Learning Module 5「Introduction to Equity Valuation(株式評価入門)」は、株式の価格と価値の違い、本源的価値の指標として株主資本簿価・時価総額・企業価値(EV)を用いる際の違い、そして主要な株式評価モデルの分類とその長所・短所を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM5のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM5には3つのLOSがあります。

  1. LOS 1:株式の価格と価値を対比するcontrast price and value for an equity security
  2. LOS 2:本源的価値の指標としての株主資本簿価、時価総額、企業価値の使用を対比するcontrast the use of book value of equity, market capitalization, and enterprise value as indicators of intrinsic value
  3. LOS 3:株式評価モデルの主要な分類を説明し、その長所と短所を説明するdescribe major categories of equity valuation models and explain their advantages and disadvantages

LM5のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 観察される市場価格はすべての市場参加者が認識する価値を織り込んだもので、本源的価値は観察できず、期待される将来キャッシュフローの評価を反映する
  • 市場価格と認識価値の乖離は、発行体や投資家の行動を引き起こす。割安と考えれば投資家は保有を増やし、発行体は自社株買いを検討する
  • 時価総額(株式の市場価値)を会計上の簿価と比べることで、既存の純資産に対するキャッシュフロー創出力を評価する
  • 企業価値は企業全体の買収価格の推定値で、負債と株式の両方を含む。資本構成の違いの影響を受けにくく、企業間比較に適する
  • 絶対評価(現在価値モデル・資産ベース・モデル)は本源的価値を決める将来キャッシュフローや資産価格を推定し、相対評価は観察可能な価値指標を財務諸表の数値と比べて市場価格との関係を判断する
  • 絶対評価は財務予測で本源的価値を直接評価できるが複雑でアナリストの前提に左右され、相対評価は簡便で同業比較しやすいが企業固有の要因を十分反映できない場合がある

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:株式の価格と価値の違い

市場価格は市場参加者全体の期待を反映した観察可能な価格、本源的価値は将来キャッシュフローの評価に基づく観察できない価値です。投資家や発行体が認識する価値と市場価格が乖離すると売買や資本政策の行動が生じ、価格を本源的価値に収れんさせる力になります。

  • 認識価値を得る3つのアプローチ:ナイーブ(ストーリー型)評価、相対評価、絶対(ファンダメンタル)評価
  • 価格<認識価値:投資家は買い増し、発行体は自社株買いを検討
  • 価格>認識価値:投資家は売却、発行体は株式発行を検討
  • シナリオごとの予想株価を確率で加重して価値を推定する方法もある
  • 投資家の種類や経営陣の間での認識価値の違いが価格の動きを生む

LOS 2:簿価・時価総額・企業価値

株主資本簿価(BVE)は会計上の純資産、時価総額は株価×発行済株式数による株式の市場価値、企業価値(EV)は負債や優先株式を含む企業全体の価値です。時価総額と簿価の比較でキャッシュフロー創出力を、EVで資本構成の違いを抑えた企業間比較を行います。

  • BVE=資産の簿価 − 負債の簿価(非支配持分は含めない)。負の簿価は財務困難リスクのシグナル
  • 時価総額は株価の変動で日々変わり、自社株買いや増資で株数が変化
  • P/B=株価 ÷ 1株当たり簿価:既存の純資産に対する市場の評価
  • EV=負債の市場価値+株式の市場価値+優先株式の市場価値 − 現金・短期投資
  • EVは報告通貨建てのため、異なる通貨の企業比較には換算が必要。EV/売上高やEV/EBITDAなどの倍率は通貨に依存しない
EV = 負債の市場価値 + 株式の市場価値 + 優先株式の市場価値 − 現金・短期投資

LOS 3:評価モデルの分類と長所・短所

絶対評価には将来キャッシュフローを割り引く現在価値モデルと資産・負債を時価で評価する資産ベース・モデルがあり、相対評価は株価倍率などを比較企業と比べる方法です。絶対評価は本源的価値を直接推定できる一方で複雑で前提に左右され、相対評価は簡便で比較しやすい一方で企業固有の要因を反映しきれない場合があります。

  • 現在価値モデル:配当割引モデル、FCFF・FCFEモデル、残余利益モデル
  • 資産ベース・モデル:将来予測への依存が小さく、個別資産や事業部門、清算時の評価に有用。継続企業としての価値を十分に考慮できない
  • 相対評価:P/E、P/B、EV/EBITDAなどを同業平均と比較。比較企業の選び方が結果を大きく左右
  • 倍率の違いはファンダメンタルズの違いを反映し得る
  • 実務では複数の手法で価値を推定し、結果を照合する

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