Learning Module 5「Yield Curve Strategies(イールドカーブ戦略)」は、ベンチマーク利回りの変化による債券ポートフォリオのリターン要因、市場と同じ金利見通しの場合と異なる金利見通しの場合のポジショニング、金利ボラティリティに関する戦略、キー・レート・デュレーションによる感応度の評価、通貨をまたぐイールドカーブ戦略、戦略の期待リターンとリスクの評価を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM5のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM5には7つのLOSがあります。

  1. LOS 1:ベンチマーク利回りの変化による債券ポートフォリオのリターンに影響する要因を説明するdescribe the factors affecting fixed-income portfolio returns due to a change in benchmark yields
  2. LOS 2:フォワード金利と、市場の見方と一致する金利見通しにもとづいて、ポートフォリオのポジショニング戦略を立案するformulate a portfolio positioning strategy given forward interest rates and an interest rate view that coincides with the market view
  3. LOS 3:フォワード金利と、金利の水準・傾き・形状の点で市場の見方と異なる金利見通しにもとづいて、ポートフォリオのポジショニング戦略を立案するformulate a portfolio positioning strategy given forward interest rates and an interest rate view that diverges from the market view in terms of rate level, slope, and shape
  4. LOS 4:金利ボラティリティの予想される変化にもとづいて、ポートフォリオのポジショニング戦略を立案するformulate a portfolio positioning strategy based upon expected changes in interest rate volatility
  5. LOS 5:ポートフォリオとベンチマークのキー・レート・デュレーションを用いて、ポートフォリオの感応度を評価するevaluate a portfolio’s sensitivity using key rate durations of the portfolio and its benchmark
  6. LOS 6:通貨をまたぐイールドカーブ戦略を論じるdiscuss yield curve strategies across currencies
  7. LOS 7:イールドカーブ戦略の期待リターンとリスクを評価するevaluate the expected return and risks of a yield curve strategy

LM5のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • イールドカーブの主なリスク要因は、水準(パラレル・シフト)、傾き(フラット化・スティープ化)、形状(曲率)の変化
  • ポートフォリオの価値変化は、デュレーション(価格と利回りの線形の関係)とコンベクシティ(大きな金利変化での二次の効果、キャッシュフローの分散度に依存)で近似できる。同じデュレーションなら、バーベルはブレットよりコンベクシティが大きい
  • 右上がりのイールドカーブが変わらないと予想する場合、買い持ちでのデュレーション延長、ロールダウン、キャリー・トレードで超過リターンを狙える。デリバティブでは受取固定スワップや先物の買いで同じエクスポージャーを作れる
  • デリバティブは少ない初期資金でエクスポージャーを変えられるが、証拠金・担保の要件を満たす資金が必要
  • 金利水準が市場と異なる見通しなら、利回り低下の予想でデュレーションを延ばし、上昇の予想で短くする。傾きの見通しにはスティープナー・フラットナー、形状の見通しにはバタフライを用いる
  • 将来の実現ボラティリティがインプライド・ボラティリティより大きいか小さいかの見通しは、オプション付き債券や金利オプション、スワップション、債券先物オプションで表現する
  • キー・レート・デュレーションで、イールドカーブの形状変化に対する感応度をカーブ上の各年限ごとに把握できる
  • 通貨をまたぐ戦略は機能通貨ベースで成果を測る。金利平価、クロス・カレンシー・スワップ、通貨間のキャリー・トレードを用い、期待リターンはクーポン収入とロールダウンに利回り・スプレッド・通貨の変化を加えて評価し、リスクはシナリオ分析で確認する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:ベンチマーク利回りの変化とリターン要因

イールドカーブの変化は水準・傾き・形状(曲率)に分けられ、ポートフォリオの価値変化はデュレーションコンベクシティで近似できます。同じデュレーションでも、キャッシュフローの分散が大きいバーベルブレットよりコンベクシティが大きくなります。

  • 水準:全年限が同じ幅で動く(パラレル・シフト)
  • 傾き:長期と短期の利回り差の変化(スティープ化・フラット化)
  • 曲率:短期・中期・長期の利回りの関係
  • デュレーションは一次(線形)の効果、コンベクシティは二次の効果
  • パー・イールドカーブは実在の銘柄ではなくモデルで推計されることが多い
%ΔPV ≈ −ModDur × ΔY + ½ × Convexity × (ΔY)²

LOS 2:市場と同じ金利見通しでのポジショニング

金利見通しが市場の見方と一致し、イールドカーブが安定的(静的)に推移すると見る場合、右上がりのカーブなら長めの債券を持つことで超過リターンを狙えます。手段は、買い持ち(デュレーション延長)ロールダウンキャリー・トレードで、デリバティブでは受取固定スワップ債券先物の買いが同じ効果を持ちます。

