商品業務

株式業務①売買の形態・注文の受託・取引所売買|外務員試験の要点

株式業務① 売買と注文の受託

結論:株式業務①は「誰の計算で・どう売買するか(売買の形態)」「注文を受けるときの注意」「取引所の売買ルール」の3点です。

  • 証券会社の売買の形態は自己売買(ディーラー)・委託売買(ブローカー)・代理・媒介。顧客注文の大半は委託(取次ぎ)
  • 委託手数料は1999年10月に完全自由化。上場株の注文は最良執行方針に従って執行する
  • 普通取引の受渡しは売買成立日から起算して3日目(T+2)
  • 株式累積投資(るいとう)は1銘柄月1万円以上200万円未満(2025年1月から上限引上げ)、株式ミニ投資は売買単位の10分の1の整数倍
  • 新規公開の公開価格はブックビルディング方式競争入札による方式で決める

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第2巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

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株式取引の種類

株式の取引は、「どこで売買するか」と「どうやって資金・株を用意するか」の2つの軸で分けると整理しやすくなります。

分け方 種類 ポイント
売買の場 取引所取引/取引所外取引(店頭取引・PTS) 上場株は取引所取引が中心。取引所外でもPTSや店頭で売買できる
資金・株の手当て 現物取引/信用取引 現物は自分の資金・株で売買。信用取引は証券会社から資金や株を借りて売買
決済の時期 普通取引/当日決済取引/発行日決済取引 普通取引はT+2。当日決済取引はクロス取引のみ

信用取引の仕組みは株式業務②信用取引・外国株式の取引で扱います。

売買の形態:自己・委託・代理・媒介

証券会社が株式の売買に関わる形は4つです。ポイントは「誰の名義で」「誰の計算(損益)で」売買するかです。

形態 名義 計算(損益の帰属)
自己売買(ディーリング) 証券会社 証券会社 証券会社が自分の資金で株を売買する
委託売買(ブローカレッジ、取次ぎ) 証券会社 顧客 顧客の注文を取引所に出して執行する。手数料を受け取る
代理 顧客 顧客 顧客の代理人として相手方と売買契約を結ぶ
媒介 当事者 当事者 売り手と買い手を引き合わせ、契約の成立に尽力する(契約当事者にはならない)

取引所での顧客注文は委託売買(取次ぎ)です。「自己の名義で、他人の計算で」売買するのが取次ぎで、ここが代理(他人の名義)との違いです。自己売買の注文と顧客の委託注文が同時にあるときは、顧客の注文を優先させなければなりません(自己の売買を優先させる行為は禁止)。

株式取引の流れ

外務員が新規の顧客から株式の注文を受けて受渡しを終えるまでを、順番に並べると次のとおりです。どの段階で何を確認するかが、そのまま試験の論点になります。

  1. 口座開設:取引時確認(本人特定事項などの確認)を行い、顧客カードに投資目的・資産・投資経験などを記録する
  2. 勧誘:適合性の原則に照らして、顧客に合った商品・取引を勧める。断定的判断の提供や損失保証はしない
  3. 注文の受付:銘柄・売買の別・数量・値段・有効期間・現物か信用かを確認し、注文内容を記録する
  4. 執行:最良執行方針に従って、取引所やPTSで執行する。自社の売買より顧客注文を優先する
  5. 約定の通知:売買が成立したら、取引報告書(契約締結時交付書面)を交付する
  6. 受渡し:売買成立日から起算して3日目に、代金と株式を受け渡す

売買の受託:注文を受けるときの注意事項

口座開設と顧客の確認

取引を始める前に、証券会社は顧客の口座を開設し、取引時確認(本人特定事項の確認など)を行います。また、顧客の投資目的・資産・経験などを顧客カードに記録し、適合性の原則にかなった勧誘をします。

注文を受けるときの確認事項

注文を受ける際は、次の事項を顧客にはっきり確認します。

  • 銘柄売り・買いの別、数量
  • 値段(指値か成行か)と注文の有効期間
  • 現物取引か信用取引か(信用なら制度信用か一般信用か)
  • 執行する市場(取引所・PTSなど)
禁止・注意されること 内容
無断売買 顧客の注文がないのに、顧客の計算で売買する
断定的判断の提供 「必ず値上がりします」など、不確実なことを確実であると誤解させて勧誘する
損失補塡等 損失の保証や補塡を約束・実行する
作為的相場形成につながる受託 相場操縦など、不公正な価格形成につながる注文と知りながら受ける
自己の売買の優先 顧客注文より先に自社の注文を執行する

注文の執行と最良執行方針

金融商品取引法は、証券会社に最良執行方針を定めて公表し、それに従って顧客注文を執行することを義務づけています。上場株式は取引所だけでなくPTSでも売買できるため、「価格・コスト・スピード・執行の確実性」などを考えて、顧客にとって最良の条件で執行する方法をあらかじめ示しておく仕組みです。上場株式などの注文を受けるときは、あらかじめ最良執行方針を記載した書面を顧客に交付します。

