結論:この範囲は「市場を運営する機関」と「投資者を守る仕組み」の名前・根拠(免許・認可・指定)・数字を正確に覚えれば得点できます。
- 金融商品取引所の開設は内閣総理大臣の免許。株式会社形態なら資本金10億円以上
- 何人も取引所の議決権の20%以上(一定の場合15%以上)を保有できない
- 日本証券業協会は認可金融商品取引業協会、資産運用業協会などは認定金融商品取引業協会
- 投資者保護基金の補償は顧客1人あたり1,000万円まで。銀行など登録金融機関の顧客は対象外
一種・二種の出題範囲
一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第1巻
この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。
▶ この章の解説動画
動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。
外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。業者規制と外務員制度は金融商品取引法①総論・業者規制・外務員制度で扱っています。
注文から決済までの流れで機関を整理する
個々の機関を暗記する前に、投資家の株式の注文が決済されるまでの流れに当てはめると、それぞれの役割がつながります。
- 投資家が証券会社(外務員)に注文を出す
- 証券会社(取引所の取引参加者)が取引所に注文を発注する。信用取引の資金・株券が足りなければ証券金融会社から借りる
- 金融商品取引所で売買が成立する。取引所(自主規制法人)は不自然な取引がないかを売買審査する
- 清算機関(日本証券クリアリング機構)が売り手・買い手の債務を引き受け、決済を保証する
- 株式の受渡しは証券保管振替機構(ほふり)の口座の振替で行われる(社債・株式等の振替に関する法律に基づく振替機関)
- 証券会社は顧客の資産を分別管理し、それでも返還できない場合に投資者保護基金が補償する
このように、取引所が「売買の場」、清算機関が「決済の保証」、証券金融会社が「信用取引の資金・株券の供給」、協会と取引所が「自主規制」、投資者保護基金が「最後の補償」と役割分担しています。
取引の場の種類
| 取引の場 | 開設・運営者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 取引所金融商品市場 | 金融商品取引所(東証・大阪取引所など) | 内閣総理大臣の免許 |
| 私設取引システム(PTS) | 第一種金融商品取引業者 | 内閣総理大臣の認可(業務の一つとして運営) |
| 店頭売買有価証券市場 | 認可金融商品取引業協会 | 金商法上、認可協会が開設できる |
| 店頭取引(相対取引) | 証券会社と顧客の間 | 債券の売買の多くは店頭取引で行われる |
PTSは取引所ではなく証券会社が運営する電子的な取引の場である点が要注意です。取引所の開設には免許が必要ですが、PTSの運営は第一種金融商品取引業者が認可を受けて行う業務です。
金融商品取引所
金融商品取引所は、有価証券の売買や市場デリバティブ取引を行うための市場(取引所金融商品市場)を開設する者です。東京証券取引所や大阪取引所がその代表です。取引所の開設には内閣総理大臣の免許が必要です(第80条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開設の根拠 | 内閣総理大臣の免許(登録・認可ではない) |
| 組織形態 | 株式会社または会員制法人(金融商品会員制法人)。現在の主要な取引所は株式会社 |
| 最低資本金 | 株式会社金融商品取引所は10億円以上(施行令第19条) |
| 議決権の保有制限 | 何人も、株式会社金融商品取引所の総株主の議決権の20%以上(財務・営業方針に重要な影響を与えることが推測される事実がある場合は15%以上)を取得・保有してはならない(第103条の2) |
| 保有制限の例外 | 認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所などは制限の対象外。地方公共団体なども認可を受ければ保有できる |
| 取引できる者 | 取引所の市場で売買できるのは会員または取引参加者(証券会社など)に限られる。投資家は会員・取引参加者に注文を出す |
議決権の保有制限は、特定の株主が取引所を支配して市場運営の公正性がゆがむことを防ぐためのものです。「50%」「3分の1」などと数字を入れ替えたひっかけに注意してください。
取引所の自主規制業務と自主規制法人
取引所は市場を開設するだけでなく、市場の公正を守る自主規制業務を行わなければなりません。主な自主規制業務は次のとおりです。
- 上場審査・上場管理:有価証券の上場・上場廃止に関する審査、適時開示の管理
- 売買審査:インサイダー取引や相場操縦の疑いがある取引の調査
- 考査:会員・取引参加者が法令や取引所の規則を守っているかの調査
株式会社の取引所は、営利企業としての利益と自主規制の中立性がぶつかる(利益相反)おそれがあります。そこで、自主規制業務を別法人に委託する自主規制法人の制度が設けられています。日本取引所グループでは日本取引所自主規制法人が東京証券取引所・大阪取引所などの自主規制業務を担っています。
取引所持株会社
