Learning Module 8「Financial Statement Forecasting in Equity Valuation(株式評価のための財務諸表予測)」は、財務諸表予測モデル(分解型評価モデル)の意義・構築方法・用途、ライフサイクル段階や株主による支配など企業の特性に応じたモデル構築、そして予測モデルの出力に基づく株式価値の推定と解釈を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM8のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM8には3つのLOSがあります。

  1. LOS 1:株式評価における財務諸表予測モデルの論拠、構築、用途を説明するexplain the rationale, construction, and uses of financial statement forecast models in equity valuation
  2. LOS 2:対象企業の特性に基づいて株式評価モデルの構築を評価するevaluate the construction of an equity valuation model based on characteristics of the subject company
  3. LOS 3:財務諸表予測モデルの出力に基づいて株式の価値を推定・解釈するestimate and interpret the value of an equity security based on the outputs of a financial statement forecast model

LM8のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 分解型評価モデルでは、売上高・収益性・投資・資金調達の財務諸表予測ごとの前提を通じて、評価のストーリーを伝えることができる
  • 売上高・費用・資産の分解型モデルは過去の情報に依拠することが多く、財務諸表予測の作成にはボトムアップとトップダウンのアプローチがある
  • 予測モデルの分解の程度は企業のライフサイクルとともに変わり、段階に応じて異なる予測指標で評価される
  • 将来の財務困難の可能性は、継続企業としての評価と破産・清算時の評価の確率加重平均で反映できる
  • 基本的な評価プロセスは、①過去の財務諸表の収集、②将来の財務諸表の予測、③予測財務諸表からのフリー・キャッシュフローの算出、④ターミナル・バリューの推定、⑤フリー・キャッシュフローとターミナル・バリューの現在価値の算定、の5段階

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:財務諸表予測モデルの意義と構築

分解型評価モデル(disaggregated model)は、キャッシュフロー全体の成長率を直接仮定する代わりに、売上高・費用・資産・資金調達を個別に予測し、その結果としてフリー・キャッシュフローを導きます。キャッシュフローの構成要素が異なる速度で変化すると見込まれる場合に適しており、評価の前提とストーリーを明確に伝えられます。

  • 4つの予測領域:売上高、費用(利益率)、資産の成長と効率、資金調達
  • 売上高モデル:過去実績ベース、ボトムアップ(数量・価格・セグメントなど)、トップダウン(市場規模 × シェア)
  • NOPAT =(売上高 − 売上原価 − 販管費 − 減価償却費)×(1 − t)
  • 純投資=Δ運転資本+Δ純長期資産、FCFF=NOPAT − 純投資
  • 資金調達モデル:資金需要を負債・株式・現金のどれで賄うかがFCFEに影響
  • 用途:新情報に応じた価値の更新、what-if分析、定期的な開示の変化と株価の比較
FCFF = NOPAT − 純投資(NOPAT =(売上高 − 売上原価 − 販管費 − 減価償却費)×(1 − t))

LOS 2:企業特性に応じたモデル構築

予測の分解の程度や重視する指標はライフサイクル段階によって変わります。スタートアップは将来の売上高ポテンシャル、成長企業は売上高と利益の詳細な予測、衰退企業は財務困難の可能性を重視し、支配権を持つ投資家の登場も予測に反映させます。

  • スタートアップ:足元のCF予測は行わず、将来売上高 × P/Sによるターミナル・バリューを目標ROI(投資倍率)で割り引く
  • プレマネー評価=ポストマネー評価 − 新規出資額、持分比率=新規出資額 ÷ ポストマネー評価
  • 成長段階:売上高と利益率の詳細な予測、利益ベースの倍率でターミナル・バリュー
  • 衰退企業:キャッシュフローの調整、割引率の推定の難しさ、継続企業の前提とピアの倍率による歪み
  • 財務困難の反映:価値=継続企業価値 ×(1 − 困難確率)+ 困難時の売却価値 × 困難確率
  • 戦略的投資家・アクティビスト:提案された事業・投資・財務の変更をシナリオとして予測に反映
本源的価値 = 継続企業価値 ×(1 − 困難確率)+ 困難時の売却価値 × 困難確率

LOS 3:予測モデルの出力による価値推定

予測財務諸表から将来のフリー・キャッシュフローを算出し、ターミナル・バリューを推定して現在価値に割り引くことで本源的価値を求めます。前提を変えた複数のシナリオで結果を比べることで、価値の幅と主要ドライバーを解釈できます。

  • 5段階:過去の財務諸表の収集 → 財務諸表の予測 → FCFの算出 → ターミナル・バリュー → 現在価値
  • ターミナル・バリュー:定率成長の仮定、またはピアの倍率を予測値に適用
  • FCFFをWACCで割り引いて企業価値を求め、負債を差し引いて株主価値を得る
  • シナリオ分析:売上高成長率・利益率・投資・資金調達の前提変更による価値の変化
  • シナリオの結果を確率で加重し、1つの推定値にまとめることもできる
V₀ = Σ FCFFₜ ÷(1 + WACC)ᵗ + TVₙ ÷(1 + WACC)ⁿ

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。