【CFA®︎ L3 PM Pathway LM4】Liability-Driven and Index-Based Strategies を要点解説|イミュニゼーション・LDI・デリバティブ・オーバーレイ・債券インデックス

Learning Module 4「Liability-Driven and Index-Based Strategies(負債主導型・インデックス型の債券戦略)」は、単一負債と複数負債に対するイミュニゼーションなどの負債対応戦略、金利シナリオに応じた戦略選択、負債構造に対してポートフォリオを運用する際のリスク、債券インデックスへの追随の難しさとパッシブなエクスポージャーの取り方、ベンチマークの選定を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM4のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM4には7つのLOSがあります。
- LOS 1:単一の負債を管理するための戦略を評価するevaluate strategies for managing a single liability
- LOS 2:単一負債と複数負債に対する戦略を、その代替的な実行手段を含めて比較するcompare strategies for a single liability and for multiple liabilities, including alternative means of implementation
- LOS 3:さまざまな金利シナリオの下で負債ベースの戦略を評価し、ポートフォリオの目的を達成する戦略を選択するevaluate liability-based strategies under various interest rate scenarios and select a strategy to achieve a portfolio’s objectives
- LOS 4:負債構造に対してポートフォリオを運用することに伴うリスクを説明するexplain risks associated with managing a portfolio against a liability structure
- LOS 5:債券インデックスと、債券ポートフォリオを債券インデックスの特性に合わせて運用することの難しさを論じるdiscuss bond indexes and the challenges of managing a fixed-income portfolio to mimic the characteristics of a bond index
- LOS 6:債券市場へのエクスポージャーをパッシブに確立する代替的な方法を比較するcompare alternative methods for establishing bond market exposure passively
- LOS 7:ベンチマーク選定の基準を論じ、ベンチマークの選定を正当化するdiscuss criteria for selecting a benchmark and justify the selection of a benchmark
LM4のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- イミュニゼーションは、既知の投資期間における実現収益率のばらつきを最小にするよう債券ポートフォリオを構築・管理するプロセス。単一負債では、ポートフォリオのマコーレー・デュレーションを投資期間に一致させ、時間経過や利回り変化に応じてリバランスする
- イミュニゼーションで確定させるのはキャッシュフロー利回り(キャッシュフローの内部収益率)であり、各債券の最終利回りの加重平均ではない。リスクは、イールドカーブの非平行シフトやツイストで利回りの変化が一致しなくなること
- 複数負債では、資産と負債の時価が異なるため、マネー・デュレーション(BPV)を一致させる。条件は、資産時価≧負債時価、資産BPV=負債BPV、資産のキャッシュフローの分散度とコンベクシティが負債より大きいこと
- 金利先物などのデリバティブ・オーバーレイでもイミュニゼーションができる。必要な先物枚数は、負債BPVと資産BPVの差を先物のBPVで割って求める
- コンティンジェント・イミュニゼーションは、資産と負債の差であるサープラスを積極運用し、負債返済コストの削減を狙う
- 確定給付型年金の負債は、ABO・PBOなどの測定方法やモデルの前提に依存する。資産の多くが株式でデュレーションが短いため、金利スワップのオーバーレイでデュレーション・ギャップを縮める。ヘッジ比率は、ギャップのうちデリバティブで埋める割合
- 受取固定スワップ、レシーバー・スワップションの購入、スワップション・カラーの選択は金利見通しに依存する。LDIには、モデル・リスクやスプレッド・リスクが伴う
- 債券インデックスに連動するファンドは分散と低い管理コストをもたらすが、インデックスとの差によるトラッキング・リスクが生じる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:単一負債の管理戦略
単一負債の代表的な戦略はイミュニゼーションで、ポートフォリオのマコーレー・デュレーションを負債の期日(投資期間)に一致させ、金利の変化によるクーポン再投資リスクと価格リスクを相殺します。ほかに、負債と同じ期日のゼロクーポン債やキャッシュフロー・マッチングでも対応できます。
- 条件:資産の現在価値≧負債の現在価値、マコーレー・デュレーション=投資期間
