ひとことで言うと

  • マネタリーベースは日本銀行が直接供給するお金で、現金通貨+日銀当座預金の合計です。
  • マネーストックは、家計や企業などが保有する現金や預金など、世の中に出回っているお金の量です。
  • 両者の比率が信用乗数(貨幣乗数)で、マネーストック = 信用乗数 × マネタリーベースと表されます。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「マネーストックとマネタリーベース」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (5) 金融・資本市場とマネー
協会の学習ポイント マネーストックとマネタリーベースの関係性について説明できる。

マネーストックとマネタリーベースとは

マネタリーベース(ハイパワード・マネー、ベースマネーとも呼ばれます)は、日本銀行券発行高、貨幣流通高、日銀当座預金残高の合計で、中央銀行が供給する通貨です。日本銀行は国債の買入れなどの資金供給によって、マネタリーベースを増やすことができます。

一方、マネーストックは、金融機関と中央政府を除く経済主体が保有する通貨(現金+預金など)の量です。銀行は受け入れた預金の一部を準備として残し、残りを貸し出します。貸し出されたお金は再び預金として銀行に戻り、さらに貸し出されます。この信用創造のしくみにより、マネーストックはマネタリーベースの何倍にもなります。

信用乗数を決めるもの

信用乗数の大きさは、人々が預金に比べてどれだけ現金を持ちたがるか(現金預金比率)と、銀行が預金に対してどれだけ準備を持つか(準備預金比率)で決まります。どちらの比率が上がっても、貸出に回るお金が減るため信用乗数は小さくなります。

量的緩和と信用乗数

信用乗数が一定なら、中央銀行がマネタリーベースを増やせばマネーストックも比例して増えるはずです。しかし実際には、景気が弱く資金需要が乏しいときには、銀行が供給された資金を貸し出さずに日銀当座預金に積み上げるため、準備預金比率が上がり、信用乗数が低下します。日本の量的緩和期には、マネタリーベースが大きく増えても、マネーストックの伸びは緩やかにとどまりました。

押さえておきたい公式

マネタリーベース H = C + R現金通貨 + 日銀当座預金(準備)
マネーストック M = C + D
信用乗数 m = M ÷ H = (c + 1) ÷ (c + r)分子・分母を預金Dで割って導く
記号 意味
C 現金通貨
D 預金
R 銀行の準備(日銀当座預金)
c 現金預金比率(C ÷ D)
r 準備預金比率(R ÷ D)

具体例で確認

現金預金比率c=0.2、準備預金比率r=0.1、マネタリーベースH=100兆円とします。

  1. 信用乗数:m = (0.2 + 1) ÷ (0.2 + 0.1) = 1.2 ÷ 0.3 = 4
  2. マネーストック:M = 4 × 100 = 400兆円(内訳は預金約333.3兆円、現金約66.7兆円)

次に、日本銀行がマネタリーベースを200兆円に倍増させたものの、銀行が貸出を増やさず準備を積み上げ、準備預金比率が0.5に上がったとします。信用乗数は1.2 ÷ 0.7 ≒ 1.71に低下し、マネーストックは200 × 1.71 ≒ 343兆円と、かえって減ってしまいます。マネタリーベースを増やせば必ずマネーストックが同じ割合で増えるわけではないことがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • マネタリーベース=現金通貨+日銀当座預金、マネーストック=現金通貨+預金という定義の違いが問われやすいです。
  • 信用乗数の式(c+1)÷(c+r)を使った計算に慣れておきましょう。
  • 現金預金比率や準備預金比率が上がると信用乗数は下がるという方向が狙われやすいです。
  • 量的緩和期に信用乗数が低下し、マネタリーベースの増加ほどマネーストックが増えなかった点も押さえましょう。

要点まとめ

  • マネタリーベース=日本銀行が供給する現金通貨+日銀当座預金
  • マネーストック=信用乗数×マネタリーベース
  • 信用乗数=(c+1)÷(c+r)。cやrが上がると小さくなる
  • 資金需要が弱いと、マネタリーベースを増やしてもマネーストックは増えにくい

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。