Learning Module 2「Overview of Fixed-Income Portfolio Management(債券ポートフォリオ運用の概要)」は、ポートフォリオにおける債券の役割とマンデートの分類、債券ポートフォリオのリスク・リターン指標、市場流動性、期待リターンのモデル、レバレッジ、課税の有無による運用の違い、負債主導型投資(LDI)、キャッシュフロー・マッチング、ラダー型ポートフォリオを扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM2のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には9つのLOSがあります。

  1. LOS 1:ポートフォリオにおける債券の役割と、債券マンデートの分類方法を論じるdiscuss roles of fixed-income securities in portfolios and how fixed-income mandates may be classified
  2. LOS 2:債券ポートフォリオのリスク・リターン指標と相関特性を説明するdescribe fixed-income portfolio measures of risk and return as well as correlation characteristics
  3. LOS 3:市場のサブセクター間の違いを含む債券市場の流動性を説明し、流動性が債券ポートフォリオ運用に与える影響を論じるdescribe bond market liquidity, including the differences among market sub-sectors, and discuss the effect of liquidity on fixed-income portfolio management
  4. LOS 4:債券リターンのモデルを説明・解釈するdescribe and interpret a model for fixed-income returns
  5. LOS 5:債券ポートフォリオにおけるレバレッジの利用、レバレッジの代替手段、レバレッジが生むリスクを論じるdiscuss the use of leverage, alternative methods for leveraging, and risks that leverage creates in fixed-income portfolios
  6. LOS 6:課税投資家と非課税投資家の債券ポートフォリオ運用の違いを論じるdiscuss differences in managing fixed-income portfolios for taxable and tax-exempt investors
  7. LOS 7:負債主導型投資(LDI)を説明するdescribe liability-driven investing
  8. LOS 8:キャッシュフロー・マッチング戦略を説明するdescribe the strategy of cash flow matching
  9. LOS 9:ラダー型債券ポートフォリオの構築方法、メリット、限界、リスク・リターン特性を説明するdescribe construction, benefits, limitations, and risk–return characteristics of a laddered bond portfolio

LM2のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 債券は株式など他の主要資産との相関が一般に低く、分散効果をもたらす。変動利付債やインフレ連動債はインフレ・リスクのヘッジに使える
  • 債券の定期的なキャッシュフローは将来の負債の支払いに適している
  • 負債ベースのマンデートはキャッシュフロー・マッチングとデュレーション・マッチングの2つが主な手法。トータル・リターン型マンデートはベンチマークへの追随または超過を目指す
  • トータル・リターン型は、目標とするアクティブ・リターンとアクティブ・リスクの水準により、純粋インデックス、エンハンスト・インデックス、アクティブ運用に分けられる
  • ポートフォリオのデュレーションは個別債券のデュレーションの時価加重平均で近似でき、コンベクシティは二次的な効果。キャッシュフローが金利に依存する債券では実効デュレーション・実効コンベクシティを用いる
  • スプレッド・デュレーションはクレジット・スプレッド変化への感応度。DTS(duration times spread)はスプレッドの変化が水準に比例しやすい性質を取り込んだ指標
  • 債券の期待リターンは、利回り収入、ロールダウン、利回り見通しに基づく価格変化、予想信用損失、予想為替損益に分解できる
  • レバレッジはリターンを拡大するが損失も拡大させる。課税投資家は税引後リターンを重視し、実現損益のタイミングを管理する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:債券の役割とマンデートの分類

債券は分散効果、定期的なキャッシュフローによる負債への備え、変動利付債・インフレ連動債によるインフレ・ヘッジの役割を担います。マンデートは負債ベースとトータル・リターン型に大別されます。

  • 分散:株式など他資産との相関が一般に低い
  • 負債ベース:キャッシュフロー・マッチング、デュレーション・マッチング
  • トータル・リターン型:純粋インデックス→エンハンスト・インデックス→アクティブの順にアクティブ・リスクが増える
  • ESGを考慮したマンデートもある

LOS 2:債券ポートフォリオのリスク・リターン指標と相関

ポートフォリオの金利感応度は修正デュレーションの時価加重平均で近似し、大きな金利変化にはコンベクシティを加えます。信用リスクにはスプレッド・デュレーションやDTSを用います。

  • マネー・デュレーション(BPVで表すことも多い)=金額ベースの感応度
  • 実効デュレーション・実効コンベクシティ:オプション付き債券など
  • スプレッド・デュレーション:スプレッド1%変化に対する価格変化率
  • DTS:スプレッド水準に比例した変化を反映
  • 債券と株式の相関は時期や市場環境により変わる
ポートフォリオ修正デュレーション ≈ Σ(MVⱼ / MV)× ModDurⱼ

