結論:協会規則①は「お客さまの情報をどう集め、どう管理するか」と「従業員・外務員が何をしてはいけないか」の章です。
- 顧客カードの記載事項は9項目(氏名・住所・生年月日・職業・投資目的・資産の状況・投資経験の有無・取引の種類・その他)
- 高齢顧客は社内規則で定義・販売対象・説明方法・受注方法を定める。ガイドラインの目安は75歳以上(80歳以上はより慎重に)
- 内部者登録カードの対象には、上場会社等の役員でなくなった後1年以内の者も含まれる
- 照合通知書は1年に1回以上(デリバティブ取引のある顧客は1年に2回以上)
- 外務員は新規登録後180日以内、その後5年ごとに資格更新研修
一種・二種の出題範囲
一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第2巻
この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。一種外務員・二種外務員の職務範囲の違いは「外務員の資格・登録」の表で確認できます。
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日本証券業協会の概要
日本証券業協会(日証協)は、金融商品取引法の規定により内閣総理大臣の認可を受けた認可金融商品取引業協会です。1973年に社団法人として設立され、1992年の証券取引法改正に伴って認可法人に改組されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法的性格 | 金融商品取引法に基づく認可金融商品取引業協会(「認定」協会ではない) |
| 目的 | 協会員の有価証券の売買等を公正かつ円滑にし、金融商品取引業の健全な発展を図り、投資者の保護に資すること |
| 協会員の種類 | 会員(証券会社)、特定業務会員、特別会員(銀行などの登録金融機関) |
| 主な業務 | 自主規制規則の制定・監査・処分、外務員の登録事務(金融商品取引法に基づき内閣総理大臣から委任)、外務員資格試験、店頭有価証券・株主コミュニティ等の制度運営、統計・調査、証券知識の普及 |
協会規則は法律ではありませんが、協会員は定款・規則に従う義務があり、違反すれば協会から過怠金などの処分を受けます。自主規制機関の法律上の位置づけは金融商品取引法②取引所・自主規制機関で扱っています。
投資勧誘の基本原則(投資勧誘規則第3条・第4条)
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第3条第1項 | 常に投資者の信頼の確保を第一義とし、法令・規則を遵守する |
| 第3条第2項 | 顧客の投資経験、投資目的、資力等を十分に把握し、顧客の意向と実情に適合した投資勧誘を行う(適合性の原則) |
| 第3条第3項 | 協会員にとって新たな有価証券等を販売するときは、特性やリスクを把握し、適合する顧客が想定できないものは販売してはならない(合理的根拠適合性) |
| 第3条第4項 | 重要な事項について十分な説明を行い、理解を得るよう努める |
| 第4条 | 投資は投資者自身の判断と責任で行うものであることを理解させる(自己責任原則の徹底) |
合理的根拠適合性は「個々の顧客」ではなく、商品そのものについて、それに合う顧客層が想定できるかを問うものです。個々の顧客に対する適合性の原則と混同させる問題が出ます。
顧客カードと高齢顧客
顧客カード(第5条)
協会員は、有価証券の売買その他の取引等を行う顧客について顧客カードを備え付けなければなりません。電磁的記録で作成・保存することもできます。
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 氏名又は名称 |
| 2 | 住所又は所在地及び連絡先 |
| 3 | 生年月日(自然人の場合) |
| 4 | 職業 |
| 5 | 投資目的 |
| 6 | 資産の状況 |
| 7 | 投資経験の有無 |
| 8 | 取引の種類 |
| 9 | その他各協会員において必要と認める事項 |
「家族構成」「勤務先の年収」などは列挙されていません。顧客カードで知り得た秘密は他に漏らしてはならず、顧客に関する情報の漏えいは規則(第13条の2)でも禁止されています。
高齢顧客への勧誘(第5条の3とガイドライン)
協会員は、高齢顧客に勧誘による販売を行う場合、業態・規模・顧客分布などを考慮して、高齢顧客の定義、販売対象となる有価証券等、説明方法、受注方法等に関する社内規則を定め、適正な投資勧誘に努めなければなりません。
| ガイドラインの目安 | 内容 |
|---|---|
| 75歳以上 | 慎重な勧誘による販売を行う必要がある顧客 |
