Learning Module 3「Exchange-Traded Funds: Mechanics and Applications(ETFの仕組みと活用)」は、ETFの設定・交換の仕組みと指定参加者(AP)の役割、流通市場での取引、トラッキング・エラーの原因、売買スプレッドとNAVに対するプレミアム・ディスカウントの要因、保有コスト、ETFのリスク、ポートフォリオでの活用法を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM3のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には8つのLOSがあります。

  1. LOS 1:ETFの設定・交換のプロセスと指定参加者(AP)の機能を説明するexplain the creation/redemption process of ETFs and the function of authorized participants
  2. LOS 2:ETFが流通市場でどのように取引されるかを説明するdescribe how ETFs are traded in secondary markets
  3. LOS 3:ETFのトラッキング・エラーの原因を説明するdescribe sources of tracking error for ETFs
  4. LOS 4:ETFの売買スプレッドに影響する要因を説明するdescribe factors affecting ETF bid–ask spreads
  5. LOS 5:ETFのNAVに対するプレミアムとディスカウントの原因を説明するdescribe sources of ETF premiums and discounts to NAV
  6. LOS 6:ETFの保有コストを説明するdescribe costs of owning an ETF
  7. LOS 7:ETFのリスクの種類を説明するdescribe types of ETF risk
  8. LOS 8:ETFのポートフォリオにおける活用法を特定・説明するidentify and describe portfolio uses of ETFs

LM3のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • ETFは設定・交換(クリエーション/リデンプション)の仕組みにより、受益権の継続的な設定と交換が可能
  • ETFの新規設定・交換ができるのは、指定参加者(AP)と呼ばれる一部の機関投資家に限られる
  • ETFは発行体とAPの間の発行市場と、取引所や店頭で売買される流通市場の両方で取引され、最終投資家は流通市場で株式のように売買する
  • 保有期間ベースのトラッキング・ディファレンスは、日次リターン差の標準偏差であるトラッキング・エラーよりも有用
  • 指数との乖離の原因は、手数料・経費、代表サンプリング、預託証券や他ETFの利用、指数の変更、ファンドの会計処理、規制・税制上の要件、運用会社の業務など
  • ETFは現物での交換により売買を伴わずに資金の出入りに対応でき、投資信託より税効率が高くなりやすい
  • 売買スプレッドは流動性が高い銘柄ほど狭く、債券ETFは株式ETFより広い傾向
  • ETFは効率的なポートフォリオ管理、資産クラスやファクターへのエクスポージャーの取得、アクティブ運用の手段など多様に活用される

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:設定・交換の仕組みとAPの役割

ETFは指定参加者(AP)が原資産のバスケットを発行体に拠出してETF受益権を受け取る設定と、その逆の交換によって受益権数が増減します。APの裁定取引により、ETFの市場価格はNAVの近くに保たれます。

  • 設定:APがバスケット(または現金)を拠出し、ETF受益権を受け取る
  • 交換:APがETF受益権を返却し、バスケット(または現金)を受け取る
  • ETF価格 > NAV:APはETFを設定して市場で売る
  • ETF価格 < NAV:APは市場でETFを買って交換する
  • 現物による設定・交換はファンド内部の売買を減らし、税効率を高める

LOS 2:流通市場での取引

最終投資家は取引所や店頭の流通市場で、株式と同様にETFを売買します。多くの取引は流通市場の投資家同士で成立し、発行市場での設定・交換は必要な場合にのみ行われます。

  • 発行市場:APと発行体の間の取引
  • 流通市場:取引所や店頭での投資家間の売買
  • 指値注文・成行注文などが使える
  • マーケット・メーカーや流動性供給者が売買を仲介

LOS 3:トラッキング・エラーの原因

ETFのリターンは指数と完全には一致しません。トラッキング・エラーは日次リターン差の標準偏差、トラッキング・ディファレンスは保有期間のリターン差で、投資家にとっては後者がより有用です。

  • 手数料・経費(主にマイナス方向の乖離)
  • 代表サンプリング・最適化による部分的な複製
  • 預託証券や他のETFの利用
  • 指数の構成銘柄変更に伴う取引
  • ファンドの会計処理(評価時点の違いなど)、規制・税制上の要件
  • 証券貸付収入などの運用会社の業務(プラス方向の要因にも)

LOS 4:売買スプレッドの決定要因

流動性が高く双方向の注文が多いETFでは売買スプレッドは狭くなります。流動性が低いETFでは、設定・交換コスト原資産の売買スプレッドヘッジのリスク、マーケット・メーカーの目標利益がスプレッドを決めます。

  • 設定・交換コスト、売買委託手数料・取引所手数料
  • 原資産の売買スプレッド
  • 流動性供給者のヘッジやキャリーのリスク
  • マーケット・メーカーの目標利益
  • 債券ETF:原資産がディーラー市場で取引されヘッジが難しいため広め
  • 海外株ETF:原資産市場が開いている時間帯に狭くなる

LOS 5:NAVに対するプレミアム・ディスカウント

ETFの市場価格とNAVの差がプレミアム・ディスカウントです。主な原因は、評価時点の違い、原資産の流動性の低さ、市場ストレスなどです。

  • 時差:海外資産の市場が閉まっていると、NAVは古い価格に基づく
  • 債券ETF:NAVが気配値ベースなど原資産の評価が不正確になりうる
  • 市場ストレス時や原資産の流動性が低いと乖離が拡大
  • APによる裁定が働きにくいと乖離が大きくなる
  • iNAV(推定NAV)はザラ場の目安だが古い価格に基づくことがある

LOS 6:ETFの保有コスト

ETFの保有コストには経費率などの継続的なコストと、売買委託手数料売買スプレッド、プレミアム・ディスカウントなどの売買時のコストがあります。保有期間が長いほど経費率、短いほど売買コストの影響が大きくなります。

  • 経費率(運用管理費用)
  • トラッキング・ディファレンス(経費以外の乖離も含む)
  • 売買委託手数料と売買スプレッド
  • 売買時のプレミアム・ディスカウント
  • 証券貸付による収入はコストを相殺しうる
  • 税コスト(税効率の違い)
保有コスト ≒ 年間経費率 × 保有期間 + 往復の売買コスト(手数料 + スプレッド)

LOS 7:ETFのリスク

ETFには、原資産の市場リスク以外にも、カウンターパーティ・リスクファンドの閉鎖リスク商品構造によるリスク投資家の誤解によるリスクなどがあります。

  • カウンターパーティ・リスク:スワップ型ETFやETN(上場投資証券)で発行体・取引相手の信用リスク
  • 証券貸付に伴う取引相手のリスク
  • 閉鎖リスク:資産規模の小さいETFの償還、規制変更
  • レバレッジ型・インバース型:日次リバランスにより長期リターンが倍率どおりにならない
  • 期待と異なる動き(誤解)やフラッシュ・クラッシュなど市場取引上のリスク

LOS 8:ETFのポートフォリオでの活用

ETFは効率的なポートフォリオ管理資産クラスへのエクスポージャーファクター(スマート・ベータ)投資アクティブ運用や戦術的配分など多様に活用されます。

  • キャッシュのエクイタイゼーション(待機資金の市場エクスポージャー化)
  • リバランスやマネージャー交代時の移行管理
  • 流動性管理、ヘッジ(空売り)
  • 資産クラス(コア、債券、コモディティ、通貨)へのエクスポージャー
  • ファクター・ETFを使ったファクター・エクスポージャーの調整
  • 戦術的資産配分やダイナミック・アセット・アロケーション

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