Learning Module 6「Discounted Cash Flow (DCF) and Growth Models(DCFと成長モデル)」は、配当割引モデル、FCFEモデル、FCFFモデル、残余利益モデルのインプットの違いと評価プロセス、定率成長・多段階成長モデルによる本源的価値の計算とその限界、そして優先株式の評価を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM6のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には4つのLOSがあります。

  1. LOS 1:配当割引モデル、フリー・キャッシュフロー・トゥ・エクイティ(FCFE)モデル、フリー・キャッシュフロー・トゥ・ザ・ファーム(FCFF)モデル、残余利益モデルで用いるインプットを対比し、現在価値モデルを用いて株式を評価するプロセスを説明するcontrast the inputs used in dividend discount, free cash flow to equity (FCFE), free cash flow to the firm (FCFF), and residual income models, and explain the process for using present value models to value equity
  2. LOS 2:キャッシュフローの定率成長または多段階成長を仮定する現在価値モデルに基づいて、株式の本源的価値を計算・解釈するcalculate and interpret the intrinsic value of an equity security based on present value models that assume constant cash flow growth or multistage cash flow growth
  3. LOS 3:現在価値モデルにおける定率成長および多段階成長の仮定の欠点を説明するexplain the shortcomings of constant and multistage cash flow growth assumptions in present value models
  4. LOS 4:コール条項も転換権もない優先株式の本源的価値を計算し、条件付き条項が本源的価値に与える影響を説明するcalculate the intrinsic value of a non-callable, non-convertible preferred stock and describe how contingency features affect intrinsic value

LM6のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • DCFモデルは、株式の価値が将来期待されるインカムと値上がり益の現在価値に等しいと考える
  • DCFによる評価プロセスは、適切なキャッシュフロー指標の選択と予測、ターミナル・バリューの設定、適切な割引率による現在価値の算定から成る
  • 配当に基づく現在価値モデルは、株主にとっての価値が主に将来の配当から生じる企業に適用される
  • 株主が受け取れるキャッシュフロー(FCFE)や全資本提供者が受け取れるキャッシュフロー(FCFF)に基づくモデルは、分配方針や資本構成が異なる企業に幅広く使える
  • 残余利益モデルは、企業が株主資本の要求収益を上回って生み出す価値を測ろうとするもの
  • 企業固有(ボトムアップ)要因に基づくモデルの欠点は、基準年の選択の難しさと、予測期間中の価値ドライバーを固定する静的な仮定。トップダウン要因では、変化するマクロ環境の中で資本コストのインプットを推定する難しさがある
  • コール条項も転換権もない優先株式は、成長率ゼロとして優先配当と額面を現在価値に割り引いて評価する
  • 発行体に有利な条件付き条項は同種の優先株式の本源的価値を下げ、投資家にとって価値ある条項は本源的価値を上げる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:各現在価値モデルのインプットと評価プロセス

現在価値モデルは、分子のキャッシュフロー指標(配当、FCFE、FCFF、残余利益)と、そのキャッシュフローを受け取る資本提供者に対応する割引率(株主資本コストまたはWACC)の組み合わせで構成されます。FCFFをWACCで割り引くと企業価値が求まり、負債の市場価値を差し引いて株主価値を得ます。

  • 配当:安定して配当を支払う企業向け、株主資本コストで割引
  • FCFE=営業CF − 設備投資+純借入(目標負債比率DRを仮定すると 純利益 −(1 − DR)× 純投資)。配当方針に左右されない
  • FCFF=営業CF+支払利息 ×(1 − 税率)− 設備投資。WACCで割り引き、負債を差し引いて株式価値
  • 残余利益=EPS − 株主資本コスト × 期首1株当たり簿価。価値=簿価+将来の残余利益の現在価値
  • EBITDAは設備投資・運転資本投資・税を考慮しないため、フリー・キャッシュフローとは異なる
  • プロセス:キャッシュフロー指標の選択と予測 → ターミナル・バリューの設定 → 割引率の決定 → 現在価値の算定
FCFE = 営業キャッシュフロー − 設備投資 + 純借入(借入 − 返済)

LOS 2:定率成長・多段階成長モデルによる本源的価値

キャッシュフローが一定率 g で永続的に成長すると仮定すると、本源的価値は翌期のキャッシュフロー ÷(r − g)で求まります。高成長期の後に安定成長へ移る場合は2段階成長モデルを用い、高成長期のキャッシュフローとターミナル・バリューの現在価値を合計します。

  • 定率成長モデル:g < r が必要で、価値は g の選び方に非常に敏感
  • 永続的な成長率は、長期的に経済全体の成長率を上回るべきではない
  • 市場価格から逆算したインプライド成長率で、市場が織り込む期待を把握
  • 2段階モデル:n期まで高成長、以降は安定成長。ターミナル・バリュー=CFₙ₊₁ ÷(r − 長期成長率)
  • 持続可能成長率=(1 − 配当性向)× ROE(内部留保率 × ROE)
  • 割引率の整合性:FCFFはWACC、配当・FCFE・残余利益は株主資本コスト(WACC < 株主資本コスト)
V₀ = D₁ ÷(r − g)(D₁ = D₀ ×(1 + g))

LOS 3:成長仮定の限界

現在価値モデルには、企業固有(ボトムアップ)要因とマクロ(トップダウン)要因の両面で限界があります。単一のキャッシュフロー指標や基準年の歪み、価値ドライバーを固定する静的な仮定は、変革期や衰退期の企業の価値を誤らせやすく、資本コストのインプットも市場環境とともに変化します。

  • 配当は株主へのキャッシュフローの一部しか捉えず、自社株買いを反映しない
  • FCFE・FCFFにも基準年効果、一定の負債比率の仮定、利益・投資の定義の難しさがある
  • 成長モデルは成熟企業に最も適し、急成長・事業変革・衰退の局面は捉えにくい
  • 継続企業を前提とするため、財務困難の可能性はシナリオ分析(確率加重)で明示的に反映
  • リスクフリー・レートなどの変化による資本コストの変動は価値に大きく影響。新興市場では推定がさらに難しい
  • 複数のモデルを併用して価値を推定するのが一般的

LOS 4:優先株式の評価と条件付き条項

コール条項も転換権もない優先株式は、成長率ゼロとして固定の優先配当と額面を優先株式の要求収益率で割り引いて評価します。永久優先株ならD ÷ r_pです。コール条項のように発行体に有利な条項は価値を下げ、プット条項や転換権のように投資家に有利な条項は価値を上げます。

  • 満期のある優先株式:配当の現在価値+額面の現在価値(債券と同様の計算)
  • 永久優先株式:V₀ = D ÷ r_p
  • 優先株式の要求収益率は普通株式より低い(r_p < r_e)
  • コーラブル:発行体の権利 → 価値は低下(同程度の価値にはより高い配当率が必要)
  • プッタブル・転換可能:投資家の権利 → 価値は上昇(配当率は低くてよい)
永久優先株式の価値 V₀ = D ÷ r_p

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