取引所を子会社とする持株会社は、内閣総理大臣の認可を受けて金融商品取引所持株会社になります。日本取引所グループ(JPX)がその例で、傘下に東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所、日本取引所自主規制法人、日本証券クリアリング機構などがあります。
上場と取引所の規則
取引所は定款・業務規程・受託契約準則などの規則を定めます。有価証券を上場するときは、取引所が内閣総理大臣に届け出ます。上場審査基準や売買立会のルール、受託契約準則の具体的な中身は、取引所定款・諸規則①取引参加者・上場制度・売買立会で扱います。
市場を支えるその他の機関
取引所以外にも、市場インフラを担う機関が金商法で定められています。免許・指定の区別と何をする機関かを対応させて覚えるのがコツです。
| 機関 | 根拠 | 役割 | 例 |
|---|---|---|---|
| 金融商品取引清算機関 | 内閣総理大臣の免許(金融商品債務引受業) | 取引の当事者から債務を引き受け、決済を保証する(清算)。取引相手の信用リスクを遮断する | 日本証券クリアリング機構(JSCC)など |
| 証券金融会社 | 内閣総理大臣の免許 | 取引所の会員等に対し、信用取引の決済に必要な金銭・有価証券を貸し付ける(貸借取引) | 日本証券金融 |
| 取引情報蓄積機関 | 内閣総理大臣の指定 | 店頭デリバティブ取引などの取引情報を収集・保存し、当局に報告する | — |
| 特定金融指標算出者 | 内閣総理大臣の指定 | 多数の金融取引で参照される重要な金融指標(特定金融指標)を算出する。業務規程を定め、公正な算出を行う | TIBORの算出者 |
清算機関は、取引所で成立した売買の決済を一手に引き受けることで、ある証券会社が決済できなくなっても他の取引参加者に損失が広がらないようにしています。証券金融会社は、証券会社が顧客の制度信用取引に必要な資金や株券を用意できないときに貸し付ける役割で、信用取引の仕組みを理解するうえでも重要です。
特定金融指標については、業者がその算出者に対して正当な根拠のない算出基礎情報を提供することが第38条で禁止されています。LIBOR不正事件をきっかけに設けられたルールです。
自主規制機関:金融商品取引業協会
自主規制機関とは、業界が自ら規則をつくり、会員に守らせる団体です。金商法上の金融商品取引業協会には2種類あります。
| 区分 | 認可金融商品取引業協会 | 認定金融商品取引業協会 |
|---|---|---|
| 根拠 | 内閣総理大臣の認可(第67条の2) | 内閣総理大臣の認定(一般社団法人が対象) |
| 代表例 | 日本証券業協会 | 資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会と日本投資顧問業協会が合併)など |
| 特徴 | 店頭売買有価証券市場を開設できる。外務員の登録事務を委任される | 業態ごとに自主規制を行う |
日本証券業協会の主な業務
- 自主規制規則の制定:投資勧誘、顧客管理、広告、外務員の資格など、協会員が守るべき規則をつくる
- 協会員の監査・処分:規則を守っているかを調査し、違反があれば過怠金などの処分を行う
- 外務員の登録事務:金商法第64条の7により、内閣総理大臣から委任されて行う
- 外務員資格試験・資格更新研修の実施
- 統計・調査、投資者教育:証券市場に関する統計の公表や、金融経済教育の推進
- 苦情の解決・あっせん:投資者からの苦情の相談・紛争のあっせん(実務は証券・金融商品あっせん相談センターに委託)
日本証券業協会の会員は証券会社(協会員のうち「会員」)で、登録金融機関である銀行などは「特別会員」として加入します。協会の規則の中身は協会定款・諸規則①で扱います。
金融ADR(裁判外紛争解決)制度
顧客と業者のトラブルを、裁判よりも簡易・迅速・低コストで解決するのが金融ADR制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指定紛争解決機関 | 内閣総理大臣の指定を受けた紛争解決機関。証券分野では証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC) |
| 業者の義務 | 指定紛争解決機関がある業務については、その機関と手続実施基本契約を締結しなければならない。指定機関がない業務では、自ら苦情処理措置・紛争解決措置を講じる |
| 手続の特徴 | 業者は、手続への応諾、資料の提出、特別調停案の受諾などの義務を負う(顧客側は受け入れを強制されない) |
| 顧客への周知 | 契約締結前の情報提供などで、利用できる指定紛争解決機関の名称を伝える |
ポイントは、業者には応じる義務があるが、顧客は結果に拘束されず裁判も選べるという片面的な仕組みであることです。
投資者保護基金
証券会社には分別管理が義務づけられているため、本来は破綻しても顧客資産は返ってきます。しかし分別管理に違反していた場合など、顧客資産を円滑に返還できないこともあり得ます。そのときに顧客を補償する最後のセーフティネットが投資者保護基金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入義務 | 有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者(証券会社)は、いずれかの基金に加入しなければならない。現在は日本投資者保護基金の1つ |
| 補償限度額 | 顧客1人あたり1,000万円(施行令第18条の12) |
| 補償の対象者 | 一般顧客。適格機関投資家、国、地方公共団体その他政令で定める者は対象外 |