| 80歳以上 | より慎重な勧誘による販売を行う必要がある顧客 |
| 勧誘留意商品 | 役席者の事前承認なしに勧誘できる商品の範囲を定め、範囲外は承認を得る |
| 受注 | 外交・電話で勧誘した場合、原則として当日は受注せず翌日以降に受注する方法など |
| 約定後 | 80歳以上などでは、勧誘した営業員以外の者が取引内容を連絡・確認する方法など |
年齢の線引きはあくまでガイドラインの目安で、規則本文は「社内規則で定義する」としている点に注意してください。
勧誘開始基準・取引開始基準
店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・複雑な投資信託、レバレッジ投資信託などを個人顧客(特定投資家を除く)に勧誘するときは、勧誘開始基準を定め、基準に適合した顧客にだけ勧誘できます(第5条の2)。また、信用取引、新株予約権証券、有価証券関連デリバティブ取引等、店頭取扱有価証券、株式投資型クラウドファンディング、株主コミュニティ銘柄などの取引は、顧客の投資経験・預り資産などを基準とする取引開始基準を定めなければなりません(第6条)。
注意喚起文書・確認書・その他の管理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 注意喚起文書(第6条の2) | 有価証券関連デリバティブ取引等、特定店頭デリバティブ取引等、複雑な仕組債・投資信託などの販売の際に、あらかじめ交付。不招請勧誘規制の有無、リスク、指定紛争解決機関の連絡先などを記載。契約前1年以内に同種の文書を交付済みなら不要 |
| 確認書(第8条) | 新株予約権証券、カバードワラント、有価証券関連デリバティブ取引等などの契約を初めて締結するとき、リスク等を理解し自己の判断と責任で行う旨の確認書を徴求 |
| 信用取引の意向確認(第7条) | 信用取引の注文を受ける際は、その都度、制度信用取引か一般信用取引かなどの意向を確認 |
| 過当勧誘の防止(第12条) | 主観的・恣意的な情報提供となる特定銘柄の一律集中的推奨の禁止。取引所等が信用取引の制限・禁止措置をとっている銘柄は信用取引の勧誘を自粛 |
| 仮名取引(第13条) | 仮名取引であることを知りながら注文を受けてはならない |
| 取引の安全性(第17条) | 新規顧客・大口取引顧客などからは、あらかじめ買付代金や売付有価証券の全部又は一部の預託を受けるなど取引の安全性の確保に努める |
| 投資信託等の損益通知(第23条の2) | 保管している投資信託等のトータルリターンを年1回以上通知 |
内部者登録カードと法人関係情報
内部者登録カード(第15条)
協会員は、上場会社等の役員などインサイダー情報に接する可能性のある顧客について内部者登録カードを備え付けなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象者 | 上場会社等の役員(投資法人の執行役員・監督役員を含む)、親会社・子会社の役員、それらでなくなった後1年以内の者、役員の配偶者及び同居者、重要事実を知り得る部署の使用人、親会社・子会社、大株主 など |
| 記載事項 | 氏名又は名称、住所又は所在地及び連絡先、生年月日、会社名・役職名・所属部署、役員等に該当する上場会社等の名称及び銘柄コード |
| 変更の届出 | 該当・非該当に変更があったら遅滞なく届け出るよう顧客に約させる |
| 顧客カードとの兼用 | 記載事項を満たせば顧客カードと兼ねることができる |
| 役員等情報データベース | 協会が提供する上場会社等の役員等の情報と顧客情報を照合し、内部者登録カードを整備する |
法人関係情報の管理
法人関係情報とは、上場会社等の運営・業務・財産に関する公表されていない重要な情報で顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの、公開買付け等の実施・中止に関する未公表の情報をいいます。協会員は、法人関係情報の管理部門を定め、取得時の手続(直ちに管理部門へ報告するなど)、情報管理、伝達手続、消滅・抹消の手続、禁止行為を社内規則で定め、業務上不必要な部門に伝わらないよう管理しなければなりません。インサイダー取引規制そのものは金融商品取引法③不公正取引で扱います。
有価証券の寄託(保護預り)と照合通知書
会員が顧客から有価証券の寄託を受けるときは、保護預り約款に基づく契約を締結します。顧客の債権債務の残高は、照合通知書で定期的に報告します。
| 顧客の区分 | 照合通知書の頻度 |
|---|---|
| 有価証券の売買その他の取引のある顧客 | 1年に1回以上 |
