Learning Module 1「The Term Structure and Interest Rate Dynamics(金利の期間構造と金利変動)」は、スポット・レート、フォワード・レート、最終利回りとイールドカーブの関係、ブートストラップ法、イールドカーブのロールダウン、スワップ・カーブとスワップ・スプレッド、短期金利スプレッド、期間構造理論、イールドカーブ・リスクの管理、金利ボラティリティの期間構造を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM1のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM1には11個のLOSがあります。

  1. LOS 1:スポット・レート、フォワード・レート、最終利回り、債券の期待リターンと実現リターン、イールドカーブの形状の間の関係を記述するdescribe relationships among spot rates, forward rates, yield to maturity, expected and realized returns on bonds, and the shape of the yield curve
  2. LOS 2:ブートストラップ法によってパー・カーブからゼロクーポン・レート(スポット・レート)を求める方法を記述するdescribe how zero-coupon rates (spot rates) may be obtained from the par curve by bootstrapping
  3. LOS 3:アクティブな債券ポートフォリオ運用に内在する、フォワード・レートとの関係でのスポット・レートの推移に関する前提を記述するdescribe the assumptions concerning the evolution of spot rates in relation to forward rates implicit in active bond portfolio management
  4. LOS 4:イールドカーブのロールダウン戦略を記述するdescribe the strategy of rolling down the yield curve
  5. LOS 5:スワップ・レート・カーブと、市場参加者が評価においてそれをなぜ、どのように使うかを説明するexplain the swap rate curve and why and how market participants use it in valuation
  6. LOS 6:所与の年限のスワップ・スプレッドを計算・解釈するcalculate and interpret the swap spread for a given maturity
  7. LOS 7:経済全体の信用リスクと流動性リスクを測るために用いられる短期金利スプレッドを記述するdescribe short-term interest rate spreads used to gauge economy-wide credit risk and liquidity risk
  8. LOS 8:金利の期間構造に関する伝統的な理論を説明し、各理論がフォワード・レートとイールドカーブの形状に対して持つ含意を記述するexplain traditional theories of the term structure of interest rates and describe the implications of each theory for forward rates and the shape of the yield curve
  9. LOS 9:イールドカーブを動かす各ファクターに対する債券のエクスポージャーをどのように測定でき、そのエクスポージャーをイールドカーブ・リスクの管理にどのように使えるかを説明するexplain how a bond’s exposure to each of the factors driving the yield curve can be measured and how these exposures can be used to manage yield curve risks
  10. LOS 10:金利ボラティリティの満期構造と、それが価格ボラティリティに与える影響を説明するexplain the maturity structure of yield volatilities and their effect on price volatility
  11. LOS 11:主要な経済要因が、ベンチマーク金利、スプレッド、イールドカーブの変化に関する見通しの形成にどのように使われるかを説明するexplain how key economic factors are used to establish a view on benchmark rates, spreads, and yield curve changes

LM1のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • スポット・レートはゼロクーポン債の利回りで、フォワード・レートはスポット・レートから導かれる将来期間の金利
  • フォワード・カーブが実現すれば、どの満期の無裁定価格の債券も同じ1期間リターンを生む
  • 最終利回りは、再投資が同じ利回りで行われ満期まで保有するなどの前提が満たされる場合にのみ実現リターンと一致する
  • 将来のスポット・レートがフォワード・レートを下回ると予想するなら、長期債の保有で超過リターンを狙える
  • スワップ・カーブは信用リスクの小さい金利のベンチマークとして広く使われ、スワップ・スプレッドはスワップ・レートと同年限の国債利回りの差
  • 期間構造の理論には、純粋期待仮説、局所期待仮説、流動性選好仮説、市場分断仮説、特定期間選好仮説がある
  • イールドカーブの変化は水準・傾き・曲率の3ファクターでおおむね説明できる
  • 一般に短期金利のボラティリティは長期金利より高く、金融政策や景気見通しが金利とスプレッドの見通しに影響する

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:スポット・レート、フォワード・レート、YTM、リターンの関係

スポット・レートはゼロクーポン債の利回り、フォワード・レートは将来の期間に適用される金利で、長期スポット・レートは短期スポット・レートとフォワード・レートの幾何平均です。YTMは再投資などの前提が満たされる場合にのみ実現リターンと一致します。

  • フォワード・レートはスポット・レートから無裁定で導出
  • 右上がりのカーブではフォワード・レート>スポット・レート
  • YTMは各スポット・レートの加重平均に近い
  • 期待リターン:保有期間・再投資の前提で変化
  • フォワード・カーブが実現すれば債券の1期間リターンは同一
(1 + S_B)ᴮ =(1 + S_A)ᴬ ×(1 + f_A,B−A)ᴮ⁻ᴬ

LOS 2:ブートストラップ法

ブートストラップ法は、パー・レート(額面で取引される債券のクーポン・レート)を短い年限から順に使い、各年限のスポット・レートを逐次的に求める方法です。

  • パー債:価格=100、クーポン・レート=YTM
  • 1年目のスポット・レート=1年のパー・レート
  • 既知のスポット・レートでクーポンを割り引き、次の年限を解く
  • 割引係数(ディスカウント・ファクター)の導出
100 = PMT ÷(1 + S₁)+(PMT + 100)÷(1 + S₂)²