指値注文と成行注文の使い分け

顧客に注文方法を説明するときは、メリットとデメリットをセットで伝えます。

注文 メリット 注意点
成行注文 指値より優先されるので約定しやすい 値段を指定しないため、想定外の値段で約定することがある
指値注文 買いは指定した値段以下、売りは指定した値段以上でしか約定しない 値段が合わなければ約定しない

指値の買い注文は「その値段以下なら買う」、売り注文は「その値段以上なら売る」という意味です。1,000円の指値買いは、990円でも約定します。

例題(受渡日):ある週の木曜日に普通取引で株式を買い付けた。土日は休業日で、翌週月曜日は祝日。受渡日はいつか。

① 売買成立日の木曜日を1日目と数える

② 金曜日が2日目。土・日・月(祝日)は休業日なので数えない

③ 翌週火曜日が3日目

答え:翌週の火曜日(「翌日から数える」と勘違いすると水曜日と誤答する)

決済と委託手数料

普通取引の受渡しは売買成立日から起算して3日目(T+2)です。顧客は受渡日までに、買いなら代金、売りなら株式を証券会社に渡します。証券会社は売買が成立したら、取引報告書(契約締結時交付書面)を顧客に交付します。

委託手数料は、かつては取引所が定める固定制でしたが、1999年10月1日に完全自由化されました。現在は各証券会社が自由に決め、手数料には消費税(10%)がかかります。受渡金額の計算は株式業務③証券投資計算(PER・PBR・ROE・受渡金額)で練習できます。

項目 ポイント
受渡日 売買成立日から起算して3日目(T+2)
委託手数料 1999年10月1日に完全自由化。各社が自由に設定
消費税 委託手数料に10%
買付けの受渡金額 約定代金+委託手数料+消費税
売付けの受渡金額 約定代金−(委託手数料+消費税)

取引所売買のしくみ

取引所の売買は、価格優先・時間優先の競争売買です。売りは安い注文、買いは高い注文が優先し、同じ値段なら先に出た注文が優先します。成行注文は指値注文より優先します。寄付きと引けは板寄せ、その間はザラバで約定します。

項目 内容
売買立会 前場9:00〜11:30、後場12:30〜15:30(2024年11月5日から延長)
売買単位 内国株は100株に統一(2018年10月1日)
値幅の制限 前日終値などを基準に制限値幅を設定(ストップ高・ストップ安)
注文の種類 成行・指値。寄付条件付、引け条件付、不成、IOCなどの執行条件

制限値幅の表や板寄せの計算例は取引所定款・諸規則①取引参加者・上場制度・売買立会にまとめています。

発行日取引(発行日決済取引)

株主割当による増資では、新株が実際に発行される前から、その新株を売買できるようにしています。これが発行日決済取引です。売買期間は権利落日から、新株の効力発生(記録)日の2営業日前までで、期間中にいつ約定しても、決済は売買期間終了後の同じ日に一律に行われます。顧客は約定価額の30%以上の委託保証金を差し入れます。

立会外売買(ToSTNeT)

大口の注文を立会市場に出すと、株価が大きく動いてしまいます。そこで東証は、立会時間外に大口取引などを行うToSTNeTを設けています。

取引 内容
ToSTNeT-1 単一銘柄取引・バスケット取引。8:20〜18:00。単一銘柄取引は原則として直近の値段の±7%以内
ToSTNeT-2 終値取引(前日終値・当日終値など決まった値段で売買)
ToSTNeT-3 自己株式立会外買付取引。上場会社が前日終値で自己株式を買い付ける(8:45に執行)

ToSTNeTは取引所の市場の一部ですが、立会(板)とは別の場です。立会市場の注文とは突き合わせないため、「ToSTNeTの約定も価格優先・時間優先で立会の注文と競合する」とあれば×です。機関投資家の大口取引や、上場会社の自己株式取得でよく使われます。

店頭取引・取引所外売買・PTS

店頭取引

取引所を通さず、証券会社と顧客が相対で売買するのが店頭取引です。非上場の株式(店頭有価証券)について、日本証券業協会の規則は、協会員が店頭有価証券の投資勧誘を行うことを原則として禁止しています。例外として、株主コミュニティ制度や株式投資型クラウドファンディングなどの枠組みがあります。協会規則の詳細は協会定款・諸規則②広告・株式・債券・外国証券で扱います。

取引所外売買とPTS

上場株式を取引所の外で売買することを取引所外売買といいます。代表的な場がPTS(私設取引システム)で、証券会社が電子的な売買の場を運営するものです。PTSの運営は第一種金融商品取引業のうち内閣総理大臣の認可を必要とする業務です。取引所の立会時間外(夜間など)に売買できるPTSもあります。

項目 取引所取引 PTS
運営者 金融商品取引所(免許) 証券会社(認可)
対象 上場有価証券 上場株式など
執行先の選び方 最良執行方針に従う 最良執行方針に従う

