ひとことで言うと

  • デリバティブ戦略は、相場の見通し(方向と値動きの大きさ)投資の目的に合わせて選びます。
  • 目的は大きく、ヘッジ(リスクを減らす)収益の上乗せ見通しに基づく投機に分けて考えると整理しやすくなります。
  • どの戦略にも「何かを得る代わりに何かを手放す」トレードオフがあります。

この記事では、証券アナリスト1次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「目的に合った戦略の選択」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/デリバティブ分析
大分類 (6) デリバティブを用いた投資戦略
協会の学習ポイント 投資目的に即したデリバティブ戦略の適切な選択手法について理解する。

目的に合った戦略の選択とは

先物やオプションを使った戦略は数多くありますが、どれが「正解」かは、投資家が何を実現したいかによって変わります。選択の手順は、おおむね次の3つの問いに答えることです。

  1. 目的は何か:保有資産のリスクを減らしたいのか、保有資産から追加の収入を得たいのか、相場見通しに基づいて利益をねらいたいのか。
  2. 相場の見通しはどうか:上昇・下落・横ばいという方向と、大きく動くか動かないかという変動の大きさ
  3. 何を受け入れられるか:プレミアムのコストを払えるか、上値を手放してもよいか、損失の限定が必要か。

先物とオプションの使い分け

先物(先渡)は損益が原資産と対称的に動くため、ヘッジすると損失と同時に利益の機会も消えます。その代わりプレミアムはかかりません。オプションは損益が非対称で、買えば不利な方向の損失を限定しつつ有利な方向の利益を残せますが、プレミアムというコストがかかります。「下落は防ぎたいが上昇の恩恵は残したい」ならオプション、「確実に価格を固定したい」なら先物、という使い分けが基本です。

トレードオフを意識する

カバード・コールはプレミアム収入を得る代わりに上値を手放し、プロテクティブ・プットは損失に下限をつける代わりにプレミアムを払います。スプレッド戦略はコストを抑える代わりに利益に上限がつきます。何を得て何を手放すのかを言葉で説明できることが、戦略選択の問題を解くカギになります。

整理しておきたいポイント

見通し・目的 主な戦略 トレードオフ
保有株の下落を確実に避けたい 株価指数先物の売り 上昇益も消える
下落に備えつつ上昇益も残したい プロテクティブ・プット プレミアムのコスト
横ばい〜小幅上昇で収入を上乗せしたい カバード・コール 上値が頭打ち
上昇を予想、コストは抑えたい ブル・スプレッド 利益に上限
下落を予想、コストは抑えたい ベア・スプレッド 利益に上限
方向は不明だが大きく動きそう ストラドル・ストラングルの買い 動かなければプレミアム分の損失
ほとんど動かなそう バタフライ(またはストラドル等の売り) 大きく動くと損失(売りは損失が大きい)

具体例で確認

ある年金基金が、国内株式ポートフォリオを保有しています。次の重要な経済指標の発表まで、市場が下落するかもしれないと心配しています。ただし、長期的には株式の上昇を見込んでいるため、上昇の恩恵は失いたくありません。

  • 株価指数先物を売ると、下落リスクはなくせますが、上昇したときの利益も消えてしまうため、「上昇の恩恵は残したい」という目的に合いません。
  • カバード・コールは収入を得られますが、下落への備えとしては不十分で、上値も頭打ちになります。
  • プロテクティブ・プット(株価指数プットの買い)なら、プレミアムはかかるものの、損失に下限を設けながら上昇益を残せるため、この基金の目的に最も合っています。

このように、見通しと目的を照らし合わせて、候補の戦略を1つずつ消去していくと、適切な戦略を選びやすくなります。

試験で問われやすいポイント

  • 投資家の見通しと目的が文章で与えられ、最も適切な戦略を選ばせる問題が典型です。
  • 先物(対称的な損益)とオプション(非対称な損益)の性質の違いから選択を判断できるかが問われます。
  • 各戦略のトレードオフ(プレミアムのコスト、上値の放棄、利益の上限)を正確に押さえておきましょう。
  • 方向の見通しが問われているのか、ボラティリティの見通しが問われているのかを読み分けることが大切です。

要点まとめ

  • 戦略は、目的(ヘッジ・収益上乗せ・投機)と相場の見通し(方向・変動の大きさ)から選びます。
  • 先物は損益が対称的、オプションは非対称という違いが選択の出発点です。
  • どの戦略にも、何かを得る代わりに何かを手放すトレードオフがあります。
  • 候補の戦略を目的に照らして消去していくと、適切な戦略を選びやすくなります。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。