Learning Module 6「Statistical Distributions for Financial Asset Prices and Returns(金融資産の価格・リターンの統計的分布)」は、確率変数と期待値・分散・共分散、金融で使う主要な確率分布、条件付き期待値、そしてベイズの定理による確率の更新を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM6のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には4つのLOSがあります。

  1. LOS 1:平均・分散・共分散の無条件の期待値を計算・解釈・評価するcalculate, interpret, and evaluate unconditional expected values for mean, variance, and covariance
  2. LOS 2:金融で使われる主要な確率分布の主なモーメントを計算・解釈・評価するcalculate, interpret, and evaluate the principal moments of key statistical distributions used in finance
  3. LOS 3:条件付き期待値・分散・共分散を計算・解釈・評価するcalculate, interpret, and evaluate conditional expectations, variances, and covariances
  4. LOS 4:ベイズ更新によって投資の問題を定式化するformulate investment problems through Bayesian updating

LM6のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 確率変数は偶然の結果を数値で表したもので、離散型と連続型がある
  • 離散型は確率質量関数(PMF)で各値の確率を、連続型は確率密度関数(PDF)で表す。累積分布関数(CDF)は、ある値以下になる確率を表す
  • 期待値は、結果をPMFやPDFで重み付けした平均。分布のモーメントは確率変数の無条件の期待値として表される
  • 同時分布は2つの確率変数の組み合わせの確率を、周辺分布は1つの変数だけの分布を、条件付き分布は他の変数の値を条件とした分布を表す
  • 条件付き期待値は、ある条件の下での期待値。確率ツリーでさまざまな結果の起こりやすさを整理できる
  • ベイズの定理は、新しい情報を得たときに確率を更新する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:無条件の期待値・分散・共分散を計算・解釈・評価する

期待値は「各結果 × その確率」の合計、分散は「期待値からのずれの2乗 × 確率」の合計です。2つの資産の共分散も同じく確率で重み付けして求めます。試行回数を増やすほど標本平均が期待値に近づく、というのが大数の法則です。

  • E(X) = Σ P(xᵢ) xᵢ
  • σ² = Σ P(xᵢ)[xᵢ − E(X)]²
  • Cov(X,Y) = Σ P(xᵢ,yᵢ)[xᵢ − E(X)][yᵢ − E(Y)]
  • 確率の合計が1になっているかを必ず確認
E(X) = Σ P(xᵢ) xᵢ

LOS 2:金融で使う主要な確率分布の特徴(モーメント)を理解する

離散型では、結果が等確率の離散一様分布、上がるか下がるかの2択を繰り返す二項分布(株価の二項モデル)、まれな事象の発生回数を表すポアソン分布(デフォルトやニュースの件数)。連続型では、連続一様分布、正規分布、マイナスにならない価格を表す対数正規分布、正規分布より裾が厚いロジスティック分布を使い分けます。

  • 二項分布:平均 np、分散 np(1 − p)
  • ポアソン分布:平均=分散=λ。λが大きくなるほど歪度は小さくなる
  • 正規分布:平均±1σに約68%、±2σに約95%
  • 対数正規分布:下限0で右に歪む → 株価のモデルに使う
  • ロジスティック分布:正規分布に似るが裾が厚い。尺度パラメータが大きいほど裾が広がる

LOS 3:条件付き期待値・分散・共分散を計算・解釈・評価する

「景気が良ければ」「金融政策が利下げなら」のように条件(シナリオ)を付けた期待値が条件付き期待値です。各シナリオの条件付き期待値をシナリオの確率で重み付けして合計すると、全体(無条件)の期待値になります。

  • E(X) = E(X|S)P(S) + E(X|Sᶜ)P(Sᶜ)(全期待値の法則)
  • 同時分布から、周辺分布や条件付き分布を導く
  • 金融政策の決定別の株式市場の反応などのシナリオ分析に使う

LOS 4:ベイズ更新で投資の問題を組み立てる

新しい情報(シグナル)を得たら、事前の確率を事後の確率に更新します。分母の「その情報が出る確率」は、すべてのシナリオの枝の確率を合計して求めます。

  • P(事象|情報) = P(情報|事象) × P(事象) ÷ P(情報)
  • 分母 P(情報) は「事象あり」「事象なし」両方の枝の合計
  • CEOの解任や決算予想の修正など、情報を得た後の確率の見直しに使う
P(A|B) = P(B|A) P(A) / P(B)

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