| 有価証券関連デリバティブ取引・特定店頭デリバティブ取引・商品関連市場デリバティブ取引のある顧客 | 1年に2回以上 |
| 残高はあるが1年以上取引・受渡しがない顧客 | 随時 |
必要な項目が記載された取引残高報告書を定期的に交付している顧客には、照合通知書は不要です。照合通知書の作成・交付や顧客からの残高照会への回答は、営業部門ではなく検査・監査・管理を担当する部門が行います。
内部管理体制と事故確認
内部管理責任者等
| 役職 | 配置 | 資格要件など |
|---|---|---|
| 内部管理統括責任者 | 協会員ごとに1名。会員では原則として代表取締役又は代表執行役 | 協会に届け出て登録。事業年度ごとに研修を受講 |
| 内部管理統括補助責任者 | 内部管理部門の役員・部長等 | 会員内部管理責任者資格試験の合格者 |
| 営業責任者 | 営業単位ごと | 会員営業責任者資格試験または会員内部管理責任者資格試験の合格者 |
| 内部管理責任者 | 営業単位ごと(内部管理業務の管理職者) | 会員内部管理責任者資格試験の合格者 |
事故確認
損失補てんは金融商品取引法で禁止されていますが、事故(従業員の違法・不当な行為など)による損失を補てんする場合は例外です。原則として管轄財務局長等の確認を受ける必要があり、確認申請は日本証券業協会を経由して行います。支払額が1,000万円を超えないものは、協会の委員会による調査・確認を申請する方法もあります。
反社会的勢力の排除と仲介業者
- 相手方が反社会的勢力であることを知りながら取引してはならない
- 初めて口座を開設するときは、あらかじめ顧客から反社会的勢力でない旨の確約を受ける
- 契約書に、反社会的勢力と認められたときは契約を解除できる旨の暴力団排除条項を定める
- 協会とあらかじめ取り決めた方法で審査(データベースの照会など)を行う
金融商品仲介業者に業務を委託する協会員は、委託先の業務を適切に管理しなければなりません。なお、金融商品仲介業者は顧客から金銭や有価証券の預託を受けることができません。金融サービス仲介業者を通じて有価証券を販売する場合についても、協会は専用の規則を設けています。
従業員・外務員に関する規則
従業員の主な禁止行為(従業員規則第7条)
| 分類 | 禁止される行為 |
|---|---|
| 損失補てん | 損失の補てん・利益の追加を約束・申込み・実行すること(事前・事後とも) |
| 自己の取引 | いかなる名義かを問わず、自己の計算で信用取引・有価証券関連デリバティブ取引等を行うこと(原則) |
| 顧客との関係 | 顧客と損益を共にする約束、顧客との金銭・有価証券の貸借、顧客の注文に自己が相手方となること |
| 名義 | 顧客の取引に自己や親族の名義・住所を使用させること、自己の取引に顧客の名義・住所を使うこと、仮名取引と知りながら受注すること |
| 預り物 | 預かった金銭・有価証券や書類を遅滞なく引き渡さない・交付しないこと、名義書換を所属協会員を通さずに行うこと |
| その他 | 過当な数量の勧誘、職務上知り得た秘密の漏えい、広告審査を受けない広告、乗換え時の重要事項の説明をしないこと、反社会的勢力と知りながらの契約 など |
不都合行為者
協会は、従業員が不都合な行為をしたとき、一級不都合行為者または二級不都合行為者として取り扱うことを決定します。一級不都合行為者は協会員が従業員として採用できません。二級不都合行為者は、決定から5年間採用が禁止されます。協会員は他の協会員の従業員だった者を採用するとき、協会に照会しなければなりません。
特定有価証券等の売買(従業員の株取引)
協会員は、従業員が上場会社等の株式などを売買する場合について、従業員の範囲、売買の手続(他の協会員への発注を含む)、インサイダー取引、職務上知り得た特別の情報に基づく取引、専ら投機的利益の追求を目的とした取引などの禁止を社内規則で定め、定期的に検査しなければなりません。法人関係部門の従業員は、原則として自分が担当する上場会社等の株式などを売買しないよう定めます。
外務員の資格・登録・資格更新研修
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録の手続 | 協会員が日本証券業協会に申請(個人では申請できない) |
| 一種外務員 | 信用取引・デリバティブ取引を含むすべての有価証券に係る外務員の職務 |
| 二種外務員 | 現物株式などの職務。信用取引・デリバティブ取引などリスクの高い商品は不可 |
| 特別会員一種・二種・四種 | 登録金融機関の外務員資格。証券会社の外務員資格としては有効ではない |
| 資格更新研修 | 新規登録から180日以内、その後は登録の日から5年ごとに修了 |