LOS 3:スポット・レートとフォワード・レートの関係とアクティブ運用

将来のスポット・レートがフォワード・レートどおりに推移すれば、どの債券を保有しても同じリターンです。アクティブ運用では、将来のスポット・レートがフォワード・レートを下回ると予想すれば長期債は割安とみなし、デュレーションを長くします。

  • スポット・レート=フォワード・レートの実現:リターンは満期によらず同一
  • 予想スポット<フォワード:長期債は割安、デュレーションを長く
  • 予想スポット>フォワード:長期債は割高、デュレーションを短く
  • フォワード・レートは損益分岐点の金利

LOS 4:イールドカーブのロールダウン

右上がりのイールドカーブが変化しない場合、満期までの期間が短くなるにつれて債券の利回りが低下し価格が上昇するため、投資期間より長い満期の債券を買うと高いリターンを得られます。

  • 前提:イールドカーブが右上がりで安定
  • 利回り低下による値上がり益
  • 投資期間より長い債券を購入
  • カーブが変化するとリスクがある

LOS 5:スワップ・レート・カーブの利用

スワップ・レート・カーブは、さまざまな年限の固定金利のスワップ・レートから作るカーブで、信用リスクが小さく流動性が高いため、民間部門の金利のベンチマークとして評価に使われます。

  • 国債より多くの年限で取引される
  • 政府の規制・発行量の影響を受けにくい
  • 各国で比較可能なベンチマーク
  • 金融機関の資金調達コストを反映

LOS 6:スワップ・スプレッド

スワップ・スプレッドは、スワップ・レートと同じ年限の国債利回りの差で、信用リスクと流動性リスクの指標となります。

  • スワップ・スプレッド = スワップ・レート − 同年限の国債利回り
  • 信用・流動性リスクの増大で拡大
  • 債券のスプレッドの計測基準として利用
  • Iスプレッド:債券利回り − 同年限のスワップ・レート
スワップ・スプレッド = スワップ・レート − 同年限の国債利回り

LOS 7:経済全体の信用・流動性リスクを測る短期金利スプレッド

短期金利スプレッドとして、TEDスプレッド(銀行間貸出金利と短期国債利回りの差)や、銀行間金利とオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)レートの差などがあり、銀行システムの信用リスクと流動性リスクの指標となります。

  • TEDスプレッド:銀行間金利 − 短期国債利回り
  • 銀行間金利−OISスプレッド
  • SOFRなどの担保付き翌日物金利の利用
  • 金融危機時に拡大

LOS 8:伝統的な期間構造理論

純粋期待仮説はフォワード・レートを将来のスポット・レートの不偏推定値とし、局所期待仮説は短期保有のリターンがリスクフリー・レートに等しいとします。流動性選好仮説は長期ほどプレミアムが上乗せされるとし、市場分断仮説特定期間選好仮説は需給の影響を重視します。

  • 純粋期待:カーブの形状は将来金利の予想のみを反映
  • 局所期待:短期の保有期間リターンはリスクフリー・レート
  • 流動性選好:フォワード=予想スポット+流動性プレミアム
  • 市場分断:各年限の需給で独立に決定
  • 特定期間選好:プレミアムがあれば選好年限外にも移動

LOS 9:イールドカーブ・ファクターとリスク管理

イールドカーブの変化は、水準(レベル)傾き(スティープネス)曲率(カーバチャー)の3ファクターでおおむね説明できます。各ファクターに対する感応度(エクスポージャー)を測り、ヘッジやポジションの調整に使います。

  • 水準:平行移動、最も説明力が大きい
  • 傾き:短期と長期の利回り差の変化
  • 曲率:中期ゾーンの相対的な変化
  • キー・レート・デュレーションで年限ごとの感応度を測定
ΔP/P ≈ −D_L × Δx_L − D_S × Δx_S − D_C × Δx_C

LOS 10:金利ボラティリティの満期構造

金利ボラティリティの期間構造は年限ごとの利回りのボラティリティを示し、一般に短期金利のボラティリティは長期金利より高くなります。債券価格のボラティリティは利回りのボラティリティとデュレーションの両方に左右されます。

  • 短期金利は金融政策の影響で変動が大きい
  • 長期金利はインフレ期待などに左右される
  • 価格ボラティリティ≈デュレーション×利回りボラティリティ
  • オプション付き債券の評価に重要

LOS 11:経済要因と金利・スプレッドの見通し

金融政策、インフレ、経済成長、財政政策などの見通しから、ベンチマーク金利、スプレッド、イールドカーブの形状変化に関する見方を形成します。

  • 金融引締め:短期金利上昇、カーブのフラット化
  • インフレ期待上昇:長期金利上昇
  • 景気後退:信用スプレッド拡大
  • 財政赤字の拡大:長期金利上昇圧力
  • 見通しに基づくデュレーション・カーブ・ポジションの調整

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