| 補償の対象資産 | 証券会社が一般顧客から有価証券関連業などに関して預かった金銭・有価証券(顧客資産)。株式、債券、投資信託、信用取引・先物オプション取引の保証金など |
| 対象外の例 | 銀行など登録金融機関で購入した投資信託など(登録金融機関は基金の会員ではない)。有価証券関連業に当たらない店頭通貨デリバティブ(FX)の証拠金など |
| 補償の流れ | 基金が、証券会社の破綻などにより顧客資産の返還が困難であると認定し、請求に基づいて補償金を支払う |
具体的に考えてみましょう。証券会社が破綻し、分別管理の不備により顧客Aさんの預り資産のうち1,500万円が返還できなかったとします。基金の補償は1人1,000万円が上限なので、補償されるのは1,000万円で、残り500万円は破産手続などで回収を待つことになります。一方、返還できない額が300万円なら、300万円全額が補償の対象です。
基金はこのほか、破綻した証券会社への返還資金融資や、顧客資産の返還のための一般顧客の代理(一般顧客のための裁判上・裁判外の行為)などの業務も行います。
預金保険・保険契約者保護との違い
| 制度 | 守る対象 | 上限の目安 |
|---|---|---|
| 投資者保護基金 | 証券会社に預けた有価証券・金銭(分別管理の不備を補う) | 1人1,000万円 |
| 預金保険制度 | 銀行などの預金 | 一般預金は元本1,000万円とその利息等(決済用預金は全額) |
同じ「1,000万円」でも仕組みはまったく違います。投資者保護基金は値下がりによる損失を補償するものではありません。あくまで預けた資産が返ってこない場合の補償です。銀行窓口で買った投資信託は、そもそも受益者の財産として信託銀行で分別管理されているため、基金の対象外でも直ちに失われるわけではありません。
試験に出るひっかけ(○×問題)
問1. 金融商品取引所を開設するには、内閣総理大臣の登録を受ければよい。
答え:× 取引所の開設は内閣総理大臣の「免許」です。
問2. 株式会社金融商品取引所の資本金の額は、1億円以上でなければならない。
答え:× 最低資本金は10億円です。
問3. 何人も、原則として株式会社金融商品取引所の総株主の議決権の20%以上を取得し、または保有してはならない。
答え:○ 財務・営業方針に重要な影響を与えることが推測される事実がある場合は15%以上が制限されます。
問4. 証券金融会社は、証券会社に対して信用取引の決済に必要な金銭・有価証券を貸し付ける業務を行い、その営業には内閣総理大臣の免許が必要である。
答え:○ 貸借取引を担う機関で、免許制です。
問5. 日本証券業協会は、内閣総理大臣の認定を受けた認定金融商品取引業協会である。
答え:× 日本証券業協会は「認可」金融商品取引業協会です。資産運用業協会(旧投資信託協会)などが認定協会です。
問6. 投資者保護基金は、顧客が証券会社で購入した株式の値下がりによる損失を1,000万円まで補償する。
答え:× 補償するのは、証券会社の破綻などで預けた資産の返還が困難になった場合です。値下がり損は対象外です。
問7. 銀行で購入した投資信託も、投資者保護基金による補償の対象となる。
答え:× 登録金融機関は投資者保護基金の会員ではないため、対象外です。
この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。
外務員の次に取る資格
取引所・清算機関・自主規制機関といった市場インフラの役割を知ると、「市場はどう機能し、価格はどう形成されるのか」という一段深い問いに進みたくなるはずです。市場の仕組みと投資理論をあわせて学べるのが、証券アナリスト(CMA)やCFA®です。
金融機関で働く人が外務員の次に何を学んでいるかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由
よくある質問
Q. 「免許」「認可」「認定」「指定」「登録」の区別はどう覚えればよいですか?
A. 金商法の範囲では、金融商品取引所・清算機関・証券金融会社が「免許」、日本証券業協会と取引所持株会社が「認可」、資産運用業協会などが「認定」、指定紛争解決機関・取引情報蓄積機関・特定金融指標算出者が「指定」、金融商品取引業者・登録金融機関・金融商品仲介業者が「登録」と、機関ごとにセットで覚えるのが確実です。
Q. 投資者保護基金の補償限度額はいくらですか?
A. 顧客1人あたり1,000万円です。対象は一般顧客で、適格機関投資家・国・地方公共団体などは対象外です。
Q. 銀行の窓口で買った投資信託は投資者保護基金で守られますか?
A. 登録金融機関である銀行は投資者保護基金の会員ではないため、基金の補償対象にはなりません。ただし投資信託の財産は信託銀行で分別管理されています。
Q. 金融ADRを利用すると、顧客は必ず結果に従わなければなりませんか?
A. いいえ。業者は手続に応じる義務や特別調停案を受諾する義務を負いますが、顧客は結果に拘束されず、裁判を選ぶこともできます。
参考(2026年9月確認):e-Gov法令検索「金融商品取引法」(第67条の2・第79条の20・第80条・第83条の2・第103条の2・第156条の24・第156条の85ほか)、「金融商品取引法施行令」第18条の12・第19条、日本取引所グループ・日本証券業協会・預金保険機構の公表資料。制度は改正されることがあるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