| 未修了の場合 | 外務員資格が停止され、または取り消される |
二種外務員は信用取引・デリバティブ取引を扱えませんが、これは資格で扱える業務の話です。二種の試験でも、信用取引・デリバティブの基礎的な知識は株式業務・債券業務などの中で出題されます。
外務員登録の法律上の仕組み(金融商品取引法第64条以下)は金融商品取引法①業者規制と外務員制度もあわせて確認してください。
試験に出るひっかけ(○×問題)
問1. 顧客カードには、顧客の家族構成を必ず記載しなければならない。
答え:× 家族構成は列挙されていません。記載事項は氏名・住所・生年月日・職業・投資目的・資産の状況・投資経験の有無・取引の種類・その他の9項目です。
問2. 協会規則は、高齢顧客を一律に75歳以上の顧客と定義している。
答え:× 定義は各協会員が社内規則で定めます。75歳以上・80歳以上はガイドラインの目安です。
問3. 上場会社等の役員を退任した顧客は、退任した時点で内部者登録カードの対象から外れる。
答え:× 役員でなくなった後1年以内の者も対象です。
問4. 有価証券関連デリバティブ取引のある顧客には、照合通知書を1年に2回以上交付して残高を報告しなければならない。
答え:○ 通常の顧客は1年に1回以上、デリバティブ取引のある顧客は1年に2回以上です(取引残高報告書を定期交付している場合の例外あり)。
問5. 協会員の従業員は、顧客との間で金銭の貸借を行うことができる。
答え:× 有価証券の取引等に関して顧客と金銭・有価証券の貸借を行うことは禁止です。
問6. 二級不都合行為者として取り扱われた者は、決定から3年間、協会員の従業員として採用されない。
答え:× 3年ではなく5年間です。一級不都合行為者は期間の定めなく採用できません。
問7. 外務員は新たに登録を受けたとき、1年以内に資格更新研修を修了しなければならない。
答え:× 新規登録から180日以内です。その後は5年ごとに修了します。
問8. 内部管理責任者は、営業単位ごとに任命・配置しなければならない。
答え:○ 営業責任者と内部管理責任者は営業単位ごと、内部管理統括責任者は協会員ごとに1名です。
この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。
外務員の次に取る資格
顧客カードの「投資目的」や「資産の状況」を聞き取っても、それを提案に生かすには資産配分やリスクの知識が要ります。顧客本位の提案力を伸ばしたい人に選ばれているのが、証券アナリスト(CMA)やCFA®です。
銀行・証券・保険・アセマネで働く人が外務員の次に何を学んでいるかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由
よくある質問
Q. 顧客カードの記載事項は何ですか?
A. 氏名又は名称、住所又は所在地及び連絡先、生年月日、職業、投資目的、資産の状況、投資経験の有無、取引の種類、その他各協会員が必要と認める事項の9項目です。
Q. 高齢顧客は何歳からですか?
A. 協会規則は各協会員が社内規則で定義するとしています。ガイドラインでは75歳以上を慎重な勧誘が必要な顧客、80歳以上をより慎重な勧誘が必要な顧客の目安としています。
Q. 内部者登録カードと顧客カードは別々に作る必要がありますか?
A. 顧客カードが内部者登録カードの記載事項を満たしていれば、兼ねることができます。
Q. 外務員資格更新研修を受けないとどうなりますか?
A. 期限までに修了しないと、外務員資格が停止され、または取り消されます。期限は新規登録から180日以内、その後は5年ごとです。
参考(2026年9月確認):日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」、「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則第5条の3の考え方(高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン)」、「協会員の従業員に関する規則」、「協会員の従業員における上場会社等の特定有価証券等に係る売買等に関する規則」、「協会員の内部管理責任者等に関する規則」、「事故の確認申請、調査及び確認等に関する規則」、「有価証券の寄託の受入れ等に関する規則」、「反社会的勢力との関係遮断に関する規則」、「協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則」、「日証協とは」、「外務員」、「外務員資格更新研修」。規則は改正されることがあるため、自主規制ウェブハンドブックで最新版をご確認ください。