- 構造リスクを抑えるため、条件を満たす中でコンベクシティ(キャッシュフローの分散)を最小にする
- 確定させるのはキャッシュフロー利回りで、最終利回りの加重平均ではない
- 時間の経過と金利の変化でデュレーションがずれるため、定期的なリバランスが必要
- リバランスは債券の売買や、先物・金利スワップで実行
LOS 2:単一負債と複数負債の戦略、実行手段の比較
複数負債には、キャッシュフロー・マッチング、デュレーション・マッチング、デリバティブ・オーバーレイ、コンティンジェント・イミュニゼーションがあります。資産と負債の時価が異なるため、デュレーションではなくBPV(マネー・デュレーション)を一致させます。
- キャッシュフロー・マッチング:負債の各期日に債券の元利金を合わせる、再投資リスクが小さいがコストが高くなりやすい
- デュレーション・マッチングの条件:資産時価≧負債時価、資産BPV=負債BPV、資産のキャッシュフローの分散度・コンベクシティ>負債
- BPV=マネー・デュレーション×0.0001、マネー・デュレーション=修正デュレーション×時価
- デリバティブ・オーバーレイ:先物で資産と負債のBPVの差を埋める(正なら買い、負なら売り)
- 先物のBPV≒最割安受渡銘柄のBPV÷その銘柄の交換比率
- コンティンジェント・イミュニゼーション:サープラスを積極運用、先物のヘッジ量を過大・過少にすることも可能
LOS 3:金利シナリオに応じた負債ベース戦略の選択
確定給付年金など資産BPVが負債BPVより小さい場合、金利低下で積立状況が悪化します。ギャップを埋める手段として受取固定スワップ、レシーバー・スワップションの購入、スワップション・カラー(レシーバーの購入+ペイヤーの売却)があり、金利見通しで選びます。ヘッジ比率を見通しに応じて動かすことを戦略的ヘッジと呼びます。
- ヘッジ比率:デュレーション・ギャップのうちデリバティブで埋める割合(0%はヘッジなし、100%は完全なイミュニゼーション)
- 金利低下を予想:受取固定スワップ、ヘッジ比率を引き上げ
- 金利上昇を予想:レシーバー・スワップション(金利低下時の保護を得つつ、金利上昇時の恩恵も残す)、ヘッジ比率を引き下げ
- 一定の水準までの上昇を予想:スワップション・カラー(ペイヤーの売却プレミアムでコストを相殺)
- 各シナリオで資産・負債・デリバティブを合わせた損益を比較して選択
LOS 4:負債構造に対して運用する際のリスク
負債ベースの戦略には、イールドカーブの非平行シフトによるイミュニゼーションのずれ、負債を測るモデル・リスク、資産・負債・ヘッジ手段の利回りが同じだけ動くと仮定することによるスプレッド・リスクなどが伴います。
- 構造リスク:非平行シフト・ツイストでキャッシュフロー利回りの変化が負債と一致しない
- 平行シフトはイミュニゼーションの十分条件だが必要条件ではない
- モデル・リスク:年金負債(ABOかPBOか)、賃金水準・退職時期・寿命などの前提
- スプレッド・リスク:資産・負債の社債スプレッドの変化
- その他:カウンターパーティ・リスク、担保・証拠金の管理、流動性リスク
LOS 5:債券インデックスとその追随の難しさ
債券インデックスは銘柄数が非常に多く、多くの銘柄は流動性が低く、償還や新発で構成が頻繁に変わります。そのため完全法での追随は難しく、デュレーション、キー・レート・デュレーション、セクター、信用度、キャッシュフロー分布などの主要なリスク・ファクターを一致させる層化抽出法(プライマリー・リスク・ファクター・マッチング)が一般的です。
- 債券市場は店頭取引中心で、多くの銘柄が入手困難
- インデックスの構成・デュレーションが時間とともに変化
- 時価総額加重では、債務の多い発行体ほど比重が大きくなる
- アプローチ:純粋なインデックス運用 → リスク・ファクターを一致させる強化型 → 小さな乖離を許す強化型 → アクティブ運用
- トラッキング・リスクの管理
LOS 6:パッシブな債券エクスポージャーの確立方法
パッシブに債券市場のエクスポージャーを得る方法には、個別債券を直接保有する方法、インデックス型のミューチュアル・ファンドやETF、トータル・リターン・スワップなどのデリバティブがあります。規模、コスト、カスタマイズの必要性、カウンターパーティ・リスクなどで比較します。
- 直接保有:カスタマイズ可能だが、大きな規模と運用体制が必要、取引コストが高い
- ミューチュアル・ファンド:分散・低い管理コスト、日次の基準価額で売買
- ETF:日中取引可能、流動性と透明性、市場価格が基準価額から乖離しうる
- トータル・リターン・スワップ:資金負担なしにインデックスのリターンを得られる、カウンターパーティ・リスク
- デリバティブは少ない資金で迅速にエクスポージャーを得られる
LOS 7:ベンチマークの選定
ベンチマークは、投資家の目的・負債・リスク許容度・制約に合っている必要があります。とくに債券では、ベンチマークのデュレーションや構成が時間とともに変わるため、投資家の投資期間や負債のデュレーションに合うかどうかが重要で、必要に応じてカスタム・ベンチマークを使います。
- 投資家のデュレーション・目標に合うインデックスを選ぶ
- 市場全体のインデックスが投資家のニーズと一致するとは限らない
- カスタム・ベンチマーク:満期・セクター・信用度などを投資家に合わせる
- 負債に連動するベンチマーク(負債ベースのベンチマーク)
- ベンチマークは明確・投資可能・測定可能であることが望ましい
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