  • 買い持ち:ベンチマークより長いデュレーションを保有
  • ロールダウン:時間の経過で残存期間が短くなり、低い利回りで評価されて価格が上昇
  • ロールダウン・リターン+クーポン収入=ローリング・イールド
  • キャリー・トレード:短期で調達し長期に投資(レポなどのレバレッジ)
  • デリバティブは少ない資金で済むが、証拠金・担保の管理が必要

LOS 3:市場と異なる金利見通しでのポジショニング

金利の水準が市場予想と異なると見るなら、利回り低下の予想でデュレーションを延ばし、上昇の予想で短くします。傾きにはスティープナーフラットナー形状にはバタフライで対応します。

  • スティープナー:短期債を買い長期債を売る(利回り差の拡大で利益)
  • フラットナー:短期債を売り長期債を買う
  • スティープナー・フラットナーは、デュレーション中立にも、ネットで長短どちらかに傾けることもできる
  • バタフライ:ブレット(中期)の買い+バーベル(短期・長期)の売り、またはその逆
  • 曲率の低下(中期の利回りが相対的に低下)を予想するならブレット買い・バーベル売り

LOS 4:金利ボラティリティの変化にもとづくポジショニング

将来の実現ボラティリティインプライド・ボラティリティを上回ると予想するなら、コンベクシティ(オプション)を買い、下回ると予想するなら売ります。手段は、オプション付き債券の売買や、金利オプションスワップション債券先物オプションです。

  • ボラティリティ上昇の予想:プッタブル債、オプションの買い、バーベル(ロング・コンベクシティ)
  • ボラティリティ低下の予想:コーラブル債・MBS(ネガティブ・コンベクシティ)、オプションの売り
  • 個別の金利プット・コールは通常、利回りではなく債券価格にもとづく
  • スワップション:将来の特定の条件で金利スワップを始める権利
  • 債券先物オプション:先物を売買する権利(義務ではない)

LOS 5:キー・レート・デュレーションによる感応度の評価

キー・レート・デュレーションは、イールドカーブ上の特定の年限の利回りだけが動いたときの価格感応度です。ポートフォリオとベンチマークのキー・レート・デュレーションを比べることで、カーブの形状変化に対してどの年限でエクスポージャーを持っているかを定量化できます。

  • キー・レート・デュレーションの合計=実効デュレーション
  • ベンチマークとの差が年限ごとの能動的なポジション
  • 同じデュレーションでも、年限の配分で形状変化の影響が異なる
  • パラレル・シフトの影響はデュレーション、形状変化の影響はキー・レート・デュレーションで見る
  • 価格変化≒−Σ(各KRD×その年限の利回り変化)
%ΔP ≈ −Σ KeyRateDurₖ × ΔYₖ

LOS 6:通貨をまたぐイールドカーブ戦略

通貨をまたぐ戦略では、外国債券の成果を機能通貨(自国通貨)ベースで評価します。カバー付き金利平価により、為替予約で完全にヘッジすると自国の金利と同じ水準になるため、超過リターンは金利平価からの乖離やカーブの見方から生まれます。

  • 金利平価:高金利通貨は先物為替でディスカウント、低金利通貨はプレミアム
  • カバー付き金利平価:為替予約で自国通貨の受取額を確定
  • カバーなし金利平価:ヘッジなしの外貨投資のリターンは長期的に自国投資と同じになるという考え
  • 通貨キャリー・トレード:低金利通貨で調達し高金利通貨に投資
  • クロス・カレンシー・スワップ:外貨建債券のキャッシュフローを自国通貨で完全ヘッジ
  • 通貨ごとにオーバーウェイト・アンダーウェイトを組み合わせる
F / S = (1 + i_価格通貨) ÷ (1 + i_基準通貨)

LOS 7:イールドカーブ戦略の期待リターンとリスクの評価

期待リターンは、クーポン収入とロールダウンに、ベンチマーク利回りの変化、信用スプレッドの変化、通貨の変化による価値変化を加えて評価します。予期しない市場変化によるリスクはシナリオ分析で確認します。

  • 要素:①クーポン収入 ②ロールダウン ③利回り変化(デュレーションとコンベクシティ) ④信用スプレッドの変化・信用損失 ⑤通貨の変化
  • ローリング・イールド=クーポン収入+ロールダウン
  • 利回り変化の効果=−デュレーション×ΔY+½×コンベクシティ×ΔY²
  • シナリオ分析で見通しが外れた場合の損失を確認
  • レバレッジや証拠金の要件も考慮
期待リターン ≈ クーポン収入 + ロールダウン − ModDur×ΔY + ½×Convexity×(ΔY)² − 信用損失 ± 通貨の変化

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