Learning Module 16「Credit Analysis for Corporate Issuers(事業会社の信用分析)」は、事業会社の信用力を評価する定性的要因と定量的要因、信用分析で使う財務比率の計算と解釈、そして債務の優先順位、担保付・無担保債務の違い、破綻時の請求権の順位とそれらが信用格付に与える影響を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM16のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM16には3つのLOSがあります。

  1. LOS 1:事業会社である借り手の信用力を評価するのに用いる定性的要因と定量的要因を説明するdescribe the qualitative and quantitative factors used to evaluate a corporate borrower’s creditworthiness
  2. LOS 2:信用分析で用いる財務比率を計算・解釈するcalculate and interpret financial ratios used in credit analysis
  3. LOS 3:債務の優先順位、担保付債務と無担保債務、破綻時の請求権の優先順位、およびそれらが信用格付に与える影響を説明するdescribe the seniority rankings of debt, secured versus unsecured debt and the priority of claims in bankruptcy, and their impact on credit ratings

LM16のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 借り手の信用リスクは、企業のデフォルトの可能性とデフォルト時の投資家の損失に影響する定性的・定量的な基準で評価できる
  • 信用力を測るうえで重要な定性的要因は、企業のビジネス・モデル、業界、競争上の地位と事業リスク、そしてコーポレート・ガバナンス
  • 定量的要因では、財務諸表の分析と予測を行い、収益性・流動性・レバレッジ・カバレッジの指標で固定的な債務の支払能力を測る
  • 財務比率は、企業の財務の健全性を評価し、時系列の傾向を把握し、業界内・業界間で企業を比較するための重要な道具
  • 優先順位は発行体の資産に対する請求権の順番を決め、個別債券のデフォルト時損失率を大きく左右する。格付機関は通常、発行体格付と個別債券の格付の両方を付与する
  • 発行体格付は発行体のシニア無担保債のデフォルト確率または期待損失をとらえ、個別債券の格付は優先順位などを考慮した特定の債務に対する格付

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:信用力評価の定性的・定量的要因

事業会社の信用力は、定性的要因(ビジネス・モデル、業界、競争上の地位、事業リスク、ガバナンス)と定量的要因(財務諸表の分析と予測)の両面から評価します。キャッシュフローで債務を返済し続けられるかを、将来を見据えて判断することが中心です。

  • ビジネス・モデル:どのように収益とキャッシュフローを生み出しているか
  • 業界:競争の激しさ、景気循環への感応度、参入障壁
  • 競争上の地位と事業リスク:市場シェア、価格決定力、事業の分散
  • コーポレート・ガバナンス:経営陣の姿勢、財務方針、債権者と株主の利害
  • 定量的要因:収益性、流動性、レバレッジ、カバレッジの指標と、その予測

LOS 2:信用分析で使う財務比率

信用分析では、収益性・カバレッジ・レバレッジ・流動性の比率を使って債務の返済能力を測ります。一般に、カバレッジが高く、レバレッジが低いほど信用力は高いと判断し、時系列や同業他社との比較で評価します。

  • 収益性:EBITマージンなど
  • カバレッジ:EBIT ÷ 支払利息、EBITDA ÷ 支払利息(高いほど良い)
  • レバレッジ:負債 ÷ EBITDA、負債 ÷ 総資本(負債+株主資本)、FFO ÷ 負債
  • 負債 ÷ EBITDA は低いほど、FFO ÷ 負債は高いほど信用力が高い
  • 流動性:手元資金や流動比率など短期の支払能力
  • リース債務などの債務類似項目を負債に含める調整
EBITDAカバレッジ = EBITDA ÷ 支払利息、レバレッジ = 負債 ÷ EBITDA

LOS 3:優先順位・担保と信用格付

破綻時の請求権は担保付債務 → シニア無担保債務 → 劣後債務の順に弁済されるため、優先順位が高いほど回収率が高く、デフォルト時損失率が小さくなります。格付機関は発行体格付を基準に、優先順位や担保に応じて個別債券の格付を上げ下げするノッチングを行います。

  • 優先順位:第1順位担保付 → 第2順位担保付 → シニア無担保 → シニア劣後 → 劣後 → ジュニア劣後
  • 同順位の債権者は平等に扱われる(パリ・パス)
  • 絶対優先ルール:上位の請求権が全額弁済されるまで下位は弁済されないが、実際の破綻処理では交渉により逸脱が生じ得る
  • 発行体格付は通常シニア無担保債に対する格付
  • ノッチング:担保付債は発行体格付より上、劣後債は下に調整
  • デフォルト確率の高いハイ・イールド発行体ほど、ノッチングの幅が大きくなりやすい

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