いで成果が大きく異なる

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