ひとことで言うと

  • 先渡(先物)の理論価格は、お金を借りて現物を買い、満期まで持ち続けるコストと等しくなるように決まります。
  • 保有による収入がなければF0 = S0 ×(1 + r)T、配当などの収入があればその分だけ先渡価格は低くなります。
  • 市場価格がこの理論価格からずれると裁定取引が働き、価格は理論値に引き戻されます。これが無裁定条件による価格決定です。

この記事では、証券アナリスト1次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「無裁定条件による価格決定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/デリバティブ分析
大分類 (2) 先物・先渡取引の仕組みと評価
協会の学習ポイント 先渡および先物取引の価格決定の仕組み(無裁定条件)について理解する。

先渡の理論価格(無裁定条件)とは

先渡取引では、将来の受渡価格(先渡価格)を契約時に決めます。では、その価格はいくらが「適正」なのでしょうか。答えは、先渡の買いと同じ結果を、現物と借入を組み合わせて作ったときのコストです。

複製ポートフォリオの考え方

いま「借入をしてS0円で現物を買い、満期Tまで持つ」という取引をすると、満期には現物が手元にあり、借入の元利合計S0×(1+r)Tを返済する必要があります。これは「満期にS0×(1+r)T円を支払って現物を受け取る」ことと同じで、まさに先渡の買いと同じ結果です。今日の手元資金はどちらもゼロなので、先渡価格はS0×(1+r)Tでなければなりません。現物を持つためにかかる資金コスト(金利)などを持越費用(キャリー・コスト)と呼ぶことから、この考え方はコスト・オブ・キャリー・モデルとも呼ばれます。

理論価格からずれるとどうなるか

市場の先渡価格が理論価格より高いと、「借入で現物を買い、先渡を売る」(キャッシュ・アンド・キャリー)で確実な利益が得られます。逆に低いと、「現物を空売りして資金を運用し、先渡を買う」(リバース・キャッシュ・アンド・キャリー)で利益が得られます。どちらの場合も裁定取引が殺到して価格差が解消されるため、市場の先渡価格は理論価格に落ち着きます。

保有による収入がある場合

株式の配当や債券の利息のように、現物を持っていると受け取れる収入がある場合、先渡の買い手はその収入を受け取れません。その分だけ現物保有の実質的なコストが小さくなるため、先渡価格は収入の分だけ低くなります。逆に、商品の保管費用のように持つことで費用がかかる場合は、先渡価格は高くなります。

押さえておきたい公式

F0 = S0 × (1 + r)T保有による収入・費用がない場合の基本形
F0 = (S0 − I) × (1 + r)T配当などの収入がある場合。Iは期間中に受け取る収入の現在価値
F0 = S0 × [1 + (r − d) × t ÷ 365]株価指数先物などで使われる単利・配当利回りの形
記号 意味
F0 先渡(先物)の理論価格
S0 現在の現物価格
r 無リスク金利(年率)
T・t 満期までの期間(年・日数)
I・d 保有による収入の現在価値・配当利回り

具体例で確認

株価S0=5,000円、金利r=年3%、1年後に受け渡す先渡を考えます。半年後に60円の配当があります。

  1. 配当の現在価値:I = 60 ÷ 1.030.5 ≒ 59.12円
  2. 理論先渡価格:F0 = (5,000 − 59.12) × 1.03 ≒ 5,089.11円
  3. 配当がなければ5,000 × 1.03 = 5,150円なので、配当の分だけ先渡価格が低くなっています。

もし市場の先渡価格が5,150円なら割高です。5,000円を借りて株を買い、先渡を5,150円で売ります。半年後の配当60円を残り半年3%で運用すると60 × 1.030.5 ≒ 60.89円。1年後、株を5,150円で引き渡し、借入の元利5,150円を返済すると、手元に約60.89円が残ります。これは5,150 − 5,089.11 ≒ 60.89円とぴったり一致します。

試験で問われやすいポイント

  • 理論価格=現物を借入で買って満期まで持つコストであるという導出の考え方が問われやすいです。
  • 金利が上がると先渡価格は上がり、配当が増えると下がるという方向を押さえましょう。
  • 配当がある場合は、配当の現在価値を現物価格から差し引いてから複利で伸ばす、という計算手順がポイントです。
  • 市場価格が理論価格より高い・低いときの裁定取引の組み方と裁定利益の計算がセットで狙われます。
  • 単利の式(株価指数先物)と複利の式のどちらを使うかは、問題文の条件に従いましょう。

要点まとめ

  • 先渡の理論価格は、借入で現物を買って持つ複製のコストに等しい
  • 基本式はF0=S0×(1+r)T
  • 配当などの収入は先渡価格を下げ、保管費用などは上げる
  • 理論価格からずれると裁定取引が働き、価格は理論値に戻る

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。