Learning Module 2「Analysis of Active Portfolio Management(アクティブ運用の分析)」は、アクティブ運用による付加価値の測定、インフォメーション・レシオとシャープ・レシオの違い、アクティブ運用の基本法則(移転係数・情報係数・ブレス・アクティブ・リスク)、マネージャー選択とアクティブ・リスク水準の決定、戦略の比較と基本法則の実務上の強みと限界を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM2のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には6つのLOSがあります。

  1. LOS 1:アクティブ運用による付加価値の測定方法を説明するdescribe how value added by active management is measured
  2. LOS 2:インフォメーション・レシオ(事後・事前)を計算・解釈し、シャープ・レシオと対比するcalculate and interpret the information ratio (ex post and ex ante) and contrast it to the Sharpe ratio
  3. LOS 3:アクティブ運用の基本法則について、その構成要素である移転係数、情報係数、ブレス、アクティブ・リスク(積極性)を含めて説明・解釈するdescribe and interpret the fundamental law of active portfolio management, including its component terms—transfer coefficient, information coefficient, breadth, and active risk (aggressiveness)
  4. LOS 4:運用マネージャーの選択とアクティブ・リスク水準の選択において、インフォメーション・レシオがどのように役立つかを説明するexplain how the information ratio may be useful in investment manager selection and choosing the level of active portfolio risk
  5. LOS 5:マーケット・タイミングや銘柄選択などのアクティブ運用戦略を比較し、戦略の変更をアクティブ運用の基本法則の観点から評価するcompare active management strategies, including market timing and security selection, and evaluate strategy changes in terms of the fundamental law of active management
  6. LOS 6:アクティブ運用の基本法則の実務上の強みと限界を説明するdescribe the practical strengths and limitations of the fundamental law of active management

LM2のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 付加価値は運用ポートフォリオのリターンとパッシブなベンチマークのリターンの差。事後的にはマイナスもありうるが、事前にはプラスが期待されなければアクティブ運用は正当化されない
  • 付加価値はアクティブ・ウエイト(ポートフォリオとベンチマークのウエイトの差)から生まれ、アクティブ・ウエイトの合計はゼロ
  • 期初のアクティブ・ウエイトと期末のアクティブ・リターンが正の相関を持つときに付加価値はプラスになる
  • 付加価値は銘柄選択、資産クラス配分、セクターや国の配分など、さまざまな判断から生まれる
  • シャープ・レシオは絶対リターンのリスク当たり報酬、インフォメーション・レシオはベンチマーク対比リターンのリスク当たり報酬
  • インフォメーション・レシオの高いアクティブ戦略をベンチマークと組み合わせることで、シャープ・レシオの高いポートフォリオを作れる
  • アクティブ・リスクはベンチマークとの組合せで望ましい水準に調整でき、最適なアクティブ・リスクは情報係数(予測精度)が高いほど大きい
  • 基本法則は付加価値を予測の精度、戦略のブレス、ポートフォリオ構築上の制約(移転係数)に分解する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:付加価値の測定

アクティブ運用の付加価値は、ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンの差です。これは各資産のアクティブ・ウエイトとリターンの積の合計として表せます。

  • アクティブ・ウエイト = ポートフォリオのウエイト − ベンチマークのウエイト
  • アクティブ・ウエイトの合計はゼロ
  • オーバーウエイト資産のリターンがアンダーウエイト資産を上回ると付加価値はプラス
  • 付加価値は資産配分効果と銘柄選択効果に分解できる
R_A = R_P − R_B = Σ Δwᵢ Rᵢ

LOS 2:インフォメーション・レシオとシャープ・レシオ

シャープ・レシオは絶対リターンの超過収益をリスクで割った指標、インフォメーション・レシオ(IR)はアクティブ・リターンをアクティブ・リスクで割った指標です。どちらも事前の期待値にも事後の実績にも適用できます。

  • アクティブ・リスク(トラッキング・エラー):アクティブ・リターンの標準偏差
  • IRはベンチマークとの組合せ(レバレッジ)によって変わらない
  • シャープ・レシオはキャッシュとの組合せによって変わらない
  • ベンチマークを加えたポートフォリオの最大シャープ・レシオ:SR_P² = SR_B² + IR²
  • 最適なアクティブ・リスク:σ_A* =(IR ÷ SR_B)× σ_B
IR =(R_P − R_B)÷ σ(R_P − R_B)、SR =(R_P − R_F)÷ σ_P

LOS 3:アクティブ運用の基本法則

アクティブ運用の基本法則は、期待アクティブ・リターンを移転係数(TC)情報係数(IC)ブレス(BR)アクティブ・リスクに分解します。

  • IC:予測したアクティブ・リターンと実現したアクティブ・リターンの相関(予測の精度)
  • BR:1年間に行う独立した判断の数
  • TC:予測から最適なアクティブ・ウエイトへの移転の度合い(制約がなければ1)
  • アクティブ・リスク:運用の積極性を表す
  • 事後的な実現値は、予測の当たり外れによるノイズを含む
E(R_A) = TC × IC × √BR × σ_A

LOS 4:マネージャー選択とアクティブ・リスク水準

インフォメーション・レシオは、アクティブ・リスクの量に左右されない運用能力の指標のためマネージャー選択の重要な基準になります。投資家はIRの高いマネージャーを選び、ベンチマークとの組合せでアクティブ・リスクの水準を調整します。

  • IRが最も高いアクティブ・ポートフォリオが最大のシャープ・レシオをもたらす
  • 最適なアクティブ・リスク水準はIRとベンチマークのシャープ・レシオで決まる
  • アクティブ・リスクが最適水準より大きすぎても小さすぎてもシャープ・レシオは下がる
  • ベンチマークとの組合せ比率でアクティブ・リスクを調整
σ_A* =(IR ÷ SR_B)× σ_B

LOS 5:アクティブ戦略の比較と基本法則による評価

マーケット・タイミング銘柄選択などの戦略は、基本法則の各要素で比較できます。戦略の変更(判断の回数、予測精度、制約の緩和など)がIRにどう影響するかを評価します。

  • マーケット・タイミング:判断の回数(ブレス)が限られるため高いICが必要
  • 銘柄選択:多数の銘柄で独立した判断ができブレスを大きくしやすい
  • ロング・オンリー制約の撤廃などでTCが上昇しIRが改善
  • 判断が互いに独立でなければ実質的なブレスは小さい
IR = TC × IC × √BR

LOS 6:基本法則の強みと限界

基本法則は、付加価値の源泉を予測の精度判断の数ポートフォリオ構築の制約に分けて考えるための有用な枠組みです。一方、ICの事前推定の難しさや判断の独立性の仮定などに限界があります。

  • 強み:戦略の比較、制約の影響の評価、マネージャーの分析に使える
  • 限界:事前のICの推定が難しく、過大評価しやすい
  • 限界:ブレスの前提となる判断の独立性が現実には成り立ちにくい
  • 限界:ICや戦略の特性が時間とともに変化する
  • 取引コストが考慮されない

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