LOS 3:債券市場の流動性

債券は多くが店頭(OTC)のディーラー市場で取引され、株式より流動性が低いのが一般的です。国債(特にオン・ザ・ラン)は流動性が高く、社債や小規模発行体の債券は低くなります。

  • 流動性:国債>投資適格社債>ハイイールド・新興国債など
  • 発行直後は取引が多く、時間の経過とともに流動性が低下
  • 流動性と利回りのトレードオフ(流動性の低い債券は利回りが高い)
  • 価格の透明性が低く、評価にマトリックス・プライシングを用いることも
  • 代替手段:先物、スワップ、債券ETFなどでエクスポージャーを確保

LOS 4:債券リターンのモデル

債券の期待リターンを構成要素に分解し、それぞれの見通しを積み上げます。ローリング・イールド(利回り収入+ロールダウン)に、利回り変化、信用損失、為替の影響を加減します。

  • 利回り収入:年間クーポン÷現在価格(再投資収益も含めて考える)
  • ロールダウン・リターン:利回り曲線が不変のまま満期が短くなることによる価格変化
  • 利回り見通しによる価格変化:−修正デュレーション×Δy+½×コンベクシティ×(Δy)²
  • 予想信用損失:デフォルト確率×損失率
  • 予想為替損益:外貨建て債券の場合
E(R) ≈ 利回り収入 + ロールダウン + E(利回り変化による価格変化) − E(信用損失) + E(為替損益)

LOS 5:債券ポートフォリオのレバレッジ

借入れで投資額を増やすと、投資リターンが借入コストを上回る限りリターンが高まりますが、損失も拡大します。レバレッジは先物、スワップ、仕組み商品、レポ、債券貸借などで実現できます。

  • レバレッジ後リターン:自己資本に対するリターン
  • 先物・スワップ:少ない資金で大きな想定元本のエクスポージャー
  • レポ取引:債券を担保に短期資金を調達
  • リスク:損失の拡大、追加担保・強制売却、資金調達(ロールオーバー)リスク
  • 市場ストレス時には調達コスト上昇や担保のヘアカット拡大
r_P = r_I + (V_B / V_E) × (r_I − r_B)

LOS 6:課税・非課税投資家の運用の違い

非課税投資家(年金基金など)は税を考慮する必要がありませんが、課税投資家は税引後リターンを最大化するよう、利息と譲渡益の税率差や損益の実現時期を管理します。

  • 利息収入と譲渡益で税率が異なることが多い
  • 損失の実現(タックス・ロス・ハーベスティング)で利益と相殺
  • 利益の実現を先送りして課税を繰り延べ
  • 保有期間による税率の違い
  • ファンドの売買が課税に及ぼす影響(回転率)

LOS 7:負債主導型投資(LDI)

LDIは、将来の負債の支払いを確実にすることを主目的に資産を運用する手法です。資産と負債の金利感応度を合わせ、積立状況の変動を抑えます。

  • 資産負債管理(ALM)の一形態
  • 負債の種類:金額・時期が確定しているものから、両方不確定のものまで
  • 主な手法:キャッシュフロー・マッチング、デュレーション・マッチング(イミュニゼーション)
  • 年金基金、保険会社などが利用

LOS 8:キャッシュフロー・マッチング

キャッシュフロー・マッチングは、債券のクーポンと償還金を負債の支払時期・金額に合わせる手法です。再投資リスクや金利リスクを大幅に抑えられますが、コストがかかり柔軟性に欠けます。

  • 満期の長い負債から順に債券を割り当てることが多い
  • 再投資リスクがほぼ残らない
  • 完全一致は難しく、残余の現金は低利回りで保有
  • デュレーション・マッチングより一般にコストが高い

LOS 9:ラダー型債券ポートフォリオ

ラダー型は、元本を複数の満期に均等に配分する構成です。毎期満期を迎える債券が流動性を供給し、再投資によって金利変動のリスクを分散できます。

  • 構築:短期から長期まで満期を均等に分散
  • メリット:利回り曲線全体への分散、定期的な流動性、再投資時期の分散
  • 同じデュレーションのバレット型よりコンベクシティが高い
  • 限界:特定の負債の時期に合わせる用途には不向き、個別債券の保有による分散の制約
  • 債券ETF(満期型)を使って構築することもできる

効率よく学ぶには FA-Academy

CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。

FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。