株式累積投資(るいとう)と株式ミニ投資

少額から株式に投資できる仕組みが2つあります。定期的に一定額を買うのが株式累積投資、好きなタイミングで単元の一部を売買するのが株式ミニ投資です。

項目 株式累積投資(るいとう) 株式ミニ投資
買い方 毎月一定額を継続して買い付ける 投資者がタイミングを選んで売買
金額・単位 1銘柄あたり月1万円以上200万円未満 売買単位の10分の1の整数倍で、10分の9以下
特徴 ドル・コスト平均法の効果。株式は証券会社がまとめて管理 証券会社が小口注文をまとめて市場で執行

るいとうの上限は、日本証券業協会の規則改正で2025年1月1日から「100万円未満」→「200万円未満」に引き上げられました。古い教材の「100万円未満」は現在は誤りです。

単元未満株の買取請求・買増請求

るいとうやミニ投資、株式分割などで生じた単元未満株は、取引所では売買できません。株主は会社に対して買取請求ができ、定款に定めがあれば買増請求(単元にするために不足分を会社から買う)もできます。

上場と公開価格の決め方

株式を新たに取引所に上場する(新規公開、IPO)ときは、引受証券会社が公開価格を決めて投資者に販売します。決め方は2つです。

方式 流れ
ブックビルディング方式 機関投資家などの意見をもとに仮条件(価格の幅)を決め、投資者の需要を積み上げて(需要調査)、市場の動向などを踏まえ公開価格を決める。現在の主流
競争入札による方式 投資者の入札結果をもとに公開価格を決める

上場日の最初の値段(初値)は、公開価格とは別に取引所の板寄せで決まります。市場区分ごとの上場基準は、前出の取引所定款・諸規則①の記事で確認できます。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 委託売買(取次ぎ)とは、証券会社が顧客の名義で、顧客の計算により売買を行うことをいう。

答え:× 取次ぎは「自己(証券会社)の名義」で「顧客の計算」です。顧客の名義で行うのは代理です。

問2. 媒介では、証券会社が売買契約の当事者となる。

答え:× 媒介は他人間の契約成立に尽力するだけで、証券会社は当事者になりません。

問3. 株式の委託手数料は、現在は取引所が定める料率による。

答え:× 1999年10月に完全自由化され、各社が自由に定めます。

問4. 株式累積投資の1銘柄当たりの払込金額は、月1万円以上100万円未満である。

答え:× 2025年1月1日から「1万円以上200万円未満」に改正されています。

問5. 株式ミニ投資では、売買単位の10分の1の整数倍で、10分の9以下の株式を売買する。

答え:○ 単元に達しない単位での売買です。

問6. 発行日決済取引では、約定した日から起算して3日目にそれぞれ決済を行う。

答え:× 約定日に関係なく、売買期間終了後の同じ日に一律で決済します。

問7. PTS(私設取引システム)の運営には、内閣総理大臣の認可が必要である。

答え:○ 取引所の開設は「免許」、PTSの運営は「認可」です。

問8. 1,000円の指値買い注文は、株価が990円のときには約定しない。

答え:× 指値の買いは「指定した値段以下なら買う」注文なので、990円でも約定します。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

注文の受け方や売買ルールを覚えたら、次は「なぜこの銘柄を勧めるのか」を自分の言葉で説明できるかが問われます。企業分析や株式の評価を体系的に学ぶ資格として、証券アナリスト(CMA)CFA®があります。

銀行・証券・保険・アセマネで働く人がCFA®試験に挑む理由は、こちらで整理しています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 委託売買と代理の違いは何ですか?

A. 委託売買(取次ぎ)は、証券会社が自己の名義で顧客の計算により売買することです。代理は、証券会社が顧客の名義で、顧客の計算により売買することです。名義が誰かで区別します。

Q. 株式累積投資(るいとう)はいくらから、いくらまで投資できますか?

A. 1銘柄あたり月1万円以上200万円未満です。日本証券業協会の規則改正により、2025年1月1日から上限が100万円未満から200万円未満に引き上げられました。

Q. 株式ミニ投資と単元未満株の取引はどう違いますか?

A. 株式ミニ投資は、売買単位の10分の1の整数倍で10分の9以下の株式を、証券会社がまとめて市場で執行する制度です。取引所では単元未満株を直接売買できないため、こうした仕組みを使います。

Q. 新規公開株の公開価格はどうやって決まりますか?

A. ブックビルディング方式か競争入札による方式で決まります。現在の主流はブックビルディング方式で、仮条件を示して投資者の需要を積み上げたうえで公開価格を決めます。

参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「内国株の売買制度(売買立会時、売買の種類、売買単位、売買成立の方法)」「ToSTNeT取引 取引の概要」、用語集「株式ミニ投資」、日本証券業協会「株式累積投資」(自主規制関連用語)、「『株式累積投資及び株式ミニ投資の取扱いに関する規則』等の一部改正について」(2024年10月15日)、e-Gov法令検索「金融商品取引法」(最良執行方針等)「会社法」(単元未満株式の買取請求・売渡請求)。制度は改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。