Learning Module 1「Basics of Multiple Regression and Underlying Assumptions(重回帰の基礎と前提条件)」は、重回帰分析で扱える投資上の問題と分析プロセス、重回帰モデルの立て方と回帰係数(偏回帰係数)の解釈、そして重回帰の5つの前提条件と残差プロットによる違反の見つけ方を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM1のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM1には3つのLOSがあります。

  1. LOS 1:重回帰分析が扱う投資上の問題の種類と、回帰分析のプロセスを説明するdescribe the types of investment problems addressed by multiple linear regression and the regression process
  2. LOS 2:重回帰モデルを定式化し、従属変数と複数の独立変数の関係を説明し、推定された回帰係数を解釈するformulate a multiple linear regression model, describe the relation between the dependent variable and several independent variables, and interpret estimated regression coefficients
  3. LOS 3:重回帰モデルの前提条件を説明し、前提条件の違反の可能性を示す残差プロットを解釈するexplain the assumptions underlying a multiple linear regression model and interpret residual plots indicating potential violations of these assumptions

LM1のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 重回帰は、1つの従属変数と2つ以上の独立変数の線形関係をモデル化する手法
  • 実務での用途は、金融変数間の関係の説明、既存理論の検証、予測の3つ
  • 回帰分析のプロセスでは、従属変数・独立変数の特定、モデルの選択、前提条件の確認、当てはまりの検討、必要な修正といった判断を順に行う
  • モデルは Yi = b0 + b1X1i + … + bkXki + εi で表され、n 個の観測値から推定する
  • 切片 b0 はすべての独立変数がゼロのときの Y の期待値。傾き bj は他の独立変数を一定としたときの Xj の Y への影響(偏回帰係数)
  • 前提条件は、線形性・等分散性・誤差項の独立性・正規性・独立変数間の独立性の5つ
  • 散布図は非線形関係の発見に、残差プロットは不均一分散や誤差の相関の発見に役立つ

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:重回帰が扱う問題と回帰分析のプロセス

重回帰は、ある変数(従属変数)の動きを複数の説明要因(独立変数)で説明・予測するための手法です。変数の選択からモデルの選定、前提条件の確認、当てはまりの評価、修正までの一連の流れとして理解することが求められます。

  • 用途:金融変数間の関係の説明、理論(ファクター・モデルなど)の検証、予測
  • 従属変数が連続なら線形回帰、二値(はい・いいえ)ならロジスティック回帰
  • プロセス:変数の特定→モデル選択→前提条件の確認→当てはまりの評価→必要な修正
  • 前提が満たされない場合はモデルの修正や別手法の検討へ

LOS 2:重回帰モデルの定式化と係数の解釈

重回帰モデルは切片と複数の傾き係数から成り、各傾き係数は他の独立変数を一定に保ったときのその変数1単位の変化に対する従属変数の変化を表します。この意味で偏回帰係数(partial regression coefficient)と呼ばれます。

  • 切片 b0:すべての独立変数がゼロのときの Y の期待値
  • 傾き bj:他の変数一定のもとでの Xj の1単位変化に対する Y の変化
  • k 個の独立変数なら推定するパラメータは k+1 個
  • 単回帰の傾きとは値も意味も異なり得る点に注意
Yi = b0 + b1X1i + b2X2i + … + bkXki + εi

LOS 3:5つの前提条件と残差プロット

重回帰の推定結果や検定を信頼するには、線形性・等分散性・誤差の独立性・正規性・独立変数間の独立性の5つの前提が満たされている必要があります。前提の違反は、散布図や残差プロットなどの診断図で見つけます。

  • 線形性:従属変数と独立変数の関係が線形
  • 等分散性:誤差項の分散がすべての観測値で一定
  • 誤差の独立性:誤差項どうしが無相関
  • 正規性:誤差項が正規分布に従う(Q-Q プロットで確認)
  • 独立変数間の独立性:独立変数間に厳密な線形関係がない
  • 残差に扇形の広がりやパターンがあれば不均一分散・系列相関の疑い

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